10センチ以下博物館(断捨離の果てに) ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

65歳定年時代に早期退職した男の片付け日記。
整理してしまう前に記録として残しておきます。

確かに「心は叫びたがっているんだ」

2017年09月16日 07時19分48秒 | こんなものを見た
『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』(岡田麿里)


「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」
「心が叫びたがっているんだ」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」で有名なアニメ界の売れっ子脚本家岡田麿里さんの「自伝」である。
登校拒否児が、いかに世の中に出ていくか、と言った成功譚ではなくて、あくまでも吐き出した自叙伝、と取る方が正解なのでは。


この本を手に取った人は、おそらくアニメ作品のイメージをオーバーラップさせて向かうだろうから、ある種のギャップを感じるのでは。
母は子を愛していない、子は母を求めていない。
不幸ではあるが、その上での性根の悪さ。(ご本人曰く「こんなに汚い私」)
客観的すぎ、離人感のある文体。
共感できない性格が前半の中心であり、おそらく大半の人は読みにくさを感じるだろう。
同じ生きにくさを抱えていても、アニメの主人公はどこかか弱く美しいが、現実のご本人の生態は、血がつながっていなくて良かった、レベルかも知れない。


カーペンターズやプリファブスプラウトの曲を聞けば、とてつもなく美しい曲は、ドロドロの人生環境でしか生まれ得ないと思わせるのと同様に、アーティスティックな作品はなにがしかの欠落がなければ生まれないのだろう、きっと。


ただ、110ページを過ぎたところから、話は色を帯びていく。
外界に対する悪意でない部分が見えてくるからだ。
「おじいちゃん」、「下谷先生とその妻」との出会い、そして大学以降の生活は、筆者に変化をもたらしていく。
(なので、前半転びそうになっても、読み続けてください。)



最後に、私に特に届いた文章を書いておきます。


「私は自意識過剰だからこそ、自己否定がとんでもなく強い」

「その辺りの緩さが私にはつきあいやすいようにも感じていた。あまりにしっかりした良い子だと、こちらも人として正しさを求められそうで怖い」


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。