の引退を発表した宮崎駿監督(72)が本日(9月6日)午後、
都内で会見を開き、自らの口で 「何度も辞めようと言って
騒ぎを起こしてきました人間ですが、今回は本気です」 と
薄笑いを滲ませつつも神妙な面持ちで決意を語りました。
早い話が、前作の 『崖の上のポニョ』 から 5年の歳月を
費やして今回の 『風立ちぬ』 の公開となったわけで、次回
となると、あと何年かかるか、今度は 5年じゃすまない。
7年かかると80歳になる。だから辞めるというわけです。
一見、もっともな話ですが、わざわざ引退を発表するには
少々不満の残る妥当性を欠いた理由のような気がします。
会見を見聞きしての素朴な感想ですが、神妙だったのは
最初だけで、記者からの質問に照れも手伝ってか、右隣の
鈴木プロデューサーと苦笑いをする場面が多く、見ていて
不愉快というか、不遜で不真面目な上から目線に終始した
引退詐欺的な会見だったような印象が拭えないのです。
それと言うのも、イタリアのリド島で開催された 『第70回
ベネチア国際映画祭』 の公式会見の場でスタジオジブリ
の星野社長が 「世界に大変に友人の多い宮崎駿に関する
発表をこの場でさせていただきます。 『風立ちぬ』 を最後
に、宮崎駿監督は引退することを決めました」 と現地時間
の 9月1日に電撃的に発表したわけですが、『風立ちぬ』を
コンペティション部門に出品している立場上 その必然性に
疑義があったということです。
言わば、グランプリである「金獅子賞」狙いかと …
まあ、そんなわけで、端から斜に構えて見ていた所為も
あって、辛辣で意地悪な感想となったわけです。
さて、それはそれとして、『風立ちぬ』 の公開を前にして
朝日新聞のインタビューで宮崎駿監督はこう語りました。
「僕自身を含め、日本のある時期に育った少年たちが、
先の戦争に対して持つ複雑なコンプレックスの集合体。
そのシンボルが零戦です。日本は愚かな思い上がりで
戦争を起こし東アジア全域に迷惑をかけ焦土となった。
実際の戦いでも、ミッドウェー海戦など作戦能力が低か
ったとしか思えないような歴史しか持っていない。そんな
中で『負けただけじゃなかった』と言える数少ない存在が
零戦です。開戦時に322機あった零戦と歴戦のパイロット
たちは、すざまじい力をもっていた」
そうです。 そうしたゼロ戦の勇姿が唯一かろうじて戦後
を生きる少年たちのアイデンティティーを保つ手段であり、
切り札でもあったのです。
その意味からは彼の言っている言葉に嘘はありません。
おそらくは極左マンガと揶揄されて、騒動を巻き起こした
『はだしのゲン』 の主人公も同じ気持ちを共有して
いたはずです。
戦中派の宮崎氏と戦後しばらくしてから生まれた2号と
では考え方にいくつかの齟齬(そご)や相違があるとしても
この点においては同じです。
1960年代半ば、「ゼロ戦神話」は他のすべてを駆逐する
勢いにありました。
少年漫画も海軍のゼロ戦や陸軍の隼(はやぶさ)などを
主体にした空戦マンガであふれていました。
ご多分に漏れず、2号 の少年時代の憧れはゼロ戦の
絶対的なエース 坂井三郎中尉でした。
マンガでは、ちばてつや氏の 「紫電改のタカ」 の
ファンで、後に生まれる代表作 「あしたのジョー」
よりも、個人的には、ずっとずっと印象に残る作品です。
子どもでも … たとえ幼くても、戦争がいけないことくらい
わかっていました。
そして、日本が戦争に負けたことも …
ただそれは、開戦の初期でのゼロ戦の優位も、大工業国
であった米国のF6FヘルキャットやP-51マスタングの性能
向上に抗しきれずにいた日本も紫電改なら十分対抗できる
かも、という淡い期待を抱かせる物語に惹かれて …
しかし物量で迫り来る米国には太刀打ちできずに敗れる
けれど、決してクオリティでは負けていないという一点だけ
で敗戦国の少年の心を満足させてくれたのです。
だからと言って、戦争賛歌や戦争を賛美・礼賛する内容
を持った作品では断じてなかったはずです。
特に最終回では特攻に飛び立った後の主人公をよそに、
出撃の事実を知らされていない母と姉(恋人かも…?)が、
おはぎを作っていそいそとやって来るひとこまがあります。
二度と逢えない運命を知ってか、知らでか、面会に思い
を馳せる列車内でのふたりの楽しげなシーンが目に焼き
ついて離れません。
ついでに言えば、小沢さとる氏の 「サブマリン707」 も
よかったですね
… って、話があさっての方向に飛んでいるようなので、
いそいで軌道修正しますが、実は宮崎駿監督は生粋の
軍事オタクらしいのです。
それも相当のものらしく、あの石破茂自民党幹事長に
負けず劣らずの筋金入りだとか …
なんでも、幼少時からの軍事マニアで、第2次世界大戦
以前の戦史・兵器に造詣が深く、彼自身も「軍事マニアで
戦争や兵器に惹かれる自分と反戦思想を持っている自分
自身の二面性」についてもよく語っているようで、自衛隊の
必要性は認めても、最近の日本のタカ派的風潮や右傾化
する空気に対しては苛立ちを隠しておらず、憲法改正には
明確に反対を唱えて、「護憲」 の姿勢を鮮明にしています。
スタジオジブリの広報誌である「熱風」 7月号で 「憲法
を変えるなどもってのほか」 と題する記事を宮崎氏 自らが
執筆し、「慰安婦問題で日本は謝罪して賠償すべきだ」 と
発言したことも大きな話題を呼びました。
そこで、
反戦思想の軍事マニアあるいは平和主義者の軍事オタク
なんて精神分裂症状の自己矛盾以外には考えられないと
一般的にはそうした意見が多く聞かれますが、おそらくは
彼のなかで、この相反するような主義思想 と趣味嗜好は
必ずしも矛盾してはいないのです。
宮崎駿監督の実体は唯物思想の現実主義者、
つまり、正真正銘 の 「リアリスト」 です。
唐突ですが、話が横道に逸れた分、紙面が窮屈となって
しまったので、この続きは、次回ということで …
さて、今夜は宮崎駿監督の引退を受けて、急遽放映の
日テレ系 金曜ロードSHOWの『紅の豚』 を酒の肴に
リアリスト宮崎駿の正体をみてやろうと思います。
たとえ、どんなに醜くも酷な言われようをされたとしても
それもこれも高名なあなたの有名税ですので
どうか、あしからず
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