○尾辻秀久君 質問に先立ち、今は亡き山本孝史先生の御冥福をお祈り申し上げます。
山本孝史先生は、病魔と壮絶な闘いを続けながら、がん対策、自殺対策の立法に尽力されました。その先生のお姿がこの議場に見えないこと、国民が最も関心を寄せている社会保障の御専門の先生がいらっしゃらないことは残念でなりません。
山本先生をしのびつつ、これから質問をさせていただきます。
今年のNHKの大河ドラマは「篤姫」です。篤姫は薩摩の幕末の名君、島津斉彬の養女から十三代将軍家定の正室になりました。徳川家と討幕派、薩摩藩の板挟みとなりながら、いったん嫁いだからにはと、最後まで徳川家を守った薩摩の女性が一年にわたってテレビで描かれます。
幕末の薩摩といえば、西郷や大久保など多くの偉人を輩出しましたが、彼らの共通点は、母親が偉かったことだと言われています。薩摩の男は威張っているように見えますが、お釈迦様の手のひらで踊っている孫悟空のようなもので、しょせん、女性の手のひらに乗せられているだけと言われています。私自身のことを申しました。
そういえば、総理はかかあ天下と空っ風の上州の御出身であります。総理、日本のお母さんについて語ってみてください。総理のお人柄をのぞいてみたく、お願いをいたします。
総理は、昨年の暮れ、今年の世相を表す漢字にちなんで、信じるの信という漢字を挙げられました。総理のお人柄を示す言葉であると思います。どうぞ、政治や行政に対する信頼を取り戻してください。
本年七月には洞爺湖サミットが開催され、開催国の議長としての大任も待っております。まず、総理にとって初めてのこの通常国会を乗り切っていただかなければなりません。実りある国会となりますよう、私たちも努力してまいります。
前国会では、ねじれの中で十二本の議員立法と十四本の閣法が成立しました。総理はこの衆参ねじれの下でどのような国会対応を考えておられますか、お伺いをいたします。
次に、今年の景気はどうなるのかお尋ねします。
今、世界経済は多くの不安を抱えています。一番の不安定要因となっているのがアメリカのサブプライムローンと言われる個人向け住宅融資の焦げ付きであります。アメリカの金融機関の業績悪化、株式市場の下落を引き起こして、広く世界のマーケットにも悪影響を及ぼしています。さらに、原油価格の高騰があります。国内では軽油やガソリンなどの小売価格がびっくりするほど高くなりました。
一方で、中国経済は毎年一〇%前後の高成長を持続しています。二〇〇八年の北京オリンピック、二〇一〇年の上海万博を控えておりますので、今後も経済活動の活性化は続くと考えられます。
これらを踏まえ、昨年末に発表された政府経済見通しでは、来年度の実質GDP成長率が二・〇%と今年度の見込み一・三%を上回る比較的高い成長となり、さらに名目GDP成長率は二・一%と十一年ぶりに実質成長率を上回るとされています。デフレからの脱却が実現することになります。
ただ、国内の状況を見ますと、建築基準法の改正により建築確認が厳しくなり、住宅投資の落ち込みを招くのではないかと心配されています。また、日銀短観で見る企業の景況感も、頭打ちから低下の方向を示しています。内閣府の景気ウオッチャー調査でも景気の実感は低迷しているようです。
内外の様々な状況を織り込んで、我が国経済の今後をどのように見ておられるのか、総理にお伺いをいたします。
景気の回復が続いていると言われますが、あくまでマクロ的に見たもので、ミクロで見るとかなり厳しい状況が指摘されています。特に地方経済では、これまで長きにわたって公共事業や農林水産業、そして零細小売業が産業の中心でありましたが、今や公共事業が削減され、農林水産業が国際競争にさらされ、大規模小売店の進出など、いずれの産業も深刻な影響を受け疲弊しています。
かつては、都市や大企業が良くなれば地方、中小企業は時間差で回復すると言われましたが、この経済法則は崩れたのではないでしょうか。地域間格差など、経済格差の問題について御認識を総理にお伺いをいたします。
景気による税収増が余り期待できない中で、税制をどうするのかお尋ねします。
来年度の税制改正では、いわゆるふるさと納税が創設されました。そこで、今回の税制改正の柱である地方税体系の見直しに関して、地方経済へのてこ入れ効果をどのように判断されているのかを伺います。
少子高齢化の進展による社会保障費の増加に対応するためにも、消費税の見直しを中心とした税制の抜本的な改革は避けて通れない課題であります。特に、公的年金の国庫負担二分の一への引上げは待ったなしの課題であります。昨年末の与党の税制改正大綱では、消費税に関して、持続可能な社会保障制度とするための安定した財源として位置付けられています。
消費税の在り方や今後の見直しに関して、総理の御見解をお伺いいたします。
