質問名「いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書」の経過情報 項目 内容
国会回次 166
国会区別 常会
質問番号 380
質問件名 いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書
提出者名 郡 和子君
会派名 民主党・無所属クラブ
質問主意書提出年月日 平成19年 6月13日
内閣転送年月日 平成19年 6月18日
答弁延期通知受領年月日
答弁延期期限年月日
答弁書受領年月日 平成19年 6月22日
撤回年月日
撤回通知年月日
経過状況 答弁受理
平成十九年六月十三日提出
質問第三八〇号
いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書
提出者 郡 和子
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いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書
今年五月二十三日、池田康夫慶応大学医学部長らの研究グループが厚生労働省の公募要項に違反し、同省科学研究費補助金と文部科学省所管の財団法人「日本ワックスマン財団」から二年間合計四億三、二二五万円の助成金を重複して受けていたことから、厚生労働省は同補助金の今年度支給を取りやめたと、朝日新聞で報じられた。
しかし本件は、研究費補助金の二重受給だけではなく、既承認薬剤の未承認の効能についての臨床試験を保険診療と併用している点において「いわゆる混合診療」に該当すると推定される点がより重大な問題であると考える。
したがって、厚生労働省は、これらの事実関係を早急に調査し、その結果を明らかにすることによって臨床研究に係る現行制度の改善を図り、臨床研究の一層の推進を期すべきである。
以上の観点から、次の事項について質問する。
一 臨床研究に係る「いわゆる混合診療」について
1 公表されている計画概略文書によれば、本臨床試験は、「高血圧症、高脂血症または糖尿病を有する高齢者において、アスピリン一次予防投与によるリスク/ベネフィットの評価を行う」ことを目的としている。アスピリンの一次予防投与についての効能は厚生労働大臣の承認を取得しておらず、そもそも予防投与は保険診療では行えないと考えるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
2 計画概略文書では、「アスピリン腸溶錠(バイアスピリン錠一〇〇mg)はバイエル薬品株式会社より無償提供するので患者負担にはせず、保険請求も行わない。」とある。一方、「高血圧症、高脂血症、糖尿病は、原則として各学会の治療ガイドラインに従った管理を行う。」とある。さらに、「調査項目」として「イベント(脳血管障害、心事故等)」と記載され、これが医学的には主要な評価項目とみなされる。
アスピリン一次予防投与も、治療ガイドラインに従った高血圧症等の投与も、このイベントの発生抑制を目的とした「一連の治療行為」であり、アスピリンの保険請求を行わないだけではなく、診察料及び他の「一連の治療行為」において使用される薬剤費についても保険請求は行えないはずであるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
3 仮に、前述のような「一連の治療行為」において、アスピリン一次予防投与における薬剤費を製薬会社負担として、診察料及び高血圧症等の治療のための薬剤費を保険請求していたと仮定すれば、保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条への違反行為といえるかどうか、法令解釈につき厚生労働省の見解を明らかにされたい。
二 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条違反と疑われる行為の調査について
1 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条の違反と疑われる行為が公然と行われていることを厚生労働省が知った場合には、実際に違反しているか否かを、診療録、診療報酬請求書、診療報酬明細書等の資料に基づいて調査すべきと考えるが、どうか。
2 そのような調査を開始するにあたって必要な外部からの調査請求手続きその他の厚生労働省内の手続きが定められているか。定められているとすれば、明示されたい。
また、定められていないとすれば、いかなる手続き、ないし状況で調査を開始しうるのか、考え方を明らかにされたい。
三 未承認の療法に係る治療費請求事案の調査について
「いわゆる混合診療」に係る調査については、神奈川県立がんセンターで未承認の活性化自己リンパ球移入療法を受けていた患者の遺族が不当な治療費支払いを求められたことを訴えていたが、半年間、野放しにされていた事例がある。この件について、昨年五月十日の厚生労働委員会において、水田政府参考人は「現在、事実関係を調査している」と述べたが、その後調査結果は公表されていない。
