風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

紫陽花の鎌倉散策 index

2015-06-29 | 神奈川
◆ 鎌倉散策-1 ←日記へ
  紫陽花シーズンの6月に2度、鎌倉に行ってきました。
  1日目は両親と。疲れないよう、なるべく混まないルートを探します。
  八幡宮の池にはスッポンがいるようです。
   ○ prologue ○ アジサイ寺はスルー ○ 閻魔さまのお寺
   ○ 大イチョウのひこばえ ○ スッポン注意書 ○ 蓮の葉の上のお賽銭
   ○ 力が欲しいか ○ 大仏次郎と野尻抱影 ○ 半分お化粧 ○ 門前の干物
   ○ 静かなアジサイ寺 ○ 九品寺の幻の御朱印 ○ 材木座を愛する人々



◆ 鎌倉散策-2
  鎌倉で唯一という、お寺の精進料理をいただきました。
  住職さんと、古代ハスの話で盛り上がります。
  有名どころの混雑を避け、明るいうちにさっくり帰途につきました。
   ○ お寺の左右のお寺 ○ 浄土宗大本山 光明寺 ○ 庭園のハス
   ○ お寺の精進料理 ○ 蓮好き住職さん ○ 宇宙アジサイと古代ハス
   ○ 仏足石キャンデー(非売品) ○ 駅前は混雑再び ○ 駅の紫陽花アナウンス



◆ 大船散策-3
  一週間後、今度は大船に出かけました。
  高校生の頃からずっと気になっていた洞窟に入ってみたのです。
  中はとっても神秘的で、怖いくらい。ひんやり体験ができました。
   ○ 謎めいた場所 ○ いつもより大きな観音さま ○ バス停「洞窟前」
   ○ いよいよ洞窟の中へ ○ ヤンキー一家もやってきた ○ 命の火を分け合う
   ○ プロメテウス気分 ○ 瑜伽洞の意味 ○ インドへの道 ○ ランチも空海



◆ 鎌倉散策-4
  午後は、一週間前に混雑であきらめた北鎌倉のお寺に入ります。
  散り際ながら、十分に美しいアジサイを堪能しました。
  2年間がかりの鎌倉観音巡りが終了。無事結願できました~!
   ○ 様子を見ながらお寺の中へ ○ 明月院ブルー ○ そうだ 鎌倉、行こう。
   ○ いまどきの円覚寺 ○ 観音巡りの最終地 ○ 北条時宗つながり
   ○ 観音巡りコンプリート ○ 早めに帰り、雨をしのぐ ○ ふたたびLUMINE ○ 秘境ブーム到来?




紫陽花の鎌倉散策 2-(2)

2015-06-28 | 神奈川
2-1からの続きです。
「これからどこに行こうか?」
「JRで鎌倉に出る? モノレールで江の島に出る?」
大船って、いろんな観光地にふらっと行ける、いい場所にありますね。
隣駅の北鎌倉に向かうことにしました。

○ 様子を見ながらお寺の中へ

先週、両親と訪れたときには、駅から列が続くほど混んでいた北鎌倉ですが、この日はそこまで混んでおらず、気楽に歩けます。
明月院に行く途中にあるアジサイ。見事でした。





混雑の様子をうかがいながら、明月院に近づいていきます。



なんだかこの日は、並ばずして入れそうな雰囲気。
よーし、入っちゃえ~。



○ 明月院ブルー

6月最後の週末にもなると、アジサイはピークを超えてそろそろ終わり際になっていますが、それでも境内の至る所に咲き乱れています。
どれも、明月院ブルーと呼ばれる青い色です。



このお寺のアジサイを見にきたのは、高校生の頃。
人でびっしりと混んだ境内は、前の人に続いて、じりじりと少しずつ動いていかないといけなくて、花を愛でるどころではありませんでした。

でもこの日は、広い境内を自由に散策できるくらいは、すいていました。
仏像にたむけられる花もアジサイ。品があります。



こちらもそう。アジサイの花を持った静かな表情の仏像が、ロマンチックです。
ペンダントは参拝者がかけたのでしょう。



いくら混んでいても、やはりきれいなものはきれい。
盛りの時期を一週間ずらしたことで、散策を楽しめました。



「地層がすごーい!」とアコリンが声をあげます。
むむ、もしや地層ファン? 私も結構好きで、三浦半島の断層をチェックしに行ったりしているので、お仲間かと反応します。



断層に向けてカメラを構えていたのは、私たちだけでした。

○ そうだ 鎌倉、行こう。

御朱印をいただき、枯山水の庭園を眺め、月見窓をのぞきます。
京都・源光庵の「悟りの窓」のような素晴らしい眺めが、鎌倉にもあったなんて。



「そうだ 鎌倉、行こう。」
ここなら、京都にも対抗できますね。



枯山水の庭もありました。風流です。



住職さんの手作りなのか、いくつも餌箱があり、そこにリスや、ハトヤ、スズメがやってきていました。
かわいーい。このお寺ではウサギを何匹も買っているようで、小屋もありました。







境内には、アジサイを愛でる浴衣の女性も見かけます。とっても絵になるわ~。



すてきです。浴衣の女性はみんな荷物を持っていないので、近くに着替える場所が整っているのかしら。
男性版もあればいいのに。



アコリンが「京都の人は、鎌倉のことをどう思っているんだろう」と言いました。
考えてみましたが、よくわかりません。
「坂東モンの土地」と思われているのかしら。
武士の町なので雅さには欠けますが、ワビサビはあるし、大仏もあるので、京都と奈良を合わせてコンパクトにした古都っていう説明でいいかしら?
さらに海もあって、江の島が近いんです。いいでしょう、ふふふ。



○ いまどきの円覚寺

次は円覚寺に行きました。
北鎌倉に降りるたびに、このお寺の門を眺めながら前を通っています。
中に入るのは、ずいぶん久しぶり。
どんな境内だったか、覚えていないほどです。



入口に「拝観料はSuica・Pasmo対応」と書いてありました。
いまどきで、びっくり~!



