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山田英生:高血圧症の怖さ、注意点

2014-05-13 10:47:28 | 高齢社会
高血圧予防は、
1に減塩、2に運動。
薬に頼るのは最後に。



サイレントキラー 高血圧症の怖さ

 がんに次いで亡くなる人が多い心臓病と脳卒中。その主な原因の一つとなるのが、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病といってもよいでしょう。特に血圧は、加齢とともに上昇し、「70歳を過ぎると7割以上が高血圧になる」ともいわれています。高血圧は自覚症状なしで進行するケースが多く、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こし、寝たきりや認知症につながることも少なくありません。気づいた時には手遅れにならないよう日ごろから食事や運動、喫煙などには十分注意する必要がありそうです。老化と寿命研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(54)と山田英生山田養蜂場代表(55)が高血圧の怖さやその原因でもある塩分との上手な付き合い方などについて語り合いました。

動脈硬化に要注意

山田英生 加齢とともに増える病気といえば、認知症、骨粗しょう症、動脈硬化などが代表的な疾患ですよね。特に血管が老化し、弾力性が失われて動脈が硬くなったり、狭くなって血液の流れが滞る動脈硬化は、日本人の死因の2位、3位を占める心臓病や脳卒中を引き起こしやすく、特に注意しなければならない病気の一つといわれています。この動脈硬化と深く関わっているのが、高血圧や糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病だそうですね。
白澤 そうです。心筋梗塞や脳卒中を引き起こす動脈硬化の危険因子となっているのが、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病です。このような生活習慣病が予防できれば、突然死や深刻な後遺症につながりやすい心筋梗塞や脳卒中にならずに済みます。こうした生活習慣病が怖いのは、これといった自覚症状がなく、自分では気づかないうちに病状が深く静かに進行する点ですね。自覚症状がないまま、静かに進行する病気ほど怖いものはありません。放っておけば心臓病や脳卒中というツケとして回ってきます。食生活や運動不足、喫煙などの生活習慣を改善し、予防に努めてほしいですね。



高齢者に多い高血圧

山田英生 生活習慣病の中でも、私たちに最も身近な病気といえば高血圧でしょう。職場の健康診断などでも「上がった」「下がった」など、その測定結果に一喜一憂する人をよく見かけます。今や高血圧の人は、日本全国で約4000万人、予備軍の人も含めると、約5500万人に上る、ともいわれています。国民の約2人に1人、まさに国民病といってもよいかも知れませんね。
 しかも、年齢を重ねるごとに増え続け、男性なら50歳以上、女性なら60歳以上の半数を超える人が高血圧といわれ、70歳を過ぎると男女とも7割以上の人が高血圧と聞きました。ところが、実際に治療を受けている人は、全体の2分の1程度にすぎないそうですね。

白澤 「サイレントキラー」という言葉があります。サスペンスドラマの題名ではありませんが、日本語に訳せば、「静かなる殺し屋」。目の前に姿を現さず、知らないうちにやってきて殺人者になる。そんな怖い病気が高血圧といってもよいでしょう。高血圧は放置すれば、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす最大の”犯人“です。こうしたサイレントキラーからわが身を守るには、まず血圧を毎日、測ることですね。

山田英生 私も自宅で定期的に測るようにしていますが、不思議なのは自宅で測った数値と病院で測る数値が違うことです。なぜでしょう。

白澤 確かに自宅で測ったら正常値なのに、病院で測ったら高血圧になることが、時々あります。この現象を「白衣高血圧」と呼んでいます。病院で医師や看護師さんの白衣を見て緊張したり、何か重大な病気が見つかるのではないかと考えたりして血圧が上がるので、こう呼ばれています。逆に家で測ったら高血圧だったのに、病院で測ったら正常だった場合を「仮面高血圧」といいます。血圧は、季節や気温といった自然現象だけでなく、体調や心のありようによっても変化します。特に自律神経と深く関わっており、何らかの理由で緊張したり、ストレスを受けると、自律神経の中の「交感神経」の緊張が高まり、心臓から送り出される血液の量が増えて血圧が上がるのです。正しい数値を測るためには、自宅で落ち着いた状態の中で測ることが大事です。できれば、1日に朝と晩の2回測り、その数値を記録するとよいでしょう。

