映画とライフデザイン

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映画「湖の女たち」 吉田修一&大森立嗣

2024-05-18 10:10:40 | 映画(日本 2019年以降主演女性)
映画「湖の女たち」を映画館で観てきました。


2007年のある時から、観た映画の題名をずっと記録している。ちょうど17年で3333本となった。3が並んだキリのいい数字の記念すべき作品になる。

映画「湖の女たち」は、大森立嗣監督が,吉田修一の原作を映画化した新作である。この2人は自分が好きな名作「さよなら渓谷」でもコンビを組んでいて楽しみにしていた。関西の湖のほとりにある介護施設で起きた事件の犯人探しに動く刑事と施設で介護職に就く人たちとのやりとりを中心にストーリーが進む。スタートから夜明けの湖の映像が不気味である。ムードは決して明るくない。

湖畔にある介護施設で100歳の寝たきり老人が亡くなった。事件の捜査にあたった西湖署の若手刑事の濱中圭介(福士蒼汰)とベテランの伊佐美(浅野忠信)が死因を確認すると、故意に人工呼吸装置が外されていることがわかる。これは殺人だ。

圭介は伊佐美から強い指示を受けて施設の担当介護士松本(財前直見)に執拗な取り調べを行なう。圭介は取り調べで出会った挙動不審な介護士佳代(松本まりか)に接近していく。


一方、事件を追う週刊誌の女性記者池田(福地桃子)は、この殺人事件と署が捜査を中断した薬害事件に関係があることを突き止めていく。調べていくと亡くなった老人が隠蔽してきた恐るべき真実に絡むことがわかる。

単なる老人の殺人にとどまらない重層構造のストーリーである。
取り扱う題材が多い。独立して映画ができるいくつもの題材を一つの映画に盛り込む。

ただ,主役2人の偏愛の意味は最後までよくわからない。

吉田修一、大森立嗣コンビの「さよなら渓谷」はじんわりと心に沁みる作品だった。真木よう子も大西信満もよかった。同じようなムードだけど、ただ長いだけになっているシーンも多かった。余韻ではなく無駄な時間が多い気がする。

松本まりかには偏愛も絡んだむずかしい作品だった。水中のシーンも含めて体当たり演技で頑張った。浅野忠信は性格の悪いパワハラ刑事役で福士のアタマを何度もこづく。刑事の熟練度で対比をみせるのは古典的刑事映画の手法だ。


題材が多い。
⒈介護施設において看護師と比較して地位の低い介護士
介護施設内でも序列があり、看護士より介護士の方が給与が低い。老人たちも看護士が薬を飲めと言えば飲むが、介護士の言うことは聞かない。犯人の疑いも介護士に向けられる。

⒉自白を強要する刑事の執拗な取り調べ
ベテラン刑事(浅野忠信)のパワハラがひどい。でも、警察署幹部は目をつぶる。財前直見演じる介護士はたぶん違うと若手が言っても、ベテラン刑事は他にありえないと若手刑事から無理やり自白させようとする。ひと昔前は常識と思われた自白の強要で、介護士の目の前に押印署名用の書類を置いて書けと強迫する。介護士が交通事故で負傷した後も繰り返す。


⒊第二次大戦中の731部隊の人体実験と薬害問題
ベテラン刑事は死者が50人も出た薬害問題の捜査に以前あたっていた。ところが、薬害問題を揉み消そうとする政治家からの圧力で捜査が中断する。今回は、週刊誌記者池田が問題の匂いを嗅ぎつける。そして、今回亡くなった故人の妻(なんと三田佳子久々見た)からも取材もしていくのだ。戦前あった故人の秘密があらわになる。戦後間もない帝銀事件の真犯人は平沢某ではなく、731部隊関係だと言われてきた。ずいぶんと壮大な話に転化する。


⒋優生思想
相模原の障がい者施設で起きた大量殺人事件とそれを題材にした映画「月」では、ヒトラー並みの優生思想で、生きている意味のないとされる障がい者が大量に殺される。それらに発想を得たのであろうか?同じように「生産性のない人は不要」と思う人たちが出てくる。それは意外な人物だった。

ネタバレに近いが、介護士の佳代を犯人のように仕立てて、ずっと追っていって、2つの事実を追う。この映画は最終的に断定しない。でも、万人がそうでないかと思わせる形で締める。くどいが、主人公2人の戯れはなんでこうなるのかよくわからない。

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