17世紀半ばにユダヤ人を熱狂させ、一大ムーブメント
を引き起した「サバタイ・ツヴィ運動」のつづきです。
ＡＤ1666年、メシアとして知られたサバタイ・ツヴィ
は、オスマン帝国（トルコ政府）に捕らえられます。
しかし彼の収監中も興奮は醒めやらず、引きも切らず
に謁見に訪れる客人の多さに業を煮やしたトルコ政府は
とうとう、その狂信ぶりに看過できなくなるのです。
牢獄内で拘禁具にはめられているツヴィと、謁見に訪れた客人を描いた版画。
ただし、ガリポリでの監禁時なのかウルチニでの監禁時なのかは不明です。
そして、ついに、
ユダヤ教徒たちの熱狂ぶりを見過ごすことができなく
なったトルコ政府はサバタイ・ツヴィをスルタン（君主）
の前に引き出して、
「ユダヤ教を捨てて改宗するか、死を選ぶか！？」
の二者択一を強く迫ると、
サバタイ・ツヴィは、あっさりと棄教を選びます。
それまで頭にかぶっていたユダヤ式の帽子を捨て去り、
イスラム教信者であることを示す白いターバンを被って
退席したのです。
ええっ！stampo.fan ショック stampo.fan
な、な、何と、メシアである筈のサバタイ・ツヴィは
イスラム教に改宗してしまったのです。
そ、そんなバカな ・・・
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普通に考えれば、これは堕地獄に値する神と民族への
冒涜であり、最大の裏切り行為です。
ところがまことに奇異なことに、サバタイ・ツヴィの
改宗はそのようには受け取られなかったのでした。
むしろこの改宗によって、サバタイ・ツヴィは、より
神秘的なメシアヘと一段階昇格したのです。
何故、そんな奇妙なことが起こり得たのか！？
理由は、サバタイ・ツヴィの最大のブレーンであった
カバラ学者ナタンの巧みな肯定的合理化にあったのです。
サバタイ・ツヴィの揺れ動く精神状態を見たナタンは
カバラ的に再解釈し、サバタイ・ツヴィの改宗の真意は、
実は悪魔の息の根を止めるための作戦なのだという独自
の論を推し進めたのです。
この世界を覆いつくしている闇の勢力はあまりに強大
であり、外部から攻撃をしかけても容易には崩れない。
そこで救世主（メシア）であるサバタイ・ツヴィは、
サバタイ・ツヴィ www.kinokuniya.co.jp
あえて内部に通じるべく「悪の王国」の奥深くに侵入
したとし、時が至るまでは、あたかも悪の一部に与した
者のように振舞いつつ、着々と救済の準備を進めている
と説いて、サバタイ派のユダヤ人たちを鼓舞したのです。
このようにして、
ナタンは「ルリア神学」を改良させるかたちで、独自
のカバラ神学＝「ナタン神学」を形成します。
彼によれば、「サバタイ・ツヴィの戦い」は、かつて
の対ローマ・ユダヤ戦争のバル・コクバのときのような
単純な地上での戦闘を意味しているのではなく、メシア
の戦闘領域は霊界（セフィロト界）に広がり、現実世界
と霊界にわたって展開され、たがいにシンクロしあって
進められる「霊的戦い」へと変質したというわけです。
「霊的戦い」christianpure.com
サバタイ･ツヴィがイスラム教に改宗したあとも、彼を
信奉する者たちはあとを絶ちませんでした。
また、彼自身も、
伝えていたのでした。
その為、業を煮やしたトルコ政府は サバタイ･ツヴィ
をアルバニアに追放したのでした。
ＡＤ1676年9月に、サバタイ･ツヴィは、その地で死亡
するわけですが、サバタイ･ツヴィ運動がそれで消滅した
わけではなかったのです。
世界を覆う悪なるサタンの勢力がいかに強大なものか
は、常に迫害の対象にされてきたユダヤ教徒には骨身に
染みて分かっていました。
「誘惑に陥らないように見張り、祈りなさい。霊は喜んでいるが、肉は弱い」
