白書データベース
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wp/index.htm
書名・件名 厚生白書(昭和56年版)
副書名 国際障害者年―「完全参加と平等」をめざして―
編集者・監修者 厚生省
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz198101/
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz198101/b0182.html
各論
第1編 健康の確保と増進
第3章 医療保険
第1節 医療保険制度の現状と動向
3 診療報酬問題等
--------------------------------------------------------------------------------
(1) 診療報酬
医療保険制度における診療報酬は,厚生大臣が中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)に諮問の上で決定し,具体的には「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(厚生省告示。以下「点数表」という。)に定められ,これに従って算定される。点数表には,医科の保険医療機関が選択する甲点数表と乙点数表,歯科の保険医療機関の歯科点数表及び保険薬局の調剤報酬算定表の4種類がある。各点数表には,医療行為ごとに点数で評価された数百の項目があり,これに1点単価(現行10円)を乗じて診療報酬を算定する仕組み(ただし,調剤報酬算定表は金額表示)となっている。
現行の診療報酬は,56年5月21日に中医協に対し諮問を行い,同月23日に答申を経て,同年6月1日から平均8.1%(医科8.4%,歯科5.9%,調剤薬局3.8%)引き上げられたものであるが,今回改定では,医療技術の進歩に伴いその難易度に対する適正な評価をするための技術料の引上げが行われるとともに,保険外負担等の問題に対処するため,重症者看護特別加算及び重症者室料特別加算の新設等が行われた。
(2) 薬価基準
投薬,注射等に使用する薬剤の価格については,厚生大臣が定める「使用薬剤の購入価格(薬価基準)」によることとされており,薬価基準価格は,薬価調査に基づく90%バルクライン価格(当該医薬品について,全体の90%の量を医療機関がそれ以下の価格で購入し得る価格)をもって定められている。
現行の薬価基準は,診療報酬の改定と同時に,56年6月1日から全面改定されたものである。
今回の薬価基準全面改正は,53年7月に販売及び購入された医薬品を対象とした薬価本調査,その前後に実施された特別調査及びその後の経時変動調査の結果に基づき行われ,改定率は18.6%の引下げとなった。
56年6月現在の薬価基準収載品目数は,12,881品目(内用薬8,152品目,注射薬3,346品目,外用薬1,219品目,歯科用薬剤164品目)となっている。
(3) 保険外負担
室料差額及び付添看護の保険外負担問題は,今日,大きな社会問題として,とりあげられてきている。適正さを欠く保険外負担のために,被保険者及びその被扶養者が安んじて保険診療を受ける機会が妨げられることのないよう,従来からこの問題の解消が図られてきたが,53年1月及び3月には,保険局長通知をもって都道府県知事に対し,保険外負担解消のための指導の強化が行われた。この結果,55年7月1日現在の室料差額徴収状況調査では,前年の調査と比較して,全体の差額徴収病床の割合が低下し,特に3人室以上においてかなり改善がみられた。ちなみに,3人室以上の差額徴収が完全に解消された都道府県数は,55年7月現在,全国の約3分の2に達している。なお,今回の診療報酬改定の際の中医協の答申において「3人室以上の差額ベッドの解消」が明記され,その趣旨を踏まえ,保険局長通知をもって都道府県知事に対し更に,指導の強化が行われた。
また,歯科差額問題については,53年2月の診療報酬改定の際,51年3月23日の中医協の答申「歯科における差額徴収は,歯科材料費のみに限ること」に基づいて,前歯部の鋳造歯冠修復については,材料差額方式が適用されることとなった。これによって,前歯部の鋳造歯冠修復に際して患者が保険適用外の貴金属の使用を希望した場合には,患者は材料費の差額を負担すればよいこととなった。また,今回の診療報酬改定の際に前歯部の歯冠継続歯についても材料差額方式が適用されることとなった。
(4) 指導・監査の推進
保険医療機関及び保険医に対する指導・監査については,28年6月及び32年7月の通達によってそれぞれの要綱が定められており,それらに従って厚生大臣又は都道府県知事による指導・監査が行われているが,更にその充実を期するため,54年1月,都道府県知事に対して保険局長から次のような内容の通知が出され,保険診療適正化のための指導・監査の推進を図ることとなった。
この通知は,医学常識に沿った的確な診断・治療を行うことの必要性から,保険医療機関及び保険医に対し,従来より行われている指導を充実し,更に
1 例えば国立がんセンター等の特殊の性格,機能を有する医療機関を除き,医学常識からみて極端に診療点数が高いもの。
2 漫然と長期にわたって診療を続けているもの。
3 時間外診療,往診及び自家診療が著しく多いもののうち,異常と思われるもの。
4 ダイアライザーの再使用等腎透析の実施が不適正なもの。
等については,指導・監査を重点的に実施することとしたものである。
また,指導・監査体制の充実を図るため,54年度から医療指導監査官2名が設置され,55年度及び56年度においてもそれぞれ2名ずつ増員された。
また,都道府県の保険課には54年度から医療事務指導官が19名設置され,55年度に14名,56年度には19名増員されている。
(5) 医療費適正化対策の推進
前述したように医療保険の財源には大幅な伸びを期待できない一方,人口構造の老齢化等に伴い医療費は上昇している。こうした状況下にあって医療資源を効率的に利用していく観点から医療費の適正化を図ることが重要となっている。
このため,薬価基準の適正化,指導・監査の推進のほか,レセプト審査の充実・改善,医療費通知の充実等の医療費適正化のための施策を講じている。
