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冬のソナタに恋をして

別れの予感


ミヒはチュンサンの家に着くと、合鍵で中に入った。やはりチュンサンはやつれた様子で部屋の中に座り込んでいた。顔には疲労の色が浮かび、全身がタバコ臭かった。

そしてミヒが黙ってソファに座ると、目も合わせずに立ち上がって窓辺に行って、黙って外を見ている。ミヒは淡々と言った。

「ユジンが私のこところに来たわ。」


するとチュンサンは驚いてミヒを振り返ったが、すぐにまた外を見始めた。

「あなたの気持ちはよくわかるわ。」

チュンサンは氷のような声で言った。

「わかる?へぇ、わかるんだ。」

ミヒは大きくため息をついた。

「ごめんなさい。あなたをこんなに苦しめるなんて。母さんは、母さんはユジンのお父さんを、、、ヒョンスを本当に愛してたの。誰がなんて言ったってあなたはヒョンスの子、、、、。」

「やめろよ」

チュンサンは大きな声を出したが、顔は外を見つめたままだった。ミヒはもう一度大きなため息をついて言った。

「とにかく、彼女と別れなさい。今すぐ別れるの。これ以上長引くと二人共もっと辛くなるでしょ?」そして立ち上がってチュンサンの近くに行こうとした。

「もしあなたが言えないなら、私がユジンに話すわ。」



すると今度こそ、チュンサンはミヒを振り返った。その顔には苦痛と悲しみが浮かび、目には涙を浮かべていた。しかし、ミヒは決して手綱を緩めなかった。

「なぜあなたたちが決して結婚できないのか、私が話すわ。」

「やめて」

「いいえ、話すわ」

「絶対にダメだ。ユジンには言わないで。ユジンはきっと耐えられない。」

チュンサンは懇願した。ミヒはチュンサンの顔を見て悟った。ああ、この子は本当にヒョンスの娘を心から愛しているのだ、求めているのだと。それは、ミヒが全身全霊で求めたのに、決して得られなかったヒョンスの愛を思い出させた。ユジンは最愛の息子まで奪っていく。ミヒはユジンが憎くてたまらなかった。彼と大嫌いなあの女の子供だというだけで。あの一家をずたずたに引き裂いてやりたかった。チュンサンをかわいそうに思う気持ちが急速に萎えていく。自分の声が地獄から湧き上がる魔王のように思えた。


「じゃあ、今すぐ決めなさい。別れる?それとも私がユジンに理由を話す?チュンサン?」

ミヒは10年前チュンサンから受けたあの視線を再び感じた。孤独、怒り、悲しみ、絶望、あきらめ、そして憎しみ、、、。でも、今度は私も負けない、許すわけにはいかない、ミヒは腹をくくった。


チュンサンは心の底から絞り出すような声で言った。

「、、、別れるよ、、、。」

その顔には底なしの絶望が浮かび上がった。ミヒはその言葉を聞くと、安どのため息をついて静かにマンションを後にした。後に残されたチュンサンは崩れ落ちるように再び座り込んで涙を流した。もうどこにも希望という文字は残っていなかった。


アパートの自室に戻ったユジンは、泣き疲れて眠ってしまった。そんなユジンの携帯に、待ち望んでいた電話がかかってきた。相手はチュンサンだった。チュンサンは余計なことは一切言わずに、今下に来てる、と言って電話を切った。ユジンはうれしくて、泣きはらした顔のまま、急いで外に降りて行った。たった一日会えなかっただけなのに、まるで何年もあっていなかったかのように恋しかった。顔を見ると涙があふれて止まらない。チュンサンには何をされても許してしまう自分がいる。それなのに出た言葉はたった一つ。