血圧は毎日測りたい

山田英生 血圧の変化を把握するためにも、毎日測定し、記録することが大切なわけですね。

白澤 それと、記録すれば血圧を下げる治療の効果もはっきりわかります。血圧は、血液が血管壁を押す圧力のことで、その圧力が強くなり、心臓や血管に慢性的な負担がかかった状態を高血圧といっています。上が140mmHg、下が90mmHgを超えた場合に「高血圧」と診断され、上が130~139mmHg、下が85~89mmHgの正常高値の場合は、高血圧の予備軍になりますね。

山田英生 よく「うちは高血圧の家系だから」などといいますが、実際、高血圧には遺伝的な影響はあるのでしょうか。

白澤 ないとは言えませんね。両親とも高血圧の場合、その子どもに遺伝する割合は約50%、どちらか片方が高血圧の場合は約30%との報告もあります。確かに両親や兄弟などの近親者に高血圧の人がいますと、リスクが高くなりますので、血圧を定期的にチェックすることが必要です。
 しかし、たとえ高血圧になりやすい遺伝的体質を持っていたとしても、高血圧を引き起こす要因や生活習慣に気をつければ予防できます。逆に近親者に高血圧の人がいないからといって油断し、暴飲暴食を繰り返していれば、高血圧になってもなんら不思議はありません。血圧は年齢とともに高くなる傾向があるうえに、生活環境が大きく影響します。

山田英生 高血圧といえば、誰もが原因として思い浮かべるのが塩分の過剰摂取ですね。塩分の摂り過ぎが健康に悪いと分かっていても、それを改め、減塩につなげるのは、結構難しいものです。特に最近は、味付けの濃いコンビニ弁当やインスタント食品などを利用する人も多く、また外食する人も増えました。こうした環境の下では、塩分を減らそうと思っても、なかなか減らせないのが実情ではないでしょうか。
白澤 濃い味付けの料理を食べていると、自然とご飯が進み、食べ過ぎたり、塩分を摂り過ぎてしまうことが少なくありません。かつての日本では、食塩を1日20g摂るのも普通でした。冬の長い東北などでは漬物や塩鮭などの保存食をよく食べていたため、30gの塩分を摂ることも珍しくなかったのです。その後、冷蔵庫などの普及や食生活の欧米化などに伴って、日本人の平均食塩摂取量は、約11gと以前に比べればだいぶ減ってきました。それでも、米国や英国などの先進国に比べ、まだまだ高水準で、高血圧を予防するには十分といえません。

塩分過剰の日本人

山田英生 2年前、ニューヨーク市では、食品加工会社やハンバーガーショップなどに対し、5年間で25%の塩分をカットするよう指示を出した、とのニュースがありました。日本よりも塩分摂取量が少ない米国でさえも、減塩キャンペーンを行っているのですから、塩分摂り過ぎの日本は、もっと真剣に減塩対策に取り組む必要がありそうですね。健康上、どのくらいの摂取量を目標にしたらよいのですか。
白澤 減塩は高血圧の予防、治療の基本です。国の健康づくり運動である「健康日本21」は、高血圧を予防するためには、成人の1日の食塩摂取量の目標を10g未満としていますが、すでに高血圧症を発症している人は、もっと厳しい塩分制限が必要でしょう。WHO(世界保健機関)は5g未満、日本高血圧学会は6g未満、とするよう推奨しています。

山田英生 高血圧を防ぐには、何といっても塩分を減らすことが大切だということがよく分かりました。ただ、今まで1日12gの塩分を摂取していた人が、いきなり半分に減らすのは味覚の点からいってどうでしょうか。「減塩食は味気ない」とか「病院食のようで、おいしくない」などの声が聞こえてきそうな気がします。それでなくても、年をとると、塩分に対する舌の感受性が落ち、濃い目の味を好むようになるとも、いわれています。