（マタイの福音書26章41節）「霊的な戦い」christianpure.com
それゆえ、サタン（悪魔）を打ち倒す為には、自らが
進んで悪の勢力の内部に入り込み、その内側から、樹木
を腐らせるような形で倒すしかないのだというナタンの
教えは説得力を持っていたのです。
その結果、「サバタイ･ツヴィ運動」は表向きの改宗者
を数多く作りだすことになります。
ある者たちはイスラム教へと改宗し、また、ある者は
キリスト教（カトリック）に改宗していったのでした。
「サバタイ･ツヴィ運動」が始まってから、ユダヤの
カバラ的メシア運動（メシアを待望する活動）は、より
内的なものとなり、何人もの自称メシアを創出しながら
も、その流れは「ハシディズム運動」へと繋がっていく
ことになるのです。
ハシディズムはガリチア地方（現ポーランド南部から
現ウクライナ西部にかけての地域）の超正統派ハザール
系ユダヤ人の間に広まった大衆版ユダヤ教神秘主義思想
とでも言うべきものでした。
ハシディズムの創始者は、18世紀初頭に東ヨーロッパ
を放浪して、その生涯を終えたユダヤ教の思想家である
バアル･シェム･トーブ（イスラエル・ベン・エリエゼル）
で、ハシディズムは、その後、その弟子で「大説教者」と
呼ばれたラビ・ドーヴ・ベールなど数々の傑出したラビ
を生み出しながら、「大衆による神秘的敬虔主義運動」と
なって、そのまま今日まで続いているのです。
「ハシディズム」の創始者
バアル・シェム・トーブ（AD1700-1760年）
この「ハシディズム運動」の大きな特徴は、カバラの
用語と観念をユダヤ人の日常生活の宗教的言語へと転換
させたところにあります。
その核になる用語を「ツァディク（義人）」と称して
「ツァディク（義人）」を救済の中心に置いたのです。
この霊的な指導者は、コミューンごとに現れる小さな
メシアであって、彼らを神秘的なリーダーとして敬虔な
生活を実践し、総じて「神の王国」の実現を追求しよう
としていたわけで、
「シャローム（平和）」 bible-seisho.net
現在のユダヤ神秘主義思想およびメシア運動は、この
ハシディズムを中心に展開しているのです。
ちなみに、
ハシディズムの「ハシド」とは、「敬虔な者」という
意味で、神に対して敬虔な態度をとる人のことです。
敬虔とは「深い敬意や愛」を意味します。
神に対しては、神を敬い、神に感謝を表し、神の戒め
に従います。神に対する敬虔さを示す中で、人々は神の
祝福、戒め、預言者、教会、儀式、神権、また神が立て
られた計画に対しても、敬虔と感謝の思いを表すことに
なります。
さて、
「ツァディク」と呼ばれていたハシディズムの指導者
は、伝統的なユダヤ教の「ラビ」に対して、「レべ」と
いう尊称を持ち、指導権は世襲され、各地にレべの「家」
が成立します。
しかし、そのハシディズムも発展を遂げる過程で幾つ
ものセクトに解体し、さらに小さな相違点が亀裂の起因
となって異なる宗派を生んでいったのでした。
ハシディズムの中心地は、主にポーランドをはじめと
する東ヨーロッパにあったのですが、ナチズムの脅威に
さらされた結果、すべて破壊されてしまいます。
そのために、アメリカやイスラエルに新たな中心地が
生まれることになるのですが、
高齢の超正統派ユダヤ人男性がトーラーの詠唱を行っている様子 ja.wikipedia.org
これらのハシディズムの各セクトは、それぞれ個別に
「ルバヴィッチ・ハシディーム」「ベルツ・ハシディーム」
「サトゥマル・ハシディーム」等々、各出身の町の名前
で呼ばれることになります。
ハシディーム派の家族、ニューヨーク・ブルックリン ja.wikipedia.org
ハシディズムでは、服装の微妙な違いで、宗派ごとの
違いが区別できます。
