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史料紹介-近代日本における人身売買 14

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「社会外之社会」-14

 

 

〈娼妓の廃業-伊勢の例〉

 

   公娼の内崩   

   娼妓の訴訟しても廃業せんと欲する他の一例を伊勢に於て見るなり、而して今日の警察なる者が其実、如何に貸座敷業者を保護して娼妓を顧みざるかは、到る処に於て之を実見す。   

   伊勢国河芸郡神戸町大字十日市なる遊廓富貴楼と云ふに出稼ぎする大川たかと云へる娼婦あり、去る明治三十年の六月一日より賤業に従事し、今年廿三歳なり。   

   彼女は同地四日市なる大川太助と云へる者の二女にして、父は今年六十歳、老耄して殆ど事理を弁ぜず、一弟ありて十九歳になれども不幸にも癲癇病にて家事を営む能はず、僅かに老母が機織などして細き煙を立つるに過ぎず。   

   偖て彼女は去る卅年、百五円の前借にて富貴楼の娼婦となり、其後廿五円を追ひ借りせるのみにて爾来唯だ病気にて休業せる十一日の外は、セツセと稼ぎたるにも拘はらず、彼女の負債は毫も減少することなく、今や楼主の言ふ所に依れば三百余円と積りたり。   

   彼女の家は前に言ふ如き有様なれば、早く婿など迎へて父母兄弟を養はざるべからずと雖も、重き借金は彼女をして容易に動くこと能はざらしむ、爰に於てか彼女は本年二月の中旬を以て、断然飛び出して家に帰りたりき、而るに楼主の探索厳密にして、彼女は為めこ発見せられ、三月初旬遂に元の遊廓へ無理矢理連れ行かれぬ。   

   然るに彼女は心を決して、爾来断然客に接せず、左もありぬべし、楼主の目玉を恐れて客に接したればとて、自身の利益と云ふものは一文たりとも出で来らざればなり。 

   是にはサスガの楼主も持余まし、去りとて飯を食はせずに餓死さする事もならず、油断して再び逃行かれなば、他の娼妓も陸続逃出すの恐れあり、楼主は乃ち却て甘言を彼女に呈し、夜は夫婦の中間に彼女を臥さしめて之を看守しつゝあり、楼主は蔭で腹を立つて曰く、「不埓な女め、己の方でも此の通り取押へて生涯でも自由の躰にすることはネヱ」。   

   彼女は是より先き廃業届を差出せり、然るに警察署は之を受理せざるなり、爰に於てか三重県警察の職責を問ふの必要は起る。   

   或る府県の娼妓規則には廃業届書へは楼主の連署を要すべき旨を明記しあり、而して三重県の規則には此の個条なきなり、以前は矢張り「楼主の連署を要す」との条文之ありき、去れど此の条文あるが為めに種々の不都合起ればとて、之を改削して現行規則とはなりける。   

   故に三重県下に在りては娼妓の廃業は娼妓一個の名義にて足れり、決して楼主の連署を要せざるなり、然らば何故に大川たか女の廃業届書は警察署の却下する所となれるや。   

   愚なる哉三重県警察部や、彼が折角に施したる娼妓取締規則の改正は、却て貸座敷業者の規約なる者の為めに侵害せられたり。   

   「貸座敷業者の規約」とは何ぞや、三重県令が娼妓の廃業に楼主の連署を要せざる事となせるに当り同県下の貸座敷業者は同業者間の規約を作り、「娼妓の廃業には楼主の連署を要す」との個条を加へ之を各所轄警察署に届出で置けり。   

   故に今同地の警察に就きて「何故に大川たかの廃業を受理せざるや」と詰問すれば、警官は答ふるに「貸座敷業者の規約に違反す」の一事を以てするなり、驚くべき哉、三重県警察は「県令」を軽蔑して「醜業者の得手勝手なる内約」を尊重せり、元来今日の遊廓なる者は、行政官の手加減を以て設置したる野蛮の旧遺物にして、法律に拠らず憲法に違反し、立憲政代なる法治国民の堪ゆべからざる大恥辱なり、而して憲法々律を無視する行政官は更に自己の職責を忘却して貸座敷業者の私利を保護し、厳めしき警官は帯剣の手前さへ恥ずることなく、醜業者の面前に閉口頓首するを見る、是れ何等の怪事ぞや。(出典 谷川健一編『近代民衆の記録3 娼婦』新人物往来社 1971年6月10日 157-158頁)