平成二十年度予算は、税収の伸びが小幅にとどまる中でも、歳出歳入全般にわたる努力で新たな国債の発行額は四年連続の減額となりました。一般会計規模と一般歳出ともに増額ではありますが、公共事業関係費や政府開発援助は減額し、小泉内閣以来の歳出削減方針は堅持されました。評価したいと思います。
しかし、課題も多くあります。例えば、今年度一般会計の削減の中、特別会計の歳出合計は昨年度より六兆円多い約三百六十八兆円となりました。特別会計の数は、今年度七つ減らして二十一会計、平成二十二年度までに十七会計とする方針と聞いています。もちろん、数を減らすことは大事ですが、まず国民の目に見える会計にすべきであります。
総理、初めて編成された来年度予算をどう評価されるか、お伺いをいたします。
来年度予算案では、財政健全化の主要指標である基礎的財政収支は約五兆二千億円の赤字で、五年ぶりに悪化することになりました。
これまでの政府の方針は、骨太の方針二〇〇六で示されています。すなわち、黒字化目標を二〇一一年度と明記、財源不足額十六・五兆円を十一・四兆円から十四・三兆円の歳出削減と二兆円から五兆円の税収増で対応するとしております。しかし、直近の内閣府の試算では、税収の減少により、二〇一一年度は名目GDP比マイナス〇・一%、七千億円程度の赤字となりました。
総理は、国民に新たな活力を与え、生活の質を高める、生活者や消費者が主役となる社会を実現する国民本位の行財政への転換を基本方針にされました。そうであれば、黒字化達成目標について多少の見直しが必要ではないかと思いますが、総理のお考えをお示し願います。
関連して申し上げます。
プライマリーバランス黒字化に向けての歳出削減方針の下で、このところ毎年社会保障費を二千二百億円削減してきました。来年度予算でもそうなっております。
しかし、社会保障費を削るのはもう限界です。乾いたタオルを絞っても水は出ません。来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、あっという間に平成二十一年度予算の概算要求の時期になりますので、申し上げます。平成二十一年度予算では社会保障費二千二百億円の削減は行わないと約束していただきたいのであります。
経済財政について伺いましたので、この問題の最後にお聞きします。
私が大臣をさせていただいたときに、しばしば経済財政諮問会議に呼び付けられました。経済財政諮問会議は内閣府設置法に規定されておりますが、その議員のうち、民間議員の選任は官邸で行われ、国会が相談を受けることはありません。同意案件ではないのです。民間議員から、国会決議を無視すればいいという発言を耳にしたこともあります。会議が実績を残したことは否定しませんが、一方で格差を広げたことも事実であります。福田内閣においては、議院内閣制の下でこの経済財政諮問会議をどのように運営されていかれるか、お考えを伺います。
次に、外交問題について伺います。
日本の直面する外交課題は、北朝鮮の拉致、核問題を始め、拡張路線をひた走る中国との関係、北方領土をめぐる日ロ関係、テロとの戦いなど非常に厳しいものがございます。
昨年、総理は、就任以来初の米国訪問を皮切りに、シンガポールにおける東アジア首脳会議や日中韓首脳会議等に出席されました。そして、年末には訪中をされ、日中両国の関係を一層深められました。日米同盟とアジア外交との相乗効果を目指す総理提唱の共鳴外交が展開されたと理解しております。
今年は我が国においてサミットが開催されます。議長を務められる総理には、是非とも気候変動問題やアフリカ支援の取組等に強い指導力を発揮していただきたいと思います。
北朝鮮問題について伺います。
国家の役割は国民の生命、財産を守ることにあります。北朝鮮による拉致は断じて許すことはできません。一刻も早く解決をしなければなりません。
また、核問題は北東アジア全体にとって安全保障上重大な脅威となっております。昨年秋の六者会合では、核施設の無能力化や核の完全申告化等を内容とした合意が行われましたが、北朝鮮はまだ約束を果たしておりません。合意に基づく行動を取るよう、関係国が連携を強め、働きかけていく必要があります。
北朝鮮問題について、総理の御決意をお聞かせください。
次に、ODA問題について伺います。
参議院は、決算とODAを参議院改革の二本柱として取り組んでおり、ODAについては、平成十六年から議員団を海外に派遣し調査を行っています。昨年十二月にはベトナムに調査団を派遣し、我が国のODAで建設中に崩落したカントー橋の現場視察を実施いたしました。また、十八年の通常国会においてODA特別委員会を設置し、昨年六月には中間報告を取りまとめております。引き続き、効果的、効率的なODAの実施がなされるよう、積極的に意見を述べてまいります。
政府は、ODA問題に対する参議院の取組をどのように評価し、本院の提言や議論をODA施策にどのように反映しているのか、総理にお伺いをいたします。
