何年も前のこと
当時付き合っていた彼は外科医だった
デートの約束は急患が入るたびにキャンセル
約束はあって無いようなものだった
ある冬の日
猛吹雪でホワイトアウト状態の豪雪
借りていた駐車場の雪にはまり車を出せなくなり
ダメもとで彼に連絡したら来てくれた
除雪用の小道具を持ってきて
あっという間に脱出できた
彼が来るまで極寒のなか四苦八苦したせいで
胃が痛くなりうずくまる私
彼がどれどれと胃に手をあててくれた
暖かい大きな手をしばらくお腹にあてていただけで
胃痛は徐々に治まってきた
手当て・・・ってこの事?
そう思った
薬より何より彼の手が痛みを取り除いてくれた
彼にそう話したら
外科医だけどメスを持たない方が
名医でいられるということか・・・と笑った
今でも胃が痛くなると
彼の暖かい大きな手を思い出す
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