日歯技工誌 28: ,2007 269
平成19年12月20日発行
第28巻 第2号
講演後抄録
1E-1000
歯科技工管理学概念の検討
A Study of the Concept of Dental Laboratory Technique Management
日本歯科技工学会タイムスタディ調査を素材として
岩澤(いわさわ)毅(つよし)
秋田県歯科技工士会
A.目的
歯科技工と歯科技工士を社会科学・人文科学分野等の視点から分析しかつ広義の歯科技工学の一領域を形成する歯科技工管理学の可能性を検討し,その対象とするもの・ことの可視化を,最近の事例等を素材に試み,歯科技工管理学概念の検討を行なう.
B. 方法
日本歯科技工学会(以下本会とする)第28回学術大会において,健康保険法による社会保険歯科診療における「保険歯科技工士」の不存在と,「通則の5」の健康保険制度内での内在論理の解明を行った.
中央社会保険医療協議会(以下中医協とする)による次回診療報酬改定作業等に向けて,本会において,「国民に良質な歯科医療の提供を目的とし,歯冠修復及び欠損補綴の製作に関する適正な技術評価を得るため,各歯科補綴装置等の作成等に係わる工程,所要作成時間等について調査し,その結果を製作技工に要する費用の評価基準の参考とすべく」とし,「歯科技工のタイムスタディ調査」が実施された.
これらを踏まえ,医療保険制度と社会保険診療報酬点数改正の制度考察と関係団体による過去の原価計算,タイムスタディ調査等から,歯科技工経済を解明すべく新たな作業モデルの可能性を,医療経済・政策学の手法を応用し,合わせて歯科技工管理学概念を検討した.
以下の本会調査を模した歯科医師対象の調査モデルと作業仮説上のタイムスタディ調査結果の数値を置き検討する.
調査モデルと作業仮説
調査対象は歯科技工士と同規模
現在,調査対象の歯科医師のa%はいわゆる「歯科技工」を行っていない.
・・・・知見のⅠ
残る歯科医師の(100-a)%のタイムスタディ数値は,歯科技工士のb%増しであった.
・・・・知見のⅡ
歯科技工士対象のタイムスタディ調査数値を,b%増しすることにより歯科医師のタイムスタディ調査の数値として利用できる.
・・・・知見のⅢ
すなわち
歯科技工士のタイムスタディ数値をT1とし
歯科医師のタイムスタディ数値をT2とすると
T1<T2 T2=(100+b )/100×T1
T1とT2には関数関係 y = f(x) が成立する.
保険医である歯科医師の診療報酬改定に際し,本会タイムスタディ調査の個別項目の時間数値を利用することは有用であり,また他に利用できる数値は現存しない.
・・・・総括のⅠ
C.結果および考察
以上の調査モデルと作業仮説を実際の調査により検証することにより,以下の仮説の存在を推定できる可能性がある.
中医協の想定する保険医である歯科医師の時間単価と本会タイムスタディ調査の個別項目の歯科技工士時間数値から導き出された「補正歯科医師数値」の積から,診療報酬点数表別表2歯科診療報酬の第12部歯冠修復及び欠損補綴にある歯科技工と密接に係わる個別の各区分内点数に存在すべき保険医である歯科医師の直接労務費部分を導き出すことは可能であり,本会調査の本来目的に適うものとなる.
さらに,本会「歯科技工のタイムスタディ調査」を含む歯科技工経済・医療経済研究は, 歯科技工管理学概念を考察する上でその端緒の一部となる.
過去,歯科技工に関する社会科学・人文科学分野等の研究の広がりの不在が,歯科技工の解明の妨げとなってきた.
歯科技工士が社会にその存在と主張をなす場合の基礎となるのは,「健康保険制度と歯科技工」, あるいは「輸入入れ歯」問題等々,法律・経済・政策科学分野の課題等でもあり,歯科技工所の管理運営における経営・教育・労務・税制等まで含めた大きな枠では, 既存の用語を援用すれば「歯科技工管理学」とも捉える事ができる.
D.結論
社会的共通資本としての歯科医療の用に供する歯科技工を現に担う当事者としての歯科技工士には,歯科技工に係る政策への広範な当事者能力が求められる. 歯科技工管理学の研究は歯科技工関係者の社会貢献の安定性を高め,その当事者の政策形成能力を高める基盤となるものと考える.
参考文献
1)吉田栄介:歯科技工原価計算要領,日本歯科技工士会,2005
2)遠藤久夫:診療報酬制度の理論と実際,医療保険・診療報酬制度,55~92,勁草書房,2005
日本歯科技工学会第29回学術大会
大 会 長 小松 正志 (東北大学歯学部附属歯科技工士学校 校長)
準備委員長 佐々木 勇 (宮城県歯科技工士会 会長)
1.会 期 平成19年 9月22日(土) 10:00 ~ 17:00 9月23日(日) 9:00 ~ 15:30
2.会 場 仙台市民会館
〒980-0823 宮城県仙台市青葉区桜ヶ岡公園4-1
Tel 022-262-4721 Fax 022-215-3950 会場までの地図はこちらをご覧下さい
3.内 容 大会テーマ:歯科医療の近未来像 -歯科技工の役割-
平成19年12月20日発行
第28巻 第2号
講演後抄録
1E-1000
歯科技工管理学概念の検討
A Study of the Concept of Dental Laboratory Technique Management
日本歯科技工学会タイムスタディ調査を素材として
岩澤(いわさわ)毅(つよし)
秋田県歯科技工士会
A.目的
歯科技工と歯科技工士を社会科学・人文科学分野等の視点から分析しかつ広義の歯科技工学の一領域を形成する歯科技工管理学の可能性を検討し,その対象とするもの・ことの可視化を,最近の事例等を素材に試み,歯科技工管理学概念の検討を行なう.
