史実に誠実であるために
藤田浄秀・早川浩生『QDT』2004年6月号論文
-なぜ歯科技工「師」ではなく歯科技工「士」なのかの衝撃-
秋田市 岩澤 毅
2005年の歯科技工士法制定50周年を目前にした2004年春、私たち歯科技工士が長年
抱いてきた歯科技工士法制定経過に対する疑問に、緻密な調査による新たな回答が寄
せられた。
歯科技工士の誰もが一度は頭をよぎったであろう「なぜ歯科技工士は『師』ではな
く歯科技工『士』なのか?」。
私は、日本歯科技工士会の正史『日技会史―黎明期からの四十年―』の記述を一応
の一つの回答としながらも、日本歯科技工士会の全史を記述し資料整理する同書の性
格上の制約のため、「師」「士」問題に関しては、ある種の「食い足りなさ」を感じ
ていた。
藤田/早川論文は、「師」「士」問題に焦点を絞り、「師」「士」の字義に遡り、他
医療関係職種名の「師」「士」問題を分類・整理し、歯科技工法制定時の業界内の力
関係を含む当時の情勢を、精力的で豊富な資料の収集と分析によって、歯科技工
「士」命名の経過を再構成し我々の前に提示する。
筆頭著者の藤田氏は医師と歯科医師との二つの資格免許を持つ医学部口腔外科学の教
授であり,同施設の歯科技工士である早川氏との協同作業による執筆の模様です。
明年の歯科技工士法制定50周年には、日本歯科技工士会の手によって同会正史として
五十周年記念誌が発行されるものと思われるが、五十周年記念誌の編集にこの上も無
い力強い援軍が颯爽と登場したと言えるのではないか。
掲載誌が、「補綴臨床家と歯科技工士のための国際誌」という制約と誌幅の関係上、
著者らが自制したと思われる、歯科技工士法に先行して制定され歯科技工士法に大い
に影響を与えたであろう歯科衛生「士」法に関する歴史的経過を含む事実関係の検
証、医科にとどまらず社会的にも確立していた看護婦・保健婦・助産婦の職名がある
中で、何故あえて当時の歯科界と官界政界は歯科衛生「士」法を選択したのか。何故
歯科衛生士が「士」なのか、これへの回答を、「士」(サムライ?)である歯科衛生
士自身の手によって我々歯科技工士と国民の前に明らかにされることを期待したい。
また、日本歯科技工士会正史『日技会史―黎明期からの四十年―』と共に、「官立」
として制定時の法制に事実と実績をもって影響を与えたであろう現在の東京医科歯科
大学による歯科技工教育の記録たる同窓会・技友会による『歯科技工士教育五十周年
記念誌』に印されている「歯科技工手」の位置付けをも含む全史としての日本におけ
る歯科技工創生発達史と呼ぶべき決定版歯科技工正史の編集発行が、何時の日にか実
現することを切に願います。
本論文の著者らの営為が、決定版歯科技工正史への一つの方向性を与えたと言えると
考えます。
現在を知り、現状を把握する唯一の方法は、歴史に学ぶことにあると思います。
私の好きな言葉です「過去に目を閉ざすものは、結局のところ現在にも盲目になりま
す。」。
参考文献
歯科技工士教育五十周年記念誌:昭和54年5月12日:東京医科歯科大学付属歯科技工
士学校同窓会技友会編集・発行
技工手養成科の「手」という字を用いたのは当時一般では技工師と称していたが、
官制により技術者は、技手に任官するため、その手をとって技工手としたといわれ、
これは、本学病院内だけの名称であった。(31ページ)
ヴァイツゼッカー:荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領演説全文1985年5
月8日:岩波ブックレット No.55: 1986年02月
早川浩生氏の過去の論文を、クインテッセンス出版HP・歯学文献検索によって検索
した結果を紹介します。
http://www.quint-bunken.jp/
QDT Report:第17回 歯科チタン学会学術講演会、開催される
Quintessence of Dental Technology(QDT)
29巻5号686頁 2004 年 5 月 発行
Opinion & Suggestion:「技工製作物」とは何か
月刊 歯科技工
32巻5号741頁 2004 年 5 月 発行
On the Table-語ろう!歯科補綴・技工界のきのう・きょう・あす-:歯科技工は「作成」
か「作製」か「製作」か
Quintessence of Dental Technology(QDT)
29巻4号550頁 2004 年 4 月 発行
特別企画:[効果的な予防歯科システム構築に向けて]3DS法に用いるドラッグ・リ
テーナーの作製法
日本歯科評論(評論)
60巻692号127頁 2000 年 6 月 発行
