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水上勉「弥陀の舞」

2018年11月12日 | ま行の作家

 

角川文庫
1972年 3月 初版発行
1978年10月 12版発行
解説・村松定孝
449頁

 

再読のはずですが記憶がありません…

 

時代は維新前後
越前の山あいの村にある紙漉き工場で働くくみは、美しいうえに早熟な身体つきで仕事場の男たちの眼をひき、2人の男と結ばれます
しかし、男たちは戦争などを理由にそれぞれくみの元から去ってしまいます
15歳の冬、その技量の高さを目に留めた紙漉き名人弥平の誘いを受け下で働くことになった彼女は益々腕を上げ、昔ながらの方法で良質の紙を漉きながら弥平の世話をし充実した日々を送っていました 

尼の身で父無し子である自分を生み、行方知れずとなっている母の面影を追うくみ
自分も2人の男のどちらの子かわからない女児を弥平の下で出産します
師匠であり父親代わりのような弥平は、子の父親やくみの母親の件でも奔走してくれますが芳しい結果は得られないまま時は流れていきます

 

明治30年
京都の霊頂山宝仙院門跡から法堂完成の祝い祝賀式招待の手紙が弥平の元に届きます
法堂の側面には、くみと弥平が漉いた越前和紙に描かれた『弥陀の舞』の大壁画が飾られていました
病の弥平に替わって祝賀式に列席したくみは一人の美しい尼さんに声をかけられます…

 

維新前後の農村民の生活、百姓一揆などを背景に、明治の世に生きた紙漉きに人生を捧げた女の一生は大河ドラマを観ているようでした
越前和紙職人として名を残したわけでもないくみは薄幸の女性と思いますが、読後感は決して悪いものではなく、むしろ温かなものが残りました
水上さんの丁寧で流麗な筆致で読ませてもらいました

名作です 


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