ライフスタイルをデザインする建築家の・・・ライフスタイル

ライフスタイルをテーマに建築家の日常を綴っています。
最近は子育てを中心に時々建築話、旅行記や映画の事を綴っています。

■フランク・ロイド・ライトの玉手箱~オークパーク探索・全部見せます~シカゴ・カナダ旅行③

2007-10-24 23:38:07 | ■建築見学・展覧会
2007年9月末に訪れたシカゴ・カナダ旅行のレポート第三弾。

フランク・ロイド・ライトの自邸&スタジオを見学の後は、オークパーク内にあるライトの設計した住宅を見学しに向かいます。

ライト邸内のギンゴーツリーブックショップで”セルフガイド・エクステリア・オーディオツアー”を申し込み、アイポットを片手に日本語の解説を聞きながらライトの建築物をはじめプレーリースタイルの住宅など20棟を見学して回りました。

ちなみに冒頭の写真はそのギンゴーツリーブックショップで売っていたライトの幾何学模様をあしらった玄関マット。
欲しかったんだけど、旅行の始めからそんな大荷物かかえるわけにいかず断念しました・・・

①ロバート・P・パーカー邸?
1892年 フランク・ロイド・ライト 新築

ライトの初期の作品で、私たちがライトと聞いてイメージするスタイルの住宅と全く異なる。
地球の歩き方に掲載されている写真が私のそうだと思って見てきた建物と異なる為、もしかしたら↑違う家の写真かもしれませんが、まぁそんな程度の印象?の建物。

②トーマス・H・ゲイル邸
1892年 フランク・ロイド・ライト 新築


この家も①と同時期に建てられた建物で、ライトがサリバン先生の事務所に勤務しながら設計したもの。
この仕事が契約違反(師匠であるサリバン氏との)を招き解雇につながる。
八角形の屋根が特徴的だ。

③ウォルター・H・ゲイル邸
1893年 フランク・ロイド・ライト 新築


1893年竣工。
先の二軒のすぐ近くに建っていて、二年の間に(副業で)コレだけの仕事をこなしてしまうライトに感心。

④ネイザン・G・ムーア邸
1895/1923年 フランク・ロイド・ライト 新築・改修


ライトが独立して手掛けたこのムーア邸。
隣人に住む友人の為の設計であり、友人の希望通りチューダー様式で設計された。



この住宅の面白いのは、表と裏で全く表情が異なる事。
建築後27年たって2,3階部分が火事で消失してしまい建て直した事が影響していると思われるのですが、一つの建物にライトのデザインが凝縮されていてとても面白い。



特にテラス部分の装飾はマヤ文明の影響が見られます。
これらオークパークで見られる邸宅は自邸以外個人所有のため、遠巻きに見ることのみ許されます。
もう少し近くでじっくり見たかったのですが、カメラのズームレンズで覗く形で見学です。

⑤エドワード・R・ヒルズ(デカロ)邸
1896/1906年 フランク・ロイド・ライト 改築/再建

④のネイザン・G・ムーア邸のすぐ向かいに建つこの家は、ライトが大規模な改築を行ってデザインした邸宅。
これぞプレーリースタイルと思われるデザイン要素が散りばめられていて、今計画中のプレーリーハウスの参考になりました。



実はこの家は改装中で、内装業者が頻繁に出入りしてました。
私にもっと英語力があれば無理言って工事現場を見れたかも・・・
と、残念でありません。

オークパークの邸宅は門塀で囲まれている事が少ないのですが、この家はこのような鉄柵で囲まれ、ライトがデザインしたと思われる照明が据えられています。
このちょっとしたデザインがグッド。

⑤アーサー・B・ヒュートレイ 邸
1902年 フランク・ロイド・ライト 新築

プレーリースタイルの代表作。
ライトが目指した地平線に沿うような水平線を強調したデザイン。
幅の広い庇やキャンチレバー構造などこの建物でそれらのモチーフが確立している。
ライトのこれらの邸宅は、暖炉が家の中心にあることも注目すべき。
煙突の場所を外から眺めるとその様子が良く解るのですが、家の中心=家族の中心ととられデザインされていることが表れています。



ヒュートレイ邸の注目すべきはそのエントランス。
複雑に入り組んでいて、中が見通せないようになっている。
そして、このRのついた意匠が特徴的。
水平線を強調する為にレンガの色を交互に変えるなどの工夫は、先日見たフレデック・C・ロビー邸でも見られた手法。