去年、京都の建仁寺で、御朱印帳購入時にクレジットカードが使えることにカルチャーショックを受けましたが、それに次ぐ衝撃!!
受付でお財布を開けてコインを数える手間が省けるし、混雑も緩和されるため、一石二鳥なのでしょう。
便利だわ~。勢い余って、出したままのPasmoで、自販機からペットボトルを買いました。



奥に広い造りです。建長寺のよう。
本堂まで伽藍がまっすぐ並んでいる禅寺のつくり、そのままです。



山門の周りには、アジサイの花が咲いていました。
明月院ほどではありませんが、ここでも鑑賞できます。
鎌倉はアジサイに適した土壌らしく、たいていのところで、アジサイを愛でられるのです。



方丈にあがると、人々が池のある庭園を眺めてくつろいでいました。
外国人の参拝者もいました。

「外国人って、ZENが好きだよね。なぜだろう?」
「シンプルだからかなあ?」
境内の売店には「禅」とだけ書かれたTシャツも売られています。



円覚寺といえば、舎利殿。学校で習いましたね。
いつも公開されているわけではなく、普段は遠くから眺めるだけ。
画像のつき当たりの場所になります。



ご本尊は宝冠釈迦如来。冠をかぶった珍しいお釈迦様の像で、明るいお堂内に鎮座していました。

○ 観音巡りの最終地

ここまできたからには、目指したい場所があります。
それは、境内にある仏日庵。
鎌倉三十三観音巡りをしている私は、最後の二つのお寺がなかなか埋まらなずにいましたが、先程その一つ、明月院で御朱印をいただきました。
残る三十三番目の観音様は、円覚寺内の仏日庵のものなのです。

もしかして、これでコンプリートできちゃう?
ワクワクしてきます。
しかし、境内のあちこちには「百観音」と書かれた木看板が立っているので、(なになに?)とそのたびにキョロキョロ。

どうやら、円覚寺の境内だけで、百観音巡りができるのだそう。そんなにあるのー?
円覚寺には現在、19の塔頭があり、仏日庵はその一つです。
大きなお寺なんですね。



目指す仏日庵にたどり着きましたが、お堂ではなにやら講演会をしている様子。
男性がてきぱきと話す声が、マイクを通じて聞こえてきます。
ひとまず、前を素通りして、境内の一番奥のまで行ってお参りしました。
戻ってくると、ちょうど講演会が終わったところで、人々が帰るところでした。
年齢層は広けれど、女性がほとんど。

○ 北条時宗つながり

「どなたの講演会だったんですか?」とお坊さんに尋ねると、「和泉元彌さんです」と教えてもらいました。
「いずみもとや!」と2人で声を合わせます。
思いもよりませんでした。
禅寺と狂言は、どちらも和の世界のものではありますが、なんとなく意外な組みあわせ。

でも、そのわけがわかりました。
円覚寺は、北条時宗が立てたお寺で、ここ仏日庵は、時宗を祀るお寺。
和泉元彌は、かつて大河ドラマ『北条時宗』で主役を演じた人。
その縁から、彼と円覚寺とは、今でもつながりがあるようです。
なるほど~。

『風林火山』で上杉謙信役を演じたGacktが、新潟の謙信公祭に何度も呼ばれているという話は聞いていましたが、別の作品でも、役者とゆかりの地の縁は続いていたんですね。

見せていただいたチラシには、こう書かれていました。

 『北条時宗公×和泉流宗家』
  北鎌倉狂言の会
 とき:6月28日(日)14:00〜
ところ:北鎌倉・円覚寺山内 佛日庵本堂
 番組:狂言のおはなし
    狂言小舞
    狂言『盆山』『二人袴』

会の終了後、時宗(元彌)は、建物の横で待っていた黒塗りの車に乗って、サーッと帰って行きました。



○ 観音巡りコンプリート

お参りをして、御朱印をいただきました。
ここは鎌倉観音巡りの最後、第三十三番目になるので、あわせて「結願」印を押していただきました。
第一番目の杉本寺で「発願」印をいただいてから、約2年。
とうとう、33のお寺をコンプリートしたのです。
やったあーー!!
ここに辿り着くまでに、いろんな苦労があったのだわ。
じわじわと感動がこみ上げます。



アコリンも「おめでとう!」と言ってくれました。
彼女にはほかの巡礼にも、付き合ってもらったりしています。
そして彼女は、秋に白装束姿で四国八十八カ所巡りにチャレンジする予定だそう。がんばって~。

○ 早めに帰り、雨をしのぐ

スキップ気分で石段を降り、帰途につきました。
洞窟寺に、あじさい寺に、元彌、いえ北条時宗ゆかりのお寺。
どれも堪能できたので、帰りの電車が混む前に、横浜に戻ることにします。

電車に乗ると、急に空が暗くなりました。
アメッシュで見てみると、この辺りだけ、局地的に雨雲が密集しています。
そのうちに、雨粒が窓を伝いはじめました。
電車に乗っていて、ラッキー!



○ ふたたびLUMINE

横浜でお茶をすることにしました。
昼に大船LUMINEに入りましたが、夕方には横浜LUMINEに入ります。
大船LUMINEよりも通路が狭くて人がたくさん。
BARBARA a tableに入ると、南仏を基調としたような白くて広い店内。お客さんは、見事に女子ばかりでした。
おお~、壮観だわ~。男子はどこに行ったんだろう?



塩キャラメルクレープと紅茶を頼み、次の旅についてのおしゃべり。
それぞれに次に行く予定の旅の話や、今度一緒に出かける旅の予定など。
あれこれ話していると、時間がたつのを忘れます。

○ 秘境ブーム到来?

