ライフスタイルをデザインする建築家の・・・ライフスタイル

ライフスタイルをテーマに建築家の日常を綴っています。
最近は子育てを中心に時々建築話、旅行記や映画の事を綴っています。

■ぽかぽかの蓄熱式床暖房~実験データ報告~第152話

2010-02-08 23:05:12 | ■建築家の自邸・WEBオープンハウス
予告?してました自邸の蓄熱式床暖房のデータ報告です。

本当は、蓄熱式床暖房の成果は直接体感していただくのが一番で、床暖房体験会を開催したかったんですけど・・・
子供が産まれてドタバタしてしまっているので今期の開催は見送らせて戴きました。
また、来期気が向けば開催させていただくかもしれません。
(自宅で打合せ等させていただく場合には体感させていただいています)

とりあえず、このblogを途中からご覧頂いている方にはじめから概略を説明するのが大変なので・・・
まずは過去記事からご覧ください。

簡単におさらいしますと・・・
電気代1/9で、24時間家中暖かい住環境を目指した床暖房です。
オープンプランニングの弱点を克服して、土間空間の底冷えを緩和するシステムを自邸で実験するプロジェクト!
です(笑)

■蓄熱式床暖房のシステム概要と施工状況

■竣工直後の蓄熱式床暖房のデータ報告

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竣工当初のデータでも説明いたしましたが、今回はボタン電池大のデーターロガーを使い家の各所で温度データーを取っているんですね。
それも、外気温のデーターと隣に建つ親世帯のデーターを同時に記録しています。

上はすべてのデーターを重ねて表示をしております。
ちょっと見ずらいと思うのでそれぞれ分析結果とともに分けて記させていただきます。

リビングの温度比較と外気温のグラフ
※クリックすると画像が拡大します


これは、自邸と親世帯の1階のリビング(TVの背後)、外気温のデーターのみを表示した状態です。
水色が外気温、黄色が自邸(蓄熱式床暖房)、黒色が親世帯(通常の床暖房+エアコン)のデーターとなっています。
※2009年12月の21日から2010年2月6日までのデーターです

蓄熱式床暖房の我が家は19度から27度くらいの温度で推移しているのに対し、親世帯は15度前後とその差は歴然です。
親世帯は省エネを心掛けているので、エアコンや床暖房の運転もスポット的な利用で、さらに1月に入ってからは掘り炬燵を利用し、エアコンの利用を控えている為グラフのような温度変化となっています。
どちらも、次世代省エネ基準レベルの断熱性能の家(我が家の方が高性能)であるにもかかわらず、コレだけの差が出てしまいました・・・

それは、やはり投入する熱量の違い。
我が家は毎日7~8時間蓄熱式床暖房を運転しています。
その為外気温と比べてコレだけ暖かい環境を維持できているのです。
逆に親世帯は、エアコンの運転も一日に1~2時間程度だった為、外気温の最高気温を上回る事はなかなか出来ませんよね。
ただ、温かい我が家から親世帯に遊びに行くとその差が歴然だった為、その温度差を体感していた私からしてみれば、コレだけ外気温に引きづられながらもよくこの温度を維持しているなぁと思ったのが正直な所です。
(もっと寒く感じてしまっていた。家で薄着だったから?)

自邸の温度と外気温分析グラフ
※クリックすると画像が拡大します


こちらは自邸の温度計測データです。
期間は同じく※2009年12月の21日から2010年2月6日まで。
水色は外気温、茶色が蓄熱層の温度、青色は土間付近の床(ソファ下)、黄色がリビングのTV裏、ピンクが二階主寝室(窓下の床面)、緑が小屋裏収納部です。

12/31日に娘が退院してきた為、冬に使う予定をしていなかった主寝室のエアコンを利用した為、リビングの蓄熱層の温度が殆どあがりませんでした(12/31,1/1)
また。1/11は電源を入れ忘れてしまったので・・・
それまで溜めてきた貯金(蓄熱)を約5度くらい失ってしまいました。
ちょうど、その日は日中も寒かった為、一気に家の温度がさっがってしまったんですけど・・・
その失った熱を取り返そうと床暖房の温度設定を見直すことにしたんです。

