そして誰も居なくなった

先日、知人が昨年の11月に亡くなっているのを知った。最初は聞き間違いかと思った
何も言えなかった。しょうがないと思う半面、やっぱりショックだった

他人が困っていればなんとかして助けよう、役にたとうと考える人だった。
一緒に仕事をしたのは７年ちょっと。間で喧嘩もした。
激しい人なので憎んだりもした。悪口を言った時もある。
それでも、捻くれて愛想に乏しく冷たい私を
一生懸命周りの人に誉めて周ってくれていた。
「”私を利用してやろう”ぐらい思いなさい」と
その人はいつも言っていた。
ある日きっかけがあって誰にも言えなかった心の闇をこの人に打ち明けた。
それでも馬鹿にしたり諌めたりせずにただただ共感してくれた。
激しい人間だから、心が強くて何も感じない訳ではない。
（かしこく生きている人間には決して理解できないだろう）
その人も生き方を曲げられない分傷を沢山負っていた。
それでも人が大好きで、
どんなにクセの強い人でもあっと言う間に仲良くなってしまう人だった。
どんな人でも信じて受け入れる、そんな人だった。
よく知らない人からは傍若無人、
他人を顎で使うように見られたり批判されていたが、
その人に知り合いは大変多く、皆クセのある性格に文句を言いながらも、
肝心な時はその人に真っ直ぐ相談に来る人ばかりだった。
自分で損な性格だと言いながら人の為を思って常に考えを巡らしていた。
実の家族は「単なるええかっこしい」とボロクソだったけれど、
その人のように現実に行動出来る人は少ない。
たかだか小さい事で動くのは愚か者の所業とばかりに理論武装して退ける。
”親切で言っているんですよ”というふりをして。
それが普通の人間の対処の仕方だし無理もない。
それが普通だから。かくいう私もそうだ。

何の為に生きたか

誰の人生だったか

その人は家族を持ちながらずっと孤独だった

いつも孤独に苛まれて、「誰か私を殺しに来て」と懇願していた



私はその人の孤独を埋める事が出来なかった

忘れられていく事に耐えられなかった

その人が居なくなって、また私は元の私に戻っていく

私は誰の希望にもなれない