公益社団法人日本歯科技工士会広報誌
「日本歯技」2020年5月号 歯科技工士の杜
「人生100年時代」「70歳就業時代」の入れ歯のお手入れ環境の整備を
秋田県歯科技工士会 岩澤 毅
安倍内閣総理大臣は、1月6日の年頭記者会見で「人生100年時代」の到来との認識を示し、高齢者の就労と社会保障の支え手としての役割への期待を表明した。8日には厚生労働省の労働政策審議会の部会で、2021年4月から企業に対し70歳までの就業確保に努めることを求めるための高年齢者雇用安定法などの改正案の要綱が示され、20日に召集予定の通常国会に改正法案を提出する方針が報道された。
昔の高齢者のイメージとは違い、お元気な高齢者が増えているのは確かであり、日本の人口の構成からも要請された課題だと思う。しかし、この高齢者世代は、入れ歯使用者のボリュームゾーンであり、職場に入れ歯使用者がそれなりのボリュームで登場することを意味することになる。
職場において、昼食後にブラッシング等の口腔ケアを行うための十分なスペース等が整備されていないとの現実を耳にする。外食産業の店舗や観光地、公共交通機関等でも同様だろう。歯科技工所、歯科医院に居る分には、ブラッシング等の口腔ケアを行うスペースの不足を意識することは少ないと思うが、一歩外に出ると入れ歯の手入れ、食物残渣の除去等の困難が予想される。
昨年12月4日、アフガニスタンで銃撃されお亡くなりになった中村哲医師は、医療援助から水源確保のための井戸掘削や水路の整備等に方向をかえられた。それが現地で必要なことであり、医療基盤を作るためにも必要なことと思われての行動と思う。
過去に経験のない「人生100年時代」「70歳就業時代」は、見落とされがちな身近な細部の整備の積み重ねも必要とされると思う。