ダ・ヴィンチの罠 仮実験

　ダ・ヴィンチが手掛けた作品のテーマはバラバラで、著しく
統一性に欠ける題材の絵画ばかりのような気がします。

　彼の作品とされている十数点の絵画などを小生流に仕分けて
、特定の基準に従い分類するとなれば、４つずつのグループに
分けることが可能となります。

　そうしたグループとしての「４」の編成を下記に示せば、

　　　　　　

　【窓の数】による「４」の編成、

『ブノワの聖母』　　『リッタの聖母』　  『最後の晩餐』  『カーネーションの聖母』

　① 『ブノワの聖母』　
　② 『リッタの聖母』　
　③ 『最後の晩餐』　　
　④ 『カーネーションの聖母』

　【肖像画】女性による「４」の編成、

 

『ジネヴラ・デ・ベンチの肖像』 『白貂を抱く貴婦人』 『ミラノの貴婦人の肖像』 『モナ・リザ』

 

　① 『ジネヴラ・デ・ベンチの肖像』
　② 『白貂を抱く貴婦人』
　③ 『ミラノの貴婦人の肖像』
　④ 『モナ・リザ』

　【肖像画】男性による「４」の編成、

 

 『サルバトール・ムンディ』 『音楽家の肖像』 『洗礼者聖ヨハネ』 『自画像』

 

　① 『サルバトール・ムンディ』
　② 『音楽家の肖像』
　③ 『洗礼者聖ヨハネ』
　④ 『自画像』

　【野外・荒れ野】における「４」の編成、

 

　　　　『受胎告知』　　　　　　　　 『荒野の聖ヒエロニムス』

　　

　　『東方三博士の礼拝』　　　　　『アンギアーリの戦い』模写

 

　① 『受胎告知』
　② 『荒野の聖ヒエロニムス』
　③ 『東方三博士の礼拝』
　④ 『アンギアーリの戦い』

　【岩場・洞窟】における「４」の編成、

 

 
　　『岩窟の聖母』２作品　　　　　　　 『糸車の聖母』２作品

　『聖アンナと聖母子と幼児ヨハネ』　　　　 『聖アンナと聖母子』

　① 『岩窟の聖母』２作品
　② 『糸車の聖母』２作品
　③ 『聖アンナと聖母子と幼児ヨハネ』
　④ 『聖アンナと聖母子』

 

【エトセトラ】その他の「４」の編成など、

 

　
　『ウィトルウィウス的人体図』  『レダと白鳥』模写 『イモラの地図』 『キリストの洗礼』の一部

　① 『ウィトルウィウス的人体図』 
　② 『レダと白鳥』模写（チェザーレ・ダ・セスト）

　③ 『イモラの地図』（パトロンの命令での制作）
　④ 『キリストの洗礼』（左の天使と背景の一部を描く）

　といった具合で、ジャンルごとに４つずつのグループ編成
で構成されるように作品を創作していったものと想像される
のですが ・・・ 

　　　　　　　ふむ　　　　ふむ　　　　ふむ

　　　　　
　　　　　　　 画像元　 www.pinterest.jp　　　　　　　　　　

　そうは言っても、パトロンであるチェーザレ・ボルジアの
命令で描いた『イモラの地図』や師匠ヴェロッキオの創作
を手伝った『キリストの洗礼』などは微妙な選択ですが、

　果たして、本当のところはどうなのでしょうか❓

　　　　　　　　　（う～む・・・）

　さて、

　ダ・ヴィンチは、６年間にわたるヴェロッキオの工房での
修行を終え、画家として独立した後の間もない時期に


　　『キリストの洗礼』 ヴェロッキオ工房制作

　ヴェロッキオ工房による『キリストの洗礼』の創作を
手伝い、左端の天使や風景（背景）の一部などを描くこと
で、早くも大器の片鱗を見せつけたものの移り気で無頓着
な性格が災いし、制作途中での仕事放棄を立て続けに連発
することになります。

　思うに、そこには、

　依頼された仕事内容の画題では「罠」の構築が困難
であったとか、あるいは、完成させるよりも未完成のまま
の方が「罠」の意図が伝わり易く、また、隠しやすい
との判断がはたらいていたと考えると合点がいくのです。

　例を挙げるとすれば、それらが、

　『東方三博士の礼拝』『荒野の聖ヒエロニムス』
といった未完成作品なのかもしれません。　　　

　

　　　　『東方三博士の礼拝』　　　　　　　『荒野の聖ヒエロニムス』

 

　話を『キリストの洗礼』に戻しましょう。

　 『キリストの洗礼』　　Wikipedia「Remasterd Color」版　 1472~1475年 ウフィツィ美術館

　この作品はフィレンツェの画家組合に加入し、親方として

独立した後のダ・ヴィンチが、20代前半までヴェロッキオの
工房にいた時代のもので、師匠との合作と言われています。

 