現時点で得られている事実関係の調査結果を説明されたい。
四 「いわゆる混合診療」についての問い合わせに関する情報の漏洩について
前記の池田教授らによる臨床試験が「いわゆる混合診療」に該当する可能性について、五月二十四日、私の事務所を通じて保険局医療課久米氏に問い合わせた。その直後から、元衆議院議員や国立大学医学部教授その他複数の人物から、この件を国会での質問によって追及しないよう求める趣旨の要望が伝えられた。
池田教授らの臨床試験が「いわゆる混合診療」に該当する可能性について私が懸念を抱いていることは、保険局医療課久米氏以外には一切伝えていない。したがって、保険局医療課を発信源とする以外にこの件に係る情報の厚生労働省外部への伝達は考えられない。
保険局医療課から厚生労働省の内部あるいは外部の者に情報を伝達したか。伝達したとすれば、その経緯につき、明らかにされたい。
五 既承認薬の未承認の効能等への使用と薬事法第五十五条の適用について
1 池田教授らによる臨床試験は、計画概略文書において明らかな通り、未承認の効能に使用することを目的とし、バイエル薬品株式会社より「バイアスピリン錠」が医療機関に無償提供されて実施されている。
このような行為は薬事法第五十五条に抵触しないか。また、同規定は、既承認薬剤の、未承認の効能等への使用を前提とした販売・授与についても適用されるのか、法令解釈を明らかにされたい。
2 前項1において薬事法第五十五条が適用されるとすれば、製品の包装や添付文書等に未承認の効能を記載した場合に限らず、製薬会社が、医療機関において未承認の効能に利用することを明記した研究計画書があることを承知の上で、既承認薬を提供した場合にも、適用されるか。
また、製薬会社と医療機関との間において未承認の効能に使用されることを前提として製品を授与することを定めた契約が存在する場合には、いかがか。
六 薬事法第五十五条違反と疑われる行為の調査について
池田教授らによる臨床試験が薬事法第五十五条に抵触すると疑われる場合に、厚生労働省は実際にこれに抵触するか否かを調査する責務があると考える。
質問項目の「二」と同様に、調査を開始するにあたって必要な手続き上の定め又は考え方を明らかにされたい。
七 「治験のあり方に関する検討会」委員としての適性について
昨年五月十日の厚生労働委員会において、当時の川崎厚生労働大臣は、「不正という事実があって、その不正にかかわった人が厚生労働省の何らかの委員をしているということになれば、当然やめてもらいます。」と述べている。
池田教授は、研究費の二重受給という不正行為を行ったことが明らかとなっている。さらに、池田教授らによる臨床試験が、保健医療機関及び保険医療養担当規則第十九条もしくは薬事法第五十五条のいずれか、又はこの双方に抵触するとした場合に、本来は新たな効能効果取得を目的とする「治験」として実施すべき研究を、治験ではない臨床試験として、いわば脱法的に行っていることになる。にもかかわらず、池田教授は、「治験のあり方に関する検討会」の座長をつとめ、治験に関する制度改善の議論をまとめる責任を担っている。
少なくとも研究費の二重受給を理由に、「治験のあり方に関する検討会」委員を解任すべきではないか。
右質問する。
平成十九年六月二十二日受領
答弁第三八〇号
内閣衆質一六六第三八〇号
平成十九年六月二十二日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員郡和子君提出いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
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衆議院議員郡和子君提出いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問に対する答弁書
一の1について
我が国の医療保険制度においては、基本的に、疾病、負傷等の発生を保険事故として保険給付を行うものであり、これらが発生する前の単なる予防については、保険給付の対象とならない。
一の2及び3について
我が国の医療保険制度においては、一連の診療の過程において、保険診療と保険外診療を併用することを原則として認めていないが、これは、保険診療を受ける患者の自己負担が不当に増大することを防ぐとともに、保険診療の過程において安全性等が担保されていない医療が併用されることを防ぐ趣旨であり、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号。以下「療担規則」という。)第五条等により、健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「健保法」という。)第七十四条第一項に定める一部負担金を超える費用の徴収を原則として禁ずるとともに、療担規則第十八条により、特殊な療法又は新しい療法等(以下「特殊療法等」という。)を禁止し、さらに、療担規則第十九条により、使用薬剤の薬価(薬価基準)(平成十八年厚生労働省告示第九十五号)別表に収載されている医薬品(以下「収載医薬品」という。)以外の薬物の使用等を原則として禁止している。