カフェを出てから、下の階の有隣堂でブックチェックをしました。
アコリンの本もちゃんと置かれています。
「今、秘境と日本刀が流行っているんですって」
確かに、いくつもの雑誌で、どちらの特集も組まれています。

この日入った洞窟も、秘境度数はかなり高かったです。
今回は、それほど人混みに遭うことなく、鎌倉の一番いい季節を愉しめた2日間となりました。


紫陽花の鎌倉散策 2-(1)

2015-06-28 | 神奈川

○ 謎めいた場所

その1から一週間後の休日。
友人アコリンとランチの予定でしたが、お互い一日フリーだとわかったので、近場に出かけることにしました。

「どこにしようか?」と2人で考えている時に、ふと思いつきます。
「私、田谷の洞窟に行ってみたい」

高1の時に、横浜・鎌倉のガイドブックで見つけて以来、ずっと気になっていました。
だって、都心からも海からも近い所に洞窟があるなんて、イメージじゃありませんものね。
周りに行ったという人がおらず、誰に話しても知らないと言われ、(マイナーな場所なのね)と思っているうちに、いつしか記憶の底に沈んでいました。
ここを思い出させるとは、さすがのアコリン(笑)。
行ってくれそうな人じゃないと、誘わないですしね。

この洞窟は、真言密教の修行道場なのだそう。
空海について調べていて、著書『高野山に伝わる お月さまの瞑想法』(HP)を出しているアコリンも興味を持ってくれて、一緒に行ってみることにしました。

横浜で待ち合わせて、大船に向かいます。
「あ、大船行きの電車だ、これに乗ろう」
ウキウキと乗ったら、電車は桜木町駅に着きました。
・・・あれ?
うっかり根岸線に乗ってしまいました。
確かに大船まで行けますが、海沿いをぐるっとまわっていくため、30分くらいかかります。
「しまった、東海道線か横須賀線に乗るんだったわ」
この辺が似た者同士の私たち。
次の関内で電車を降りて、いったん横浜に戻って、東海道線に乗り直します。
関内でも横浜でも、ちょうど電車が発車したところだったので、結局根岸線にそのまま乗って行った方が早く着いたような気も・・・。
まあ、先を急がない旅なので、いいのです。

○ いつもより大きな観音さま

大船に着きました。久しぶりに来ると、駅の大きさに驚きます。
「これは、出口を間違えると迷っちゃうね」

大船といえば観音様。この日も穏やかなお顔で町を見下ろしています。



駅員さんに聞いてたどりついたバス乗り場からは、大船観音がよりいっそう大きく見えました。
正面から向き合うと、あらためてすごい迫力ー。完全に見降ろされている…。
穏やかで清らかな雰囲気の観音様でさえ、巨大なのでちょっとすくみ上りそう。
これが、襲い掛かる50m級の超大型巨人だったら、確かに恐怖だわー、と『進撃の巨人』を連想します。
(見ている間に目が開いたらどうしよう)とドキドキしながら待つこと数分。
やってきたバスに乗り込みました。



駅を出るとすぐに緑が広がり、夏休みの帰省気分。
この日は30度越えする予報ですが、風が吹いているため、そう暑くはありません。

○ バス停「洞窟前」

バス停「洞窟前」で降りました。
気になる名前ですね~。用が無くても降りちゃいそう。
でも辺りは、畑が広がる見晴らしのいい光景。
「ここに洞窟があるって?ハハ、冗談でしょう」って言いたくなります。



矢印に従って向かった入り口駐車場では、派手なデザインの車が方向変換をしていました。
(ヤンキーの車みたい)と思って運転席を見ると、案の定、見るからにヤンキーっぽい人が、しかめっつらでハンドルを回していました。
「なぜこのお寺に来たんだろう?」と2人で不思議がります。



ここは真言宗大覚寺派の田谷山・定泉寺(じょうせんじ)。
境内に入ると、修行大師の像がありました。
空海好きのアコリンが「空海先生!」と近寄ります。
「2ショットを撮って~♡」「はいはい」
アコリンのウキウキぶりに、カップル写真を撮っているような気になります。修行中の像なのに!



お堂に貼られた千社札に目を吸い寄せられました。
元は白いはずのこのお札、長い時代を経てすっかり茶色くなっており、木札かと思うほどでした。



受付でろうそくを渡され、先に進みます。
途中のお堂には、羊の切り絵が飾られていました。
空海が高野山に広めたと言われる「吉祥宝来」でしょうか。



○ いよいよ洞窟の中へ

本堂をお参りしてから、いよいよ洞窟に向かいます。



「田谷の洞窟」というのは通称で、正式名は「瑜伽洞(ゆがどう)」。
定泉寺の境内にある修行道場です。
奥の山に、その入り口はありました。



洞窟の前に立つと、ひんやりとした空気が奥からやってきて、私たちを包み込みます。
中が全く見えません。お先真っ暗~。

入るのに勇気がいりましたが、ろうそくの炎をともして、細長い木の棒の先にさし、中に足を踏み入れました。
洞窟内は撮影禁止なので、ここでカメラをしまいます。
さあ、行きましょう。ちょっと怖いけど。



人が2人並んで歩くのがやっとの狭い道ですが、思ったよりも天井が高く、身をかがめずに普通に歩けます。
ただ、洞窟の中と外では、酸素の量が違うのか、炎が今にも消えてしまいそう。
洞窟内にはうす暗い明かりがともっており、ろうそくの火が無くても真っ暗になるわけではありませんが、それでも複雑に入り組んだ段差のある細道を歩いて行くのに、明かりがないと不安。
足元注意のため、手元の光が消えてしまわないかとハラハラしながら、一歩一歩先へ進んでいきました。

「行者道」と書かれた道を通って行きます。
細道に入りました。人一人しか通れない幅になり、時折天井も低くなり、身をかがめながら進みます。
外は暑いくらいだったのに、すっかり冷気に包まれています。
洞窟内は通年15~16度だそうで、涼を取るにはぴったりの場所です。暗いですけど。

一歩一歩踏みしめながら進んでいくと、まっすぐの通路からわき道にそれる細道がありました。
どうなっているのかまったくわかりませんが、どうやら入り組んでいる地下迷路。
トルコのカッパドキアの地下都市のようだな、と思います。
歩いて行くうちに、少し大きな丸いスペースにたどり着きました。
「秩父三十四観音」と書かれており、見上げると、丸いスペースの天井にぐるりと、仏像が彫りこまれていました。
これは本当にすごいわ。

細道は何本にも分かれ、順路が決まってはいるものの、この道でいいのかわからなくなっています。
ほとんど人の姿は見えませんが、時々歩いている上や下から声が聞こえてくるので、洞窟内にほかにも人がいるんだとわかります。
意外に人気があるみたい。そういえば入って行く時に、外国人とすれ違いました。
連れの日本人と英語で会話をしていたので、旅行者かもしれません。
こんなところを知っているなんて、マニアック~。

○ ヤンキー一家もやってきた

入り口で見かけたヤンキーは、私たちより少し遅れて入ってきたようです。
小さな子を連れて、家族で後ろから歩いてくるのが、遠目にちらっと見えました。
どうやらさっき、間違えて駐車したわけではなさそうです。

姿が見えないほど距離はあいていますが、ヤンキーが連れている幼稚園児くらいの小さな女の子2人が「こわいよ~~ぅ」と、か細い声をあげています。
私たちを追いかけるように後ろからずっと聞こえてくる、その声にあおられて、こちらまで怖さ倍増。
女の子たちよりも先に泣き出さないようにしなくちゃ!