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wp/index.htm
書名・件名 厚生白書(昭和56年版)
副書名 国際障害者年―「完全参加と平等」をめざして―
編集者・監修者 厚生省
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz198101/
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpaz198101/b0182.html
各論
第1編 健康の確保と増進
第3章 医療保険
第1節 医療保険制度の現状と動向
3 診療報酬問題等
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(1) 診療報酬
医療保険制度における診療報酬は,厚生大臣が中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)に諮問の上で決定し,具体的には「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」(厚生省告示。以下「点数表」という。)に定められ,これに従って算定される。点数表には,医科の保険医療機関が選択する甲点数表と乙点数表,歯科の保険医療機関の歯科点数表及び保険薬局の調剤報酬算定表の4種類がある。各点数表には,医療行為ごとに点数で評価された数百の項目があり,これに1点単価(現行10円)を乗じて診療報酬を算定する仕組み(ただし,調剤報酬算定表は金額表示)となっている。
現行の診療報酬は,56年5月21日に中医協に対し諮問を行い,同月23日に答申を経て,同年6月1日から平均8.1%(医科8.4%,歯科5.9%,調剤薬局3.8%)引き上げられたものであるが,今回改定では,医療技術の進歩に伴いその難易度に対する適正な評価をするための技術料の引上げが行われるとともに,保険外負担等の問題に対処するため,重症者看護特別加算及び重症者室料特別加算の新設等が行われた。
(2) 薬価基準
投薬,注射等に使用する薬剤の価格については,厚生大臣が定める「使用薬剤の購入価格(薬価基準)」によることとされており,薬価基準価格は,薬価調査に基づく90%バルクライン価格(当該医薬品について,全体の90%の量を医療機関がそれ以下の価格で購入し得る価格)をもって定められている。
現行の薬価基準は,診療報酬の改定と同時に,56年6月1日から全面改定されたものである。
今回の薬価基準全面改正は,53年7月に販売及び購入された医薬品を対象とした薬価本調査,その前後に実施された特別調査及びその後の経時変動調査の結果に基づき行われ,改定率は18.6%の引下げとなった。
56年6月現在の薬価基準収載品目数は,12,881品目(内用薬8,152品目,注射薬3,346品目,外用薬1,219品目,歯科用薬剤164品目)となっている。
(3) 保険外負担
室料差額及び付添看護の保険外負担問題は,今日,大きな社会問題として,とりあげられてきている。適正さを欠く保険外負担のために,被保険者及びその被扶養者が安んじて保険診療を受ける機会が妨げられることのないよう,従来からこの問題の解消が図られてきたが,53年1月及び3月には,保険局長通知をもって都道府県知事に対し,保険外負担解消のための指導の強化が行われた。この結果,55年7月1日現在の室料差額徴収状況調査では,前年の調査と比較して,全体の差額徴収病床の割合が低下し,特に3人室以上においてかなり改善がみられた。ちなみに,3人室以上の差額徴収が完全に解消された都道府県数は,55年7月現在,全国の約3分の2に達している。なお,今回の診療報酬改定の際の中医協の答申において「3人室以上の差額ベッドの解消」が明記され,その趣旨を踏まえ,保険局長通知をもって都道府県知事に対し更に,指導の強化が行われた。
また,歯科差額問題については,53年2月の診療報酬改定の際,51年3月23日の中医協の答申「歯科における差額徴収は,歯科材料費のみに限ること」に基づいて,前歯部の鋳造歯冠修復については,材料差額方式が適用されることとなった。これによって,前歯部の鋳造歯冠修復に際して患者が保険適用外の貴金属の使用を希望した場合には,患者は材料費の差額を負担すればよいこととなった。また,今回の診療報酬改定の際に前歯部の歯冠継続歯についても材料差額方式が適用されることとなった。
(4) 指導・監査の推進
保険医療機関及び保険医に対する指導・監査については,28年6月及び32年7月の通達によってそれぞれの要綱が定められており,それらに従って厚生大臣又は都道府県知事による指導・監査が行われているが,更にその充実を期するため,54年1月,都道府県知事に対して保険局長から次のような内容の通知が出され,保険診療適正化のための指導・監査の推進を図ることとなった。
この通知は,医学常識に沿った的確な診断・治療を行うことの必要性から,保険医療機関及び保険医に対し,従来より行われている指導を充実し,更に
1 例えば国立がんセンター等の特殊の性格,機能を有する医療機関を除き,医学常識からみて極端に診療点数が高いもの。
2 漫然と長期にわたって診療を続けているもの。
3 時間外診療,往診及び自家診療が著しく多いもののうち,異常と思われるもの。
4 ダイアライザーの再使用等腎透析の実施が不適正なもの。
等については,指導・監査を重点的に実施することとしたものである。
また,指導・監査体制の充実を図るため,54年度から医療指導監査官2名が設置され,55年度及び56年度においてもそれぞれ2名ずつ増員された。
また,都道府県の保険課には54年度から医療事務指導官が19名設置され,55年度に14名,56年度には19名増員されている。
(5) 医療費適正化対策の推進
前述したように医療保険の財源には大幅な伸びを期待できない一方,人口構造の老齢化等に伴い医療費は上昇している。こうした状況下にあって医療資源を効率的に利用していく観点から医療費の適正化を図ることが重要となっている。
このため,薬価基準の適正化,指導・監査の推進のほか,レセプト審査の充実・改善,医療費通知の充実等の医療費適正化のための施策を講じている。