御指摘の投与については、これを患者負担により行わないこととされているため、療担規則第五条等に違反するものではなく、虚血性心疾患、虚血性脳血管障害等における血栓及び塞栓形成の抑制は、アスピリンの本来的な薬理作用であること、御指摘の投与と同様のアスピリンの効能に関して薬事規制上の承認がなされている国が存在すること等を踏まえると、療担規則第十八条において禁止されている特殊療法等に該当するものではない。さらに、アスピリンは既に収載医薬品であり、その使用について、療担規則第十九条に違反するものではないことから、動脈硬化性疾患危険因子を有する高齢者に及ぼすアスピリンの一次予防効果に関する研究(以下「JPPP試験」という。)において、御指摘の投与以外の診療についての保険請求を行うことは可能である。
二の1について
厚生労働大臣等は、療担規則に違反する疑いのある事実を把握した場合には、その事実の真偽、違法性等について総合的に検討した上で、必要に応じ、関係する保険医療機関等に対し、健保法第七十三条等の規定に基づく指導又は健保法第七十八条等の規定に基づく報告等の徴収(以下「指導等」という。)を行うこととなる。
二の2について
御指摘の外部からの調査請求手続については、特に定められておらず、療担規則に違反する疑いのある事実に関する情報提供については、厚生労働省及び都道府県において随時受け付けているところである。
また、厚生労働大臣等が指導等を開始する際の手続については、「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成七年十二月二十二日付け保発第百十七号厚生省保険局長通知)の別添1「指導大綱」及び別添2「監査要綱」に定められている。
三について
現在、神奈川社会保険事務局において、引き続き御指摘の調査を行っているところであり、事実関係等が確定していない段階で、その結果等についてお答えすることは差し控えたい。
四について
厚生労働省保険局医療課(以下「医療課」という。)においては、平成十九年五月二十四日午前九時半ころ、「民主党郡和子議員の秘書代理」と名乗る者(誰何したが答えは得られなかったため氏名は不詳)から、JPPP試験がいわゆる混合診療に該当するか否か等について照会を受けたものである。
当該照会については、医療課から厚生労働省の外部の者に情報を伝達したという事実はなく、また、当該照会は医療課の所掌事務である社会保険診療報酬に関すること以外に、他部局の所掌事務とも密接にかかわる内容であったことから、医療課より省内関係部局に対して、照会内容に係る事実確認等を行ったことはあるが、確認したところ、これらの部局から外部の者に情報を伝達したという事実もない。ただし、そのような事実確認の一つとして、厚生労働省医政局研究開発振興課から、池田教授に臨床試験の実施方法等について確認した事実はある。
五について
薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第五十五条第二項は、製造販売の承認を受けた効能以外の効能を標ぼうして製造販売をされた医薬品の販売、授与等を禁止するものであり、製造販売の承認を受けた効能のみを標ぼうして製造販売をされた医薬品を授与された医師が自らの責任の下、当該効能以外の効能の有無を調べる等の目的で当該医薬品を使用して臨床試験を行ったとしても、当該授与は、同法第五十五条に違反するものではなく、これは、当該医薬品の製造販売業者が、研究計画書、契約等により当該臨床試験への使用を承知しているか否かにかかわらないものである。
六について
厚生労働大臣等は、薬事法に違反する疑いのある事実を把握した場合には、その事実の真偽、違法性等について総合的に検討した上で、必要に応じ、関係する製造販売業者に対し、同法第六十九条に基づく立入検査等を行うこととなる。
御指摘の外部からの調査請求手続については、特に定められておらず、薬事法に違反する疑いのある事実に関する情報提供については、厚生労働省及び都道府県において随時受け付けているところである。
また、厚生労働大臣等が立入検査等を開始する際の手続については、「薬事監視指導要領について」(昭和五十八年五月二十五日付け薬発第四百六号厚生省薬務局長通知)の別添「薬事監視指導要領」に定められている。
七について
