ライフスタイルをデザインする建築家の・・・ライフスタイル

ライフスタイルをテーマに建築家の日常を綴っています。
最近は子育てを中心に時々建築話、旅行記や映画の事を綴っています。

■世界平和記念聖堂~村野藤吾設計

2009-08-19 00:03:33 | ■建築見学・展覧会
広島旅行の始まりはこの世界平和記念聖堂から始まりました。
広島への原爆投下の犠牲になった人々への追悼と慰霊の為に建てられた聖堂で、日本の近代建築の巨匠・村野藤吾氏による設計のものです。

たまたま、ボランティアガイドの方に案内していただきいろいろ話をうかがうことが出来たんですけど・・・
実はこの聖堂の設計はコンペ方式だったそうで、その審査員の一人が村野藤吾先生だったんですね。

でも、一等の受賞者がいなくて・・・
困った神父さんが村野氏に設計を依頼してこの聖堂が出来たそうです。
なんだか、いい話じゃありませんが、でも村野氏は設計料を貰わない事を条件に設計を引き受けたそうです。

世界平和祈念堂


その設計条件の一つに日本らしさをかね添えた近代的な建物というオーダーがあったんですね。

日本らしさ


その難しい問題を村野氏は独創的な手法で解決しています。
その一つが、聖堂に設けられた窓の形。
松竹梅の模様になっているんですね。(写真では解りづらいですが訪れたらご自身の目でご確認してみてください)
また、吊り下げられた照明器具も蓮の花を象っているようで、そういった目で鑑賞すると面白いです。

格天井や欄間を模したデザインがあったり・・・

後付のドーム


教会の建設には寄付金がつきもの。
その中でも多額の寄付をしていただいた方の功績を形にしたのがこのドーム天井です。
本来設計では真四角の天井の予定だったんですけど・・・
後から付け加えられたとか。
なんか、ハリウッド映画がスポンサーの意向でストーリーが変る的な話しを聞いたことがありますが、建築でもそういう事があるんですね。
村野さんはどんな気持ちだったのかな??

ちなみに、写真右下の椅子は大司教の椅子だそうで、カトリック教会の中でカテドラルと呼ばれる教会のみこの椅子があるんだそうです。
教区ごとにカテドラルは一箇所のみ。
ちなみに日本には16教区あって東京教区は東京カテドラル聖マリア大聖堂となっています。

ケルンからのパイプオルガン


司祭さんはドイツ出身の方で、建設にもドイツからの寄付が沢山集まったようです。
寄付はお金だけでなくて、このパイプオルガンはケルンからのだそうです。

ステンドグラス


窓に設けられたステンドグラスはガラスに色を付けた簡易なもの。
方角によって色使いを変えているようです。

鐘塔


ガイドさんに付き添って見学させていただいた中で一番良かったのが、この鐘塔に登らせていただいた事。
普段は入れないエリアを案内させていただきました。

鐘


教会の鐘は今は電動で動かしているんですね。
この規模の大きさになるとモーターを動かし始めてから鐘が鳴るまで一分以上かかるんだとか。
人の力で鳴らすとなると大変ですね。

これらもドイツからの寄贈品。

鐘塔からの眺め


鐘塔からの眺めは格別です。
ここからだと、先ほどのドーム天井が良く見えます。
ほんと、後から取ってつけたようないい加減なデザインです・・・

神の門


エントランスの門扉は3箇所。
そのうちの真ん中の扉は取っ手がないんですよね。
コレは内側のみから開ける事が出来るという意味があるんだそうです。
神の手で招きいれてもらうんだそうです。

かわいい取手


その両脇の扉の取手もなかなか可愛いです。
このへんは村野氏の思惑とは違う力が働いているようです・・・

被爆地のレンガ


最後に注目すべきは、この外観のレンガ。
被爆地の土を固めて作った素焼きレンガで、戦争の記憶を刻んでいます。

村野東吾氏の設計という事で今回見学に訪れたんですけど、著名建築という事だけでない魅力が世界平和記念聖堂にはありました。
戦後の復興の中で、キリシタン以外にも受け入られる教会を目指しただけあって、教会のどこか近寄りがたい神聖な雰囲気とは違い、温かく、馴染みやすい祈りの場だと感じました。

この世に「あなたの終わりなき平和」をお与え下さい。
という教皇の言葉に見守られて日本、そして広島に二度と戦争の火の粉が降り注ぐ事のないように祈りたいと思います。

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次は原爆ドームに向かいます!


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