菓子店「柳月」が何処にあるかを検索してみると、自宅から一番近いお店が、南区川沿にある事が分かった。家から徒歩で片道一時間の場所である。
「毎日が日曜日」の楽隠居の身の私。
こんな楽な生活ばかりしていて良いのか。バチが当たるんじゃないか。いや、楽ばかりしていたら、人間ダメになる。
元来ものぐさ人間の私みたいな人には、時折試練を与えなければいけないのだ。
今回のミッションは、「片道一時間のお店へ徒歩で行って用を足し、徒歩で帰って来る」こと。2時間の行軍。試練と言うにはちょっと甘すぎるけど、前期高齢者にとっては程よい試練ではないか。
5月8日午前10時30分すぎ、外気温を確認すると6度だった。
寒そうだなと思い、厚手の生地のパーカーを着た。それですっかり安心して、上着は布一枚のペラペラな物を着て家を出た。
子供の頃に学校帰りで見た歩道橋のイメージカラーは、肌色(うすだいだい)だったような気がする。白い色のこの歩道橋は、近未来的な感じがしてお洒落だ。
歩道橋は英語でpedestrian bridgeだが、これはpedestrian deck(歩行者専用通路)になっている。
上りが緩やかになるように、階段部分の傾斜角度が非常に緩やかだ。その分階段部分がとても長い。
平成7年というと、1995年には出来ていたのか!30年近く前だ。
自転車を押しながら上るのに、とても楽そうな傾斜だ。これなら老いも若きも、ベビーカーから自転車まで、使い勝手が良さそうだ。歩道橋も進化したものだ。利用頻度は他の歩道橋より高いのでは無いかと思われた。
風の強い日だった。思った以上に寒い。
平日の午前中は私も含めて、歩いている人はほぼ高齢者。周りを見回すと、皆真冬の装備。冬のコートやジャンバーに毛糸の帽子。
先ず、フリマで売れたエプロンをコンビニで発送した後、早速柳月へ向け歩き出した。
往復2時間。帰宅は午後0時半になる。少し行程を早めようと考え、インターバルで走ろうと思った。
準備運動もせずに普段着で、ウォーキングシューズのまま、ほんの軽く30歩走って30歩歩く。これを2回繰り返した所で、ふくらはぎに痛みが走った。気温が低かったのもまずかったか…。
あー、こりゃダメだ。計画中止だな。ふくらはぎをもんだりしながら、慎重に足をつきながら途中まで引き返したが、そのうちに痛みが消えた。やっぱり、行こう、行かなきゃ。私はきびすを返して計画を続行した。
南方向へ続く道は、真駒内駐屯地の裏側の道。柵で囲われた防衛省の敷地が延々と続く。
昨日は1日中雨だったせいか、歩道の上にはところどころにミミズ。
歩き始めて20分ほど経った頃、やたらとカラスの鳴き声が聞こえる。傍らの草むらに目をやると、2羽のカラスが見えた。
鳴いているカラスは、両の翼を震わせ、甘えている様だ。見るからに親からエサをねだるヒナのポーズ。
母ガラスと思われるもう一羽は、まだ若そうだった。
エサをねだるカラスは母より一回りも大きい体をしていた。男の子だろうか。
立ち止まってしばらく観察していると、子ガラスは足元でミミズを押さえ、何度かくちばしでくわえてゴムみたいに引っ張るものの、食べる事が出来ずにいた。そのうちにあきらめて、再び翼を細かく震わせて母に向かって鳴くのである。
「なあ、母ちゃん何か食べさせておくれよ、なあ」
そんな事を言い続けているように感じられた。図体ばかりデカい甘えん坊だ。
母ガラスは動じること無くすまし顔。無視して、息子の自立をうながしている。あんなに大きく育てたのだから、セッセとエサを運んだ良いお母さんなのだろう。
子ガラスに「早く大人になれよ!」とエールを送り、その場を離れた。
雲が多かったが、時折日もさした。
新緑の藻岩山が美しくて、思わず見とれた。
ここまで来れば、もう目的地は近い。グーグルの示す通り、片道ほぼ一時間。人の歩く速さは時速4キロというから、4キロくらいは歩いたんだなと思う。
程なくcoopの中にある柳月に到着。店舗の若くてかわいい女の子の胸には「研修中」のバッヂ。ボンヌ12個入りを母の住所へ発送を依頼した。
coop店内には、誰でも自由に弾けるピアノが置いてあった。
私が発送の手続きをしていると、不意に鍵盤の音を確かめる様なポロンポロンと言う音が聞こえ、続いてフライ・ミー・トゥー・ザ・ムーンがジャズ風にアレンジされて流れた。プロ並みの腕前である。
どんな人が弾いているのかしらと、ピアノの演奏者をちらりと見た。
帽子を被った私と同年輩と思われるスラリと長身の男性だった。素敵だなと思った。
私がcoopを出る頃には、別の曲が華麗な音色を響かせていた。ピアノが弾けるって良いなとつくづく思った。
さて本日のミッションを終え、後はノンビリ帰るだけなのだが、その時点でもう、足と腰にかなりの疲労を感じていた。そう、これでいいのだ。試練なのだから、辛さを感じなきゃ。
coopの近くに藻岩高等学校がある。あの北海道が生んだ大スター大泉洋や杉村太蔵が通った高校だ。
その高校の前に横断歩道橋がある。
この道は夫の車に乗って何度も通っているのに、今日初めて見たような気がした。
子供の頃に学校帰りで見た歩道橋のイメージカラーは、肌色(うすだいだい)だったような気がする。白い色のこの歩道橋は、近未来的な感じがしてお洒落だ。
歩道橋は英語でpedestrian bridgeだが、これはpedestrian deck(歩行者専用通路)になっている。
上りが緩やかになるように、階段部分の傾斜角度が非常に緩やかだ。その分階段部分がとても長い。
平成7年というと、1995年には出来ていたのか!30年近く前だ。
自転車を押しながら上るのに、とても楽そうな傾斜だ。これなら老いも若きも、ベビーカーから自転車まで、使い勝手が良さそうだ。歩道橋も進化したものだ。利用頻度は他の歩道橋より高いのでは無いかと思われた。
歩道橋を過ぎ、角の大型スーパーでちょっと買い物をした。エコバッグに入ったわずかばかりの食品類が、やけに腰にずしりと来る。
試練がジワジワと厳しさを増し始めた。
続く。