「こんな暗いじめっとした場所に小さい子供を連れて来たら、怖がっちゃうよね」
「でも、入り口には子供料金も出ていたね。意外と子供たちがたくさんくるんじゃない?」
「怖いのが好きな子もいるからねー」
「ヤンキーより、意外とあの子のリクエストで来たのかも」
いつもは駆け回ってじっとしないだろう我が子が、こわがって自分から離れないということで、ヤンパパは喜んでいるかもしれません。

○ 命の火を分け合う

長く彫られた洞窟ですが、どこからか風が吹いてきて、気を付けていても、ふっとろうそくの小さな炎は消えてしまいます。
なんだか命の火のようで、ひやっとします。
そうすると、お互いに火を分け合います。

ただ、ほぼ同時に火が消えてしまった時がありました。
「困ったねえ。ヤンキーから火をもらう?」

ただ、ヤンキーファミリーが来るのを待っていたら、人一人しか通れない細道のため、今度はぞろぞろと行列になってしまいます。
探検を楽しむには、互いの程よい間隔も必要なのです。
どうしようかと言いながらたどり着いた先には、観音像がありました。
像の横のろうそくには、ろうそくの灯がともっています。

「この火を分けてもらおうかな。ダメじゃないよね…?」
これまで、祀られた仏像から火を分けてもらったことがないので、ちょっと及び腰ですが、でも火がなくて、困っている私たち。
仏様、ヤンキーじゃなくてあなたから火をいただきたいのです...!

○ プロメテウス気分

そうお願いしてから、ろうそくを近づけて、火をもらいました。
初めて、自分がプロメテウスになった気分を感じました。
神々から火を盗んで、未来永劫罰を受け続ける彼。うわ、似てる!
いえでも、仏様は慈悲があるから、きっと大丈夫!

炎を得てまた先に進みます。西国三十三観音、坂東三十三観音、四国八十八ヶ所を模した仏像も壁に彫られています。
これで、彫られた霊場全てを周ったのと同じ功徳が得られるのだとか。
やったあ。私たちは周ってみるだけなので、あんまりですが、これを実際にのみ一本で彫りこんだ修行者の努力を考えると、その人たちはそのくらい報われてもいい気がします。

○ 瑜伽洞の意味

阿字観場がありました。梵字で大きく「あ」の字が書かれています。
アコリンも私も、阿字観体験をしたことは何度もあるので、なぜここに文字があるのか、どうやって修行するのかを知っていますが、知らない人はおそらく「なんだこれ?」と思うことでしょう。
せっかくなので実行したいところですが、洞窟内の石はどこも冷たく湿っており、さすがにここにじかに座り込んで始めるのはためらわれました。

途中に座禅道場もありました。迫力のある五大明王の壁画の前で座禅を組むようです。
瞑想していたら、本当に不動明王が目の前にやってくる感覚を味わえることでしょう。

ここで思い出すのが、この洞窟の正式名「瑜伽洞」。
「ゆが」とはサンスクリットの yoga。 ヨガのことです。
瑜伽とはヨガの語源となった、密教の行のこと。
ここは、座禅や阿字観といったヨガを通じての修行道場で、今なお修行が行われているそうです。

洞窟内には、高野山奥の院もありました。本当の高野山奥の院にも、2人でお参りしたことを思い出しました。
まさか再び、横浜で奥ノ院参拝ができるとは。人生分かりません。
本家に劣らぬ、神秘的な場所でした。

鎌倉の長谷寺にもちょっとした洞窟がありますが、ここは完全に別世界。
戦争の時には、防空壕に使われたことでしょう。

○ インドへの道

E・M・フォースターの『インドへの道』という小説を思い出しました。
デヴィッド・リーン監督で、映画化もされています。
洞窟の中で何か不可思議なことが起こり、それが現実の秩序を壊していくといった、奥深い物語。
なにかが起こりそうな、謎をふんだんにはらんでいる場所として、洞窟が描かれています。
普通の生活の中では、そういったことはまず起こらないだろうと思いながら読んでいましたが、こういうことかもしれませんね~。
洞窟の中は、もうそれだけで非日常ですから。

中を十分堪能してから、出口の表示に沿って行くと、遠くに小さく光の点が見えたので、そちらの方へと向かっていきました。
洞窟の中は1キロあるそうですが、一歩一歩、小さな歩幅で踏みしめるように歩き、時折立ち止まって石像を眺めたりしていたため、ゆうに40分くらいは中にいたと思います。



洞窟内巡りの修行、終了。
外は、入った時と変わりなく、明るい太陽の光が降り注いでいます。
まぶしい~。周り中からいろんな音がする~。
元の世界へ戻ってきたんだわ。
すぐには感覚を戻せず、ぼんやりとしています。

ヤンキー一家も、私たちの少し後に外に出てきました。
洞窟内でずっと怖がっていた女の子たちは、すぐに元気になって、辺りを駆け回っています。
子供はタフだわー。
ヤンキーも、額の眉間もなくなり、心なしかスッキリした顔になっています。
見た目は迫力があるけれど、信心深いか洞窟好きかなんでしょう。
この人たちとは、意外と話が合いそうだわ。
ヤンキー一家は、また派手な車に乗り込み、ブルンブルンと爆音を立てて帰って行きました。

私たちは、行きに行者道ですれ違った外国人と一緒のバスに乗って、大船駅に戻りました。
バス停前の道路わきの直売所の梨がおいしそうでした。
残念ながら、休日はお休みのよう。
シャバに戻ったら、五感がよみがえってきて、なんだかおなかが空いてきちゃった。

○ ランチも空海

ドキドキの不思議体験を済ませた頃には、ちょうどお昼どきになっていたので、大船でランチにします。
町に詳しくないので、駅ビルルミネのレストラン街に行くことにしました。
「どんなお店があるのかな?」

麺屋空海というラーメン屋さんがありました。
「空海で検索すると、いつもヒットする店だわ」とアコリン。
せっかくなので、空海つながりで入ってみることにします。
「これも空海先生のお導きかも!」「そ、そうかな?」

名前からして、四国か和歌山が本店かと思いましたが、関東を中心に店舗を展開するラーメンショップなのだそう。(あれー)
ちょうどテーブル席が一つ空いており、待たずにするりと入れました。
これは空海先生のお導きかも!

