大衆文化の先進国、日本。アイドル文化を先導してきた分、アイドルを熱狂的に追いかけるファンも多い。当然、とくに執拗でマナーの悪い一部ファンのことを指す言葉もある。「ヤラカシ」や「裏オリキ」だ。日本のアイドル文化をマネし、今や日本よりもアイドル大国になってしまった韓国には、「サセンペン」がいる。
「サセンペン」とは、
日本語では「私生ファン」であり、
「私生活を追っかけるファン」との意味だ。韓国では安いタクシー料金をフル活用した「私生タクシー」でK-POP系の男性アイドルの私生活を追っかける女性ファンが増えることにより、「サセンペン」という言葉が定着しつつある。
日本では、「ジャニーズ」系の男性アイドルを相手に熱狂ファンたちが暗躍しており、アイドルの携帯電話を奪って逃げるといった事件や郵便物を持ち去るなどの窃盗犯罪が主だった。しかし、先日の「AKB48」握手会事件や、女子高生タレントの殺人事件のように、この手の犯罪は、重大犯罪に発展する可能性もある。
そして先日は、中国でもショッキングなヤラカシ事件が起きた。
人気絶頂のK-POP男性アイドルグループ「EXO」の中国系メンバー、LUHAN(ルハン)が中国の宿泊先ホテルで現地の「サセンペン」たちに盗撮され、ネット上にその写真が流出してしまったのだ。
盗撮写真には、ホテルの部屋の中でスタイリストさんにメイクアップや髪型をセットしてもらっているルハンの姿が写っており、ファンや関係者たちを驚愕させた。
また、同じく中国系メンバーのTAO(タオ)も、ホテルの部屋で盗聴被害に遭った。
結局ルハンの場合は、「サセンペン」のこのようなヤラカシ行為に耐え切れず、中国のSNS「微博」(ウェイボー)にて「サセンペン」に応手。
「これ以上追っかけてくるな。厚かましすぎるよ。あなたが言ったことも覚えているけど、今回は言わないでおく」と怒りを露わにした。
他にも、記者会見場に取材陣を装って侵入し、トイレまで追っかけてくる「サセンペン」や、同じ飛行機に搭乗して隠し撮りをするファンもいるそうだ。ここまでくれば、もはや「ファン」とは呼び難いだろう。
スターの周りを影のようにまとわりつく一部ファンの病的な愛情は、まさに「ストーカー行為」そのものだ。
ストーカー行為が犯罪に発展した事件は、日本でも続いているが、韓国でも元祖アイドル、ソ・テジのソウルの自宅車庫に「サセンペン」が侵入し、車の中にまで勝手に乗り込んでいたことが発覚し、警察に身柄を拘束された事件も起きている。当然、立派な「住居侵入罪」にあたる事件だ。
過去には、「東方神起」や「JYJ」のメンバーたちも「サセンペン」による被害に苦しんでいて、携帯メールアドレスを突き止められ迷惑メールの被害に遭ったり、夜中に部屋の中まで侵入されスキンシップされるなど、ストーカー被害的な体験を明かしたこともあった。
さらに、「SUPER JUNIOR」や「BIGBANG」などの人気アイドルグループも、海外コンサートで現地の「サセンペン」からタクシーで追跡された果てに追突事故を起こしたことがあった。
一方、毎年のように発生するこれらの「サセンペン」による被害だが、K-POPアイドルたちの所属事務所側もなかなか対策が講じられず苦戦している模様だ。
「アイドルとファン」という関係上、これまで「サセンペン」たちが正式に告訴された例は少なく、結局は芸能人本人の希望により「善処」されることが多い。しかも、大半は若い女子学生による犯罪であるため、処罰も容易ではないという。
結局のところ、「度を超えた追っかけ行為は、迷惑を超えて犯罪」であることを、まだ未熟な学生ファンたちにマナーとして徹底的に植え付けていくしかなさそうだ。
アイドル、芸能人のプライバシーを著しく損なう「サセンペン」たちの行為は、多くの場合、ストーカー規制法だけでなく、住居侵入罪、強制わいせつ罪、窃盗罪などに該当する立派な犯罪である。
「スターに私生活はない」という言葉もあるが、「盗撮・盗聴されない権利」など、現代社会に生きる1人の人間としての最低限の権利はしっかり守られるべきだ。
大衆に対する「露出」をもって大衆を楽しませ、夢を与える仕事である「アイドル、芸能人」。メディアやインターネットの発達もあり、その仕事の時間的・空間的な範囲を決めにくいこの時代の芸能人は、やはり辛い職業である。