出汁で美味しく減塩

白澤 おっしゃる通り、いきなり一気に減塩すれば、食事のおいしさも損なわれるでしょう。そうならないためにも、少しずつ減塩し、味覚を薄味に慣らしていくのがよいと思いますね。煮物や汁物は出汁をしっかり取ると旨みが出て、塩分を控えることができます。薄味に慣れると、素材そのものの味が感じられるようになります。

 それと、塩分を体外へ排出させやすいカリウム豊富な食材を積極的に摂るのも手ですね。たとえば、イモ類とかホウレンソウなどの野菜、ワカメなどの海藻類、ナッツ類などですね。また、みそ汁も具だくさんにすれば、汁を減らせるのでその分、塩分の摂り過ぎが防げます。

山田英生 コンブやカツオブシなどから取った出汁を上手に使うのも、おいしく減塩するコツですね。でも、せっかく食材選びに気を使い、調理の工夫をして減塩しても、料理にしょうゆやソース、マヨネーズ、ドレッシングなどをかけ過ぎては、何の意味もありません。調味料を使いすぎないよい方法はありませんか。

白澤 確かに調味料の中にもマヨネーズ、ソース、ドレッシングなど高カロリーで、脂質含有量が多いものや砂糖、みりんなど糖質の多いもの、また、しょうゆのように塩分の多いものもあります。こうした調味料を使い過ぎないためにも、調味料は使う分だけ小皿に分けて出し、食卓にはしょうゆなどの調味料を置かないことですね。その代わりにユズやレモンなどの柑橘類を使ったり、酢やコショウで味にアクセントをつけるのもよいでしょう。しょうゆやミソをどうしても使う場合は、減塩しょうゆや減塩ミソを使うのも一つの方法です。

山田英生 ちょっとした工夫をするだけで、調味料をあまり使わずに減塩できるわけですね。

白澤 それと、高血圧を防ぐには、ウォーキングや水泳などの有酸素運動も有効です。運動は血圧を下げるだけでなく、塩分を体外へ排出するのを促す作用もあります。高血圧を予防し、治療するには、まず減塩を柱とする食生活や運動に加え、喫煙を控えるなど生活習慣の改善に努め、それでも改善が見られない場合は、薬による治療が必要になりますね。

山田英生 高血圧の予防、治療は「1に減塩 2に運動 3に薬」が基本になりますね。

山田英生:糖尿病のない人生に長寿あり

2014-05-13 09:59:28 | 高齢社会
糖尿病の陰に潜む大病あり。

糖尿病のない人生に長寿あり。



万病の元 糖尿病


 高齢化の進展とともに、増える一方の糖尿病。病状が進めば、人工透析や視力障害などに追い込まれ、最悪の場合は、動脈硬化から心臓病や脳卒中を引き起こす恐れもないとはいえません。こうした怖い合併症を避けるためには、食事療法や運動療法、薬物療法が不可欠です。特に食事療法ではカロリー制限と並んで大事なのが、血糖値の上昇を抑える食材選び。適度な運動を続けながら過食を避け、血糖値を抑える食品を積極的に摂れば、健康長寿を妨げる糖尿病を遠ざけることも可能です。老化と寿命研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん(54)と山田英生山田養蜂場代表(55)が糖尿病の怖さや、その予防のための効果的な食材選びなどについて語り合いました。

怖いのは3大合併症

山田英生 高血圧と並んで近年、急速に増えているのが糖尿病ですが、厚生労働省によると、「糖尿病が強く疑われる人(糖尿病)」は890万人、その予備軍である「糖尿病の可能性を否定できない人」は1320万人で、合わせて2210万人にも上ります。年代別にみても、男性の場合、40代で2割、50代で3割、60代以上では4割が糖尿病とその予備軍とされています。(2007年国民健康・栄養調査)。糖尿病が多くの人に恐れられているのは、なぜですか。