店内にはKOOKAIというロゴもあります。
「フランスのブランドにもKOOKAIってあるけど、空海の響きと意味が気に入って、名前にしたんですって」と話します。
「さすが空海先生だわ」と満足げに頷くアコリンを見て、「名前の付け方が、TOTOみたいだね」と言おうとしていた口を、そっと閉じました。
[TOTOみたい:ロックバンドのTOTOは、メンバーが日本のトイレのTOTOを見てバンド名を決めたという話。←実際にはメンバーのジョークだそうです。信じてたのに~]



まろやかで癖のないスープが、おいしかったです。
塩はブルターニュ地方ゲランド産の自然塩を使用しているのだそう。
今やヨーロッパでも、日本のラーメンは大人気だそうですからね。
奥久慈産の煮卵も、甘みがありました。



ランチタイムで抹茶豆腐スイーツもつき、おなかいっぱいになったところで、「これから、どこに行こうか?」と2人で考えます。
行先を決めるって、とても楽しいひと時。
その2に続きます。

・アコリンのこの日のブログ「田谷の洞窟」


紫陽花の鎌倉散策 1-(2)

2015-06-20 | 神奈川
1-(1)からの続きです。

キラキラまぶしい材木座海岸を眺めてから後ろをふり向くと、大きなお寺の門がそびえ立っています。
ここが今回の目的地の光明寺

○ お寺の左右のお寺

その両脇にある光明寺系の蓮乗院と千手院を、まず先に参拝しました。
蓮乗院の前には、きれいなアジサイが咲いています。



お米の袋も積まれていました。「笠地蔵」が置いて行ったみたい。
あ、チーバくんがいる。



御朱印をお願いしている間、父はネコと戯れていました。
ネコがちょっと位置をずらしたため、撫でにくい角度から手を伸ばすことに。
とってもシャイな人みたい(笑)。



千手院の境内は、小ぢんまりとしていながらもいろいろな花が美しく咲き乱れていました。
もちろんアジサイもあります。



ねむの木が、ピンクの花を咲かせていました。



防犯カメラがなんだかキラキラしていました。
これ、デコってる!?お坊さんの遊び心かしら?



○ 浄土宗大本山 光明寺

両側のお寺を参拝してから、中央の光明寺の大門をくぐりました。
鎌倉の中心地からは少し離れた場所にあるため、このお寺を参拝したことはなかったという母。
実家が浄土宗なので、その大本山に来られたと感激しています。



門前のお言葉。
中島みゆきの「糸」の歌詞のようですね。
たーての糸はあーなたー♪



ご本尊は阿弥陀如来。17世紀の建築の、広々とした立派な本堂に入ってお参りしました。
ここをお参りするのは私は4回目。気がつけば結構参拝していました。
ゆったりと時が流れる場所で、いつもとても落ち着きます。



「失敗は貴重な経験」。はい、勇気づけられます!

○ 庭園のハス

本堂の横には小堀遠州作といわれる美しい記主庭園があり、板張りの廊下に座り込んでスケッチをしている人がいます。
日曜画家、気持ちよさそう。



大聖閣庭園には蓮の池があり、葉が生き生きと生い茂っています。
花も咲いています。





カメが日なたぼっこ中。池をのぞくと、何匹ものんびり泳いでいました。



ここもアジサイがきれいです。そしてすいています。



こちらは、大賀ハス。普通のハスとは少し離れた場所にありました。



寺務所の入り口から靴を履きかえて中に上がり、廊下を渡っていきます。
さっき池を眺めた木張りの廊下には「関係者以外立ち入り禁止」と書かれた場所がありましたが、今度はその区域内を歩いているので、ちょっと嬉しくなります。

まず、「記主の間」に案内していただきました。
「記主」とは、伏見天皇から「記主禅師」の諡号を賜った光明寺開山の然阿良忠のことを指すのだそうです。
ここには歴代の住職の像が飾られており、中央の法然像は国宝。
去年、東京国立博物館で開催された「日本国宝展」に出展されたとのことです。



○ お寺の精進料理

これから、このお寺で精進料理をいただきます。
禅宗のお寺が多い鎌倉ですが、精進料理を出すお寺はここだけなのだそう。
両親が前々から来たがっていたため、父の日に合わせて2人をご招待しました。

「記主の間」の隣の「はすの間」に通されると、そこには3人分の席が用意されていました。
花頭窓からは、小堀遠州作の庭と、そこに咲くアジサイの花がまっすぐ見えます。
とても静かです。



ぜいたくだわ~。
しかも、ふすま一枚隔てた隣には、国宝が鎮座しているんですよ。
国宝と隣り合わせの部屋で食事をする機会なんて、そうそうないでしょう。



特に何も言っていないのに、お寺の方は「父の日ですからね~」と、今回の会食の目的をわかっているよう。
先程は寺務所で、名乗る前にまず御朱印をお願いしたのに、「懐石の方ですか?」と聞かれたし、宗教に属する人は、見えない何かがわかるのでしょうか…?
お膳を用意してくれると、お寺の人は退席し、静かな部屋は私たちの貸切となりました。



お箸袋に「食前のことば」と「食後のことば」が書かれていました。
3人で「われここに~」と神妙に声に出して読んでから、「いただきまーす」。
「たぶん食後にはおなかいっぱいになって、覚えてないよね」と言った通り、食事が始まったら、最後に締めの言葉を言って膳を終えるということを、みんな忘れてしまいました。



