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歯科技工士・岩澤 毅

内保連 学会からの要望と診療報酬改定の道筋

2009年03月05日 | 基本・参考
学会からの要望と診療報酬改定の道筋

従来から、学会から要望した重要項目が何故採択されなかったのか明らかでなく、採否の決定過程が見えないとの指摘がある。学会からの診療報酬要望と保険収載までのプロセスを以下に整理したい。
学会から厚生労働省に新しい技術等の保険収載を要望するルートと決定過程への道筋には大別して以下の三つがある。

(1)内保連ルート(別図)

提案書は改定の前年の 6 月頃までに提出することとなっている。中医協は学会からの要望の提出ルートを内保連、外保連および看保連の三団体と日本医学会加盟団体からの直接ルートを指定している。このうち中心ルートとなる医療技術評価分科会での検討項目は第 2 章特掲診療料第 3 部(検査)から第 12 部(放射線治療)に該当する技術に限定しており要望の書式も定めている。これらの項目から外れる要望、例えば「病理診断の検査からの切り離しと第 13 部の新設」などは、代表から医療課長への直接要望となる。また医薬品の適応範囲拡大などは、保険局ではなく医薬食品局で審査される。

医療技術評価分科会の中にはさらに専門小委員会がおかれ、提案書をもとに複数回の会議開催の後に小委員会としての医療技術の優先度(案)がつけられる。この段階では必要医療費などは大きな判断材料とはならず、当該技術の有効性と安全性のエビデンスの質も踏まえて医療における重要度や緊急性が複数の委員により討議される。医療課内では専門委員会での意見、医療費全体における比重、国民医療における緊急度などを参考に医療技術評価分科会の案をとりまとめ、分科会での検討、修正を経て分科会案を絞り込んで行く。分科会案は基本問題小委員会に提出され、主に医療上の妥当性や重要度についての検討、討議、修正を経て、中医協総会に基本問題小委員会の結論を報告する。中医協総会では支払い側(一号側)、診療側(二号側)そして中立(三号側)の各委員の討議を経て、中医協としての結論がまとめられ会長から厚生労働大臣に答申される。

診療報酬改定のとりまとめでは、救急患者のたらいまわし、産科小児科医療の崩壊、病院勤務医の過重労働など社会問題化した領域が全体の低医療費の中での配分として重視され、また四疾病五事業など国の重点施策の影響も色濃く反映した結果となっている。医療技術評価の必要性を訴える「神経診察料」の新設、生活習慣病克服に貢献する「24 時間血圧測定」や「インスリンを使用しない 2 型糖尿病の血糖自己測定」の評価、がん診断上必須の病理診断医確保のための診療報酬拡大にはつながらない「第 13 部病理診断の新設」などが医療課として内保連の要望に特に配慮した内容とみられる。 学会が提出した多数の提案の取り扱いは以下の諸点を医療課において総合的に判断した帰結と見ることができる。
①改定内容は医療費全体の枠内におさまるか。
②有効性、安全性、必要性のエビデンスはあるか。
③医療技術評価分科会における評価は十分に高いか。
④学会や内保連からのヒアリングで妥当性と必要度の高さが示されたか。
⑤保険医療制度で混乱なく実施できる整合性があるか。
⑥中医協の基本問題小委員会と総会で承認される内容か。

資料1 別図 学会からの要望の取り扱いに関する内保連ルート


(2)日本医師会ルート 日本医師会ではその傘下組織である日本医学会に加盟する各学会からの要望は、通年で常時受け付けている。日本医師会には疑義解釈委員会が置かれ、厚生労働省の担当者が参加している。学会の理事長は厚生労働大臣宛の要望書を日本医師会長に提出する。日本医師会は疑義解釈委員会での検討を経て厚生労働省の担当者が部局に持ち帰り要望を検討することとなる。DPC における高額の新薬の緊急外出し、画期的な新技術の緊急採用など、重要度と緊急性の高いものについては、診療報酬改定を待たずに対応される場合もある。医薬品の適応拡大にもしばしばこのルートが利用される。また改定時期に合わせた内保連の要望に先立って改定の必要性を関係者に周知し、採用の基盤づくりに役立ったと見られる場合もある。

(3)大臣宛要望書の直接提出 学会が社会的緊急度の高いと考えるものなどを中心に学会理事長名で厚生労働大臣へ直接に要望書を保険局医療課に提出することもある。これについても特に日本医学会加盟学会に関しては厚生労働省は門戸を閉ざしてはいない。この場合、学会から医療課担当者に説明することが妥当な場合もあり、緊急採択や基盤づくりに役立ったと見られる場合もある。

http://www.naihoren.jp/gijiroku/gijiroku105/105gian3.pdf

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