トークショー開始から約3時間・・・
ようやく内部を見学させていただけることに。
窓が開放され、とてもよい雰囲気だ。
紫色の絨毯がとても品よく空間を引き締めている。
このアトリエは、現在も脇田和さんが利用し、住んでおられる。
その為、寝室や水周りの一部は見学できず、アトリエの一部とこのリビングだけが見学することが出来た。
決して高くない天井も落ち着いた気持ちにさせてくれて居心地がいい。
特に気持ち良いのが、この写真の奥にあるダイニングスペース。
くの字型の平面構成のちょうど角を利用したダイニングで、五角形のテーブルを囲む作り付けのソファーが実に気持ちい。
コーナーの細長の障子も、実にバランスがよく、あたたかい光を取り込んでくれる。
天井に張られた杉板がまた美しい・・・
低く抑えられた天井を強調しているかのようだが、その為、窓から眺める景色がぐっと強調され、逆に外に広がり広々とした雰囲気を醸し出している気がした。
この山荘は、韓国のオンドル式暖房をアレンジして利用している。
1階のコンクリート部分にあるボイラーで空気を暖め、床下の隙間を利用して空気を流し、床暖房に近い効果が得られている。
その為、空気の通り道が必要で、作り付けのソファー裏には網の張られたスリットがあり、そこから空気が出てくる仕組み。
その吹き出た空気は、庭を囲むサッシの鴨居の溝を利用したスリットから吸い込まれ、空気を循環させる仕組みとなっている。
吉村先生の設計ですばらしいのは、この設備をしっかり考えられているところだ。
コンクリート打ち放しの意匠を優先する建築家とはこういう点で、根本的に異なると思っている。
---
先の、トークショーで聞いた話で、吉村先生はよく「内部から空間を考えなさい」といったそうだ。
家を利用する人の気持ちで気持ちよい空間を考え抜くべきだ」と。
建築士の編集長だった”馬場”氏は、「かといって、外観がよくないと写真を載せる側は困る。しかし、外観の事は何も語らない吉村先生も、しっかり外観のとこも考えられていた・・・」
最近の建築家は良く公共性、社会性、一般論で住宅を語り設計する傾向にある。
吉村先生は、そういった理屈より感覚を重視した、”特殊解”を住宅に求めていたという。
常識にとらわれない手法は、例えば障子の桟などのデザイン(一般的に障子の桟は細く目立たなくする→太くして枠と同じように見せる)や、
柱の面取り(数奇屋建築や一般的な住宅は、柱の角を斜めにカットする寸法を様子着によって体系化している→空間のボリュームに合わせて寸法を決めている)
など、気持ちよい空間を作るために、独自の考えを盛り込んでいくもの。
この考えは、建築家を目指すものにとって大変勉強になる。
晩年、吉村先生は「日本建築を勉強するなら、数奇屋から入ってはいけません。まずは書院から学ぶべきです。」とおっしゃったそうだ。
これは、応用から入るのでなく、まず基本に忠実であれというお言葉だと思う。
画家のピカソも始めから抽象画を書いていたのではない。
デッサンや下積みがあったからこそ、今の評価があるわけで、建築もまずは基本を会得せねばという思いを私に抱かせてくれた。
また、もう一度ちょっと振り出しに戻ってみようかなぁ~と・・・
---
現存する吉村先生の作品を実際に見学できる機会は非常に少ない。
とても貴重な体験でした。
■吉村設計事務所(現在は、氏の設計した物件のメンテナンス等を行っている)
■吉村順三記念ギャラリー(時々展覧会を行っており、氏の設計したアトリエを一部見学できる)
★吉村順三建築展(東京藝大にて2005年11月10日から開催されます。)
■JAで吉村順三の特別号が創刊されました。
---
諸データ
■作品名 軽井沢の山荘B(脇田山荘)
■所在地 長野県北佐久郡軽井沢町
■主要用途 別荘 アトリエ
■敷地面積 1,914.9m2
■建築面積 167.7m2
■延床面積 219.2m2
■構造 1階:鉄筋コンクリート造 2階:木造
■規模 地上2階
■竣工 1970年
→北欧モダン・和風モダン・プレーリーハウスの家造りblogで一部記事をリライトしました。
ようやく内部を見学させていただけることに。
窓が開放され、とてもよい雰囲気だ。
紫色の絨毯がとても品よく空間を引き締めている。
このアトリエは、現在も脇田和さんが利用し、住んでおられる。
その為、寝室や水周りの一部は見学できず、アトリエの一部とこのリビングだけが見学することが出来た。
決して高くない天井も落ち着いた気持ちにさせてくれて居心地がいい。
特に気持ち良いのが、この写真の奥にあるダイニングスペース。
くの字型の平面構成のちょうど角を利用したダイニングで、五角形のテーブルを囲む作り付けのソファーが実に気持ちい。