　作品の構成はかなり印象的であり、中心にキリストの姿が
があって、洗礼者ヨハネから洗礼を授かる様子を２人の天使
が見守る構図ですが、

 

　この絵にはいたるところに「罠」の仕掛けが施されて
いて、数々の実験的な試みがなされていたようです。　

 

 

　ダ・ヴィンチが描いたとされている左の天使の視線は主役

のイエス・キリストではなく、洗礼者ヨハネと奇妙なかたち

をした鳥や木の枝に向けられていて、もう一人の天使も主役

に目が向かないどころか 見当違いの方向を見つめています。

　

　　　　 

 

　天使が持つイエスの衣服は鎌首をもたげたコブラのようで

後ろにある棕櫚（シュロ）の木は蛇の集団を想起させます。

 

　

　イエス・洗礼者ヨハネ・天使たちの姿が前景にあり、背後

にある風景からは別の物語が紡げそうな雰囲気が漂います。

 

　背景の中にＵＦＯと思しき奇妙な鳥の姿や木の枝の造形に

蛇の大群らしき棕櫚の木などがやたらと目に付くことからも

 

　　　　　　　　　画像元 curlchigasaki.hatenablog.com

 

　別の物語とは、ズバリ、ＵＦＯを連想させる内容のもので

「古代宇宙飛行士説」まがいのお話ですね！

 

　　　　　　　『キリストの洗礼』ヴェロッキオ工房

 

　ちなみに、

 

　一説によると、洗礼者ヨハネのモデルとして彼自身の顔を

採用したことや、イエスの姿はダ・ヴィンチがフィレンツェ

の近くで見つけた若い農夫がモデルであるとされています。

 

　 
　　イエス・キリスト　　　　　　洗礼者聖ヨハネ　

 

　師匠のヴェロッキオにも、他の弟子たちからも「罠」の

存在が気づかれなかったことに気をよくしたダ・ヴィンチは
いよいよ、デビュー作である『受胎告知』に本格的な
「罠」を仕込み始めることになるのですが ・・・

 

　　　　　　　　　『受胎告知』　

　　　　　　　　　　　　『受胎告知』 聖母マリア部分

　　　　　　 『受胎告知』大天使ガブリエルと聖母マリア部分

　　　　　　 　

　それは、また、次回での解説として『キリストの洗礼』
における仮実験（模擬実験）の続きを見てみましょう。

　　　　　　　

　少なくとも『キリストの洗礼』という題名にしては
どう見ても洗礼者ヨハネの方がイエスよりも目立って
見えてしまうのは如何なる理由によるものでしょうか❓

　介添えの天使の視線の先には洗礼を施す洗礼者ヨハネの
姿がありますし、

　白い鳩が見つめる目線もイエスではなく、明らかに
洗礼者ヨハネにその視線が注がれていますよね　　

　この絵画では、あきらかにイエスよりも洗礼者ヨハネを
上に置いていることがわかりますし、あからさまにイエス
を拒否し、否定するような２人の天使の存在をどのように

考えればいいのでしょうか❓

　畢竟するに、

 

　これだけ挑戦的な表現をしているのにもかかわらず教会
（ローマ・カトリック）側からのクレームや何のお咎めも
なかったことで「仮実験」は成功裏に終わりました。

　そして、それを受けて、

　ダ・ヴィンチは、さらなる大胆な「罠」の仕掛けを
計画し、挑むことになったのですが、

　　　　　　　　　　　　『受胎告知』1472～1475年頃

　それが、

　次回での解説を予定している『受胎告知』です。

　　　　
　　　　おしべが花粉を出して、
　　
　　　　めしべが花粉を受ける。
　
　　　それが受粉（受精）であり、

　　　人間においては受胎となる。

　それは少女マリアが受胎に至るまでの真実の裏側にある
秘密を暴露する衝撃のデビュー作品となっています。

　　　　　　　　　　　　（ゲロゲロ ）

　30年後に、チェーザレ・ボルジアの命によりイモラの町
を上空から眺めるような地図を描くことになるのは、　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　イモラの地図 www.creativosonline.org

　歴史の必然だったのかもしれませんね！　　　

　　　　　　　　　画像元 curlchigasaki.hatenablog.com

　それは、きっと、

　　　「オルタナティブ」ってことだよね！
　
　　

　　　　　　・・・ って、おいおいおい、　　　　　

　　　 　　　　
　　　　　　　　　　マジかょ！　　　　　

　　　 … to be continued !!　

　

　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　むむむ ・・・