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豚とイノシシにまつわるエトセトラ

最近あった「オリンピッグ騒動」のニュースをきっかけに、豚にまつわるあれこれ、豚の祖先でもあったイノシシとの関係も含めて、思いをはせてみました。


豚はイノシシ科の動物。豚の祖先はイノシシで、イノシシが家畜化された(家畜化するために改良された)のが豚である。

日本語では「豚」と「イノシシ」ははっきり区別していて、イノシシのことを豚と言ったり豚のことをイノシシと言うことはない。しかし、外国ではイノシシも豚の一種という捉え方をしている所も少なくない。日本で例えば牛は家畜でも野生でも「牛」の仲間と捉えられる(野生の牛を特に家畜の牛と区別して「野牛(やぎゅう、のうし)」という)のと同じ感じだろう。

中国語では豚のことを「猪(ヂュー)」と言う。古代はもともと「イノシシ」を「猪」と呼んだが、家畜化されてからも「猪」という呼び名が引き継がれ、現代は単に「猪」というと豚を意味し、イノシシは「野猪(イェーヂュー)」と呼ばれる。豚を野生のイノシシと特に区別して「家猪(ヂアヂュー)」と呼ぶこともある。

韓国語で豚は「돼지(トェヂ)」、イノシシは「멧돼지(メットェヂ)」(直訳すると「山豚」)。

英語では「豚」を意味する単語はいくつかある。
pig(ピッグ) : 一般的で最もよく使われる。どちらかというとピンク色でかわいいというイメージが強い。
hog(ホッグ) : 大人の豚。
swine(スワイン) : 総称的でイノシシも含まれる。形式ばった語でことわざなどでよく使われる。「豚インフルエンザ」は「swine influenza」。
イノシシは「wild boar(ワイルド・ボア)」が正式で一般的。単に「boar」とも言うが、「boar」には「イノシシ(wild boar)」と「雄豚(male pig, male hog)」両方の意味がある。イノシシを「wild swine」、「wild pig」、「wild hog」と言うこともある。
豚はdomestic(家畜の)を付けて「domestic pig」と言うこともある。英語も日本語ほどはっきりと単語が分かれていないようだ。
イノシシの学名は「Sus scrofa」、ブタの学名は「Sus scrofa domesticus」(イノシシと同種と考えた場合)または「Sus domesticus」(イノシシと別の種と考えた場合)。

日本ではイノシシは日本にもともと生息していた。一方、豚は中国から持ってこられた。そのため、全く別のものとして捉えられた。

豚を野生のイノシシと交配させたものは「イノブタ」と呼ばれる。イノブタは英語で「boar-pig hybrid」。広く「雑種」や「混合」を意味する英語の「hybrid(ハイブリッド)」は、「イノブタ」を意味するギリシャ語に由来する。

ツチブタはブタに似ているため「ブタ」と付くが、野生であり、ツチブタ科でブタやイノシシとは別系統の種である。

英語の「pork(ポーク)」(豚肉)はもっぱら肉を指すが、それと語源を同じくするフランス語の「porc(ポルク)」やイタリア語の「porco(ポルコ)」は豚そのものを指す。英語の特徴として、動物を表すのと肉を表すのとで別の単語を使い、肉を指す方はフランス語に由来するという点がある。
イタリア語では日本語と同じように豚とイノシシをはっきり区別していて、豚は「porco」または「maiale(マヤーレ)」、イノシシは「cinghiale(チンギャーレ)」。


豚の鳴き声は、日本語では「ブーブー」、英語では「oink-oink(オインクオインク)」、中国語では「哼哼(ホンホン)」。
また、日本語の「ブヒーブヒー」は「ブーブー」より激しく鳴くようすを表す。
ちなみに、イノシシの鳴き声は豚の鳴き声と似ていて、ほぼ同じように聞こえるらしい。

古代人が動物の名前を最初に決める際、鳴き声をもとにしていることが少なくない。

日本語の「ぶた」は「ブーブー」という鳴き声と「太い」が合わさってできた言葉だと考えられている。
「いのしし」は歴史的仮名遣いでは「ゐのしし」で、「ゐ」は鳴き声から、「しし」は肉の意。「ゐ」は古くは「ウィ(wi)」と発音していた。古代の日本人にはイノシシの鳴き声は「ゐゐ(ウィウィ)」と聞こえたらしい。
古代の日本にもともといたイノシシの鳴き声は「ゐゐ(ウィウィ)」というふうに聞いて、のちに中国から豚が入ってきた時はその鳴き声を「ブーブー」というふうに聞いたんだね。

英語のpig、hog(以上「豚」)、swine(主として「豚」)、boar(「イノシシ」、時に「雄豚」)も鳴き声から来ているような感じもする。
「Hog」は中国語の豚の鳴き声「哼(heng/ホン)」に似てる。「Boar」は日本語の「ブー」に似てる。
「Swine(スワイン)」は昔は「スウィーン」と発音した。昔の発音の方がより鳴き声っぽく感じる。
英語で豚の鳴き声は普通「oink-oink」だが、主に子豚の鳴き声として「wee-wee(ウィーウィー)」と表現されることもあり、これは古代日本語のイノシシの鳴き声「ゐゐ」と似ている。


イスラム教やユダヤ教で豚肉を食べることがタブーとされていることは知られているが、イノシシ肉もタブーである。

『西遊記』に登場する「猪八戒」も豚である(中国語で「猪」は豚を意味する)。日本では訳した人によって猪八戒を豚としているのもあれば、イノシシとしているのもある。ただ、やはり日本では「猪」という漢字からイノシシというイメージが付きまとうようで、イノシシとして扱われることもしばしばらしい。


豚の貯金箱はイギリスが発祥。「Pygg(ピッグ)」という上質な粘土を使って貯金箱を作ってくれと注文を受けた職人が、発音が同じ「pig(豚)」と勘違いして、豚の形をした貯金箱を作ってしまった。しかし、これが大反響を呼び、のちに世界に広まった(ただし、イスラム圏では豚が不浄とされているため、豚の貯金箱はあまり見られない)。
また韓国では、韓国語で「お金」のことを「돈(トン)」と言い、「돈」は「豚」という漢字の音読みでもあるため、豚はお金に通じる縁起の良いものとされている。そのため、イギリス発祥である豚の貯金箱も韓国で特に好まれる。

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