次に、自衛隊派遣の恒久法について伺います。
昨年十一月、福田総理と民主党の小沢代表の党首会談で、自衛隊海外派遣のための恒久法制定が話し合われたとの報道がありました。お二人ともその内容について明らかにされておりませんので、総理はどのようにお考えなのか、御説明をください。
また、改めて申し上げるまでもありませんが、自衛隊の最高司令官は総理であります。総理のリーダーシップによってこそ、シビリアンコントロールが確立されます。したがって、総理を補佐する体制が重要であります。日本版NSCと言われる国家安全保障会議についての御見解を伺います。
次に、石破防衛大臣にお尋ねいたします。
現在、防衛省改革問題として、シビリアンコントロール、秘密保全問題、装備品等調達問題の三点が問われていることは、総理も施政方針演説の中で示されました。
そこで、この三点に絡む組織の基本的な問題について質問をいたします。
守屋前次官の証人喚問を聞いていて、私が一瞬びっくりしたのは、彼が、私たちシビリアンがと言ったときであります。しかし、次の瞬間、納得しました。自衛隊員ではあるが自衛官ではない次官が防衛省に君臨することによってシビリアンコントロールが守られていると考えていたことを理解したのであります。
その解釈は正しいのか、すなわち内局とはシビリアンコントロールのための組織なのか、また逆に、自衛官が大臣を補佐するとシビリアンコントロールではなくなるのか、大臣の御見解をお聞かせください。
防衛省設置法第十一条で、大臣が必要あると認めるときは、自衛官を内部部局において勤務させることができるとわざわざ規定しています。なぜか、また過去にその例があるのか、併せてお答えをください。
二点目です。
大臣は、軍政と軍令についてどのように整理しておられるのか、お尋ねします。かつて、軍政は背広、内局が支え、軍令は制服が支えていると答えられましたが、今も同じ御認識なのか、お尋ねをいたします。
三点目です。
防衛省設置法では、内局は、防衛、警備及び自衛隊の行動等にかかわる基本及び調整に関する事務をつかさどるとされています。さらに、内局とは別に、特別の機関として陸海空統合の四幕僚監部が置かれ、陸海空各部隊又は統合上の防衛、警備及び行動に関する計画の立案に関する事務をつかさどるとされています。この違いが分かりにくいのであります。防衛省は、一つで済む組織を背広と制服で別々に二つつくるという無駄なことをしていませんか。
私は、平成十五年三月の予算委員会で、内局にある運用局の英訳を日本語に戻すと指揮・作戦局、すなわち参謀本部になる。この仕事を背広が行うということは、一回もユニホームを着たことのない人が野球やサッカーの監督をするようなもので、そんな無用な組織は廃止した方がいいという質問をいたしました。そもそも陸海空の統合運用をする責任者は、背広の運用局長なのですか、それとも制服の統幕長ですかと尋ねましたら、今後の課題と答えておられます。防衛省の組織に無駄はないか、御認識を伺います。
以上、三点お尋ねいたしました。
今、その防衛省に対する信頼は地に落ちています。シビリアンコントロール、すなわち文民統制の名の下で文官統制を成し、好き勝手したことが大きな原因となっていると考えてお尋ねをしております。防衛省の改革については、今日の御答弁をお聞きした上で、更に委員会で質問をさせていただきます。
少子高齢化と人口減少化が進む中でのこれからの社会保障の理念とその在り方についてお尋ねいたします。
ここ数年の年金、介護、医療にわたる社会保障改革は、社会保障の持続可能性を高めるため、経済や財政との調和、給付と負担の均衡、世代間の公平性の確保という観点から行われたものです。しかし、これからの社会保障改革は、そこにとどまらず、地域経済の発展にも貢献し、何よりも、地域社会の助け合い、支え合いの新しい仕組みをつくり、地域社会の連帯感やきずなを取り戻すことこそ基本理念に据えるべきであると考えます。総理のおっしゃる自立と共生の社会づくりは、まさにそのことを目指すものであると考えます。これからの社会保障改革の全体像、福田福祉社会ビジョンを早急に取りまとめていただきたいと願います。
そのために、まず、社会保障の大きさをどの程度にするかを決めなければなりません。日本は、社会保障について、欧州諸国との比較では小さな政府を目指していると言えます。この社会保障の水準が安心できるものとして十分であるかどうか、国民的議論が必要であります。社会保障の給付の水準を上げるためには、一方で国民負担が必要となります。そのための国民合意は欠かせません。
私は、負担は大きくとも弱者に優しい国にしたいと願っています。中長期的な社会保障のあるべき形について、総理はどのようにお考えなのか、ずばり、日本を国民負担率何%の国にしようとお考えなのか、お聞きをいたします。