しかし、それが裏目に出ました。

ヒートポンプの熱源機はその能力が外気温に大きく左右されるんですね。
温度を高めに設定(50度)にしたのですが、おそらく外気温との温度差が大きすぎた為、効率が悪く更に温度を下げてしまうことになってしまいました。(1/13~1/15 特に1/15)
すぐに、翌日からは温度設定を見直し徐々に温度は回復する事が出来ました。

今期は主寝室は別途オイルヒーターを利用しているのであまり参考になりませんが、
ベビーベットに設置した温度計では25度くらいを維持していたのですが。窓際の床面では3~4度下がっていたようです。


親世帯の温度と外気温分析グラフ
※クリックすると画像が拡大します


こちらは親世帯のグラフです。
黒色は1階リビング、ピンクは二階の主寝室、緑色は小屋裏階、水色は外気温です。
先に述べましたとおり、毎日エアコンを1~2時間程度しか運転していない為、ちょっと寒い室内です。
充填断熱工法ではありますが、高気密高断熱仕様(次世代省エネ基準)の為、家全体の温度ムラはあまりありません。
我が家が2階の寝室と1階のリビングとでは約5度くらいの温度差があることを考えると、それだけ日中ジンワリと蓄熱した熱を放熱している事がわかります。
(親世帯は1階と2階の温度差は殆どないのに対し、蓄熱している我が家では1階の方が温かい)
また、小屋裏の温度を子世帯と比べると親世帯のほうが暖かいようです。
コレは、親世帯のほうが日当たりが良い(西向きの日差しをいっぱい受ける)為と考えられます。

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蓄熱床暖房のコスト


さて・・・
肝心の蓄熱式床暖房の電気代ですが・・・
東京電力の請求額は4510円となりました。
ここには基本料金945円を含んでいますので、それを差し引くと
3565円となりました。※1
(1/6~2/3 29日間)

一日あたり約123円となりました。

エアコンを仮に3台8時間※2運転するとして計算すると・・・
(0.385+0.435+1.88)×8×24.13=521.208円
となります。
蓄熱式の4.23倍

一日何時間の運転を想定するかによってコストが変化しますが、12時間運転の場合は632.206円となります。
蓄熱式の5.13倍

となります。
もちろんエアコンもヒートポンプ式ですので外気温が低いと運転効率が悪くなるので更に金額の開きは大きくなります。

※1:今回は電気代がクリアになるように従量電灯と別回路に分けている為に必要となっています。オール電化住宅や、契約電気の形態を見直してなくす事は可能です。

※2:ダイキンNシリーズ6畳用・消費電力385W/h一台+8畳用・消費電力435W/h一台+
18畳用・消費電力1880W/h一台として試算。電気代は従量電灯C第三段階24.13円(2010.01)

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と、数値的なデータを記してもなかなかこの快適さは伝えられませんね。
しかし、ちょっと見直すべきところもあって、ヒートポンプ式の熱源機はまだまだ成長段階であるため、容量が思ったより足りませんでした。
(外気温に能力が左右される為、予測しきれない部分があった)
その為、運転方法を誤った日や、寒い日が連続した日は少し効きが悪く・・・
設計当初謳っていた「24時間家中温かい蓄熱式床暖房」と言うには少々能力が足りませんでした。

ただ、今期は赤ちゃんが退院してきた日を除き※3 
エアコンの運転なしで快適に過ごす事が出来ています。
(特に厚着をするわけではなく、TシャツとYシャツで一日中過ごしていました。)
また、懸念していたコールドドラフト※4 は大分緩和されて夕方6時くらいからは時折吹き抜け階段からの冷気が降りて来る事があるのですが、一般的な吹き抜けのあるお宅よりは大分具合がいいように思います。

本当はもう少し余力があってもっと暖かい環境まで幅のあるシステムとし熱源機を増設すべきなのかもしれませんが、それはお施主様の希望によって選択すればいいのかな?