「何よ?」

つい素直になれなくて、強がってしまった。


チュンサンはユジンの顔を見て心が痛くて仕方がなかった。ユジンが昨夜から不安でどれだけ自分を求めて探し回ったか、心配で怖がっていたかが一目見て分かったからだ。

「ユジン、、、」

「私がどんなに心配したかわかる?」

「ごめん」

チュンサンの顔はとても静かで痛みに喘いているようだった。

「連絡も取れないし、どこに行ってたの?」

「いろいろあって」

「何があったの?」

「大したことじゃないよ。」

「私には話せないこと?」

「そうじゃないよ。でも、ちょっと複雑で。でももう全部終わったから大丈夫。」

「それじゃ、もう私は心配しなくてもいいのね。」

「、、、そうだよ。もう何も心配ないから。」


無表情でそう言うチュンサンを前に、ユジンはぽろぽろと涙を流した。なぜか大丈夫という言葉が、全く意味通りには聞こえずに、ただただ悲しくてたまらなかった。ユジンは急いで涙を手の甲で拭うと言った。

「わかったわ。無事に戻ってきたから許してあげる。」


ユジンが言うと、チュンサンが愛おしそうに、ユジンのほほの涙をそっと指で拭った。チュンサンはそのままユジンを強く抱きしめた。



1日ぶりのチュンサンの胸は温かくて、懐かしいにおいがした。ユジンは思わず、両手で強くチュンサンを抱きしめた。ずっとこのままでいたかった。このまま彼と別れてしまうのは嫌だった。すると、その気持ちがチュンサンにも伝わったのか、チュンサンが言った。

「ユジン、今から海を見に行かない?」

コメント一覧

kirakira0611
@81sasayuri1018 さま、ありがとうございます😊
お返事遅くてすみません。そちらは雪が降ってるんですね。冬ですねー。
確かにここから辛い展開ではありますが、雪の日のチュンサンの嬉しそうな顔、いろいろありましたね。この冬が素晴らしいものになりますように。物語、スパートしていきたいと思います。
お名前、ゆりさんのままで❤️
可愛らしいです。
kirakira0611
@breezemaster さま、こんにちは。
寒くなりましたねー。冬です。冬ソナの季節にやっとなりましたねー。
W杯、期待してなかったけど、リーグ突破して嬉しいです。夜ふかしの楽しみが出来ました。悔いなく最後まで頑張ってほしいです。元気ない日本が元気になりますね!
ユジンの許すという表情、ちょっとだけ追記してみました。いつも良いヒントをありがとうございます😊
ミヒとヒョンスの関係、いつか書いてみたいと思います。
これから海の場面にうつります。けっこう好きな場面です。意外と長丁場で4話ぐらいかしら。チュンサンの悲しみと、ユジンの無邪気さが対照的です。
ありがとうございました😊
kirakira0611
@joiede_ktfp さま、皆さまのミヒへの見方が同じで勉強になります。参考にさせていただきますね。すぐに他人のせいにする、、、これをしてる限り解決にはならない。その通りですね。周りも自分も不幸になる。うんうん、わかります。多分日本人的思考だとそう思うんですよね。わたし、いつもこれを韓国のこの前の梨泰院の事故とか何かしらにつけて思ってしまいます。ちょっとお国柄?とも考えたりして。どちらが良いとかではないけど、考え方が違うな、といつも思います。
それはそうと、DMといい、お店の雰囲気といい、ステキですね。うまく言えないですけど、帽子って芸術なんだな、と思いました。しかも、青山にあるんですね。それだけでオシャレに感じる田舎者です。また、帽子のお写真とか良かったら見てみたいです。
ありがとうございました😊
kirakira0611
@hananoana1005 さま、ありがとうございます😊
本当にエゴですね。皆さまのご意見をもとにヒョンスとの別れを書いてみますね。
ヨン様の顔が悲しそうでもらい泣きしそうになりました。ヨン様の表情演技すごいです👏ステキです。
ミヒの太々しさもですが。
ここから海の場面に、、、。悲しいですね。
ありがとうございました😊
81sasayuri1018
再び。

昨日雪が舞ったとき、
10年ぶりにユジンの前に現れたチュンサン(ミニョン)の明るい笑顔が浮かんだのです。
冬に向う暗さではなく,冬を喜ぶような明るい顔でしたよね。