お尋ねについては、池田教授が、厚生労働科学研究費補助金公募要項の記載を誤って解釈したことを認識した時点で、自ら当該補助金の使用を中止し、未使用分の返還を申し出ていること等を踏まえると、引き続き、池田教授に委員として「治験のあり方に関する検討会」に参画いただくことは問題ないと考えている。
国会回次 166
国会区別 常会
質問番号 380
質問件名 いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書
提出者名 郡 和子君
会派名 民主党・無所属クラブ
質問主意書提出年月日 平成19年 6月13日
内閣転送年月日 平成19年 6月18日
答弁延期通知受領年月日
答弁延期期限年月日
答弁書受領年月日 平成19年 6月22日
撤回年月日
撤回通知年月日
経過状況 答弁受理
平成十九年六月十三日提出
質問第三八〇号
いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書
提出者 郡 和子
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いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書
今年五月二十三日、池田康夫慶応大学医学部長らの研究グループが厚生労働省の公募要項に違反し、同省科学研究費補助金と文部科学省所管の財団法人「日本ワックスマン財団」から二年間合計四億三、二二五万円の助成金を重複して受けていたことから、厚生労働省は同補助金の今年度支給を取りやめたと、朝日新聞で報じられた。
しかし本件は、研究費補助金の二重受給だけではなく、既承認薬剤の未承認の効能についての臨床試験を保険診療と併用している点において「いわゆる混合診療」に該当すると推定される点がより重大な問題であると考える。
したがって、厚生労働省は、これらの事実関係を早急に調査し、その結果を明らかにすることによって臨床研究に係る現行制度の改善を図り、臨床研究の一層の推進を期すべきである。
以上の観点から、次の事項について質問する。
一 臨床研究に係る「いわゆる混合診療」について
1 公表されている計画概略文書によれば、本臨床試験は、「高血圧症、高脂血症または糖尿病を有する高齢者において、アスピリン一次予防投与によるリスク/ベネフィットの評価を行う」ことを目的としている。アスピリンの一次予防投与についての効能は厚生労働大臣の承認を取得しておらず、そもそも予防投与は保険診療では行えないと考えるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
2 計画概略文書では、「アスピリン腸溶錠(バイアスピリン錠一〇〇mg)はバイエル薬品株式会社より無償提供するので患者負担にはせず、保険請求も行わない。」とある。一方、「高血圧症、高脂血症、糖尿病は、原則として各学会の治療ガイドラインに従った管理を行う。」とある。さらに、「調査項目」として「イベント(脳血管障害、心事故等)」と記載され、これが医学的には主要な評価項目とみなされる。
アスピリン一次予防投与も、治療ガイドラインに従った高血圧症等の投与も、このイベントの発生抑制を目的とした「一連の治療行為」であり、アスピリンの保険請求を行わないだけではなく、診察料及び他の「一連の治療行為」において使用される薬剤費についても保険請求は行えないはずであるが、厚生労働省の見解を明らかにされたい。
3 仮に、前述のような「一連の治療行為」において、アスピリン一次予防投与における薬剤費を製薬会社負担として、診察料及び高血圧症等の治療のための薬剤費を保険請求していたと仮定すれば、保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条への違反行為といえるかどうか、法令解釈につき厚生労働省の見解を明らかにされたい。
二 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条違反と疑われる行為の調査について
1 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十九条の違反と疑われる行為が公然と行われていることを厚生労働省が知った場合には、実際に違反しているか否かを、診療録、診療報酬請求書、診療報酬明細書等の資料に基づいて調査すべきと考えるが、どうか。
2 そのような調査を開始するにあたって必要な外部からの調査請求手続きその他の厚生労働省内の手続きが定められているか。定められているとすれば、明示されたい。
また、定められていないとすれば、いかなる手続き、ないし状況で調査を開始しうるのか、考え方を明らかにされたい。
三 未承認の療法に係る治療費請求事案の調査について
「いわゆる混合診療」に係る調査については、神奈川県立がんセンターで未承認の活性化自己リンパ球移入療法を受けていた患者の遺族が不当な治療費支払いを求められたことを訴えていたが、半年間、野放しにされていた事例がある。この件について、昨年五月十日の厚生労働委員会において、水田政府参考人は「現在、事実関係を調査している」と述べたが、その後調査結果は公表されていない。
