『日本歯技』2015年4月号 「巻頭言」
知恵の創出
1982年(昭和57年)に都道府県知事免許から厚生大臣免許(当時)に移行したものの、“当分の間”としながら32年もの間、都道府県知事が行ってきた歯科技工士試験が、来春からようやく国家資格に相応しい全国統一試験として実施される。
この春、都道府県知事が実施する最後の歯科技工士試験を受験した学生が卒業し、新たな歯科技工士を志す学生が歯科技工士教育機関に入学する。しかし現在、全国に53校ある歯科技工士教育機関のうち、4年制大学は2校、3年制は1校(夜間部を除く)であり、ほか50校は2年制の教育となっている。
国民が求める、より質の高い歯科技工士を養成するには、教育現場における座学の研修のほかに、臨床現場が求める歯科技工士に近づけるための実践教育プログラム等も併せて構築する等、修業年限の3年以上への延長が最も重要かつ不可欠である。
また同時に、社会を取り巻く環境の変化と進歩し続ける歯科医療に対応するため、歯科技工士個々が、各地域歯科技工士会組織が開催する生涯研修や各学会の学術大会等に積極的に参加し、生涯を通じて知識・技術を高めるよう努めなければならない。
一方、多様化するライフスタイルの中、健康で将来に亘って安心して暮らしていくために必要なファクターとして、歯科技工士が担う役割と責務に適った経済環境が求められる。そのためには、私達自身が、歯科技工士としての自負と歯科技工所経営者としての自覚を併せ持たなければならない。そして、国家資格を有する専門職が作成する歯科補てつ物等に相応しい対価が、安定的に支払われるシステムを構築するための戦略も必要である。
昨年11月、第1回目の総合政策審議会(略称「総合審」)が開催された。総合審には、歯科技工士の“資質向上と環境整備”について、歯科技工士が将来に夢と希望を抱ける施策を整理し、平成27年末を目標に答申することが求められている。
歯科技工士の資質を向上させ、同時に環境を改善させるためには、個々の努力と合わせ、何よりも多くの歯科技工士が大同団結してこそ成就するものである。
この総合審から知恵を創出し、時代に即した実行可能な政策提言を期待したい。