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魚肉ソーセージが人気の訳

グルメの紹介 健康づくり



2024/09/11 09:20 (ITmedia ビジネスオンライン)

 突然だが、魚肉ソーセージと聞くと皆さんはどんなイメージを抱くだろうか。
 「酒のつまみ」「小腹が減った時のおやつ」「どんな料理にも合う手軽な食材」など、さまざまな反応が出てくるだろうが、「懐かしい、昔はよく食べたな」という人も多いのではないか。

 もちろん、今でも好きな人が多いと思うが、全盛期を知る世代からすればやはり「昭和の人気商品」という印象が強い。1985年に粗びき豚肉100%使用の本格的なウインナーソーセージ「シャウエッセン」が日本ハムから発売され、さまざまなウインナーが流通するようになると、徐々に不動の人気にかげりが見えてくる。

 魚肉ソーセージメーカーが加盟する日本缶詰びん詰レトルト食品協会によれば、魚肉ハム・ソーセージの生産量は1972年の約18万トン台をピークに減少。2023年の生産量は前年比9%減の4万5815トン。半世紀で4分の1の規模にまで縮小しているのだ。

 これまで世に多くの魚肉ソーセージを送り出してきたマルハニチロの加工食品ユニットチルド食品事業部すりみ食品課の福田憲滋副部長もこう述べる。

 「弊社のチルド食品事業部は、魚肉ハムソーセージとちくわ、カップゼリーという3つのカテゴリーを扱っていますが、私が入社した1995年は魚肉ハムソーセージだけの事業部で人員も今よりかなり多かったですね。しかも当時はシェアも断トツだったので、まさしくわが社の大黒柱でした」

 ただ、そんな「昭和のスター」だった魚肉ソーセージが、ここにきて「再ブレーク」の兆しが見えている。

なぜ今「魚肉ソーセージ」が人気なのか
 例えば、全国のスーパーなどの販売データを集めた日経POS(販売時点情報管理)の3月データによれば、魚肉ソーセージの販売個数は68万個超と直近2年で最多。1000人当たりの販売金額も過去5年間で最高だったという。

 では、なぜここにきて魚肉ソーセージの魅力が再発見されているのか。

 まず大きいのは「値上げラッシュ」である。なかなか給料が上がらない日本の庶民にとって、魚肉ソーセージは家計を助ける「コスパのいい食材」と評価が上がっているのだ。そこに加えて、畜肉のハム・ソーセージが値上げをしているため、「魚肉シフト」が進んでいる、という指摘もある。

 このような生活防衛的な視点に「防災意識の高まり」も追い風になっている。
 ご存じのように今、日本は自然災害が相次いでいる。年明けに起きた能登半島沖地震を皮切りに各地で地震が続発し、南海トラフの臨時情報が出たかと思ったら、今度は過去最大規模の台風が上陸し、宮崎などでは竜巻で家を失った人も多くいる。

 このような災害が発生すると必ず起きるのが「食料の買いだめ」だ。筆者は南海トラフ地震臨時情報が出た後、近所のスーパーに行ったら、水やカップ麺をカートに山盛りで購入する人々を多く見かけた。今問題になっている米不足も、スーパーやディスカウントストアでまとめ買いをする人が増加したことも一因と言われている。

 このように消費者の「食料備蓄志向」が強くなった時というのは「常温保存」のものがよく売れることは言うまでもない。スーパーで冷凍食品を山ほど買い込んでも、これまでの巨大地震や台風を見ても分かるように、被災地は停電をする可能性が高いため生鮮食品や冷凍食品は保存が難しいのである。

「再ブレーク」に最も影響を与えたもの
 そこで注目されるのが「魚肉ソーセージ」だ。日本缶詰びん詰レトルト食品協会によれば、魚肉ソーセージは高温高圧にて加熱殺菌しているので製造後、常温で90〜150日間保管できるという。中には技術の進歩でそれより日持ちする商品もあるというので保存食にもってこいだ。

 しかも、カップ麺やレトルト商品の場合はお湯や加熱が欠かせないので、ガスコンロや水が必要だが、魚肉ソーセージはそのまま食べられる。非常用持ち出し袋の中に束で入れておくだけで、有事の際に飢えをしのげる優れものなのだ。

 このように魚肉ソーセージの魅力が注目されつつあるわけだが、実は今回の「再ブレーク」に最も影響を与えたものは別にある。それは「健康志向」だ。
 日経POS情報の4月の売れ筋ランキングを見ると、上位15品目のうち10品目が「栄養機能食品」や「特定保健用食品」なのだ。

 昭和生まれのおじさん世代の中には、魚肉ソーセージに対して「添加物も入っていて体にあまりいいものじゃないけれど、うまいし安い」「酒のつまみにもちょうどいい」なんて感じで、ちょっとジャンクなイメージを抱く人もいるだろう。

 しかし、それはもはや遠い過去の話。「健康食品」という評価が徐々に広まってきており、それが血圧や中性脂肪などの数値を気にするシニア世代や働き盛り世代から支持されている。こうしたことも、今回の「再ブレーク」要因の一つとなったのだ。