現時点で得られている事実関係の調査結果を説明されたい。
四 「いわゆる混合診療」についての問い合わせに関する情報の漏洩について
前記の池田教授らによる臨床試験が「いわゆる混合診療」に該当する可能性について、五月二十四日、私の事務所を通じて保険局医療課久米氏に問い合わせた。その直後から、元衆議院議員や国立大学医学部教授その他複数の人物から、この件を国会での質問によって追及しないよう求める趣旨の要望が伝えられた。
池田教授らの臨床試験が「いわゆる混合診療」に該当する可能性について私が懸念を抱いていることは、保険局医療課久米氏以外には一切伝えていない。したがって、保険局医療課を発信源とする以外にこの件に係る情報の厚生労働省外部への伝達は考えられない。
保険局医療課から厚生労働省の内部あるいは外部の者に情報を伝達したか。伝達したとすれば、その経緯につき、明らかにされたい。
五 既承認薬の未承認の効能等への使用と薬事法第五十五条の適用について
1 池田教授らによる臨床試験は、計画概略文書において明らかな通り、未承認の効能に使用することを目的とし、バイエル薬品株式会社より「バイアスピリン錠」が医療機関に無償提供されて実施されている。
このような行為は薬事法第五十五条に抵触しないか。また、同規定は、既承認薬剤の、未承認の効能等への使用を前提とした販売・授与についても適用されるのか、法令解釈を明らかにされたい。
2 前項1において薬事法第五十五条が適用されるとすれば、製品の包装や添付文書等に未承認の効能を記載した場合に限らず、製薬会社が、医療機関において未承認の効能に利用することを明記した研究計画書があることを承知の上で、既承認薬を提供した場合にも、適用されるか。
また、製薬会社と医療機関との間において未承認の効能に使用されることを前提として製品を授与することを定めた契約が存在する場合には、いかがか。
六 薬事法第五十五条違反と疑われる行為の調査について
池田教授らによる臨床試験が薬事法第五十五条に抵触すると疑われる場合に、厚生労働省は実際にこれに抵触するか否かを調査する責務があると考える。
質問項目の「二」と同様に、調査を開始するにあたって必要な手続き上の定め又は考え方を明らかにされたい。
七 「治験のあり方に関する検討会」委員としての適性について
昨年五月十日の厚生労働委員会において、当時の川崎厚生労働大臣は、「不正という事実があって、その不正にかかわった人が厚生労働省の何らかの委員をしているということになれば、当然やめてもらいます。」と述べている。
池田教授は、研究費の二重受給という不正行為を行ったことが明らかとなっている。さらに、池田教授らによる臨床試験が、保健医療機関及び保険医療養担当規則第十九条もしくは薬事法第五十五条のいずれか、又はこの双方に抵触するとした場合に、本来は新たな効能効果取得を目的とする「治験」として実施すべき研究を、治験ではない臨床試験として、いわば脱法的に行っていることになる。にもかかわらず、池田教授は、「治験のあり方に関する検討会」の座長をつとめ、治験に関する制度改善の議論をまとめる責任を担っている。
少なくとも研究費の二重受給を理由に、「治験のあり方に関する検討会」委員を解任すべきではないか。
右質問する。
平成十九年六月二十二日受領
答弁第三八〇号
内閣衆質一六六第三八〇号
平成十九年六月二十二日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員郡和子君提出いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
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衆議院議員郡和子君提出いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問に対する答弁書
一の1について
我が国の医療保険制度においては、基本的に、疾病、負傷等の発生を保険事故として保険給付を行うものであり、これらが発生する前の単なる予防については、保険給付の対象とならない。
一の2及び3について
我が国の医療保険制度においては、一連の診療の過程において、保険診療と保険外診療を併用することを原則として認めていないが、これは、保険診療を受ける患者の自己負担が不当に増大することを防ぐとともに、保険診療の過程において安全性等が担保されていない医療が併用されることを防ぐ趣旨であり、保険医療機関及び保険医療養担当規則(昭和三十二年厚生省令第十五号。以下「療担規則」という。)第五条等により、健康保険法(大正十一年法律第七十号。以下「健保法」という。)第七十四条第一項に定める一部負担金を超える費用の徴収を原則として禁ずるとともに、療担規則第十八条により、特殊な療法又は新しい療法等(以下「特殊療法等」という。)を禁止し、さらに、療担規則第十九条により、使用薬剤の薬価(薬価基準)(平成十八年厚生労働省告示第九十五号)別表に収載されている医薬品(以下「収載医薬品」という。)以外の薬物の使用等を原則として禁止している。