超正統派男性信者の容姿 ja.wikipedia.org
ハシディズムの服装の多くは、歴史的に東欧ユダヤ人
の衣服であり、ポーランドとリトアニアの貴族の様式や
服飾スタイルに影響を受けて、宗教的起源を特定の衣装
に持たせているのです。
このうちアメリカの「ルバヴィッチ･ハシディーム」は
ハバド派ハシディズムとも呼ばれ、ＡＤ1990年代の初頭
に、同派から〝メシア〟 が出現して、多大な反響を巻き
起こします。
その名をレベ･シュネルソン（メナヘム･メンデル･シュ
ネルソン）といい、 彼はＡＤ1951年に同派の第７代レベ
に就任した際、メシアは第8代レベが登場する前に現れる
と預言します。
アメリカのハバド派ハシディズムのレベ、
メナヘム・メンデル・シュネルソン inri.client.jp
ＡＤ1992年にシュネルソンが 脳溢血で倒れると、その
預言の解釈をめぐって 内部で論争が起こり、ハバド派は
二派に分裂します。
正真正銘の〝メシア〟として信奉し宣伝するグループ
と、メシアではなく、メシア出現の時期を示しただけで
あると主張するグループに分かれたのです。
シュネルソンはアメリカ・ユダヤ社会では「神聖」の
象徴であり、 彼は、自分がメシアと見られていることを
一切否定しませんでした。
彼は並外れた知力と体力に恵まれたカリスマ的存在で
あり、ユダヤ教徒はもとより、非ユダヤ教徒であっても
シュネルソンにアドバイスや祝福を求めたほどで、
画像元：Cocotame 画像元：natalie.mu
ボブ・ディラン（アメリカのミュージシャン）などの
著名人も彼のもとへと巡礼したそうです。
そんなシュネルソンは、1994年に亡くなります。
サバタイ・ツヴィに影響されて、倒錯的なメシア運動
を起こした者は他にもいます。
ＡＤ1726年にポーランドで生まれたヤコブ・フランク
という過激なユダヤ教指導者です。
彼はサバタイ・ツヴィに倣い、キリスト教に偽装改宗
します。
そして、
画像元：www.nicovideo.jp
彼はルリア神学を自分なりに解釈し直して、世界中の
悪を増大させることによって破局を引き起こし、「終末」
の到来を早めようというメシア運動「フランキズム」を
展開します。
ヤコブ・フランクの教義は著しく倒錯的であり、甚だ
虚無的でした。
彼にとっては、秩序の基である宗教を破壊し、人心を
荒廃させ、拝金主義・性的堕落・争いを絶やさないこと
が「終末」の到来を早める為の善い行ないだったのです。
フランク派は、ＡＤ1756年にユダヤ教正統派から除名
されますが、その後、フランク派の一部は、ユダヤ教の
世俗化を目指す「ユダヤ教改革派」にその姿を変えたと
言われています。
ちなみに、
現在、全世界で起きている一連の社会不安や政治腐敗
の原因のすべてはヤコブ・フランクにあるのです。
有名な初代ロスチャイルドは、フランク派ユダヤ教に
深く関与していたとの説もあり、19世紀を通じて、かの
ロスチャイルド家はフランク派ユダヤ教を全面的に支持
し、育成したと言われています。
ロスチャイルド財閥の創始者マイヤー・アムシェル・ロスチャイルド
（ロスチャイルド１世／1744-1812年）www.kaseidenanbo.com
獅子と一角獣が描かれているロスチャイルド家の紋章
ロスチャイルド１世には５人の息子たちがいましたが、
それぞれをヨーロッパ列強の首都に派遣して次々と支店
を開業させ、それぞれがロスチャイルド家を支える分家
（支家）となっています。
長男のアムシェルにはフランクフルトの本店、次男の
サロモンはウィーン支店、三男ネイサンはロンドン支店
、四男カールはナポリ支店、五男ジェームズはパリ支店
といった具合に配置していたわけです。
フランク派によって「改革派ユダヤ教」の代表選手と