2004.06.14記
藤田浄秀・早川浩生『QDT』2004年6月号論文
-なぜ歯科技工「師」ではなく歯科技工「士」なのかの衝撃-
秋田市 岩澤 毅
2005年の歯科技工士法制定50周年を目前にした2004年春、私たち歯科技工士が長年
抱いてきた歯科技工士法制定経過に対する疑問に、緻密な調査による新たな回答が寄
せられた。
歯科技工士の誰もが一度は頭をよぎったであろう「なぜ歯科技工士は『師』ではな
く歯科技工『士』なのか?」。
私は、日本歯科技工士会の正史『日技会史―黎明期からの四十年―』の記述を一応
の一つの回答としながらも、日本歯科技工士会の全史を記述し資料整理する同書の性
格上の制約のため、「師」「士」問題に関しては、ある種の「食い足りなさ」を感じ
ていた。
藤田/早川論文は、「師」「士」問題に焦点を絞り、「師」「士」の字義に遡り、他
医療関係職種名の「師」「士」問題を分類・整理し、歯科技工法制定時の業界内の力
関係を含む当時の情勢を、精力的で豊富な資料の収集と分析によって、歯科技工
「士」命名の経過を再構成し我々の前に提示する。
筆頭著者の藤田氏は医師と歯科医師との二つの資格免許を持つ医学部口腔外科学の教
授であり,同施設の歯科技工士である早川氏との協同作業による執筆の模様です。
明年の歯科技工士法制定50周年には、日本歯科技工士会の手によって同会正史として
五十周年記念誌が発行されるものと思われるが、五十周年記念誌の編集にこの上も無
い力強い援軍が颯爽と登場したと言えるのではないか。
掲載誌が、「補綴臨床家と歯科技工士のための国際誌」という制約と誌幅の関係上、
著者らが自制したと思われる、歯科技工士法に先行して制定され歯科技工士法に大い
に影響を与えたであろう歯科衛生「士」法に関する歴史的経過を含む事実関係の検
証、医科にとどまらず社会的にも確立していた看護婦・保健婦・助産婦の職名がある
中で、何故あえて当時の歯科界と官界政界は歯科衛生「士」法を選択したのか。何故
歯科衛生士が「士」なのか、これへの回答を、「士」(サムライ?)である歯科衛生
士自身の手によって我々歯科技工士と国民の前に明らかにされることを期待したい。
また、日本歯科技工士会正史『日技会史―黎明期からの四十年―』と共に、「官立」
として制定時の法制に事実と実績をもって影響を与えたであろう現在の東京医科歯科
大学による歯科技工教育の記録たる同窓会・技友会による『歯科技工士教育五十周年
記念誌』に印されている「歯科技工手」の位置付けをも含む全史としての日本におけ
る歯科技工創生発達史と呼ぶべき決定版歯科技工正史の編集発行が、何時の日にか実
現することを切に願います。
本論文の著者らの営為が、決定版歯科技工正史への一つの方向性を与えたと言えると
考えます。
現在を知り、現状を把握する唯一の方法は、歴史に学ぶことにあると思います。
私の好きな言葉です「過去に目を閉ざすものは、結局のところ現在にも盲目になりま
す。」。
参考文献
歯科技工士教育五十周年記念誌:昭和54年5月12日:東京医科歯科大学付属歯科技工
士学校同窓会技友会編集・発行
技工手養成科の「手」という字を用いたのは当時一般では技工師と称していたが、
官制により技術者は、技手に任官するため、その手をとって技工手としたといわれ、
これは、本学病院内だけの名称であった。(31ページ)
ヴァイツゼッカー:荒れ野の40年 ヴァイツゼッカー大統領演説全文1985年5
月8日:岩波ブックレット No.55: 1986年02月
早川浩生氏の過去の論文を、クインテッセンス出版HP・歯学文献検索によって検索
した結果を紹介します。
http://www.quint-bunken.jp/
QDT Report:第17回 歯科チタン学会学術講演会、開催される
Quintessence of Dental Technology(QDT)
29巻5号686頁 2004 年 5 月 発行
Opinion & Suggestion:「技工製作物」とは何か
月刊 歯科技工
32巻5号741頁 2004 年 5 月 発行
On the Table-語ろう!歯科補綴・技工界のきのう・きょう・あす-:歯科技工は「作成」
か「作製」か「製作」か
Quintessence of Dental Technology(QDT)
29巻4号550頁 2004 年 4 月 発行
特別企画:[効果的な予防歯科システム構築に向けて]3DS法に用いるドラッグ・リ
テーナーの作製法
日本歯科評論(評論)
60巻692号127頁 2000 年 6 月 発行
2004.06.14記