白澤 糖尿病は、高血圧や脂質異常症などの慢性疾患と同様、それ自体が直接、生命を脅かすことは、多くはありません。しかし、「高血糖」と指摘されたのに、適切な治療を怠れば、さまざまな合併症を引き起こす恐れが出てきます。深刻な合併症としては、人工透析や腎移植に追い込まれる「糖尿病性腎症」、網膜剥離を起こして失明する恐れもある「糖尿病性網膜症」、末しょう神経や自律神経が障害され、痛みやしびれも感じなくなる「糖尿病性神経障害」の3大合併症が特に怖いですね。神経障害では、最悪の場合、組織が死ぬ「壊疽」になって、手足を切断せざるをえないケースも出てきます。こうした合併症に進む前に、早めに手を打つことが大事です。

山田英生 つらい食事制限や運動療法、あるいは薬で血糖値をコントロールするのも、こうした合併症を防ぐためですね。

白澤 そうです。先ほど、「糖尿病自体が生命を脅かすことは多くない」といいましたが、糖尿病は治療もせずに放置すれば、動脈硬化が徐々に進行していきます。動脈硬化は、動脈の弾力性が失われて硬くなり、血液の流れが悪くなる状態のことをいいますが、これが引き金となって脳梗塞や心筋梗塞、狭心症といった生命を脅かす大病を引き起こすケースも少なくありません。しかし、初期の段階では糖尿病は、ほとんど自覚症状がないため、健康診断などで「血糖値が高いので、糖尿病の検査を受けてください」と指摘されても、「たいしたことはない」と軽く考えて、そのまま放置する人が結構います。何の治療も受けなければ、やがて「のどが渇く」「体がだるい」などの自覚症状が出てきます。こうした症状が出てきた時には、すでに病状がかなり進行している状態といってもよいでしょう。



患者の4割が未治療


山田英生 糖尿病を強く疑われている人の約4割が「治療を受けていない」といわれています。こうした人たちの多くは、「血糖値が高いといっても、すぐに死ぬわけではない」「いざという時は薬を飲めばよい」などと軽く考えている人が多いようです。また、病院に行ったとしても、食事療法や運動療法の指示内容が細かく厳しいため、面倒臭くなって途中で治療を投げ出す人も多いと聞きました。

白澤 多いですね。自覚症状がない予備軍の段階で、きちんと生活習慣を改善していれば、糖尿病を発症するリスクは当然低くなります。それを「自分は大丈夫」と放っておけば、知らず知らずのうちに予備軍から糖尿病へと移行していくケースも少なくありません。

山田英生 自覚症状がない分、治療を先延ばししてしまうわけですね。この糖尿病というのは一体、どんな病気なのですか。

白澤 すい臓のβ細胞から分泌されるインスリンが不足したり、働きが悪くなって血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気です。インスリンは、唯一血糖値を下げるホルモンなのですが、糖尿病には、このインスリンをつくるすい臓のβ細胞が破壊され、分泌量が足りなくなって発症する「Ⅰ型糖尿病」と、食事や運動などの生活習慣が原因となってインスリンの量が不足したり、働きが悪くなる「Ⅱ型糖尿病」があります。日本人の糖尿病のほとんどは、Ⅱ型といってもよいでしょう。親や兄弟に糖尿病の人がいたり、食べ過ぎやお酒の飲み過ぎ、運動不足、肥満など生活習慣に乱れがあると、発症しやすくなります。

山田英生 糖尿病も、加齢と関係あるのですか。

白澤 ありますね。インスリンをつくる能力も、年齢を重ねるごとに衰えていきます。特に65歳以上になると、その傾向は顕著になります。そのため、年をとっても若いころと同じように暴飲暴食を繰り返していれば、少ないインスリンでは対応しきれなくなり、糖尿病を発症しやすくなるのです。糖尿病にかかる人がいなくなれば、今の日本人の平均寿命は、さらに7~8歳は延びるともいわれています。