久しぶりの精進料理。
いろいろと趣向を凝らしたものになっています。
2種類あるということで、両親と私のお膳を違うものにしてみました。
上は記主御膳。野菜の精進揚げ・胡麻豆腐・きゅうりの湯葉巻・香の物・はすの煮物・油揚げと葉物の煮物・黒豆・麩のしぐれ煮・麩まんじゅうのちまき・あんこ入り手毬麩などに、きのこご飯とさつま汁。
精進揚げと天婦羅の違いがよくわからない~。



下は蓮月御膳。いかの刺身にしか見えないものは、こんにゃく。
貝にしか見えないものもありました。
「これ、貝じゃない?」
「貝は肉扱いで、殺生ものになるんじゃないの?」
牛しぐれも、食べてみてもそれとしか思えません。

家族で舌と頭を悩ませて、わからなかったのであとでお寺の方に伺いました。
やはりどちらも違いました。しぐれ肉はこんにゃくだったようです。

どれも出汁が利いてよく味が染みています。
お皿の数が多く、カロリーは高くないはずなのに、すっかりおなかがいっぱいになりました。
父は「もう食べられないよー、ごちそうさまでした」と膳を離れ、畳に足を延ばしています。
そんな恥ずかしい父の1ショット。おなかをさすってる~。



そんな父をしり目に、母と私は、デザートのフルーツと光明寺饅頭もきちんといただきました。
だって別腹ですも~ん♪



○ 蓮好き住職さん

おいしくいただき、部屋を出て、すぐそばの大賀ハスに見入っていると、隣の建物から渡り廊下を通ってご年配の男性がやってきました。
もしや、住職さん?
手にはデジカメを持っています。
「この前、ここの大賀ハスが咲いたんですよ」
私たちが大賀ハスを熱心に見ていたからでしょうか。撮影した画像を見せて下さいました。



「あちらの普通のハスと違って、大賀ハスはなかなか花が咲かずにいたけれど、先代の住職が亡くなってちょうど一周忌の日に、咲いたんですよ」
感動的なお話です。仏教の世界では、ハスは特別な花。
さぞ、お寺の方々の心を打ったことでしょう。その話を聞いた私たちも、目がうるうるしました。



見せていただいた大賀ハスの花は、くっきりとしたピンク色の、とても美しい形の花でした。
2人で覗き込み、「きれい」と口にします。
母が「この画像、撮らせていただいたら?」と言いました。
「ん?」と思いましたが、ハスの画像をそのまま撮影させていただきました。
だから、デジカメのデータがいろいろ映っています(^_^;)



「この子が幼稚園児の時に、大賀ハスについての本を読んで聞かせてやったんです」と母は住職さんに話しました。
「覚えているわよ」と私。
古代ハスを咲かせることに尽力した大賀博士のことは、幼稚園の園長先生と同レベルで記憶しています。
多分そのイメージから、ハスが好きだったんだろうと思います。
住職さんと母は「大賀ハスを育てるのは、本当に大変なんですよね」と、うなずき合っていました。
花好き同士、話が合ったようです。

○ 宇宙アサガオと古代ハス

この前、別のお寺の住職さんから、宇宙アサガオの種を12粒分けてもらいましたが、全然発芽せず、困って実家に緊急避難させているところです。
それでも3つしか芽が出ずに気をもんでいますが、「古代のハスの種だって息を吹き返したんだから、宇宙に行った種の子孫だって、芽が出てくれるはずよね」と勇気づけられました。

「もうすぐここで鑑蓮会が催され、参加者みんなで蓮の花を愛でるんですよ」と教えていただきました。
「その時には、蓮の葉にお酒を受けて、茎から飲むんです」
まあ、なんて風流な。

また「境内に立派な内藤家の墓があり、年に一度、福島から内藤さんの子孫がやってきて、お墓の前で踊る」という話も。
普段、お墓の敷地は施錠されていますが、希望者には鍵を貸し出してくれるそうです。
鑑蓮会も内藤忌も、気になるわー。
どちらも、教えていただかなければ知らなかったイベントです。



○ 仏足石キャンデー(非売品)

帰り際に、お寺の方に「父の日記念ということで、こちらをどうぞ」と、小さな袋をいただきました。
「仏足石のべっこう飴です。非売品なんですよ」
おお、金色に光るもの仏足石!しかも非売品なんて、ありがたや~。
並べてみたら、Hang Ten(ハンテン)のロゴのようになりました。



お寺の方々にいろいろと良くしていただき、自然に囲まれた環境の中で、時間を忘れてゆっくりと過ごせました。
帰りはバスで、駅まで向かいます。

○ 駅の紫陽花アナウンス

鎌倉駅に着いたのは3時ごろ。
うねるような人ごみが待っていて、一気に現実に引き戻されます。
一年で一番鎌倉が混む時期だということを、完全に忘れていました。

鎌倉で、明月院のほかにアジサイで有名なお寺は、長谷寺と成就院。
成就院は、参道整備のためにアジサイは今年から3年間お休みに入ります。
それもあって、長谷寺はとても混んでいることでしょう。
去年この時期に行って、人の多さに気が遠くなりそうでした。

駅から放送が流れています。
「長谷寺のアジサイ散策路は、現在2時間半待ちです。今から向かっても、お寺は拝観できますが、アジサイ散策路は通れません」
ひええ~、今年も大勢人が訪れているのね。

万歩計を見ると、もう1万4千歩も歩いており、ちょっと足もだるくなっています。
「混雑は避けて、もう帰りましょう」と、早めに帰途につきました。
その判断でよかったと思います。この時期の夕方は帰りの人々で電車も大混雑。
まだ電車内は殺人的な混み具合ではなく、座って帰ることができました。

鎌倉は、アジサイに適した土壌らしく、この時期になるとHANAKOや湘南鎌倉Walkerといった情報誌で鎌倉特集が組まれます。
TVでもこぞって紹介されるため、いきおい週末には、人が大勢押し寄せることになります。

父の日に合わせてのプランを立てながら、(わざわざ、鎌倉が一年で一番混むときにしなくてもよかったかな)と思いました。
気候のいい秋にするんだったかな、と、行くまでは少し気が重かったのですが、混んでいるところを避けられたので、そう大変な思いもせずにすみました。