ドラマの展開は辛いものですが、
あのチュンサンのように私は冬を明るく過ごそうと思ったのです。
ゆりより ← 年相応に姥ゆりに年末変える予定です(*^^*)
kirakira0611
@81sasayuri1018 さま、良いヒントをありがとうございます😊ずっとヒョンスとの別れエピソードを考えてるんですが、ミヒの自己愛の強さに嫌気がさしたんだろうと思うんです。
この後に及んで息子の気持ちを踏み躙る母がよくわかりません。
皆さまの見方通りにエピソードを書いてみますねー。
ありがとうございました😊
ご意見嬉しいです。
あっ、ブックサンタに大賛成です。また記事を紹介させていただいて良いですか?
わたしもやりました。
本は心の栄養ですね。
kirakira0611
@charlotte622 さま、ありがとうございます😊
杏子さまのおっしゃるとおり、自己中心性がある人だと思うので、そこを軸にヒョンスとの別れを終盤に書いてみようと思います。良いヒントをありがとうございます😊
breezemaster
おはようございます^^

タバコの香りまで、感じさせてくれている、
チュンサンの悲しさをプラスさせています。

ミヒが、ヒョンスを愛していた気持ちの強さも感じます。
それぞれの強い思い、そこから、始まった物語、
強い思いならではの、悲しみの強さが、
良い意味で冬ソナを彩ってくれていますよね。
ユジンの悲しそうな顔から、許すはって、言う表情、可愛さも感じます。
それでも、これからの展開••••••
今朝は、一段と冷え込みました。
何か、冬ソナの物語が、さらに伝わって来ました。
joiede_ktfp
kirakira0611さん、今晩は。
おつかれさまでございます。
ホントにミヒというひとは、、。
時間がとまってますね。憎しみの中にいて、全く前にすすめていないみたいです。酷いフラれかたをしたのも、愛情というより執着というか、激しすぎる自己中な愛情?とかにあるのでは?ヒョンスは疲れちゃったんっじゃないでしょうかね、、。ミヒは、自分にとってよくないことが起きると、自分を省みることもせず何でも相手や回りのせいにするタイプみたいですね。そんなことをしていたら、何も解決しないし、不幸なだけなのに。
とにかく二人は翻弄され過ぎて、かわいそうすぎます。
あ、また勢いで書きすぎました。失礼しました。長くなりそうなので、この辺で。おやすみなさいませ。
hananoana1005
こんばんは🌜
今日もお疲れさまでした!

前回もミヒの醜さについてさんざん書いてしまいましたが、
チュンサンをここまで苦しめてまでもミヒは自分の意地やエゴをむき出しにするのでしょうか。
恐ろしい女ですね!

「これから海を見に行かない?」・・・もう、ここでチュンサンは心を決めているのですね。
そして、、あの悲し過ぎる夜の海のシーンにつながっていくのですね~波の音と、あの曲が聞こえるようです!

キラキラさんありがとうございました。
81sasayuri1018
こんばんは。

>ユジンは最愛の息子まで奪っていく。ミヒはユジンが憎くてたまらなかった。彼の子供だというだけで。

ミヒはヒョンスを愛していたんではないですね・・・
愛していたのなら、ユジンも愛せるはず・・・
ミヒは自己愛だけですね~~

ミヒはピアノは上手でも人間性が・・・
それに気づいてヒョンスはユジンの母に気が向いたのかしら???  
チュンサンの苦悩・・・そして、それを知ることになるユジン・・・
辛すぎますよね・・・  ゆり
charlotte622
今晩は🌃う〜ん、ミヒって本当にひどい人ですね。チュンサンとユジンは異母兄妹じゃないのに…自分の息子を苦しめてまで、そこまでユジンの母が憎いのでしょうか?ミヒは昔ユジンの父にひどい振られ方をしたのでしょうか?だったら憎しみは父の方に向かうと思うのですが…
チュンサンにミニョンの記憶を植え付けたり、ひどいことばかりしていますね。すごく自己中で罪深いと思います❗
杏子
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