御指摘の投与については、これを患者負担により行わないこととされているため、療担規則第五条等に違反するものではなく、虚血性心疾患、虚血性脳血管障害等における血栓及び塞栓形成の抑制は、アスピリンの本来的な薬理作用であること、御指摘の投与と同様のアスピリンの効能に関して薬事規制上の承認がなされている国が存在すること等を踏まえると、療担規則第十八条において禁止されている特殊療法等に該当するものではない。さらに、アスピリンは既に収載医薬品であり、その使用について、療担規則第十九条に違反するものではないことから、動脈硬化性疾患危険因子を有する高齢者に及ぼすアスピリンの一次予防効果に関する研究(以下「JPPP試験」という。)において、御指摘の投与以外の診療についての保険請求を行うことは可能である。
二の1について
厚生労働大臣等は、療担規則に違反する疑いのある事実を把握した場合には、その事実の真偽、違法性等について総合的に検討した上で、必要に応じ、関係する保険医療機関等に対し、健保法第七十三条等の規定に基づく指導又は健保法第七十八条等の規定に基づく報告等の徴収(以下「指導等」という。)を行うこととなる。
二の2について
御指摘の外部からの調査請求手続については、特に定められておらず、療担規則に違反する疑いのある事実に関する情報提供については、厚生労働省及び都道府県において随時受け付けているところである。
また、厚生労働大臣等が指導等を開始する際の手続については、「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」(平成七年十二月二十二日付け保発第百十七号厚生省保険局長通知)の別添1「指導大綱」及び別添2「監査要綱」に定められている。
三について
現在、神奈川社会保険事務局において、引き続き御指摘の調査を行っているところであり、事実関係等が確定していない段階で、その結果等についてお答えすることは差し控えたい。
四について
厚生労働省保険局医療課(以下「医療課」という。)においては、平成十九年五月二十四日午前九時半ころ、「民主党郡和子議員の秘書代理」と名乗る者(誰何したが答えは得られなかったため氏名は不詳)から、JPPP試験がいわゆる混合診療に該当するか否か等について照会を受けたものである。
当該照会については、医療課から厚生労働省の外部の者に情報を伝達したという事実はなく、また、当該照会は医療課の所掌事務である社会保険診療報酬に関すること以外に、他部局の所掌事務とも密接にかかわる内容であったことから、医療課より省内関係部局に対して、照会内容に係る事実確認等を行ったことはあるが、確認したところ、これらの部局から外部の者に情報を伝達したという事実もない。ただし、そのような事実確認の一つとして、厚生労働省医政局研究開発振興課から、池田教授に臨床試験の実施方法等について確認した事実はある。
五について
薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第五十五条第二項は、製造販売の承認を受けた効能以外の効能を標ぼうして製造販売をされた医薬品の販売、授与等を禁止するものであり、製造販売の承認を受けた効能のみを標ぼうして製造販売をされた医薬品を授与された医師が自らの責任の下、当該効能以外の効能の有無を調べる等の目的で当該医薬品を使用して臨床試験を行ったとしても、当該授与は、同法第五十五条に違反するものではなく、これは、当該医薬品の製造販売業者が、研究計画書、契約等により当該臨床試験への使用を承知しているか否かにかかわらないものである。
六について
厚生労働大臣等は、薬事法に違反する疑いのある事実を把握した場合には、その事実の真偽、違法性等について総合的に検討した上で、必要に応じ、関係する製造販売業者に対し、同法第六十九条に基づく立入検査等を行うこととなる。
御指摘の外部からの調査請求手続については、特に定められておらず、薬事法に違反する疑いのある事実に関する情報提供については、厚生労働省及び都道府県において随時受け付けているところである。
また、厚生労働大臣等が立入検査等を開始する際の手続については、「薬事監視指導要領について」(昭和五十八年五月二十五日付け薬発第四百六号厚生省薬務局長通知)の別添「薬事監視指導要領」に定められている。
七について
お尋ねについては、池田教授が、厚生労働科学研究費補助金公募要項の記載を誤って解釈したことを認識した時点で、自ら当該補助金の使用を中止し、未使用分の返還を申し出ていること等を踏まえると、引き続き、池田教授に委員として「治験のあり方に関する検討会」に参画いただくことは問題ないと考えている。