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歯科技工士・岩澤 毅

「子どもが勉強しません」 大人にはわかる大切さを伝えるひけつとは

2022年02月11日 | 基本・参考
https://www.asahi.com/articles/ASQ2445C8Q24ULBJ00J.html?iref=comtop_7_05

「子どもが勉強しません」 大人にはわかる大切さを伝えるひけつとは
中島美鈴2022年2月11日 7時00分

 気づいたら子どもが勉強もせずに、遊んでいるのをみて、イライラしたことありませんか。しつこく言っても効き目がなく、どうしたらいいか途方にくれることもあるのでは。臨床心理士の中島美鈴さんが対応法について解説します。

 「早く宿題しなさい」

 各家庭で、一度は口にされている言葉かもしれません。

 勉強が元々好きな子どももいますが、どうしても興味がわかないままイヤイヤ宿題をこなしている子どもも多いでしょう。

 一方大人はこんなことを口にします。

 「ああ、ちゃんと勉強しておけばよかったなあ」

 こんなことを酒を飲みながら子どもに延々と語っても、逃げられてしまうだけです。大人になると必要だったとわかるのに、子どもの頃にはどうしてあんなにやる気になれなかったのでしょう。

 今日のテーマは、子どもの勉強へのやる気を引き出す方法について考えてみます。

教科書に学ぶ意味を伝えるページ
 大人にはわかる勉強の大切さが、子どもに伝わりにくい原因は色々言われていますが、私が大学院時代に最も衝撃を受けたのは、海外の教科書では最初のページに「この教科を学ぶ意味」「目的」が書かれている国もあるということでした。

 今回の記事の作成にあたり改めて調べてみたのですが、どうしても国名が思い出せませんでした。アジアのシンガポールやマレーシアといった国だった記憶です。あいまいですみません。

 教科書の最初のページに、この教科が子どもたちの成長や暮らしにどう役立っていくのかをわかりやすく書かれているため、子どもたちは「なんで勉強なんてしなくちゃいけないんだ」と思いにくいのではないかということでした。

 日本ではどうでしょう?

 アラフォー世代の私の時代の教科書には、少なくともわざわざ学ぶ目的は書かれていませんでした。なので、思春期の頃から「なんで勉強なんてしなくちゃならないんだ」とよく考えた(勉強しない言い訳にした)ものです。

 要領のいい同級生は「勉強して偏差値の高い大学に行ったら将来の選択肢が増えるから」などといっていましたが、そのなんともふわっとしたゴールに向かって日々の勉強ができるほど器用でなかった私は、ますます頭を抱えました。

 きっと今の子どもたちも「どうして勉強しなくちゃいけないの」という疑問を抱えているのではないでしょうか。

 しかし、今の小学生の教科書には、教科や出版社により異なりますが、「この教科の三つのめあて」や「わたしたちはどうして●●の学習をするのでしょうか」というページが多いと4ページも割かれています。

 中には、著名人が子どもたちに向けてその教科を学ぶ意味に関する文章を寄稿されている教科書もあります。

 すごいですね! 

 親の世代は、ひとまずその教科書の部分を子どもと一緒に読んでみるといいでしょう。

 もっと興味のある方には、文部科学省が学校教育法等に基づいて各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めている、学習指導要領を一読されるとよいでしょう。

 これは全国の学校で一定の水準の教育を提供できるようにするために、この教科ではこんなことを目標に、どんな順番でどんなことを学ぶかを定めているのです。

 各学校はこれに基づいてカリキュラムを編成します。これは10年ごとに改訂されています。

 最新のもの(平成29年改訂版)のうち、小学校の算数についての学習指導要領を見てみましょう。

小学校学習指導要領解説(平成29年改訂)
(https://www.mext.go.jp/content/20211102-mxt_kyoiku02-100002607_04.pdf)

 ここでは、算数を学ぶ目標(意義)についてこのように書かれています。

 数学的な見方・考え方を働かせ、数学的活動を通して、数学的に考える資質・ 能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに、日常の事象を数理的に処理する技能を身に付けるようにする。

(2)日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力、基礎的・基本的な数量や図形の性質などを見いだし統合的・発展的に考察する力、数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養う。

