日本歯科新聞 2014年7月15日付(1843号)
インタビュー
日技新会長に聞く
技工業界の課題と展望
日本歯科技工士会の会長に杉岡範明氏が就任した。6月には歯科技工士法の一部が改正され、歯科技工士国家試験が全国統一となった。しかし、未入会者の増加や若者の歯科技工士離れなど歯科技工業界は難問が山積している。高齢化の進展に伴い健康寿命の延伸に向け歯科補綴物等の果たす役割が問われる中、公益社団法人として日技の役割はさらに重要になる。杉岡会長に歯科技工業界の課題と今後の対応を聞いた。
杉岡範明氏
(すぎおか・のりあき) 昭和30年生まれ。平成19年から北海道歯科技工士会会長、24年6月から日本歯科技工士会副会長などを務めた
若手歯科技工士に焦点を当てた運営を目指す
――歯科技工士法が改正され、技工業界が長年求めてきた歯科技工士国家試験の全国統一化が実現しました。統一化の意義と今後の課題は。
杉岡 歯科技工士の国家試験は、昭和57年の法律改正により、歯科技工士免許が都道府県知事から厚生大臣(現・厚生労働大臣)免許になりました。しかし、附則で当分の間、養成施設の所在地の都道府県知事が行うと明記されました。実に32年間、国家試験でありながら都
道府県別の試験という合理性と公平性に欠けた実態が続きました。
歴代の日技執行部らの働きかけもあり、全国統一が実現しました。他の医療職と同じ全国共通試験は、歯科技工士および歯科技工を学ぶ学生のモチベーションを高め、国民の口腔保健等の増進にさらに寄与できると信じています。
実施まで2年弱という短期間ではありますが、指定試験機関等の整備など行政と折衝し、スムーズに試験ができるよう努力していきます。
――歯科技工教育の在り方についてどのように考えていますか。
杉岡 厚労省の「歯科専門職の資質向上検討会」のワーキンググループでも議論しましたが、歯科技工技術の進歩や教育内容の充実を考慮すると現行の2200時間は既に限界を超え、どの養成機関もそれを上回る教育を行っています。
歯科技工教育の在り方については厚労省の検討会で何度も議論され、「良質な歯科医療サービスを国民に提供していくためにも、歯科技工士の資質向上を図り、良質な歯科技工を提供していく上で3年制以上は実現すべきである」との結論に至っています。それにもかかわらず遅々と進まない状況が続いています。歯科技工教育関係者も総論的には3年制は反対ではないと思いますので、今後、対話を重ねながら意見集約を図っていきます。
◆
◇
◆
――日技の調査では若年者の歯科技工士離れが進んでいます。原因と対策は。
杉岡 歯科技工教育の時間が不足しているために、技術的な面での経験不足は否めないのが実情です。若い歯科技工士は養成校で受けてきた教育と現場のギャップに悩み、業界からは離れてしまうケースも見受けられます。こうした若い歯科技工士を現場で活躍させるためにも教育年限の延長は必要と考えています。
さらに歯科技工業界は経済的に疲弊しているため、以前のように若年者を育てる余裕がないことも起因しています。
高齢化、医療の専門化が進む中、歯科技工士の果たす役割は重要で、次世代の育成も含めて歯科技工業界の就業環境の改善に取り組みます。
「日本歯科技工士会」は、歯科技工の職能団体として国民の口腔の健康の維持・増進に寄与する団体です。その社会的使命を踏まえて、歯科技工業界が抱える諸問題の改善・解決に向けて邁進します。
――就業環境の悪化に伴い未入会者も多くなっていると聞きます。今後の対応策は。
杉岡 未入会者問題は、われわれの説明不足、歯科技工士の皆さんに納得していただくためのスキル不足などが考えられます。
日技では入会したくなるような組織づくり、歯科技工士の資質向上のための中長期的な戦略「日技新発展『7』プラン」を策定しました。プランは生涯研修の充実や歯科技工所管理者資格制度等の体制づくり、対外PRの策定、会員増強など多角的な事業を推進し、その策定にあたっては、執行部で何回も議論を重ねました。
しかし、全国の会員の声も聞くべきとの想いから全国6カ所で会員、未入会者を問わずにタウンミーティングを開催し、得られた意見もプランに反映させました。
タウンミーティングを通じて歯科技工業界の発展のために率直な意見交換ができたと実感しています。同時に現場を訪ねて、一つ一つの疑問を解いていく必要性を痛感しました。
◆
◇
◆
――歯科関係団体との連携の在り方は。
杉岡 高齢化が進展する中、国民のQOLに歯科医療の果たす役割はますます重要になります。専門職である歯科医師、歯科衛生士、そして歯科技工士がその職責を果たすのは当然です。
現在、日本歯科技工士連盟は、日本歯科医師連盟、日本歯科衛生士連盟と定期的に懇談し、諸問題について話し合っています。公益3団体も歯科の未来を切り開くためにも、同様の懇談が必要と考えています。お互いに歯科専門職という立場を尊重し、国民の健康維持・増進のために歯科を取り巻く問題の解決のために力を尽くすという関係を構築したいと考えています。
インタビュー
日技新会長に聞く
技工業界の課題と展望