総理は、施政方針演説において、幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、社会保障のあるべき姿やその中での政府の役割、負担の仕方などについて、高齢化時代の国民の不安にこたえることができるような議論を行うと表明されました。
そこで申し上げますが、社会保障の在り方についての議論は、小泉内閣時代の平成十六年に設置された社会保障の在り方に関する懇談会など、過去にも行われてまいりましたし、今うわさされているメンバーは、基本的にはこれまでの懇談会と同じ構成であります。今度の国民会議がこれまでと一味違う答えを出せるのか、期待されるような成果を上げることができるのか、会議の運び方について総理にお尋ねをいたします。
更に申し上げますと、経済財政諮問会議もこれまで社会保障に口を差し挟んできました。その諮問会議の議論は、社会保障の負担面ばかりに焦点が当てられてきました。社会保障の議論は、超高齢社会を迎える中で持続可能な制度としていくという視点は欠かせませんが、国民が安心して暮らすためにどのような社会保障サービスが必要なのかということが基本にされるべきであります。
新たに設置される社会保障国民会議では、社会保障をいかに抑制するかというような議論ではなく、総理のおっしゃる消費者、生活者の視点からどのようなサービスが必要なのか、そのようなサービスを支えるために政府や国民がどのような役割を負うべきかなどについて、広く議論が行われることを期待いたしております。
年金記録問題では、政府は言葉を並べ過ぎました。名寄せ、突合、突き合わせ、統合、照合などであります。そして、それぞれに都合の良い定義をした上で、名寄せはできますが統合はできませんと言っても理解されるはずはないのです。混乱させて国民を不安にしたのですから、厚生労働大臣はまず謝罪をして、その上でいま一度、いま一度、三月までとその後に分けて、できること、できないことをきっちりと説明をしてください。
年金は国民の老後生活を支える社会保障の中核の制度であり、今後も安定的に維持していくことが必要です。
先日、福田総理と小沢代表の党首討論がございました。その中で、民主党の小沢代表から、全員に年金の状況を送付して確認してもらう、違うという人は申し出てもらえばいい、まずは往復のはがきでいいから全員に送付して国民みんなの判断と申出を受け付けるべきじゃないだろうかという御提案がありました。
私はかねてから、いわゆるスウェーデン方式に学ぶのであれば、学ぶべきは、長い年月を掛け与野党が一緒になって年金の抜本的改革を行ったことだと考えてきました。年金制度を支えているのは国民の信頼であります。年金記録問題によって揺らいだ国民の信頼を一刻も早く取り戻すために皆で力を合わせるべきです。
参議院においても、年金制度自体の在り方について超党派で議論し、検討していく場を設けるときに来ているのではないかと考えております。まさに社会保障の柱である年金制度が時代を超えて確固たるものとして国民の生活を支えていけるように、立場を超えてあらゆる英知を結集すべきではないでしょうか。そのことを申し上げた上で、総理にお伺いをいたします。
先日の小沢代表の御提案は助け船ではなかったのかなと思いますけれども、総理はどのようにお受け止めになったのか、そして、改めてお受けになるおつもりはないのか、お尋ねをいたします。
総理、一つの提案をさせてください。
今や社会保障関係費は一般歳出の半分近くを占めます。厚生労働大臣は一人でその責任を負っています。私も厚生労働大臣をさせていただきました。正直に言いますと、余りに忙し過ぎます。一人で担当するのは無理があります。消費者担当大臣も置かれるようですから、年金のみを担当する大臣をつくられてはいかがでしょうか。党派を超えて人材を登用されるなら、国民の不安解消にも役立つと考えます。
安倍前総理は戦後レジームからの脱却を掲げられました。そして、約十か月で、防衛省の省昇格、教育基本法の改正、憲法改正のための国民投票法の制定と、短い期間ながら懸案の処理に成果を上げられました。
国の形をどうつくるか、その中で国民をどのように導いていくか、国家の最高指導者に課せられた重い課題であります。
そこで、総理の国家観を伺いたいのであります。二千年以上の時が流れる我が国の歴史を踏まえ、今、どのような国をつくろうとなさるのか、その上で、国家百年の計である我が国の将来を担う若者たちの教育をどうするのか、国家の基本たる憲法はいかにあるべきか、お考えを御披瀝願います。
最後に一言申し上げます。
薩摩藩主島津斉彬に次の言葉があります。勇断なき人は事をなすことあたわざるなり。総理、難局に当たる今こそ、断固たる信念の下、国と国民のために先頭に立ってください。私どもも全力を挙げて御一緒に頑張りますことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