(3)数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き、学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度、算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

親がかみ砕いて教えてあげる
 へえーーーっ。そういうこと目指して算数の授業って行われてたんだーって思いますね。

 でも表現が硬いので、子どもたちに伝えるためにはずいぶんかみ砕く必要がありそうです。

 しかも、人生経験が少ない子どもに対して、なかなかピンとこないと思うのです。

 特に、「日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する」なんて言われても、日常のどの場面?ん?と、どの場面を想像したらいいのかわからないと思うのです。

 親によってかみ砕いて説明してあげる必要がありそうですね。今日のコラムはここの通訳をします。

 日本は子どもたちに「生きる力」をつけることを教育全体の大きな目標に掲げて、そのために必要な力を細分化して目標を立てているのが特徴的です。

 ちなみに国によって教育の目的は少しずつ違います。

 フランスでは、「就学を成功裏に達成し、教育を継続し、人格及び職業に関わる将来を構築しもって社会生活に成功するために習得が不可欠な知識技能全体から成る共通基礎知識技能の獲得に必要な手段を、児童・生徒に最低限保障しなければならない」(「共通基礎知識技能」について、法律(教育法典第 L.122-1-1 条))

 フィンランドでは「人として、社会の一員としての成長」「生きるために必要な知識と技能」「教育の機会均等の推進と生涯学習の基盤づくり」(基礎教育における国家目標と授業時数に関する政令)

 などがあります。もっと色濃く成長戦略を掲げる国もあります。

リョウさんのおうちでは…
 さて視点が世界にまでいってしまいましたが、いつものリョウさんのおうちの話に戻していきます。

 そう、リョウさんの家でも同じく娘が最近こんなことを言い出しているのです。

 娘「やだー、宿題やる気にならない」

 リョウ「面倒ならさっさと済ませちゃえば」

 娘「っていうかさ、なんで子どもだけ勉強しなくちゃいけないの!」

 よくある光景ですよね。

 リョウさん自身も勉強なんて好きじゃなかったので、娘に今更どう説明していいかわかりません。

 リョウさんには三つの方法を試してもらいました。

1:子どもの好きなものと関連付けて教える
 リョウさんの娘は最近クイズにハマっています。クイズ番組が好きで、最近では自分でクイズを作ってリョウさんに出して遊びます。クイズの中には地理や歴史、美術、数学、国語を知っていると解けるものもあります。それを利用して、「勉強すればもっとすごいクイズが作れるようになるよー」と説明すれば、やる気を出してくれそうです。

2:暮らしの中で勉強が役立つ場面に遭遇させる
 リョウさんの娘は体育が大好きです。しかし雨が降るとよく中止になって、別の教科に変更になることもあるようです。そして不満げにこう言っています。

 娘「なんで天気予報って外れるの?」

 天気をどのように予測するのかについて、人類はどんなふうに知恵を積み重ねてきたのか、それを理科で習うことを伝えると、勉強が暮らしに役立つことが実感しやすいでしょう。

 こんな例もいかがでしょうか。テレビのリモコンのボタンを押してもテレビがつかないときに、「あれ?電池切れかな?」「リモコンが壊れたかな?」「テレビが壊れたかな?」などと仮説を立てながら、電池を新しいものと交換してみたり、リモコンをのぞき込んでみたり、テレビの電源を入れ直したりすることでしょう。

 こうしたときに、仮説を検証するための方法を考えて、何が原因なのかを突き止めていくのです。こうした考え方や理科や算数で培われたものでしょう。

3:世の中の仕事がいかに楽しいか、それに勉強が役立つかを教える
 リョウさんの娘は美容室に行くたび、きれいな美容師さんのハサミを持つ手に釘付けです。憧れているようです。リョウさんは帰り道、娘に、美容師になるためにはたくさん勉強して知識や技術を身につけたんだという話をしました。

 いかがでしょうか?

 もちろん子どもが大きくなれば、もっと別の説明の仕方もあるでしょう。人生経験が増えてきますから、もっとピンとくることも増えてくるのです。

 ぜひ我が子に最適な例でお試しください。

     ◇

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中島美鈴
中島美鈴(なかしま・みすず)
臨床心理士
1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。


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