百寿者に少ない糖尿病


山田英生 医学の進歩や治療法の向上で、糖尿病やがん、心臓病などが克服されれば日本人の寿命はどんどん延び、「50年後には90歳を超える」と言う人もいます。長生きすること自体は素晴らしいことですが、それが健康長寿であれば、いうことはありませんね。糖尿病の人が合併症を併発すれば、ふつうの人よりも寿命が比較的短いともいわれています。長生きするためにも、血糖値のコントロールを厳格にして、合併症を引き起こさないことが重要ですね。100歳以上の人には、糖尿病の人が少ないと聞きましたが、本当ですか。

白澤 本当です。私も多くの100歳以上の方にお会いして長寿の秘訣などについて伺ってきましたが、糖尿病の人はほとんどおられませんでした。おっしゃる通り、糖尿病を発症すると、100歳まで長生きできる確率は低いと言わざるをえません。長寿の人に共通する理由の一つとして、「血液中のインスリン濃度が低いこと」が挙げられます。これは、インスリンの量が少なく、その少ないインスリンを効率よく使って生きていることを意味します。ですから、長生きするにはインスリンの働きがよくなるようにすること、少ないインスリンで済むような食生活を送ることが重要といえます。

山田英生 なるほど。では、高齢になっても糖尿病にならないためには、どんなものを食べたらよいのでしょうか。


朝食にネバネバ食品を

白澤 先ほど、「長生きするには血液中のインスリン濃度が低いことが条件である」と言いましたが、インスリン濃度を低く保つには、血液中の糖分をできるだけ少なくすることが重要です。食事をすれば血液の中に糖分が入ってくることは防げませんが、問題は急激に糖分が増えることです。少しずつ増えていけば、インスリンも少なくて済みますが、一気に増えると血糖値の急激な上昇を招きます。それを避けるためには、納豆やオクラ、ヤマイモ、モロヘイヤなどの”ネバネバ食品“をできるだけ朝食に摂ることですね。これらの食品には、糖の吸収を抑える「ムチン」という粘性成分が含まれ、これが血糖値の急激な上昇を抑えたり、インスリンの働きをよくしてくれます。

山田英生 確かに、ネバネバする食べ物は、健康によいと昔からいわれてきました。

白澤 それとコンブやワカメ、モズクなどの”ヌルヌル食品“も朝食のメニューに加えると、よいでしょう。海藻類のぬめり成分は、食物繊維のアルギン酸で、血糖値の急激な上昇を抑えるだけでなく、血中コレステロール値を下げる働きもあります。

山田英生 以前、「魚をよく食べる男性は、糖尿病になるリスクが低い」との記事が新聞に載っていました。その理由として、魚の脂などに含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)のほか、ビタミンDなどがインスリンの分泌に好影響を与えている可能性がある、と報じていましたが、私はこの記事をとても興味深く読みました。糖尿病は食事療法と運動療法が治療の2本柱で、食事療法ではどちらかというと、カロリー制限にばかり目が行きがちですが、糖尿病にならない食材選びも、とても大切なのですね。

参考にしたいGI値

白澤 その通りです。それに加え、血糖値の上がらない食品を選ぶことも大切です。「GI値」という言葉をお聞きになったことがあると思いますが、かつて、血糖値の上昇を緩やかにするダイエット法としてブームになった「低インスリンダイエット」の根拠になったのが、実はこのGI値なのです。ふつう、ダイエット法というと、誰もが「怪しい」と思いがちですが、GI値は、病院での糖尿病の食事療法にも使われているくらいエビデンス(科学的根拠)があり、糖尿病によいと証明されている指標なのですね。

山田英生 そうですね。たとえば蜂蜜の中でも、アカシア蜂蜜やレンゲ蜂蜜はGI値が低いことから注目されているのですが、そのGI値と血糖値とはどんな関係があるのですか。

白澤 GI値とは、「グリセミック・インデックス」の略で、血糖値の上昇率を表す指標のこと。つまり、食べたものが体内で糖に変わり、血糖値を上昇させるスピードを数値化したものといってよいでしょう。ブドウ糖を摂った時の血糖値の上昇率を100とした場合、それぞれの食べ物がどの程度の上昇率かを示したもので、たとえば、「玄米55」、「ジャガイモ90」といったように表します。