トクホを取得した魚肉ソーセージも
 そんな「魚肉ソーセージの健康食品化」という現象の中でも、最先端を走っているともいうべきものが2024年2月にマルハニチロから登場した。特定保健用食品、いわゆるトクホを取得している「DHA入りリサーラソーセージω(オメガ)」である。

 この商品、実は他の魚肉ソーセージはもちろん、他のトクホ商品とも一線を画すかなり異質な存在だ。それはパッケージに大きく掲げられたこの言葉を見れば分かっていただけるのではないか。

「日頃の運動とDHAおよびEPAを含む健康的な食事は、将来、心血管疾患になるリスクを低減する可能性があります」

 カンのいい方はお気付きだろう。そう、この魚肉ソーセージの表示の中には「病名」が入っているのだ。これは「疾病リスク低減表示」と呼ばれるもので、これまでは、基準が設定されている骨粗しょう症のリスク低減(カルシウム)以外は認められることがなかった。

 例えば、サントリーの特定保健用食品(トクホ)「特茶TOKUCHA」を見ていただきたい。こちらには「脂肪を減らす力を高め、体脂肪を減らすのを助ける」とある。コカ・コーラ社の「からだすこやか茶W+」も「脂肪の吸収を抑え糖の吸収を穏やかにする+内蔵脂肪を減らすのを助ける」といった感じで、消費者に対して、あくまで「健康を補助する」という印象を与えるにとどめている。

 しかし、「DHA入りリサーラソーセージω」のパッケージには「心血管疾患」という病名が大きく表示されている。つまり、この魚肉ソーセージは日本で初めて個別審査型で「疾病リスク低減」という表示を国が認めたエポックメイキング的な健康食品なのだ。

なぜ病名表記が可能になったのか
 なぜこんなことが可能になったのか。マルハニチロの福田副部長は、商品開発の経緯をこう述べる。

 「もともと弊社には2005年に魚肉ソーセージで初めてトクホの認可を取得し、現在も発売中の『DHA入りリサーラソーセージ』という商品があります。この商品は、血液中の中性脂肪値を下げる効果が期待できるトクホです。その後、研究を重ね、DHAには脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを低減させる可能性があることが分かり『DHA入りリサーラソーセージω』の発売につながったのです」

 とはいえ、先ほども説明したように、日本の食品行政では「病名」をパッケージに表示することにはかなり慎重なはずだ。病気に何かしらの影響を及ぼすのは、食品ではなく「医薬品」だからだ。そんな高いハードルをクリアできたのは、意外にも医療側からの「理解」だったという。

 「消費者委員会で審議をされる専門家の方々が、DHAが非常に健康に良いものだと認めてくれていることに加えて、心血管疾患の権威でもある医師の方々からも太鼓判を押してくれたことが大きいです。さらに、このようなエビデンスのしっかりとした健康的な食品をもっと開発してほしいというありがたい言葉をかけてくださる方もいます」

 このような形で「不可能」だった疾病リスク低減トクホを世に送り出すことに成功したわけだが、マルハニチロがなぜそれを可能としたのかという疑問が浮かぶ。魚肉ソーセージの製造元は他にもあって、トクホを取得しているメーカーもある中で、ここに到達できた「勝因」は何か。

マルハニチロの「勝因」
 「それはやはりこれまでの蓄積だと思います。実は今回のトクホ取得に大きく貢献した研究員はそろそろ定年を迎えるベテランなのですが、学生の頃から魚油を研究していて、食べて健康になる食品をつくりたいということで、弊社の研究所に入りました。そこから30年近く魚油研究を続けてきて、最後にたどり着いたのが今回の商品です」

 サラリーマンならば誰もが胸が熱くなるような開発ドラマだが、そんなマルハニチロの魚油研究30年の集大成ともいうべき「DHA入りリサーラソーセージω」に対する市場の反応はどうか。

 「おかげさまでよく売れています。あと、実は社内の評判もいいんです。昼休みや、業務の合間に食べている人がたくさんいます。何を隠そう、私もこれを毎日食べています」

 もちろん、トクホは病気の治療を目的としたものではない。健康に最も大切なのは、バランスの取れた食生活や運動であることは言うまでもないだろう。

 とはいえ、仕事に追われて忙しいビジネスパーソンがそれを十分にできないのもまた事実だ。そういう人はビジネスバッグに魚肉ソーセージを忍ばせておいてもいいかもしれない。かさばるものではないし、常温保存ができるので入れっぱなしで問題ない。

 小腹が空いた時はもちろん、巨大地震などで帰宅困難になったり、電車や建物に閉じ込められてしまったり、そんな時の非常食にもなる。しかも、それで健康にもなるというのなら、中高年的にはこれほどありがたい話はない。

 魚肉ソーセージ「再ブレーク」の背景には、このように今の時代にマッチしたさまざまなポテンシャルが秘められているからだ。

 「疾病リスク低減魚肉ソーセージ」をバッグに忍ばせるのがビジネスパーソンの新常識……。なんて時代がやって来る日も近いかもしれない。
(窪田順生)

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