して選抜されたのは、ドイツの「正義者同盟（ブント）」
のメンバーだったアブラハム・ガイガーで、
アブラハム・ガイガー ja.wikipedia.org
彼は1868年11月に、フランクフルトで行われた初代の
ロスチャイルド１世の五男の葬儀において、ユダヤ教の
ラビとして説教していたと言われています。
このアブラハム・ガイガーの活躍によって、ドイツの
ユダヤ人のあいだではＡＤ1850年までに、彼の創設した
「改革派ユダヤ教」が、圧倒的な勢力を得るに至ったと
いうことです。
ところで、
現在のイスラエル政府の方針は、パレスチナに対する
人種差別的なイデオロギーと「シオニズム的軍事思想」に
基づいていると思われます。
そこで、次回では、イスラエル共和国の建国における
シオニズムやロスチャイルド家との関連性などについて
の考察を考えています。
下記の画像は予告編的なオマケです。
モーゼス・モンテフィオーレ（ロスチャイルド一族）ia-wake.hatenablog.com
フランス・ロスチャイルド家のエドモンド・デ・ロスチャイルド 500シェカリム紙幣（イスラエル共和国）
２人は「イスラエル建国の父」として知られています。
さて、
ここで、サバタイ･ツヴィにまつわる〝こぼれ話〟を
いくつか紹介したいと思います。
当初、サバタイ・ツヴィがメシアであるという考えは
、意外なことにも比較的裕福なユダヤ人たちのあいだで
最初に受け入れられました。
たとえば、
アムステルダムの資産家であるアブラハム・ペレイラ
という人は、サバタイ・ツヴィの熱狂的な信者で、聖地
パレスチナへの旅を真剣に考えていたといわれています
し、ドイツでも、ラビたちを中心にメシア運動が起こり
、資産を売って聖地への旅に備えるユダヤ人たちが続出
することになります。
ギリシャでは雲に乗って聖地まで行けると信じ、屋根
から飛んだ人が落ちて死ぬ事件まで記録されています。
ホンマかいな！？ う～む (^▽^;)(^^ゞ
まあ、何にしても、
どんな形であれ、「救済のときは近い」という心理が
サバタイ・ツヴィを信じるユダヤ人たちの間に広がって
いく中で、サバタイ・ツヴィは疑いようのないメシアで
あるという妄想がドンドン拡大していったわけですね。
以上、
『ユダヤ教徒の「カバラ」とメシア運動の歴史』および
『ユダヤ教徒の「終末思想」と ユダヤ教神秘主義思想
「カバラ」』（inri.client.jp & www1.s-cat.ne.jp）の記事
から適宜に抜粋し、引用・構成・加筆編集しました。
畢竟、
彼らユダヤ人たちは、いい意味でも、悪い意味でも、
「敬虔者」（信奉者）だったのです。
そういえば、その昔、駅前のパチンコ屋に
「敬虔者」というパチンコ台があったのよ！
「そんなわけあるかい！」
「とち狂ったわけじゃあるまいな！」
「敬虔と経験のマチガイだったかも？？？」
・・・ って、おいおい、
（パチンコ屋なのか、パチンコ台なのか？）
スターチルドレン www.konohana-yuan.jp
スターチルドレン note.com
画像元： domani.shogakukan.co.jp
繰り返し見えるパチンコ玉のビジョンは霊的攻撃の兆候かもよ？
・・・・・ う～む (^▽^;)(^^ゞ
… to be continued !!
なんだかなぁ！
ダ・ヴィンチによる推理は続きます。
サバタイ派（ユダヤ陰謀論の原点？）note.com
牢獄内で拘禁具にはめられているツヴィと、謁見に訪れた客人を描いた版画。
但し、ガリポリでの監禁時なのかウルチニでの監禁時なのかは分かっていない。
なんか、既視感がハンパない気がするんですが、
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