 

 

 

〈娼妓廃業の自由・大審院の判決例〉

 

   娼妓廃業の自由・大審院の判決例   

   娼妓が不道の稼業にして何時にても廃業の自由あるは当然の法理なれ共大審院の判決を待つて愈々明白なりと言ふべし、左の判決書を見ば以て大審院の意向を明知し得べく、若し全国の娼妓にして廃業の決心をなさば一朝にして遊廓の醜制度を打破し得べきを知るべきなり。   

   明治三十三年二月二十三日大審院第二民事部判決上告人坂井ふたより被上告人山田精一に対する三十二年第七十七号上告右当事者間の娼妓廃業届に調印請求事件に付き函館控訴院の明治三十二年三月一日言渡したる判決に対し上告代理人より全部破毀を求むる申立を為し被上告代理人は上告棄却の申立を為したり   

   判決   

   原判決を破毀し更らに弁論及び裁判を為さしむる為め本件を函館控訴院に差し戻す(中略)按ずるに凡そ貸座敷を以つて営業と為す者と娼妓を以つて稼業と為す者の間に於ける金銭貸借上の契約に関し娼妓を稼業と為す者が身体の自由を譲与する意思即ち其の身体の拘束を目的とする契約を為すも其金銭貸借上の契約と身体を拘束する目的とする契約とは各自独立する契約と看破し身体を拘束する契約に至ては法律上契約の目的物と為し得べき者に非ざるは勿論明治五年第二百九十五号布告の精神に依るも之を許すべからざるものたることは既に当院の判例として認むる所なり而して本件の契約は明治五年第二百九十五号布告廃止以前の契約に係り即ち上告人は明治三十年十一月被上告人より金銭を借受けたるに付き之が返済の為め同日より向ふ三十箇月間被上告人方に於て娼妓営業を為すべきことを諾約せしも上告人は之が為め自由の束縛を受けざるを得ざるに至るべければ右の契約は法律上無効のものなるのみならず明治五年第二百九十五号の布告にも抵触するものなるが故に上告人は該契約の無効を原因とし娼妓廃業届に調印を為すべきものを請求せるものなることは原判決の認むる所の事実なり果して然らば金銭貸借上の関係如何の別に問を要せず身体を拘束するを目的とする契約に至ては之を無効とし而して上告人が娼妓を廃業せんには其他方行政上の規則に依り被上告人の調印を必すべきものなるや否やを審究し果して其調印を要すべきものなれば上告人の請求を許容すべき筋合なり然るに原判決は事茲に出でず其理由中に「娼妓営業は我邦に於ては公許せられたる一種の営業に属するものなるか故に毫も背法の性質を有するものにあらざるのみならず単に人身の自由を拘束する効果を生ずべき合意を禁止するの法則一も之あることなければ控訴人は乙第一号証契約に因り被控訴人に対し約定年限間は金員弁済の上にあらざれば転居又は廃業を為さゞるべく若くは約定年限間被控訴人方に於て娼妓営業に従事すべき義務を負ふべく為めに控訴人は自由の拘束を受くるに至るも此を以て該契約は無効なりと云ふを得ず云云」と説明し之を一般の雇傭契約と同視し有効と認め上告人の請求を排斥したるは上告論旨の如く法則を不当に適用したる違法の裁判にして破毀すべき理由あるものとす。   

   以上説明の如く本件上告は其理由あるを以て民事訴訟第四百四十七条第一項の規定に依り原判決の全部を破毀し同法第四百四十八条第一項の規定に則り事件を原院に差戻すを相当とす主文の如く判決を為す所以なり。(上掲 158-159頁)


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