かまいたち(中)

　　　　　　　　　　　　　山木の供述は本当なのか？

　　　応援の警察官がくるまで何も語らないと言った山木だが

　　　　　　　　　　　　　　　世間話しを始めた

　　　  　『おまわりさん、【かまいたち】って知ってるか？』

　 　『あぁ妖怪だろ、突然、鋭利な鎌で切ったような傷を残す』　

　『バァちゃんが言ってた【かまいたち】は人間に化けるんだぞ』

　　　　　　　　　　　山木は【かまいたち】の話しを始めた

どんな話しでも聞き逃すまい話しの中にヒントがあるかもしれない

　　　【かまいたち】はイタチが鎌を持って風に紛れて人に悪さする

　　　　　　

　　　　　　　　　　一瞬で鋭い切り口を付けられる事

　　　　　　　怪我をした本人も怪我をしていたと後で気づく

　　　まるで研ぎ澄まされた刃で切ったようにパックリの切り口

　その【かまいたち】は普段、人間の姿で普通に暮らす妖怪だと

　　　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　

　 　『俺は小さい頃から【かまいたち】に良くからかわれたんだ』

　　　       『【かまいたち】って、どんな姿してたんだ？』

　　　　　  　『小さい頃は姿が見えなかったが・・・・・』

　　　　　　　　    　山木の視線が宙を泳いだ

　　    　『今の【かまいたち】は女の姿で悪さしやがって』

　　　  　薄笑いを浮かべズボンの裾をめくって見せた

　　　　　　  そこには無数の大小の傷跡があった

指を指して、『これは今日の【かまいたち】の傷だよ、最初は痛くも痒くもないが、やられたって気付くと痛くてしょうがない、血が溢れて大変だったんですよ』

　　　　　　　  　村上巡査は、ちらっと時計を見た

　　　　　　　  応援を呼んでから30分は経っていた

　　　　　　　　　  　事件らしい事件のない町だ

　　殺人事件と聞いて本部からの応援だが気持ちは焦っていた

　　　　　　　　　  そんな村上巡査に、山木は呟いた

　　　　　   　『今朝の【かまいたち】は手を焼いた』

　　　　　　　　

『まさか、お前は人間の姿をした【かまいたち】を殺したって訳じゃないよな？』

　 　『何を言ってんだ【かまいたち】が人間の姿をしてるのさ』

　　　　　  　村上巡査は山木は精神異常者なのか？

　　　   どこか精神に異常があるように見えてきた・・・・。

　　　　　　　　

　　   本部の応援が届く前に妻の美也子が帰ってきた　　　　　　

　　   　ただならぬ気配に、一瞬怯えた表情を見せた

　　　　　　　　　　　『美也子、家に戻ってなさい』　　　　　

　　　　　  　山木は美也子を見て『奥さんですか？』

　　　　　　　　　　　　『お前に関係ないだろう』

精神異常の男だと思い始めてた村上巡査は応援が遅い事に苛立ってきた

　　　　　　　　　　　応援の警察官はまだか・・・・。

　　　

　　

　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　 　小さい駐在所の中は緊迫した空気が漂っていた。

　 何と言っても目の前には人を殺しましたと自首した男が居る

　　　   手錠はしているが、暴れたら何をするか判らない

　   山木も応援の警官が遅い事でふてぶてしい態度を見せる

　　　　　　　

　　　　　　　　　

　　　　　　

　　  　けたたましいパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

　　　　　　　　　　　　　村上巡査は内心ホッとした

　　　　   応援がくれば山木が精神異常だろうが怖くない

　　　　　　　　　 　『おっ・・・やっと来てくれましたね』

　　　　　　　　　　　　山木の顔にも緊張が戻った

　　　　　　　　　パトカー3台に警官5人が駆けつけた

　　　　　　　　　　　　山木を取り囲むようにして

　　　　　　　　『山木だな？何があったか話しなさい』

　　　　　　　　　　　　　　　　　　『はい』

　　　　　　　　　　　　山木は淡々と話し始めた

『実は今朝、畑仕事をしていた爺さんが足に怪我をして【かまいたち】にやられたって言うんですよ、いえ私も子供の頃から【かまいたち】には散々でしてね、爺さんを怪我させた【かまいたち】を追ったんです』

話しが支離滅裂だと思ったが黙って聞く本部から応援の澤田警部補

『私には【かまいたち】が見えるんです、畑の、すぐ裏の山に隠れていたのを見つけたんですよ、【かまいたち】のやつ人間に化けて最初は抵抗しましたよ、許せないヤツだ、こいつをこのままにしておいたら沢山の子供や老人に悪戯すると思ってね追い詰めて殺して頭を切り落とし軽トラックの荷台に乗せてあります』

　『【かまいたち】のヤツ殺しても人間の姿を止めないんですよ』

　　　　　　　　　　　　　　　『場所は？』

　　　　　　　　『ここから20分程の山中の農道です』

応援部隊のパトカー3台で現場に向かった話しは車内でも出来る

　　　　　　　　　先ずは現場を見ない事には進まない

　　澤田警部補は落ち着いた声で『殺したのは男か？女か？』

　　　　　　　　　　『女性に化けた【かまいたち】です』

　　　　　　　　　　　　『知ってる女性だったか？』

『追っている時は良く分かりませんでしたが殺した後に見たら知ってる女性でした』

　　　　　　　　　　　　　　『使った凶器は？』

　　　　　　　　　　　　　　『・・・・・・・・・鎌です』

　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　　　　　　　　

　　　　　　

　　　　　　　　　　　　『その女性の名前は？』　

　　　　　　　『山木　文子に化けた【かまいたち】です』

　　　　　　　　　　　　『ん？同じ姓じゃないか？』

　　　　　　　　 　　『はい・・・・・妻に化けてました』

　　  　車内は重苦しい空気になった、とにかく現場に急げ

　　　　　　　現場を見る事で事件の真相が分かる!!

　　  　村上巡査は山木の手を見ていた、異様に伸びた爪

　　　　　　　　　　　確か、計画殺人だとも言った山木　

　　　　　　　　　　　　殺した家族に申し訳ないと・・・・

　　　　　　　　　　　妻の両親への謝罪か？子供か？

　　　　　　　　　　　　　　　　現場に着いた

　　　　　

　　　　　　　　　　　そこは悲劇の惨状だった

　　小さな工具を入れる為の小屋の前に軽トラックはあった

　　　辺りには腐敗臭が漂い今朝の殺人だとは思えない

　　　　　 　『今朝の【かまいたち】はトラックの荷台です』

　　　　　　　　　　　 　今朝の【かまいたち】？

　　　　　　　　

　　　　　　　　　　

　　 　村上巡査、他の応援警官に恐ろしい光景が映った

　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　  　見た事もない戦慄に全員が絶句

　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　*：・'゜☆。.:*:・'続く゜'・:*:.。.:*:・'゜:*

　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　

　　　　　　

　　　　　

　　　　

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