山本孝史先生は、病魔と壮絶な闘いを続けながら、がん対策、自殺対策の立法に尽力されました。その先生のお姿がこの議場に見えないこと、国民が最も関心を寄せている社会保障の御専門の先生がいらっしゃらないことは残念でなりません。
山本先生をしのびつつ、これから質問をさせていただきます。
今年のNHKの大河ドラマは「篤姫」です。篤姫は薩摩の幕末の名君、島津斉彬の養女から十三代将軍家定の正室になりました。徳川家と討幕派、薩摩藩の板挟みとなりながら、いったん嫁いだからにはと、最後まで徳川家を守った薩摩の女性が一年にわたってテレビで描かれます。
幕末の薩摩といえば、西郷や大久保など多くの偉人を輩出しましたが、彼らの共通点は、母親が偉かったことだと言われています。薩摩の男は威張っているように見えますが、お釈迦様の手のひらで踊っている孫悟空のようなもので、しょせん、女性の手のひらに乗せられているだけと言われています。私自身のことを申しました。
そういえば、総理はかかあ天下と空っ風の上州の御出身であります。総理、日本のお母さんについて語ってみてください。総理のお人柄をのぞいてみたく、お願いをいたします。
総理は、昨年の暮れ、今年の世相を表す漢字にちなんで、信じるの信という漢字を挙げられました。総理のお人柄を示す言葉であると思います。どうぞ、政治や行政に対する信頼を取り戻してください。
本年七月には洞爺湖サミットが開催され、開催国の議長としての大任も待っております。まず、総理にとって初めてのこの通常国会を乗り切っていただかなければなりません。実りある国会となりますよう、私たちも努力してまいります。
前国会では、ねじれの中で十二本の議員立法と十四本の閣法が成立しました。総理はこの衆参ねじれの下でどのような国会対応を考えておられますか、お伺いをいたします。
次に、今年の景気はどうなるのかお尋ねします。
今、世界経済は多くの不安を抱えています。一番の不安定要因となっているのがアメリカのサブプライムローンと言われる個人向け住宅融資の焦げ付きであります。アメリカの金融機関の業績悪化、株式市場の下落を引き起こして、広く世界のマーケットにも悪影響を及ぼしています。さらに、原油価格の高騰があります。国内では軽油やガソリンなどの小売価格がびっくりするほど高くなりました。
一方で、中国経済は毎年一〇%前後の高成長を持続しています。二〇〇八年の北京オリンピック、二〇一〇年の上海万博を控えておりますので、今後も経済活動の活性化は続くと考えられます。
これらを踏まえ、昨年末に発表された政府経済見通しでは、来年度の実質GDP成長率が二・〇%と今年度の見込み一・三%を上回る比較的高い成長となり、さらに名目GDP成長率は二・一%と十一年ぶりに実質成長率を上回るとされています。デフレからの脱却が実現することになります。
ただ、国内の状況を見ますと、建築基準法の改正により建築確認が厳しくなり、住宅投資の落ち込みを招くのではないかと心配されています。また、日銀短観で見る企業の景況感も、頭打ちから低下の方向を示しています。内閣府の景気ウオッチャー調査でも景気の実感は低迷しているようです。
内外の様々な状況を織り込んで、我が国経済の今後をどのように見ておられるのか、総理にお伺いをいたします。
景気の回復が続いていると言われますが、あくまでマクロ的に見たもので、ミクロで見るとかなり厳しい状況が指摘されています。特に地方経済では、これまで長きにわたって公共事業や農林水産業、そして零細小売業が産業の中心でありましたが、今や公共事業が削減され、農林水産業が国際競争にさらされ、大規模小売店の進出など、いずれの産業も深刻な影響を受け疲弊しています。
かつては、都市や大企業が良くなれば地方、中小企業は時間差で回復すると言われましたが、この経済法則は崩れたのではないでしょうか。地域間格差など、経済格差の問題について御認識を総理にお伺いをいたします。
景気による税収増が余り期待できない中で、税制をどうするのかお尋ねします。
来年度の税制改正では、いわゆるふるさと納税が創設されました。そこで、今回の税制改正の柱である地方税体系の見直しに関して、地方経済へのてこ入れ効果をどのように判断されているのかを伺います。
少子高齢化の進展による社会保障費の増加に対応するためにも、消費税の見直しを中心とした税制の抜本的な改革は避けて通れない課題であります。特に、公的年金の国庫負担二分の一への引上げは待ったなしの課題であります。昨年末の与党の税制改正大綱では、消費税に関して、持続可能な社会保障制度とするための安定した財源として位置付けられています。
消費税の在り方や今後の見直しに関して、総理の御見解をお伺いいたします。
