朝日新聞2016年1月9日 金融情報面
経済気象台
ものづくり人材増やすには
最近、テレビドラマ「下町ロケット」で、こんなことまでできるのかというような技が、披露されていた。また、ものづくりの面白さや大切さを伝える新聞記事なども、しばしば目にするようになってきた。
経済の活性化には工業出荷額を増やすことが重要だと思うが、大学の募集人数は理系より文系の方が多い。高校も受験者の少なさを理由に工業系が減っている。20~330年後を考えると、次世代自動車や航空機、ロボット、医療福祉機器など、日本のものづくりはどうなってしまうかと不安を感じる。
今、国や自治体は「地方創生」の一貫で、中小企業の潜在力を引き出すための政策を進めている。経営などに携わる「プロフェッショナル人材」の採用を支援する予算も確保された。ただ現場では、対症療法の繰り返しや時代遅れの規制など活性化を邪魔していることも多い。
例えば、歯科技工士の問題である。高齢化で入れ歯の需要は増えている。ただ、歯科医はいても入れ歯づくりの資格者が足りず、質の低下もみられるという。歯科技工士をめざす若者が減り、専門学校なども縮小していることが背景にある。
応募者が少ないから教育の場を縮小するという対症療法ではなく、応募の少なさという問題の本質の部分で手を打たないと、事態は改善しないのではないだろうか。人材供給を増やすには、それが社会に貢献できる仕事であることを周知する、働く場を見つけやすくする、といった環境整備が必要となる。
ものづくりでもこうした取り組みを粘り強く後押しすることが、本当の「地方創生」だと思うのだが、どこかずれているように思えてならない。(削)