日本歯科技工士会の会長に杉岡範明氏が就任した。6月には歯科技工士法の一部が改正され、歯科技工士国家試験が全国統一となった。しかし、未入会者の増加や若者の歯科技工士離れなど歯科技工業界は難問が山積している。高齢化の進展に伴い健康寿命の延伸に向け歯科補綴物等の果たす役割が問われる中、公益社団法人として日技の役割はさらに重要になる。杉岡会長に歯科技工業界の課題と今後の対応を聞いた。
杉岡範明氏
(すぎおか・のりあき) 昭和30年生まれ。平成19年から北海道歯科技工士会会長、24年6月から日本歯科技工士会副会長などを務めた
若手歯科技工士に焦点を当てた運営を目指す
――歯科技工士法が改正され、技工業界が長年求めてきた歯科技工士国家試験の全国統一化が実現しました。統一化の意義と今後の課題は。
杉岡 歯科技工士の国家試験は、昭和57年の法律改正により、歯科技工士免許が都道府県知事から厚生大臣(現・厚生労働大臣)免許になりました。しかし、附則で当分の間、養成施設の所在地の都道府県知事が行うと明記されました。実に32年間、国家試験でありながら都
道府県別の試験という合理性と公平性に欠けた実態が続きました。
歴代の日技執行部らの働きかけもあり、全国統一が実現しました。他の医療職と同じ全国共通試験は、歯科技工士および歯科技工を学ぶ学生のモチベーションを高め、国民の口腔保健等の増進にさらに寄与できると信じています。
実施まで2年弱という短期間ではありますが、指定試験機関等の整備など行政と折衝し、スムーズに試験ができるよう努力していきます。
――歯科技工教育の在り方についてどのように考えていますか。
杉岡 厚労省の「歯科専門職の資質向上検討会」のワーキンググループでも議論しましたが、歯科技工技術の進歩や教育内容の充実を考慮すると現行の2200時間は既に限界を超え、どの養成機関もそれを上回る教育を行っています。
歯科技工教育の在り方については厚労省の検討会で何度も議論され、「良質な歯科医療サービスを国民に提供していくためにも、歯科技工士の資質向上を図り、良質な歯科技工を提供していく上で3年制以上は実現すべきである」との結論に至っています。それにもかかわらず遅々と進まない状況が続いています。歯科技工教育関係者も総論的には3年制は反対ではないと思いますので、今後、対話を重ねながら意見集約を図っていきます。
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――日技の調査では若年者の歯科技工士離れが進んでいます。原因と対策は。
杉岡 歯科技工教育の時間が不足しているために、技術的な面での経験不足は否めないのが実情です。若い歯科技工士は養成校で受けてきた教育と現場のギャップに悩み、業界からは離れてしまうケースも見受けられます。こうした若い歯科技工士を現場で活躍させるためにも教育年限の延長は必要と考えています。
さらに歯科技工業界は経済的に疲弊しているため、以前のように若年者を育てる余裕がないことも起因しています。
高齢化、医療の専門化が進む中、歯科技工士の果たす役割は重要で、次世代の育成も含めて歯科技工業界の就業環境の改善に取り組みます。
「日本歯科技工士会」は、歯科技工の職能団体として国民の口腔の健康の維持・増進に寄与する団体です。その社会的使命を踏まえて、歯科技工業界が抱える諸問題の改善・解決に向けて邁進します。
――就業環境の悪化に伴い未入会者も多くなっていると聞きます。今後の対応策は。
杉岡 未入会者問題は、われわれの説明不足、歯科技工士の皆さんに納得していただくためのスキル不足などが考えられます。
日技では入会したくなるような組織づくり、歯科技工士の資質向上のための中長期的な戦略「日技新発展『7』プラン」を策定しました。プランは生涯研修の充実や歯科技工所管理者資格制度等の体制づくり、対外PRの策定、会員増強など多角的な事業を推進し、その策定にあたっては、執行部で何回も議論を重ねました。
しかし、全国の会員の声も聞くべきとの想いから全国6カ所で会員、未入会者を問わずにタウンミーティングを開催し、得られた意見もプランに反映させました。
タウンミーティングを通じて歯科技工業界の発展のために率直な意見交換ができたと実感しています。同時に現場を訪ねて、一つ一つの疑問を解いていく必要性を痛感しました。
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――歯科関係団体との連携の在り方は。
杉岡 高齢化が進展する中、国民のQOLに歯科医療の果たす役割はますます重要になります。専門職である歯科医師、歯科衛生士、そして歯科技工士がその職責を果たすのは当然です。
現在、日本歯科技工士連盟は、日本歯科医師連盟、日本歯科衛生士連盟と定期的に懇談し、諸問題について話し合っています。公益3団体も歯科の未来を切り開くためにも、同様の懇談が必要と考えています。お互いに歯科専門職という立場を尊重し、国民の健康維持・増進のために歯科を取り巻く問題の解決のために力を尽くすという関係を構築したいと考えています。