平成二十年度予算は、税収の伸びが小幅にとどまる中でも、歳出歳入全般にわたる努力で新たな国債の発行額は四年連続の減額となりました。一般会計規模と一般歳出ともに増額ではありますが、公共事業関係費や政府開発援助は減額し、小泉内閣以来の歳出削減方針は堅持されました。評価したいと思います。
しかし、課題も多くあります。例えば、今年度一般会計の削減の中、特別会計の歳出合計は昨年度より六兆円多い約三百六十八兆円となりました。特別会計の数は、今年度七つ減らして二十一会計、平成二十二年度までに十七会計とする方針と聞いています。もちろん、数を減らすことは大事ですが、まず国民の目に見える会計にすべきであります。
総理、初めて編成された来年度予算をどう評価されるか、お伺いをいたします。
来年度予算案では、財政健全化の主要指標である基礎的財政収支は約五兆二千億円の赤字で、五年ぶりに悪化することになりました。
これまでの政府の方針は、骨太の方針二〇〇六で示されています。すなわち、黒字化目標を二〇一一年度と明記、財源不足額十六・五兆円を十一・四兆円から十四・三兆円の歳出削減と二兆円から五兆円の税収増で対応するとしております。しかし、直近の内閣府の試算では、税収の減少により、二〇一一年度は名目GDP比マイナス〇・一%、七千億円程度の赤字となりました。
総理は、国民に新たな活力を与え、生活の質を高める、生活者や消費者が主役となる社会を実現する国民本位の行財政への転換を基本方針にされました。そうであれば、黒字化達成目標について多少の見直しが必要ではないかと思いますが、総理のお考えをお示し願います。
関連して申し上げます。
プライマリーバランス黒字化に向けての歳出削減方針の下で、このところ毎年社会保障費を二千二百億円削減してきました。来年度予算でもそうなっております。
しかし、社会保障費を削るのはもう限界です。乾いたタオルを絞っても水は出ません。来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、あっという間に平成二十一年度予算の概算要求の時期になりますので、申し上げます。平成二十一年度予算では社会保障費二千二百億円の削減は行わないと約束していただきたいのであります。
経済財政について伺いましたので、この問題の最後にお聞きします。
私が大臣をさせていただいたときに、しばしば経済財政諮問会議に呼び付けられました。経済財政諮問会議は内閣府設置法に規定されておりますが、その議員のうち、民間議員の選任は官邸で行われ、国会が相談を受けることはありません。同意案件ではないのです。民間議員から、国会決議を無視すればいいという発言を耳にしたこともあります。会議が実績を残したことは否定しませんが、一方で格差を広げたことも事実であります。福田内閣においては、議院内閣制の下でこの経済財政諮問会議をどのように運営されていかれるか、お考えを伺います。
次に、外交問題について伺います。
日本の直面する外交課題は、北朝鮮の拉致、核問題を始め、拡張路線をひた走る中国との関係、北方領土をめぐる日ロ関係、テロとの戦いなど非常に厳しいものがございます。
昨年、総理は、就任以来初の米国訪問を皮切りに、シンガポールにおける東アジア首脳会議や日中韓首脳会議等に出席されました。そして、年末には訪中をされ、日中両国の関係を一層深められました。日米同盟とアジア外交との相乗効果を目指す総理提唱の共鳴外交が展開されたと理解しております。
今年は我が国においてサミットが開催されます。議長を務められる総理には、是非とも気候変動問題やアフリカ支援の取組等に強い指導力を発揮していただきたいと思います。
北朝鮮問題について伺います。
国家の役割は国民の生命、財産を守ることにあります。北朝鮮による拉致は断じて許すことはできません。一刻も早く解決をしなければなりません。
また、核問題は北東アジア全体にとって安全保障上重大な脅威となっております。昨年秋の六者会合では、核施設の無能力化や核の完全申告化等を内容とした合意が行われましたが、北朝鮮はまだ約束を果たしておりません。合意に基づく行動を取るよう、関係国が連携を強め、働きかけていく必要があります。
北朝鮮問題について、総理の御決意をお聞かせください。
次に、ODA問題について伺います。
参議院は、決算とODAを参議院改革の二本柱として取り組んでおり、ODAについては、平成十六年から議員団を海外に派遣し調査を行っています。昨年十二月にはベトナムに調査団を派遣し、我が国のODAで建設中に崩落したカントー橋の現場視察を実施いたしました。また、十八年の通常国会においてODA特別委員会を設置し、昨年六月には中間報告を取りまとめております。引き続き、効果的、効率的なODAの実施がなされるよう、積極的に意見を述べてまいります。
政府は、ODA問題に対する参議院の取組をどのように評価し、本院の提言や議論をODA施策にどのように反映しているのか、総理にお伺いをいたします。