B. 方法
日本歯科技工学会(以下本会とする)第28回学術大会において,健康保険法による社会保険歯科診療における「保険歯科技工士」の不存在と,「通則の5」の健康保険制度内での内在論理の解明を行った.
中央社会保険医療協議会(以下中医協とする)による次回診療報酬改定作業等に向けて,本会において,「国民に良質な歯科医療の提供を目的とし,歯冠修復及び欠損補綴の製作に関する適正な技術評価を得るため,各歯科補綴装置等の作成等に係わる工程,所要作成時間等について調査し,その結果を製作技工に要する費用の評価基準の参考とすべく」とし,「歯科技工のタイムスタディ調査」が実施された.
これらを踏まえ,医療保険制度と社会保険診療報酬点数改正の制度考察と関係団体による過去の原価計算,タイムスタディ調査等から,歯科技工経済を解明すべく新たな作業モデルの可能性を,医療経済・政策学の手法を応用し,合わせて歯科技工管理学概念を検討した.
以下の本会調査を模した歯科医師対象の調査モデルと作業仮説上のタイムスタディ調査結果の数値を置き検討する.
調査モデルと作業仮説
調査対象は歯科技工士と同規模
現在,調査対象の歯科医師のa%はいわゆる「歯科技工」を行っていない.
・・・・知見のⅠ
残る歯科医師の(100-a)%のタイムスタディ数値は,歯科技工士のb%増しであった.
・・・・知見のⅡ
歯科技工士対象のタイムスタディ調査数値を,b%増しすることにより歯科医師のタイムスタディ調査の数値として利用できる.
・・・・知見のⅢ
すなわち
歯科技工士のタイムスタディ数値をT1とし
歯科医師のタイムスタディ数値をT2とすると
T1<T2 T2=(100+b )/100×T1
T1とT2には関数関係 y = f(x) が成立する.
保険医である歯科医師の診療報酬改定に際し,本会タイムスタディ調査の個別項目の時間数値を利用することは有用であり,また他に利用できる数値は現存しない.
・・・・総括のⅠ
C.結果および考察
以上の調査モデルと作業仮説を実際の調査により検証することにより,以下の仮説の存在を推定できる可能性がある.
中医協の想定する保険医である歯科医師の時間単価と本会タイムスタディ調査の個別項目の歯科技工士時間数値から導き出された「補正歯科医師数値」の積から,診療報酬点数表別表2歯科診療報酬の第12部歯冠修復及び欠損補綴にある歯科技工と密接に係わる個別の各区分内点数に存在すべき保険医である歯科医師の直接労務費部分を導き出すことは可能であり,本会調査の本来目的に適うものとなる.
さらに,本会「歯科技工のタイムスタディ調査」を含む歯科技工経済・医療経済研究は, 歯科技工管理学概念を考察する上でその端緒の一部となる.
過去,歯科技工に関する社会科学・人文科学分野等の研究の広がりの不在が,歯科技工の解明の妨げとなってきた.
歯科技工士が社会にその存在と主張をなす場合の基礎となるのは,「健康保険制度と歯科技工」, あるいは「輸入入れ歯」問題等々,法律・経済・政策科学分野の課題等でもあり,歯科技工所の管理運営における経営・教育・労務・税制等まで含めた大きな枠では, 既存の用語を援用すれば「歯科技工管理学」とも捉える事ができる.
D.結論
社会的共通資本としての歯科医療の用に供する歯科技工を現に担う当事者としての歯科技工士には,歯科技工に係る政策への広範な当事者能力が求められる. 歯科技工管理学の研究は歯科技工関係者の社会貢献の安定性を高め,その当事者の政策形成能力を高める基盤となるものと考える.
参考文献
1)吉田栄介:歯科技工原価計算要領,日本歯科技工士会,2005
2)遠藤久夫:診療報酬制度の理論と実際,医療保険・診療報酬制度,55~92,勁草書房,2005
日本歯科技工学会第29回学術大会
大 会 長 小松 正志 (東北大学歯学部附属歯科技工士学校 校長)
準備委員長 佐々木 勇 (宮城県歯科技工士会 会長)
1.会 期 平成19年 9月22日(土) 10:00 ~ 17:00 9月23日(日) 9:00 ~ 15:30
2.会 場 仙台市民会館
〒980-0823 宮城県仙台市青葉区桜ヶ岡公園4-1
Tel 022-262-4721 Fax 022-215-3950 会場までの地図はこちらをご覧下さい
3.内 容 大会テーマ:歯科医療の近未来像 -歯科技工の役割-