山田英生 食事をした時の血糖値を抑えるためにも、とても参考になる数値ですね。GI値の高い食べ物、低い食べ物には、どんなものがありますか。

白澤 たとえば、主食なら精白米、モチ、食パン、うどんなどはGI値が高く、逆に玄米、ライ麦パン、スパゲティ、ソバなどが低いといわれています。野菜は、ほとんどが低いのですが、それでもニンジン、イモ、カボチャなどは高めですね。果物もイチゴやミカン、リンゴなどは低いのですが、パイナップルやスイカなどは高めです。全般的にGI値が低いものといえば、肉や魚介類、卵、乳製品などですね。

山田英生 そうしますと、主食では白米より玄米、精白パンよりライ麦パンか全粒粉のパン、うどんよりソバ、スパゲティのほうが血糖値が上がりにくいというわけですね。

白澤 調理法や食材の組み合わせにもよりますが、食後の急激な血糖値の上昇を抑えるためにはよいでしょう。糖尿病の人や血糖値が気になる人は、適度な運動をしつつ、このGI値を上手に利用して血糖値の上昇を緩やかにすることが大切です。

山田英生:癌の原因及び予防

2014-05-13 09:39:04 | 高齢社会
タバコに運動不足、ストレス。

がんの原因は、毎日の生活の中に。


がんにならないための生活習慣

 サクセスフル・エイジング(健やかな老い)を目指す高齢者にとって、なりたくない病気の一つが、がんではないでしょうか。加齢とともに増える厄介なこの病気は、予防することが、最良のがん対策。最近の研究などから、がんの予防法もある程度は、わかってきました。この病気を防ぐには、がんになりやすい食生活を避ける一方、喫煙や肥満、過度のストレスなどの危険因子を取り除くことが大切です。老化と寿命研究の第一人者で、順天堂大学大学院教授、白澤卓二さん(54)と山田英生山田養蜂場代表(55)が、がんに影響を及ぼす喫煙やストレスなどについて語り合いました。

タバコ大国ニッポン

山田英生 健康長寿を目指す高齢者にとって、加齢とともに増えるがんは、実に「厄介な病気」ですよね。これまでのいろんな研究や調査などから、がんの原因は、食事が約30%、タバコが約30%、あとは感染症や運動不足、アルコールなどといわれています。何とがんの原因の約7割が食生活や喫煙、お酒など日ごろの生活習慣と深く関わっている、と聞きました。そうであれば、タバコをやめ、バランスのよい食生活や適度なお酒など、きちんとした生活習慣を心掛ければ、がんの多くは防げるのではないでしょうか。

白澤 その通りです。特にタバコが問題ですね。タバコの煙には、4000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち約200種類が有害物質です。この中のニトロソ化合物、アセトアルデヒド、ヒ素など約60種類が発がん物質か、発がん促進物質であることがわかっています。タバコを吸う人は、煙や唾液に混じった発がん物質が通過する口やのど、気管支、肺などの呼吸器だけにとどまらず、血流に乗って食道、胃、肝臓、腎臓、子宮頸部、乳房などにも影響を及ぼします。これまで国を挙げて喫煙対策に取り組んできたアメリカなどでは、肺がんが減っているのに対し、十分な対策を講じてこなかった日本では増え続け、肺がんによる死者数は、年間約6万人を超え、がんによる死亡者数のトップに立っています。

山田英生 肺がんで亡くなられる人は、そんなに多いのですか。

白澤 はい。これほど、タバコの怖さが指摘され、また喫煙場所の規制が強化されているにもかかわらず、2010年に値上げされた後も、タバコを吸う人は、それほど大きく減っていません。日本たばこ産業の2011年の「全国たばこ喫煙者率調査」では、タバコを吸っている成人は21・7%もおり、特に男性は33・7%、と3人に1人が喫煙者です。山田英生 他の先進国に比べると、日本人の喫煙率は、まだまだ高いですよね。以前、新聞に気になる記事が載っていました。英国の医学誌「ランセット」が日本の皆保険制度導入50周年を記念する特集号を出したのですが、その中で同誌は戦後の感染症対策や健康診断の普及など日本の保健医療制度を高く評価する一方で、将来に向けた日本の課題として「喫煙率の高さ」を指摘し、禁煙政策の重要性を訴えていました。特に若い男性の喫煙率の高さと女性への広がりを指摘し、「すべての成人が禁煙すれば、日本人の平均寿命は、今より男性で1・8年、女性で0・6年は延びるだろう」と推計していました。「タバコ大国ニッポン」は、海外でもよく知られているのですね。


