たんすの上に猫発見。「そんなとこ、上がっていいと思ってんの?」
ちょっとくらい、いいじゃん。「だめ。おりなさい」
けちー。(最近ここに乗りたがるんです。困ってます。)
現実逃避妄想
ルルーシュinワンダーランド/その8>
「まったく!あたしのアリスに何、ひどいことしてんのよ!」
「誰が誰のアリスだって?!冗談言うなよ!アリスは僕のだって言ってるだろっ」
ぎゃあぎゃあと自分勝手のことを言い合っている二人の間で、樹に縛られっぱなしのルルーシュは彼らの大声で頭がくらくらしてきた。
耳を塞ぎたくとも猫スザクのせいで、手の自由が利かない。
「もう、どうでもいいから、助けてくれ・・・」
がっくりうなだれているルルーシュの情けない呟きが聞こえたか分からないが、白騎士カレンはナイフを取り出すと馬上からルルーシュの縄めがけて投げつけた。
「ほわぁ」
カレンの行動を予測していなかったルルーシュは、突然支えを失いどさりと地面に倒れた。
幸い下草が生い茂っていたので、怪我をすることはなかった。
「相変わらずどん臭いコねぇ。大丈夫?アリス」
「誰のせいだ!」
倒れたままで、きっと彼女を睨みつけた。
「さぁ、アリス。あんな乱暴猫なんてほっておいて、あたしと行きましょう」
白騎士・カレンは気にする様子もなく、にっこりと笑いながら手を差し伸べてきた。
多少、傍若無人なヤツだが。
(よかった。こいつはまだまともなヤツのようだ)
訳の分からないこの状況に頭がどうにかなりそうな中、その手は暗闇を照らす一条の光に思えた。
だが次に彼女の口から出た言葉で、ルルーシュの伸ばしかけた手が止まった。
「そんなエプロンドレス、あなたには似合わないわ」
(はい?)
「メルヘンチックなそんなひらひらした服よりもあなたに似合うのは、大人っぽいセクシーな服だわ。そう、例えばこんな!」
どうだとばかりにひらりと広げたその服に、ルルーシュは固まってしまった。
まるで中近東の酒場にいる踊り子が着ているような衣装。
上半身は胸元までしかなく、へそが丸出した。袖の部分はスケスケ。なんとも、布の面積の少ない。しかし、下半身用はそれ以上に問題なものだった。
深くV字に切れ込んだベルトに、大きくスリットの入った薄い布地がついているだけ。金のメダルのついた装飾品がシャランと軽やかに鳴った。
下着はどうするんだ!?と、つっこみたくなるようなハレンチ極まりないその服に眩暈が起きそうになる。
「コレを着て月明かりの下、音楽に合わせて優雅に踊る貴方。ああ、きっと素敵なんでしょうね」
両手を前に組んでうっとりと夢見心地顔な彼女。
何を想像しているんだ!?何をっ。
そんなもの、俺が着て似合うものか!男の生太ももなんぞ、気色悪いだけだろう!
だめだ。こいつも同じだ。間違っている。似ているのは容姿だけだ。本当のカレンなら、こんなおかしなことを言わない。
だってカレンは俺の片腕で、黒の騎士団のエースで。
「・・・っ?!」
一瞬、真紅のマントをひるがえしたカレンの姿がフラッシュバックする。
(何だ、今のは!?)
赤地に金のデザインを施されたそれは、スザクが纏っているものと同じ。つまりそれは。
(ナイトオブラウンズ・・!)
どういうことだ?カレンは、カレンは・・・。
<ドッチガ、本当ノ彼女ダッタ?>
「・・・ッ!」
つきんと頭の奥が痛み、くらくらと視界が揺らぐ。気分が悪くなってきた。
「今のうちに逃げて!アリス」
怒鳴るようなスザクの声に、はじかれたように顔を上げた。
チェシャ猫・スザクは自分とカレンの間に割り込み、先ほどの槍を使って馬上の白騎士と交戦中だ。
「それとも白騎士のオモチャになりたいの?」
面白そうに振り返った男の言葉に、ぶちっと切れた。
「誰がだ!冗談じゃない!」
慌てて立ち上がると、むかつくがここは素直に従うことにした。
「そうだ。帽子屋と3月ウサギにはくれぐれも気をつけてね」
投げかけられた言葉を背中で聞き流しながら、ルルーシュは全力で森の中へと逃走した。
つづく>
遅くなりましたが8話目です。難産でした。
さて、次回登場予定の帽子屋のお茶会。キャストはあの人たちです。