やはりライトはプレーリースタイルが一番だと思うなぁ。

⑦ローラ・ゲイル 邸
1906年 フランク・ロイド・ライト 新築

落水荘(Fallingwater)の原型ともいえる作品。
キャンチレバー構造(迫り出したバルコニー・片もち梁)をはじめ幾何学的なステンドグラスなどそれらの要素が洗練されている。
木でどうしても隠れてしまい、写真では伝わらないと思うのだが、実に落水荘的。
こじんまりとしてるが、とてもいい。

⑧ピーター・A・ビーチィ 邸
1906年 フランク・ロイド・ライト 新築

日本のハウスメーカーの商品でよく見るのがこのスタイル。
ライト的な住宅で真似しやすいのがこの形なのだろうか?

⑨フランク・W・トーマス 邸
1901年 フランク・ロイド・ライト 新築


オークパーク内で見られる一番古いプレーリースタイルの住宅。(ライト設計による)
水平線が極端に強調されており、これぞプレーリーハウスの原点とも思える作品。



やはりこの住宅でも入り口がポイント。
Rのついたゲートの正面に玄関?
と、おもいきや、わざと視線をそらした側面に設けられているのが良く解ります。

この家の破風やボーダーなどの装飾全てが漆喰で出来ておりここもポイント。

⑩クィーン・アンスタイルの邸宅
1890年代 作者不明


このオーディオツアーには、ライトが設計した建物以外の解説が含まれているのですが・・・
①~③の邸宅はこの年代に作られたもの。
比較対照として見てください。

⑪スティックスタイルの邸宅
??年代 作者不明


⑫クラシカル・リバイバル スタイルの邸宅
1905年代 作者不明


⑬ハリソン・P・ヤング 邸
1895年 フランク・ロイド・ライト 改築


丸いキャンチレバーの屋根が特徴的な建物。

⑭ジェスパ&シンプソン・ダンロップ 邸
1896年 E・E・ロバーツ 新築


ライトと共にオークパークで一時代を築いたE・E・ロバーツの作品。

⑮A・B・メルビル邸
1904年 E・E・ロバーツ 新築


そのE・E・ロバーツがデザインしたプレーリースタイルの邸宅。
この家は特にプレーリースタイルの特徴が良くでていて見事でした。
本来はアメリカの大草原に建つアメリカらしい住宅をデザインするムーブメントだったのですが、このような広い敷地をもった郊外の住宅地でも充分に様になっています。

このプレーリースタイルを日本に取り込むにはやはり難しいのだなぁと痛感しました。
今回デザインしてみて、どうしても家が縦長になってしまい、その水平線の強調がとても困難だったからです。
住宅の縦の長さ(高さ)が仮に同じだったとしたら、面積の大きい建物の方が横長に見えわけで・・・
敷地だけでなく、豪邸と呼べる規模の大きさの建物でないと形にならないからです。

日本の敷地・風土にあったジャパニーズ・スタイルのプレーリーハウスを模索しなければなりませんね。

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次回は、シカゴの市内の建築群を紹介いたします。

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■ハイドパーク&フランク・ロイド・ライト「フレデリック・C・ロビー邸」~シカゴ・カナダ旅行①

■フランク・ロイド・ライトの自邸&スタジオ・ユニティテンプル探訪~シカゴ・カナダ旅行②

■建築の坩堝~ミース・ファンデ・ローエに珠玉の夜景~~シカゴ・カナダ旅行④

■地球上のブラックホール~ナイアガラの滝・トロント・ハミルトン~シカゴ・カナダ旅行⑤

■メープル街道に北米唯一の古城~シカゴ・カナダ旅行⑥

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■AkatukiのHPはこちらから
世界各国の美しい写真を多数ご覧いただけます。

■フランク・ロイド・ライト氏デザインの帝国ホテル正面玄関の写真を公開してます



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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ひろぽん)
2007-10-27 01:35:13
なんかもう、夢の中を歩いた気分です。
デザインにポイント置いて、どれも素晴らしい家です^^
ほんと凄い人なんですね。
返信する
ほんの一握り (akatuki)
2007-10-28 23:16:57
>ひろぽんさん

ライトは生涯に何百もの住宅を手掛けているのでここに掲載したものはほんの一握り。
ほんと、ただただため息です。偉大すぎ!
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