禁煙が最善の予防策

白澤 そうですよ。特に若い人の喫煙は、健康上、困ったものです。タバコを吸い始めた年齢が、早ければ早いほどがんの発生リスクは高まり、たとえば、「20歳前後から吸い始めた場合は、肺がんによる死亡率は、非喫煙者に比べ5~30倍高い」との報告もあります。まして、吸う本数が多ければ多いほど、リスクは高まりますね。それと、見過ごせないのが、受動喫煙の被害、つまり吸わない人への健康被害ですね。喫煙者が吸いこむ主流煙よりも、タバコの先端から立ち上る副流煙のほうが2~50倍も有害物資が多く含まれ、その分肺がんのリスクが高いとされています。山田英生 こうした受動喫煙が原因で肺がんや心臓病などで亡くなった人は推計で年間、国内で約6800人にも上り、この中には職場や家庭で煙にさらされる機会が多い女性が約4600人も含まれていた、との報道もありました。タバコを吸って本人ががんになるのならまだしも、他人のタバコの煙を吸わされ、がんになってしまっては、たまったものではありません。白澤 「タバコは、百害あって一利なし」であることを喫煙者は、ぜひ肝に銘じ、禁煙してほしいですね。また、家族にタバコを吸う人がいたら、ぜひやめてもらいましょう。肺がんはもちろんですが、他のがんもタバコを吸わないことが最善の予防策です。実際、禁煙によって肺がんをはじめ、口腔、食道、咽頭、胃、膀胱、子宮頸がんなどの発生リスクが、喫煙している人に比べ確実に下がっていることも国際がん研究機関(IARC)の報告でも明らかになっています。

肥満も危険因子の1つ

山田英生 当社では、タバコを吸わない社員を対象に毎月一律2000円の非喫煙手当を支給しています。お客さまの健康づくりをお手伝いしている企業としての責任と社員の健康を考えて始めた試みですが、40代以降の男性を中心に禁煙する人が増えました。でも、タバコをやめれば、ある程度がんは防げる、と分かっていても、世の中にはなかなかやめられない人も多いようです。白澤 多いですね。その原因の一つがニコチン依存症です。最近は、禁煙外来を設ける医療機関も増えてきました。私も、外来で禁煙に訪れた40歳代以上の患者さんの肺の写真をヘリカルCTスキャン(体の廻りをらせん状に高速で撮影できる最新のX線CT装置)で撮っていますが、画像にはこれまで吸った本数と年数に応じて肺が壊れている様子がはっきり写っています。患者さんにその画像を見せ、「この部分に変化が起きていますよ」などと説明すると、ほとんどの人が怖くなってその日から、タバコをやめますね。

山田英生 昨年、タバコをめぐって「1箱700円にしろ」とか「欧米並みの価格に値上げしたらどうか」など、タバコ税率の引き上げが話題になりました。この値上げ論も、どちらかと言えば、東日本大震災の復興財源に絡んだ話でしたが、もう少し健康を守る視点から議論を重ねてほしいですね。

白澤 同感です。

山田英生 ところで、話は変わりますが、「肥満の人はがんになりやすい」という話を聞いたことがありますが、本当ですか。白澤 はい。肥満が、がんの危険因子の一つであることは、これまでの研究結果から明らかです。特に肥満と関係が深いのは、大腸、腎臓、乳がんで、また、子宮頸がんや胆のう、卵巣、すい臓、甲状腺、前立腺がんなども肥満が関係している可能性があります。こうしたリスクを避けるためにも、日ごろから運動を続け、肥満を解消することが何よりも大切です。私は、肥満の人にはがんになるリスクがあることを伝え、1日20分程度、ウォーキングなどの有酸素運動に週5回くらい取り組むようアドバイスしています。