そして、アジサイが咲いているのは、よく知られた3つのお寺だけではありません。
道端にも普通に咲いており、どれも美しくて、十分満足できました。

観光地鎌倉でも、材木座地域はそんなに混んでいません。
むしろサーファーズパラダイスといった感じ。
両親に喜んでもらい、自分も満足できた、鎌倉とアジサイの日でした。

一週間後の2日目(その3)に続きます。

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後日、ここを読んだ母から連絡がありました。

     鎌倉の記事、読ませてもらいましたが、間違いがふたつありました。
     1つは、「蓮」と水蓮の違いが分かっていないということ。
     モネの絵にあるのは水蓮で、普通お寺にあるのは「蓮」です。
     仏様は蓮の葉に乗っていらっしゃる。
     水蓮の葉では、頼りなさすぎます。なぜなら葉っぱの切込みが深すぎるから…

ひ~、たしかに頭の中で蓮と水蓮の区別がきちんとついていませんでした!
するどい母の突っ込み!さすがは我が家の切り込み部隊長です。
「睡蓮」って書いたのは一カ所だけだったんですけどね~、ブツブツ。
母の目はごまかせませんでした。訂正しておきました。
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紫陽花の鎌倉散策 1-(1)

2015-06-20 | 神奈川
○ prologue

6月といえばアジサイの季節。
神奈川県内でアジサイのきれいな場所といったら、鎌倉です。
それだけに人が大勢やってきて、大混雑になるのもこの時期。
毎年、行こうかどうしようかと悩みますが、今年はこの月に2回、鎌倉を訪れた時の話です。

○ アジサイ寺はスルー

まず1回目は、両親と出かけました。
両親と鎌倉に行くのは、学生の頃に家族で鶴岡八幡宮に初詣に行って以来のこと。
正月三が日は激混みで、新年早々もみくちゃにされました。

9時過ぎに北鎌倉に到着。
ホームが小さいので、出るのに時間がかかります。
改札を出るまでの長ーい行列。
さらに改札を出てもすごい人。この時期は、観念しなくてはなりません。

駅を降りてすぐの円覚寺へ向かう人の流れと、明月院に続く行列ができています。
わー、大渋滞だわ。
朝からこんな状態なら、午後は列も動かなくなってしまいそう。
ハイシーズンなので(せっかく鎌倉に行くんだし、できればアジサイを見たいな)と思っていましたが、人の多さにあきらめて、先に進みました。

明月院には、高校生の時に母とアジサイを見に来ましたが、やっぱり混んで混んで、アジサイよりも人の波にもまれていた記憶の方が強いです。
なので、無理はしませーん。

今公開中の縁切り寺の映画、『駆込み女と駆出し男』の舞台となった東慶寺も、話題の場所としてやっぱり大混雑。
行こうと計画していたところが、ことごとく混んでいます。
予想はしていたので、ここも通り過ぎて、サクサク先に進みます。

これが京都だったら、(なかなか来れないからなんとしても行きたい)とがんばって列に並んでしまうところですが、家から日帰りで行ける鎌倉は(また来ればいいし)と、あっさり予定を変えられるのがいいところ。
近場の強みですね。



○ 閻魔さまのお寺

円応寺の前で、立ち止まりました。
閻魔大王のいるお寺です。
父は行ったことがあるそうですが、母と私はまだありません。



入ってみると、ほかに参拝者はいませんでした。
お堂の中には大きな閻魔様が鎮座しています。
大きくて迫力はあるけれど、怖いようなこわくないような、うーん?
益子の西明寺の笑い閻魔様を思い出しました。
おそろしいイメージの閻魔様ですが、案外ひょうきんな愛すべきキャラなのかも!



十三仏参りをしているため、専用の御朱印帳に書いていただきます。
少しでしたが、境内にはアジサイがきれいに咲いていました。



○ 大イチョウのひこばえ

円応寺を出てトンネルをくぐり、一本道が下り坂に変わると、もう八幡宮近く。
北鎌倉からの道すがら、明月院や建長寺を参拝してのんびり歩き、12時くらいに八幡宮に到着するという予定でしたが、そんなにお寺を参拝せずにきたため、まだ10時前です。
早く着き過ぎちゃったわ。

八幡宮といえばイチョウ。
絵馬も、イチョウの葉の形をしています。



両親とも、境内の大イチョウが倒れてから見ていないと言います。
「つまり、かれこれ7、8年来ていないことになるね」
ええっ?
ここのところ来ることが多い私は「じゃあ案内係にならなくちゃ!」とがぜん張り切り出しましたが、両親はその7、8年前まで、せっせと鎌倉に通ってお寺参りをし、ほぼ全ての寺社を網羅したため、満足して来なくなったのだそう。
聞けば、鎌倉三十三観音巡りをしている私よりも、ずっと多くのお寺を巡っていました。
むむ、これは難敵です。

ひこばえとは、小さなイチョウの若芽のことを言いますが、もう結構育っていて、芽とは言えないくらいに成長していました。
このままずんずん大きくなあれ。



倒れた大イチョウの木片を使ったお守りがまだあるかと、巫女さんに尋ねたら「もう配布は終わりました」とのことでした。
大イチョウの木片がなくなったのでしょう。

ちゃっかり、ほかの木材を使って売り出すこともできなくはないですが、そこは信用問題。
ベルリンの壁は(もう信じるしかない)と思って買いましたが、天下に名のとどろく神社では、ごまかしはしないでしょう。

大イチョウの幹を縦横無尽に駆けまわっていたたくさんのリスたちのことを思います。
「棲みついていたリスたちのねぐらがなくなったから、かわいそうで」と言うと、「生い茂った山々がすぐ後ろにあるから、いくらでも見つけられるわよ」一笑に付されました。
神殿の奥には、たしかにこんもりとした山がありました。



日がいいのでしょう。舞殿には三々九度の支度が整えられています。
もうすぐ結婚式が行われるようです。

社殿の横には、七夕の笹飾りがありました。着物の女の子が、かわいい。



○ スッポン注意書

「そろそろ睡蓮の季節だから、境内の池を見たいわ」との母のリクエストで、参道を歩いて正面入口の方へ行きます。
参道を挟んで、源氏池と平家池、二つの池があります。
まずは源氏池の方へ。

