「使徒たち、マグダラのマリア、ユダ、総督ピラト、ペルシアの哲学者、ユダヤの大祭司、ナザレの隣人など、
同時代人七十数名の証言のかたちで描くイエスの生涯。
イエスの言葉と行いが、福音書の記述と異なっていたこともあったろう。
笑い、夢み、愛したイエス。その語りは人の心の中心を射抜いた。
憎まれ、侮蔑され、十字架上で死んだイエス。彼は武装したローマ帝国と伝統を固守するユダヤ社会を前にひとり立った。
「人の子」イエスは、人の飢え渇きを我が身で知っていた。
本書の登場人物たちの孤独、苦痛と怖れ、悲しみ、執着、情熱と憧れは、わたしたちのものでもある。
著者ジブラーンは、初期キリスト教発展の地レバノンのマロン派の家に生まれ、渡米。
ジョン・レノンにも愛唱された、米国で今も最も著名なアラブ系詩人である。
読者は頁の中で、今も地上を歩む「人の子」イエスに出会うだろう。」
ー 小森健太朗訳 みすず書房ー