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歯科技工士・岩澤 毅

136 衆 予算委員会第四分科会 01 1996/02/29 大口善徳委員

1996年02月29日 | 国会議事録
136 衆 予算委員会第四分科会 01 1996/02/29

○大口分科員 早急な是正を私は要求したいと思います。
 平成四年二月一日に放映されました「NHKスペシャル」で、「かめない話せない笑えない・入れ歯のハナシ」、こういう特集がありました。大臣、記憶があるかもしれません。この特集の中で、二〇二〇年には六十五歳以上の方が四分の一を占める、そして二〇二〇年になりますと入れ歯の人口は一千万人、十人に一人が入れ歯になる、こういう状況です。
 そのテレビでも紹介されたのですが、六十八歳の婦人の手紙に、本当に死ぬまで一度でいいから平気でかめるようになりたい、こういうことで、入れ歯ということについて、総義歯ということについて切実なる思いというのがあるわけです。
 そして、この特集のアンケートによりますと、入れ歯のぐあいが悪いと思っている人は四八%もいる。そして、合わない入れ歯の悪いところというのは、あごと入れ歯の間にすき間があるとか土台が出っ張っている、あるいは必要以上に厚過ぎたり大きいということで吐き気がする、かみ合わせが悪いので肩凝りがある、こういうことで、非常にそれが苦痛であるわけですね。〇・一ミリ違うとどんどんかみ合わせが悪くなってくる。こういうことで合わない入れ歯になっていくということなのですね。
 そういうアンケート、それをどう改善していくか、こういうことで、一つは、合わない入れ歯ができることの理由として、教育制度が悪い、そしてまた医療制度も悪い、こういうことが結論であったように思うわけであります。
 教育制度については、実技、技術的な試験も導入すべきだ、こういう意見もあるわけでございます。そして医療制度について悪い、こういう中で、総義歯についての採算性ということで、保険診療だけで成り立つか否かということで、成り立たないというのは六五%、そういう結果が出ております。
 そして、保険では入れ歯をつくればつくるほど赤字になる、保険と自費との材料代はほとんど変わらないで技術代がほとんどの差になる、かけた時間に見合った正当な報酬がない、そういうことでアンケートは、適正な点数評価については、四倍以上が一八%、三倍以上が二七%、二倍以上は三三%、五割上げるが一三%、こういうこと。そして、こういう点数を上げない場合に経営を成り立たせるためにはということについては、例えば自費料金に不採算分を上乗せするが一五%、そして時間、工程を省略するが二一%、こういうふうな形で、あと人件費の削減が四五%等々となっているわけであります。
 また、歯科技工士さんについても、歯科技工士さんの労働に対する時給というのは千八百五十二円ということで、サラリーマンの三千二百三十六円に比べて非常に低い。労働時間は、技工士さんが二千六百三十時間なのに対してサラリーマンは二千五十二時間、年収は、技工士さんが四百八十七万に対してサラリーマンは六百六十四万、これは四年前の番組ですが、このようになっているわけです。
 そういう点で、この総義歯についての不採算の問題、これは非常に今後真剣に考えていかなければいけない、そういうふうに思うわけです。こういう不採算のために、これはある臨床医ですけれども、十五年もこういう赤字医療の悪循環が続いている、あと五年ぐらいでよい入れ歯を保険でつくる医師がいなくなるのではないか、こういうことを言うお医者さんもおられます。
 その長期不採算、また低改定の悪影響として、歯科医療の意欲の低下とかあるいは経営の悪化による保険離れ、あるいは歯科衛生士の待遇改善ができないために優秀な人材の確保が難しくなるとか、あるいは器材の償却期限後の再投資が不可能になりつつあるとか、そういう形で、技工士も低収入を我慢し続けることになる、こういうような不都合が生じているわけでございます。
 そういう点で、歯科だけが不採算医療を抱えたまま長期間改善がなされていないということについて、社会保険制度に自発的に協力してくれている保険医の方々に対して、納得のいく理由をお伺いしたいと思います。
○岡光政府委員 今回の診療報酬改定でも、そういう歯科医療の経営の安定ということは課題でご
ざいまして、限られた財源も、医科との対比でございますが、かなり重点的に配分をしたつもりでございます。
 それから、具体的に御指摘がありましたいわゆる総義歯の関係でございますが、これも従来から、技術料重視の考え方でその関係点数の引き上げを行ってきております。特に平成六年度の診療報酬改定、前回でございますが、総義歯につきましては約二五%の大幅な引き上げを行って、その製作に係る技術料の評価を高く行ったところでございますのとあわせまして、長期的な調整が必要でございますから、そういう調整をした場合の評価も新たに行うというようなことをやったわけでございます。
 今回の改定におきましても、この総義歯の関係はまたふさわしく評価を加えたつもりでございまして、かなりこの総義歯のウエートが高うございますから、そういったことを評価をすることによって結果として歯科医療の経営の安定につながるのではないか、こんなふうに考えておる次第でございます。
○大口分科員 ただ、二五%ということですが、アンケートからいきますと非常に低過ぎるという感じがいたします。
 そこで大臣に、総義歯あるいは鋳造冠の不採算を解消して、患者も医師も安心して入れ歯をつくれる時代、これをつくっていただきたい、こう思うのですが、その取り組みについてお伺いします。
○菅国務大臣 歯科の保険による診療あるいは診療報酬の中でどういうふうに扱うかということで、今も保険局長の方から相当この間そのことに重点を置いて対応してきたという答弁をしたわけでありますが、確かに総入れ歯、総義歯というものがこれから、先ほどの委員の御指摘のように、高齢者の相当の人たちにとって必要になり、かつそれが健康維持のために大変重要だということを考えたときに、今のままで十分なのかどうか、そのことも毎年いろいろ少しずつ変わってまいりますので、そういう中では十分念頭に置いて、さらなる改善のために努力したいと思います。
○大口分科員 平成八年度の社会保険診療報酬改定の中で、今いろいろ話題になっています補綴物の維持管理料の新設、こういうことについて非常に臨床医の歯科医師さんの中でいろいろ御意見があります。
 その御意見の中には、例えば、これは時期尚早である、総義歯とか鋳造冠の不採算の解消が大前提である、あるいは歯科補綴治療の包括化というのは良質の医療を阻害する要因であるとか、あるいはその包括化、義務化は患者の疾病原因を歯科医療者に押しつけるものであるとか、あるいは老人健康保険法の四十歳からの歯科健診事業の法制化をまず実施して、それで十分な時間とデータに基づいてやるべきだ、こういう声が聞こえます。
 こういうことも踏まえて診療報酬の改定を検討すべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
○岡光政府委員 御指摘のありました補綴物の維持管理の関係でございますが、これは今おっしゃいましたような広い観点からの検討を中医協において行いまして、それで、補綴が適切な診断と技術に基づいて実施されるのであれば、ほとんどの冠やブリッジは比較的長期間機能するのではないだろうか、そうすると、歯科医師がそれだけのいろいろ配慮をして判断をするわけでございますから、その維持管理料は通常の点数のほかに別途評価をしていいではないか、こういう結論になったわけでございます。
 私ども、技術料を包括化するというふうな発想ではございませんで、むしろ、そういう比較的長期の間、補綴をされたものが管理されてちゃんと維持されるという、それのいわば保証というのでしょうか、経済的な面からのバックアップという意味で改めてその管理料を設定したものでございまして、いろいろ御議論があることは承知をしておりますが、むしろそういうそしゃく機能の維持回復、維持管理ということが最も大切だ、こういう観点からこのような点数を導入したつもりでございます。

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