龍を描きたい。でもどんな姿をしているのだろう。時間だけが過ぎる。年も暮れが近づいたある日、旅先の上司から写真が届いた。眼下に谷深く、その先に山霞んで聳える。山には雲がかかっていて、その雲が龍に見えた。それからというもの、空を見ては雲の龍を探した。そしてとうとう現れた。元日の朝、曇天を破るように、口の先に火の玉をくわえた姿で。これだ!色はスカーレット!炎の色で描く。迷わない。こうして緋色の龍は誕生した。