「スッポン・亀に注意」という表示がありました。
初めて見ました。亀はわかるけれど、スッポン!
まさに食うか食われるか!(笑)



○ 蓮の葉の上のお賽銭

蓮の花のつぼみが膨らんでいました。そろそろきれいな華が咲くのでしょう。
源氏池はピンクの花。



葉っぱの上にお賽銭がたくさん乗っていて、びっくりしました。
たしかに、コロボックルが傘にするほど丈夫な蓮の葉ですが、葉が傾いたらお賽銭は水中に落ちちゃう~。



○ 力が欲しいか

池の中の旗揚げ弁天をお参りします。
カメラ小僧たちが真剣にフォーカスしていたのは…鳩さん。
神主さんも、通りすがりについ見守ります。



神社の白鳩が3羽、じっとしていました。
こちらを向いてつぶらな瞳を向けています。
カメラを向けても、近寄っても、逃げません。
ここでは神の使いとして大切にされている鳩。
3羽とも白い鳩なので、一層聖なる感じがします。
「力が欲しいか…?」って言ってるの?



参道を横切って、平家池にも行きました。こちらの睡蓮は白。
勝った方と負けた方で紅白に分けているんでしょう。
これは、きちんと説明しないと外国人には通じないでしょうね。



参道入り口にある、私が好きな松の木を、ちょっと照れながら両親に紹介します。
恋人かーい(笑)。



アルミでできた大灯篭が、日光を受けて驚くくらいにピカーッと反射していました。

○ 大仏次郎と野尻抱影

段蔓はすっかり工事中で、歩けなかったので、細道を歩くことにします。
段蔓をはさんで小町通りとは逆側の道を。



住宅街の中を抜けていくようなところで、母が立ち止まりました。
立派な柵に囲まれたお屋敷があります。
「ここが大仏次郎の親戚(甥っこさん?)がやっているというカフェよ」
その名も、大仏カフェならぬ大佛茶廊 (おさらぎさろう)
野尻抱影は、星の本などを書いた天文学者で、私も子供の頃から読みなじんでいます。
「大仏次郎の本名は、なんだったかしら。野尻なんとかさんだったけど」と母。



すると、人力車が3台続けてやってきて、それぞれ少し足を停めて「ここは野尻はるひこさんのカフェです」と言って、去って行きました。
3回繰り返し言われたら、もう忘れませんよ。はるひこさんですね。
後で調べてみると、野尻清彦(はるひこ)とは大仏次郎の本名でした。
大仏次郎の邸宅跡だという意味だったのかしら。



辺りは文士が好むようなシックな雰囲気です。

○ 半分お化粧

車の通らない曲がりくねった細道を歩きながら、母に半夏生の花を教えてもらいます。
「漢字が違うけど、半分お化粧しているみたいだから半夏生(はんげしょう)って覚えるのよ」
なるほど、すんなり覚えました。
半分お化粧って、人だと(ええっ?途中?)と身構えてしまいますが、花だとちょうどいいさりげなさです。



鎌倉駅に近づいてきます。そこからバスに乗るつもりでしたが、天気もいいし、時間もたっぷりあるので、そのまま歩き続けることにしました。

正覚寺の前を通ります。ここの仁王門から仁王様がいなくなってしまいました。
この日もまだ戻っていません。あんなに大きな仁王さま2体、いったいどこにいるんでしょう?

全員、正覚寺は参拝済みなので、向かいの妙本寺に向かいました。

○ 門前の干物

「わ、魚の開きを干してる!」
「お寺なのに殺生!」
母と二人で声をあげます。
見たとたんに(これっていいの?)と思いましたが、ここはお寺の前なので、ぎりぎりセーフなんでしょう。
道の反対側に、魚屋さんがありました。



○ 静かなアジサイ寺

広い敷地の緑多い妙本寺には、風が通る涼しい木陰ができています。





アジサイがきれいですが、知られていないのか、ほとんど人がおらず、すてきな環境を独り占めできました。







本堂に猫がいて、くつろいでいます。
「最近ノラちゃんを見てなかったけど、生ネコだわ」と母。
生ネコって~。生チョコじゃないんだから~(笑)。



御朱印をいただきに寺務所に行くと、入り口にあじさいの一輪挿しが飾られており、風流でした。



○ 九品寺の幻の御朱印

参拝を終えて、車道に戻り、てくてく歩いて行きます。
道の途中にある九品寺もお参りします。ここの境内にある不動像と狛犬が好きなのです。
狛犬はお賽銭をくわえていました。

父も私もすでに御朱印をいただいていますが、母はまだなので、参拝後に寺務所に行くと、「本日は一日法事のため、御朱印はお休みします」との張り紙がありました。
母は残念がっていますが、前に来た時、一緒に御朱印の列に並んでいた人が「ここはなかなか御朱印をいただけなくて、これが数回目のチャレンジになるんですよ」と言っていました。
だから、いただきにくいお寺なのかも。
その時にも住職さんは不在で、息子と思われる中学生風の男の子が応対してくれ、明らかにその子が書いた子供の字の御朱印を渡されたのでした。



○ 材木座を愛する人々

この辺りにはスーパーがないのか、昔ながらの個人商店が多く並んでいます。
中でも魚屋が多いように思います。海が近いからでしょう。
店の名前は「材木座医院」「材木座歯科」など、地名の「材木座」をつけたものが目立ちます。
この辺りの人たちは、土地に誇りを持っているのね。
銀座も材木座も地名ですが、素材も土地の雰囲気もかなり違うものだなあとぼんやり考えます。



道が海岸に近づいてきたので、海に出てみました。
風があり、セイリングボートがたくさん海に出ています。
左手に見えるパームツリーの辺りは逗子マリーナでしょう。
リビエラっぽいわ~。



サーフボードを横づけした自転車に乗った、日焼けした水着姿のサーファーたちが通って行きます。
お寺巡りをしているのに、この辺りだけ違って、キラキラしたビーチの世界とクロスしているみたい。

1-(2)に続きます。