透明人間たちのひとりごと

ネイキッド

 花を美しく思い、色づく山の情景に癒され、繰り返す波の音を聞きながら、海の広さに引き込まれる。
 人が、自然を美しいと思うのはきっと、「帰りたい」と切望する生物としての郷愁のせいだろうか。
 たまに、服を着ていることが重たく感じる。


 熱い日差しのなか、「看板」が見えた。
 人のための看板にしたがって駐車場にとめる。

 理由は、「熱かったから」。
 ペットボトルのお茶はぬるくなり、背中では汗でシャツが張り付いている。

 人のための「入り口」を入ると、あたりは日陰になった。
 木々が、日差しを遮ってくれる。

 水の落ちる音が、僕の足を速めた。

 長い階段を下りると滝があった。

 滝。

 白糸の滝とは違う。けれど、彼と同じ仲間のような気がした。
 滝壷が似ていたからだ。
 人の為の「店」が並んでいるのも同じだった。

 人々はそこで鯵を食べたり、写真を撮ったりして帰っていった。
 帰ったのはもちろん自然の中ではなくて、「車の中」だった。

 僕も、同じだった。

 写真を撮って車の中に帰った。

 あの滝壷にネイキッドダイブできたらどれだけ気持ちいいだろう。
 自動販売機で買ったコーヒーを開けて、
 クーラーをつけた。

 
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