政治、日常なんでもチャンプルー

バスクにビスカヤ:スペイン語ではVで始まるが他言語ではBで始まる件

先週の世界ふしぎ発見の舞台になったスペインのバスク地方。

「バスク」はスペイン語で「Vasco(バスコ)」、英語とフランス語では「Basque」。
バスク地方の都市「ビスカヤ」はスペイン語で「Vizcaya」、英語とフランス語では「Biscay」。
「バスク」や「ビスカヤ」はスペイン語では
頭文字がVであるのに対し、外国語の多くはBになっている点が興味深い。
スペイン語ではVはBと同じ発音をする。スペイン語でVとなる所が他言語でBasque、BiscayなどとBに変わったのはスペイン語の発音を耳で聞いてなぞったためだろう。

バスク語(バスク人による自称)で「バスク人」および「バスク語」は「euskara(エウスカラ)」と呼ぶ。ラテン語ではそれがなまって「Vasco」となった。なので、もともとはVである。
一方、ビスカヤ(Vizcaya)はバスク語では「Bizkaia(ビスカイア)」で、バスク語で「低い尾根」を意味するbizkarに由来する。スペイン語でVで書かれるようになったのは、おそらく「Vasco
=バスク」と語感が似ているため影響されたものだと思われる。

他にも例を挙げると、「バニラ」は英語でvanilla、フランス語でvanille、イタリア語でvaniglia、スペイン語でvainilla(バイニーリャ/バイニージャ)というふうにVで始まるが、ポルトガル語ではbaunilha(バウニーリャ)とBで書かれる。ポルトガル語にはスペイン語経由で音を聞いて伝わったためである。

以上、語頭の例を挙げたが、語中ではどうかというと、スペイン語のBまたはVの発音には異音があって、語頭と[m]の後ではB、Vともに有声両唇破裂音[b]、[m]の後以外の語中ではB、Vともに有声両唇摩擦音[β](日本語の「ふ」の子音が有声化した音)で発音する。この[β]が摩擦音のため外国人には[v]に近く聞こえるようで、語頭の場合とは逆に、スペイン語でBで書かれる所が他言語でVに変わることがよくある。

キューバの首都ハバナはスペイン語で「La Habana(ラ・アバナ)」だが、英語をはじめ他の言語では「Havana」と表記することが多い。
ハバナで生まれた音楽の「ハバネラ(habanera)」は英語でも「habanera」と言う。スペイン語ではHを発音しないので「アバネラ」と発音する。英語ではHを発音したりしなかったりする。英語では地名はHavanaと表記するので、それに引かれて「havanera」と書かれることもある。

「Córdoba(コルドバ)」は他言語では「Cordova」と表記することも多い。英語では現在はスペイン語に合わせて「Córdoba」と呼ぶのが普通だが、昔は「Cordova」をよく使っていたらしい。

英語で「~に精通した」「~に詳しい」、「わかった」という意味のスラング「savvy」はスペイン語で「知る」という動詞「saber」の直説法三人称単数現在形の「sabe」に由来する。

スペイン語でBとVは同じ発音をするため(Bの方がVより頻度が高いということもあって)、他言語からスペイン語に取り入れる際、VをBに置き換える傾向もある。
「ネクタイ」はスペイン語でcorbata、イタリア語ではcravatta、フランス語ではcravate。ネクタイの発祥地はクロアチアで、語源はクロアチア語で「クロアチア人」を意味するhrvatにさかのぼる。

「馬」はスペイン語でcaballo、イタリア語でcavallo、フランス語でcheval、ポルトガル語でcavalo。もととなったラテン語ではcaballusだが、スペイン語以外の多くのラテン系の言語では音韻変化によってBがVに変わった。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「言語・語学」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事