次に、自衛隊派遣の恒久法について伺います。
昨年十一月、福田総理と民主党の小沢代表の党首会談で、自衛隊海外派遣のための恒久法制定が話し合われたとの報道がありました。お二人ともその内容について明らかにされておりませんので、総理はどのようにお考えなのか、御説明をください。
また、改めて申し上げるまでもありませんが、自衛隊の最高司令官は総理であります。総理のリーダーシップによってこそ、シビリアンコントロールが確立されます。したがって、総理を補佐する体制が重要であります。日本版NSCと言われる国家安全保障会議についての御見解を伺います。
次に、石破防衛大臣にお尋ねいたします。
現在、防衛省改革問題として、シビリアンコントロール、秘密保全問題、装備品等調達問題の三点が問われていることは、総理も施政方針演説の中で示されました。
そこで、この三点に絡む組織の基本的な問題について質問をいたします。
守屋前次官の証人喚問を聞いていて、私が一瞬びっくりしたのは、彼が、私たちシビリアンがと言ったときであります。しかし、次の瞬間、納得しました。自衛隊員ではあるが自衛官ではない次官が防衛省に君臨することによってシビリアンコントロールが守られていると考えていたことを理解したのであります。
その解釈は正しいのか、すなわち内局とはシビリアンコントロールのための組織なのか、また逆に、自衛官が大臣を補佐するとシビリアンコントロールではなくなるのか、大臣の御見解をお聞かせください。
防衛省設置法第十一条で、大臣が必要あると認めるときは、自衛官を内部部局において勤務させることができるとわざわざ規定しています。なぜか、また過去にその例があるのか、併せてお答えをください。
二点目です。
大臣は、軍政と軍令についてどのように整理しておられるのか、お尋ねします。かつて、軍政は背広、内局が支え、軍令は制服が支えていると答えられましたが、今も同じ御認識なのか、お尋ねをいたします。
三点目です。
防衛省設置法では、内局は、防衛、警備及び自衛隊の行動等にかかわる基本及び調整に関する事務をつかさどるとされています。さらに、内局とは別に、特別の機関として陸海空統合の四幕僚監部が置かれ、陸海空各部隊又は統合上の防衛、警備及び行動に関する計画の立案に関する事務をつかさどるとされています。この違いが分かりにくいのであります。防衛省は、一つで済む組織を背広と制服で別々に二つつくるという無駄なことをしていませんか。
私は、平成十五年三月の予算委員会で、内局にある運用局の英訳を日本語に戻すと指揮・作戦局、すなわち参謀本部になる。この仕事を背広が行うということは、一回もユニホームを着たことのない人が野球やサッカーの監督をするようなもので、そんな無用な組織は廃止した方がいいという質問をいたしました。そもそも陸海空の統合運用をする責任者は、背広の運用局長なのですか、それとも制服の統幕長ですかと尋ねましたら、今後の課題と答えておられます。防衛省の組織に無駄はないか、御認識を伺います。
以上、三点お尋ねいたしました。
今、その防衛省に対する信頼は地に落ちています。シビリアンコントロール、すなわち文民統制の名の下で文官統制を成し、好き勝手したことが大きな原因となっていると考えてお尋ねをしております。防衛省の改革については、今日の御答弁をお聞きした上で、更に委員会で質問をさせていただきます。
少子高齢化と人口減少化が進む中でのこれからの社会保障の理念とその在り方についてお尋ねいたします。
ここ数年の年金、介護、医療にわたる社会保障改革は、社会保障の持続可能性を高めるため、経済や財政との調和、給付と負担の均衡、世代間の公平性の確保という観点から行われたものです。しかし、これからの社会保障改革は、そこにとどまらず、地域経済の発展にも貢献し、何よりも、地域社会の助け合い、支え合いの新しい仕組みをつくり、地域社会の連帯感やきずなを取り戻すことこそ基本理念に据えるべきであると考えます。総理のおっしゃる自立と共生の社会づくりは、まさにそのことを目指すものであると考えます。これからの社会保障改革の全体像、福田福祉社会ビジョンを早急に取りまとめていただきたいと願います。
そのために、まず、社会保障の大きさをどの程度にするかを決めなければなりません。日本は、社会保障について、欧州諸国との比較では小さな政府を目指していると言えます。この社会保障の水準が安心できるものとして十分であるかどうか、国民的議論が必要であります。社会保障の給付の水準を上げるためには、一方で国民負担が必要となります。そのための国民合意は欠かせません。
私は、負担は大きくとも弱者に優しい国にしたいと願っています。中長期的な社会保障のあるべき形について、総理はどのようにお考えなのか、ずばり、日本を国民負担率何%の国にしようとお考えなのか、お聞きをいたします。
