Starflyer Airbus A320-200
飛行機 164 「初めての男」
何年か前の年の瀬、天罰により足の骨を折って入院していた時に
看護師見習いのともちゃんという娘がいた。
背がちっちゃくて、19にしては幼さない顔立ちをしていた。
私なんか「智子ちょっと来てんやい」などと名前は呼び捨て
「タバコ買って来て」と、お使いはさせるはで、
やな患者だったかもしれない。
私のいた部屋は足を骨折した者ばかりの四人部屋。
私を除いては20代の若者が3人。
まっ!外科の病室という事、若者が多いという事で、
これが入院患者の部屋かと思うくらい明るかった。
年をはさんで入院してたので、クリスマスは病院の中。。
ちょうどお菓子屋さんに努めているのがいて、
クリスマスケーキはいくらでもあるということで、
他の病室の仲の良い人も呼んで
クリスマスパーチィをやることにした。
酒を飲めないのがチト辛いが....
(みんな、こそーと飲んでたけど...)
外科ということで食べ物にはうるさくはなかった。
四六時中こんな感じだから、ともちゃんも「ここの部屋が一番いいわ」
などと言っては、仕事の合間を見て、オシャベリをしに、
大した用もないによく来ていた。
時は流れ、幼顔のともちゃんも看護師の試験に見事パス。
あと少しで故郷に帰るというある日、
「今度ね、初めて患者さんに注射打つのよねぇ」と、
恥じらいながら、四人を前に言った。「なぬ!お前がかぁ。。。」
「下手そうだからパス!」「右に同じ」
などと若者たちは、冗談半分に言った。
「智子、よか、オレが実験台になっちゃる!」と私。。
「ほんと?」「ほんとたい!矢でも鉄砲でも持ってきやい」
「ありがとう」とほんとうにうれしそうな顔をした。
次の日、ともちゃんが、注射器を持って現れた。
なんかチト照れくさそうに、「よろしくお願いします」
「初めての男だね」「エッ?」
「今日は注射さしちゃぁけん、次は注射させろよな!ははは。。」 「エッ、エッ、エッ!?」
若者達は大爆笑。。ともちゃん、頬染めポッ!
私が注射をされている時に他の3人も腕をまくりはじめた。。
ともちゃんが故郷へ帰るという前日。四人でお金を出し合って
花束を買った。
智子、ちょっと来てんやい」「何ですかSさん」
「ありがとうな、国に帰っても頑張れよな」と花束を差し出した。
みるみるうちに、ともちゃんの目に涙があふれ出していた。。
たぶん、今も看護師をやっているであろう。。ともちゃん。。
初めての男のこと憶えてくれてるだろうか・・・?
JAL Boeing 767-300ER
Fuji dream airlines Embraer 175
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