老化で落ちる免疫力

山田英生 私たちの身体に細菌やウイルスなどの外敵が侵入してきた時、これに敢然と立ち向かって退治してくれるのが免疫ですよね。どんなに健康な人でも、身体の中では毎日、数千個のがん細胞が発生し、小さながんができているといわれています。それが大きくならずに消えていくのは、身体の中に備わっている免疫力ががんの芽を小さなうちに摘み取ってくれているからでしょう。そう考えると、免疫は、私たちの体を病気から守ってくれる頼もしい味方ともいえますね。でも、こうした免疫力も年齢を重ねていくにしたがって少しずつ衰えてゆき、がん細胞との日々の戦いの中で、負けた時にがんは一気に勢力を拡大していくわけですね。

白澤 そうです。免疫システムは、さまざまな臓器や組織のネットワークからできていて、がん細胞を日々駆逐してくれています。ところが、大きなストレスがあると、その免疫に穴が開いてがん細胞が増殖します。しばらくすると、その穴が閉じて小康状態を保ち、また穴が開いてがんが大きくなる。高齢期のがんは、そんな状態を繰り返しているといってもよいでしょう。今、私が診ている女性の患者さんで、血液のがんである悪性リンパ腫の人がいます。最初のころ、一度だけ化学療法を試みたのですが、86歳の高齢でもあり、体の衰弱が激しかったため、積極的な治療は止めてビタミンCの点滴だけして、しばらく様子を見ていました。経過は順調だったのですが、ある日再発してしまったのです。末梢血を調べてみると、それまで25%を保っていた白血球の中のリンパ球の割合が15%に落ちていました。

山田英生 ふつう、「白血球の中で、顆粒球の割合が54~60%、リンパ球が35~41%の範囲内に保たれていると、自律神経がバランスよく働き、免疫の力で病気を十分、撃退できる」と本で読んだことがあります。でも、心の悩みや人間関係などのストレスが加わると、交感神経が緊張して顆粒球が増え、その分リンパ球が減って、いろいろな病気が現れてくる、と聞いたことがあります。この女性の場合、何かショックを受けるような出来事があったのでしょうか。

怖いストレスの影響

白澤 いろいろ聞いてみると、「自宅の近くにあった大きなスーパーが最近、閉店した」と言うのです。彼女は毎日、この店に行き、買い物をするのが生きがいでした。閉店してからは外出もせず、家に閉じこもってばかりいたようです。スーパーの閉店は、ふつうの人にとっては取るに足らないことかもしれませんが、この女性にとっては重大な出来事で、大きなストレスになったのでしょう。それでリンパ球が一気に下がり、再発したと思われます。

山田英生 それで先生は、どんな指示を出されたのですか。

白澤 私は、「今、大学病院で続けている化学療法はやめること」「他のスーパーを見つけ、できるだけ外出し、太陽の光を浴びること」「お肉をできるだけ食べること」の3点を指示しました。86歳の高齢では、抗がん剤の投与は全身の衰弱を招くだけです。スーパーに行くという日々の習慣は、生きがいにもなります。日光浴は、骨を強化するビタミンDの摂取にもよいし、低栄養に陥りやすい高齢者は、肉を食べて栄養をつけることが大事だからです。私の指示に従ったその患者さんは、リンパ球が30%に上がりました。

山田英生 それほど、がんに与えるストレスの影響は大きいのですね。白澤 大きいですね。がんを予防するうえで、確実に言えることは、食事やタバコ、運動不足など原因の多くを占める生活習慣を改善すれば、それだけがんのリスクを減らすことができるのです。がんのリスクを高めるのも、あるいは免疫の老化を遅らせるのも、日ごろの生活習慣にかかっていることをしっかり認識してほしいですね。