※3:赤ちゃんが誕生し退院してきた日にエアコンを運転しました。また、主寝室は間欠的にオイルヒーターを利用しています。

※4:窓際やリビングに設けた階段付近で、冷やされた冷気が下降してひんやりとした風を起こす事。上下の温度差が大きい場合や、気流(エアコンなど風を起こす機器の場合)が大きい時に顕著に感じる事があります。

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と、マイナスな面も記述しているので、蓄熱式の床暖房は失敗じゃないかと感じてしまうかもしれないので補足をしておくと・・・
別に私はヒートポンプを使った蓄熱式床暖房に執着している訳ではありません。
熱源は本当は何でもいいんですね。
設計段階で一番ランニングコストが掛からないだろうシステムがこの長府製作所の床暖房付きエアコンというシステムだったというだけなんですね。
本当は、外気温が温かい昼間に運転した方が効率が良くエコなシステムなんですけど・・・
電気代という物差しでは深夜利用という選択肢になります。

例えばエコウィル(発電しながらお湯を沸かす)を利用して電気を造りながら蓄熱するという方式もマッチングが良いのではと考えています。

また、オール電化住宅や電気契約によっては深夜以外の時間帯にも利用可能なので、利用時間帯を広げる事も出来ます。

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お施主様が求めているレベルに応じてどんな選択肢があるか?
そのバリエーションの一つであり、また、間取りや空間構成によっても快適な暖房方式が変わってくるものだと思います。

我が家の場合は、
リビングが土間である事。(底冷え対策)
リビングと階段の間に壁や扉を設けたくなかった事。
玄関を独立せずにリビングに取り込みたかった事。
エアコンのような風を生じる暖房機器が嫌いだという事。
など、プランニングの中で必然的に導き出した暖房システムだという事です。

ですから、他のシステムでは補え切れない部分をカバーしていたり温度という数値だけに表れない快適さを含んでいるという訳です。

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う~ん。
一言で快適って言うのは簡単だけど・・・
それを皆さんと共有するのって大変です。

私たちは設備機器だけを売っている訳ではありません。
その間取り、暮らし方や老後の光熱費の事まで間で考え、持続可能なシステムか?
メンテナンス性やライフスタイルに及ぼす影響などを加味して

「快適」を追求しています・・・

と、ここまで書くとちょっと大げさすぎてしまうかもしれませんが
月々3000円~4000円でこのレベルなら成功だといえるのではないでしょうかね?

リビングの温湿度データ
※クリックすると画像が拡大します


では、最後にもう少し詳しいデータをもうひとつだけアップしておきます。
1階リビングのPCのモニター裏で計測している温湿度データです。
ご参考まで。。。

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→2010年度の床暖房の電気代やメリット・デメリットをHPに公開しました
こちらもご覧下さい。

◆自宅の建設日記はこちらから。
建築家の自邸の構想から完成~その後の経過がご覧いただけます。


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2 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (蓄熱暖房)
2011-06-23 10:52:58
すごく快適そうですね。新築予定で床暖房を検討しております。どちらのメーカー、施工業者のものでしょうか。参考にさせていただきたく思います。又、概算でどのぐらいの費用をみたら宜しいでしょうか。1階床面積 17坪程度を検討しております
返信する
蓄熱式床暖房について (akatuki)
2011-06-23 16:43:44
>蓄熱暖房さん

我が家で採用している床暖房はメーカー品ではありません。
現場で職人さんにパイプを張り巡らせてもらい施工しています。
熱源機は長府製作所のものを採用しています。
ダイキンからも同様の熱源機は発売されているので比較してみてください。
イニシャルコストは工務店によると思いますが100万円以上は掛かると思います。(普通の床暖房+30万円~)
断熱の方式や地盤の状況によってはもっと差額が出るかと思います。
蓄熱式床暖房の施工のみを請け負う会社もあると聞きますので検索してみてください。
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