コーナーの細長の障子も、実にバランスがよく、あたたかい光を取り込んでくれる。
天井に張られた杉板がまた美しい・・・
低く抑えられた天井を強調しているかのようだが、その為、窓から眺める景色がぐっと強調され、逆に外に広がり広々とした雰囲気を醸し出している気がした。
この山荘は、韓国のオンドル式暖房をアレンジして利用している。
1階のコンクリート部分にあるボイラーで空気を暖め、床下の隙間を利用して空気を流し、床暖房に近い効果が得られている。
その為、空気の通り道が必要で、作り付けのソファー裏には網の張られたスリットがあり、そこから空気が出てくる仕組み。
その吹き出た空気は、庭を囲むサッシの鴨居の溝を利用したスリットから吸い込まれ、空気を循環させる仕組みとなっている。
吉村先生の設計ですばらしいのは、この設備をしっかり考えられているところだ。
コンクリート打ち放しの意匠を優先する建築家とはこういう点で、根本的に異なると思っている。
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先の、トークショーで聞いた話で、吉村先生はよく「内部から空間を考えなさい」といったそうだ。
家を利用する人の気持ちで気持ちよい空間を考え抜くべきだ」と。
建築士の編集長だった”馬場”氏は、「かといって、外観がよくないと写真を載せる側は困る。しかし、外観の事は何も語らない吉村先生も、しっかり外観のとこも考えられていた・・・」
最近の建築家は良く公共性、社会性、一般論で住宅を語り設計する傾向にある。
吉村先生は、そういった理屈より感覚を重視した、”特殊解”を住宅に求めていたという。
常識にとらわれない手法は、例えば障子の桟などのデザイン(一般的に障子の桟は細く目立たなくする→太くして枠と同じように見せる)や、
柱の面取り(数奇屋建築や一般的な住宅は、柱の角を斜めにカットする寸法を様子着によって体系化している→空間のボリュームに合わせて寸法を決めている)
など、気持ちよい空間を作るために、独自の考えを盛り込んでいくもの。
この考えは、建築家を目指すものにとって大変勉強になる。
晩年、吉村先生は「日本建築を勉強するなら、数奇屋から入ってはいけません。まずは書院から学ぶべきです。」とおっしゃったそうだ。
これは、応用から入るのでなく、まず基本に忠実であれというお言葉だと思う。
画家のピカソも始めから抽象画を書いていたのではない。
デッサンや下積みがあったからこそ、今の評価があるわけで、建築もまずは基本を会得せねばという思いを私に抱かせてくれた。
また、もう一度ちょっと振り出しに戻ってみようかなぁ~と・・・
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現存する吉村先生の作品を実際に見学できる機会は非常に少ない。
とても貴重な体験でした。
■吉村設計事務所(現在は、氏の設計した物件のメンテナンス等を行っている)
■吉村順三記念ギャラリー(時々展覧会を行っており、氏の設計したアトリエを一部見学できる)
★吉村順三建築展(東京藝大にて2005年11月10日から開催されます。)
■JAで吉村順三の特別号が創刊されました。
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諸データ
■作品名 軽井沢の山荘B(脇田山荘)
■所在地 長野県北佐久郡軽井沢町
■主要用途 別荘 アトリエ
■敷地面積 1,914.9m2
■建築面積 167.7m2
■延床面積 219.2m2
■構造 1階:鉄筋コンクリート造 2階:木造
■規模 地上2階
■竣工 1970年
→北欧モダン・和風モダン・プレーリーハウスの家造りblogで一部記事をリライトしました。
でも感覚をウリにすることは非常に大変な事だと思います。
それを理解して貰える人ばかりではないですし、
人それぞれ気持ち良い、寛げる感覚が違うのでしょうから。
そして何より自分の「感覚」を磨かねば!!
個人的には雨だれをデザインしたってところが素敵だと思いました。
天井の高さ、奥行きと開口部の関係で自分の気に入った空間を切り取りその感覚を大事にしたそうです。
この感覚は写真や図面からは感じ取れない貴重な空間体験でした。
ほんと、いい建築物に触れて実につけないと思いました。
私の物件は・・・まだまだですが機会あったら紹介します。
理論より感覚ってのは、心にずしんときます。
その感覚的によい空間を実現させるため(建築として統合するため)に理論があるのかな?吉村先生は。
建築ってほんとに大変で終わりの無い仕事だけど、頑張りましょう。AKATSUKIさんのやった物件の内覧会とかあったら教えてね。