産経新聞社編集委員の阿比留瑠比氏が名誉毀損で訴えられた判決で、また敗訴してしまいました。この人何度目だろう。まともに取材・裏付けをしなくFBや記事に書くような人物は、「ジャーナリト」というものからほど遠いものでしかない。
今回の事件は、阿比留氏のFB投稿で名誉を傷つけられたとして民進党の小西洋之参院議員が損害賠償を求めたもの。
http://konishi-hiroyuki.jp/wp-content/uploads/b2.pdf
「産経編集委員に110万円賠償命令=FBで民進議員の名誉毀損-東京地裁」(「時事ドットコム」 2016/07/26-18:46)
産経新聞社の阿比留瑠比政治部編集委員がフェイスブック(FB)に投稿した記事で名誉を傷つけられたとして、民進党の小西洋之参院議員が1100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁(金子直史裁判長)は26日、名誉毀損(きそん)を認め、記事削除と110万円の支払いを命じた。
問題となったのは、阿比留氏が昨年4月1日に投稿した記事。「国会の指さしクイズ王と呼ばれた某氏」について、官僚時代に無断欠勤や遅刻があったと記した上で、「偉そうな態度は昔から」などと書いた。
判決は、「職歴や言動から一般読者は小西議員のことだと理解する」と指摘。内容は「また聞き」で裏付けとなる資料も欠いているとして、「真実とは認められない」と結論付けた。
阿比留氏の話 主張が認められず遺憾。控訴する方向で検討している。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016072600803&g=soc
この記事以外にも
「産経新聞の編集委員敗訴 記事削除と110万円賠償」(「日刊スポーツ」 2016年7月26日18時22分)
http://www.nikkansports.com/general/news/1684858.html
「産経新聞編集委員に賠償命令 FBで民進議員の名誉毀損」(「朝日新聞」 2016年7月26日19時17分)
http://www.asahi.com/articles/ASJ7V5DC3J7VUTIL039.html
「名誉毀損 産経新聞編集委員が敗訴」(「毎日新聞」 2016年7月27日 東京朝刊)
http://mainichi.jp/articles/20160727/ddm/041/040/138000c
などで報じている。
この件については、当初「日刊ゲンダイ」が問題あるFB投稿記事であるとして問題視していた。
「安倍首相“側近記者”が大ピンチ…国会議員が怒りの刑事告訴」(「日刊ゲンダイ」 2015年5月1日)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159469/1
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159469/2
以上の記事や判決の「内容は「また聞き」で裏付けとなる資料も欠いているとして、「真実とは認められない」と結論付けた。」というところからでも、取材や裏付け調査が全く行われていないことが明らかである。
管理人は歴史学(日本近代史)に多少関わっているのだが、これは史料による裏付けというものが重要で不可欠の分野のものである。どのような「きれい事」・「かっこいいこと」を主張したとしても、それを裏付ける史料がなければ、「妄想」とかわりはない。なにもこれは歴史学だけの事ではない。警察や検察も逮捕・起訴できる確乎たる証拠がなければ冤罪となる。何事も断定するには、それを裏付ける資料・証拠が必要というわけである。それはもちろんマスコミ・ジャーナリストも同様である。にもかかわらず、阿比留記者にはその基本的な作業が出来ていないということは、もはや「記者失格」といわれても仕方のないことであろう。
裏付けのない記事。阿比留記者は今回が初めてのことではない。
2012年には辻元清美議員から
「記述①「13日に・・・辻元清美元国土交通副大臣を災害ボランティア担当の首相補佐官に任命したことにも必然性は感じられない。・・・辻元氏は平成7年の阪神淡路大震災の際、被災地で反政府ビラをまいた。2人の起用はブラックジョークなのか。」(産経新聞2011年3月16日号朝刊)
記述②「カメラマンの宮嶋茂樹氏の著書によると、辻元氏は平成4年にピースボートの仲間を率いてカンボジアの自衛隊情勢を視察し、復興活動でへとへとになっている自衛官にこんな言葉をぶつけたという。『あんた! そこ(胸ポケット)にコンドーム持っているでしょう』(中略)こんな人物がボランティア部隊の指揮を執るとは。被災地で命がけで活動している自衛隊員は一体どんな思いで受け止めているだろうか。」(同3月21日号朝刊)
当時NGO活動をしていた辻元清美が、「1995年の阪神淡路大震災の際、被災地で反政府ビラを撒いた」「1992年、カンボジア復興にあたっている自衛隊員に対して、『コンドーム持っているでしょう』などと発言した」という事実は、まったくありません。」
http://www.kiyomi.gr.jp/blogs/2012/01/19-2229.html
として虚偽報道による名誉毀損で訴えられている。
その元記事が下記。
「首相は自衛隊員の気持ちを分かっているのか」(「産経新聞」 2011.3.20 21:43)
この件についても、全く辻元側に取材はしておらず、根拠のない伝聞や憶測だけで記事を書いているのがわかる。
この件についてのまとめ
「「辻元清美氏が産経新聞に勝訴」に対するご意見」
「辻元清美氏に対する産経新聞の名誉毀損判決が確定」
さらに第1次安倍内閣時に、2007年に行われた日米首脳会談で慰安婦問題についてブッシュ大統領(当時)と安倍首相が共同で慰安婦に対する謝罪を受け入れる報道がなされたが、阿比留氏はこれを否定。しかし、第2次安倍内閣時に謝罪を受け入れた発言をしていたことを首相答弁書で提出され、阿比留氏のウソがばれた。
以上のように、取材することナシで記事を書く阿比留氏であるが、彼が所属している産経新聞社も同様のことを行っている。
それをよく表しているのがネットでの書き込みを「記事」として書いたもの。
「TBS番組「街の声」の20代女性が被災地リポートしたピースボートスタッフに酷似していた?! 「さくらじゃないか」との声続出」(魚拓、本文は削除済み 「産経新聞」 2016.6.16 18:55)(本文はすでに削除済みなので魚拓を)
この記事に関しては、即座にピースボート側から抗議が寄せられている。
「ピースボート災害ボランティアセンターが産経ニュース記事に抗議 「女性スタッフは熊本で活動中で街頭インタビューに応じるわけない」」(「産経新聞」 2016.6.17 12:04更新)
http://www.sankei.com/affairs/news/160617/afr1606170010-n1.html
この抗議に対する産経新聞社側の回答がこれ。
「ピースボート災害ボランティアセンターへの回答書」(「産経新聞」 2016.6.17 15:49更新)
http://www.sankei.com/life/news/160617/lif1606170019-n1.html
この「回答書」の「当該記事は6月16日にインターネット上で話題になっていた事象を記事化したものです。ご指摘通り、記事化する際、TBSおよびテレビ朝日に取材するだけでなく、貴団体にも取材すべきだったにもかかわらず、これを怠っておりました。」からわかるように、ただ単なる「ネット上でのうわさ」を調査することもなく記事にしたもので、これでは産経新聞社は「新聞社」ではなく、もはや「まとめサイト」といってもいいだろう。
主義主張は自由で尊重されるべきものであるが、このように取材・調査を行うことなく、「ネット上のうわさ」や「憶測」、「偏見」のみで記事を書くなどもはやジャーナリズムとしては論外であるということであろう。
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