総理は、施政方針演説において、幅広く国民各層から成る社会保障国民会議を開催し、社会保障のあるべき姿やその中での政府の役割、負担の仕方などについて、高齢化時代の国民の不安にこたえることができるような議論を行うと表明されました。
そこで申し上げますが、社会保障の在り方についての議論は、小泉内閣時代の平成十六年に設置された社会保障の在り方に関する懇談会など、過去にも行われてまいりましたし、今うわさされているメンバーは、基本的にはこれまでの懇談会と同じ構成であります。今度の国民会議がこれまでと一味違う答えを出せるのか、期待されるような成果を上げることができるのか、会議の運び方について総理にお尋ねをいたします。
更に申し上げますと、経済財政諮問会議もこれまで社会保障に口を差し挟んできました。その諮問会議の議論は、社会保障の負担面ばかりに焦点が当てられてきました。社会保障の議論は、超高齢社会を迎える中で持続可能な制度としていくという視点は欠かせませんが、国民が安心して暮らすためにどのような社会保障サービスが必要なのかということが基本にされるべきであります。
新たに設置される社会保障国民会議では、社会保障をいかに抑制するかというような議論ではなく、総理のおっしゃる消費者、生活者の視点からどのようなサービスが必要なのか、そのようなサービスを支えるために政府や国民がどのような役割を負うべきかなどについて、広く議論が行われることを期待いたしております。
年金記録問題では、政府は言葉を並べ過ぎました。名寄せ、突合、突き合わせ、統合、照合などであります。そして、それぞれに都合の良い定義をした上で、名寄せはできますが統合はできませんと言っても理解されるはずはないのです。混乱させて国民を不安にしたのですから、厚生労働大臣はまず謝罪をして、その上でいま一度、いま一度、三月までとその後に分けて、できること、できないことをきっちりと説明をしてください。
年金は国民の老後生活を支える社会保障の中核の制度であり、今後も安定的に維持していくことが必要です。
先日、福田総理と小沢代表の党首討論がございました。その中で、民主党の小沢代表から、全員に年金の状況を送付して確認してもらう、違うという人は申し出てもらえばいい、まずは往復のはがきでいいから全員に送付して国民みんなの判断と申出を受け付けるべきじゃないだろうかという御提案がありました。
私はかねてから、いわゆるスウェーデン方式に学ぶのであれば、学ぶべきは、長い年月を掛け与野党が一緒になって年金の抜本的改革を行ったことだと考えてきました。年金制度を支えているのは国民の信頼であります。年金記録問題によって揺らいだ国民の信頼を一刻も早く取り戻すために皆で力を合わせるべきです。
参議院においても、年金制度自体の在り方について超党派で議論し、検討していく場を設けるときに来ているのではないかと考えております。まさに社会保障の柱である年金制度が時代を超えて確固たるものとして国民の生活を支えていけるように、立場を超えてあらゆる英知を結集すべきではないでしょうか。そのことを申し上げた上で、総理にお伺いをいたします。
先日の小沢代表の御提案は助け船ではなかったのかなと思いますけれども、総理はどのようにお受け止めになったのか、そして、改めてお受けになるおつもりはないのか、お尋ねをいたします。
総理、一つの提案をさせてください。
今や社会保障関係費は一般歳出の半分近くを占めます。厚生労働大臣は一人でその責任を負っています。私も厚生労働大臣をさせていただきました。正直に言いますと、余りに忙し過ぎます。一人で担当するのは無理があります。消費者担当大臣も置かれるようですから、年金のみを担当する大臣をつくられてはいかがでしょうか。党派を超えて人材を登用されるなら、国民の不安解消にも役立つと考えます。
安倍前総理は戦後レジームからの脱却を掲げられました。そして、約十か月で、防衛省の省昇格、教育基本法の改正、憲法改正のための国民投票法の制定と、短い期間ながら懸案の処理に成果を上げられました。
国の形をどうつくるか、その中で国民をどのように導いていくか、国家の最高指導者に課せられた重い課題であります。
そこで、総理の国家観を伺いたいのであります。二千年以上の時が流れる我が国の歴史を踏まえ、今、どのような国をつくろうとなさるのか、その上で、国家百年の計である我が国の将来を担う若者たちの教育をどうするのか、国家の基本たる憲法はいかにあるべきか、お考えを御披瀝願います。
最後に一言申し上げます。
薩摩藩主島津斉彬に次の言葉があります。勇断なき人は事をなすことあたわざるなり。総理、難局に当たる今こそ、断固たる信念の下、国と国民のために先頭に立ってください。私どもも全力を挙げて御一緒に頑張りますことを申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)