崩壊の足音が聞こえる国民皆保険制度の今, 2009/4/26
By 歯職人
日本経済新聞社出版社と全国保険医団体連合会幹部との組合せという、ある種「ミスマッチ」な一冊です。
地域医療の崩壊関連のニュースがマスコミの主要な題材になった昨今に対応した、出版と思われる。
本書は、「医療崩壊」を生んだ二度のオイルショック以降の医療政策の変化を、特に小泉政権の「構造改革」が医療に及ぼした影響を手際よく項目立てし紹介している。
「国民健康保険」創設時と産業構造・人口構成が大幅に変化し、制度的に限界に達した現状と、その国民健康保険を支えるための他の医療保険の過剰負担の構造を解き明かし、現在の危機がより深く進んでいる状況を描写する。
スタート時から対象の高齢者の反撥を生んだ「後期高齢者医療制度」の制度設計としての無理。アメリカとの比較から見えてくる民間保険に医療を委ねた場合の無理。医師数抑制政策の誕生とその継続がもたらした医療従事者の歪。そして先進国との比較で、我が国が必要と思われる医師数等々様々な問題点を浮かび上がらせる。
対案として、経済構造を社会保障分野を産業として振興することが、今後の日本経済の着実な運営に益することを提示する。
本書は、現在の医療が抱える問題を医療政策・医療経済の側面から解き明かし、読者にこのままの政策選択が進み、医療の「アメリカ」化の行く末としての「病気になると家を失う日本の明日」を読者に示す。
評者は著者らが提示する各論点におおむね合意した上で、70年代の政治学入門書に我が国の主要「圧力団体」と記されていた、日本医師会・農協・総評・経団連が現在どの様な位置づけにあるのか、時間の経過の中で力を失った団体は何故力を失ったのか?決して国際比較では高くない日本の医療費を国民は高く感じているのか?欲を言えば、著者らの医療提供側が内包する弱点・失敗の総括についての考察が欲しかった。その上でを踏まえても、貴重な出版として歓迎しお勧めしたい一冊のです。
10ネンゴアナタハビョウキニナルトイエヲウシナウ ジュウネンゴアナタハビョウキニナルトイエヲウシナウ コクミンカイホケンホウカイノシンジツ
10年後、あなたは病気になると家を失う―国民皆保険崩壊の真実
津田 光夫 馬場 淳 三浦 清春 寺尾 正之【著】
日本経済新聞出版社 (2009/04/01 出版)
206p / 19cm / B6判
ISBN: 9784532490492
NDC分類: 498.13
価格: ¥1,785 (税込)
詳細
医療費の抑制、医師不足、療養病床の大幅削減―国の政策ミスが、罪なき国民の命をおびやかす。
無保険者の増加や医師・看護師の過労、救急搬送の遅れなどいま医療分野で起きている問題を幅広くわかりやすく解説。
どうすればこの危機を食い止められるのか。
第1章 病める国民健康保険
第2章 後期高齢者医療制度の問題点
第3章 産業競争力をも蝕むアメリカの医療モデル
第4章 絶対数が足りない医師不足の現状
第5章 病院を取り巻く問題
第6章 日本の医療費は高くない
これは今後日本を悩まし続ける大きな経済・社会問題になる。国の医療制度に関する失政が、罪なき国民の命をおびやかす。医師不足による医療崩壊に加え、日本が世界に誇ってきた国民皆保険制度が崩壊しつつある。
著者紹介
津田光夫[ツダミツオ]
1947年生まれ。74年3月信州大学医学部卒業。京都府内の医療機関で内科医として地域医療の研修・診療に従事。83年より綾部協立病院院長。98年より乙訓医療生協・医誠会診療所所長。98年より全国保険医団体連合会理事、06年より副会長
馬場淳[ババジュン]
1951年生まれ。79年大阪歯科大学卒業。大阪府内の医療機関に勤務。86年より95年まで滋賀医科大学非常勤講師。87年奈良市内で歯科医院開業。92年より奈良県保険医協会副理事長。2000年より全国保険医団体連合会理事、06年より副会長
三浦清春[ミウラキヨハル]
1975年鹿児島大学医学部卒業。紫原生協クリニック院長。鹿児島県保険医協会副会長。全国保険医団体連合会理事。鹿児島大学医学部非常勤講師
寺尾正之[テラオマサユキ]
1953年東京都生まれ。東京保険医協会事務局を経て、全国保険医団体連合会事務局次長。国民医療研究所医療動向研究部会員
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
By 歯職人
日本経済新聞社出版社と全国保険医団体連合会幹部との組合せという、ある種「ミスマッチ」な一冊です。
地域医療の崩壊関連のニュースがマスコミの主要な題材になった昨今に対応した、出版と思われる。
本書は、「医療崩壊」を生んだ二度のオイルショック以降の医療政策の変化を、特に小泉政権の「構造改革」が医療に及ぼした影響を手際よく項目立てし紹介している。
「国民健康保険」創設時と産業構造・人口構成が大幅に変化し、制度的に限界に達した現状と、その国民健康保険を支えるための他の医療保険の過剰負担の構造を解き明かし、現在の危機がより深く進んでいる状況を描写する。
スタート時から対象の高齢者の反撥を生んだ「後期高齢者医療制度」の制度設計としての無理。アメリカとの比較から見えてくる民間保険に医療を委ねた場合の無理。医師数抑制政策の誕生とその継続がもたらした医療従事者の歪。そして先進国との比較で、我が国が必要と思われる医師数等々様々な問題点を浮かび上がらせる。
対案として、経済構造を社会保障分野を産業として振興することが、今後の日本経済の着実な運営に益することを提示する。
本書は、現在の医療が抱える問題を医療政策・医療経済の側面から解き明かし、読者にこのままの政策選択が進み、医療の「アメリカ」化の行く末としての「病気になると家を失う日本の明日」を読者に示す。
評者は著者らが提示する各論点におおむね合意した上で、70年代の政治学入門書に我が国の主要「圧力団体」と記されていた、日本医師会・農協・総評・経団連が現在どの様な位置づけにあるのか、時間の経過の中で力を失った団体は何故力を失ったのか?決して国際比較では高くない日本の医療費を国民は高く感じているのか?欲を言えば、著者らの医療提供側が内包する弱点・失敗の総括についての考察が欲しかった。その上でを踏まえても、貴重な出版として歓迎しお勧めしたい一冊のです。
10ネンゴアナタハビョウキニナルトイエヲウシナウ ジュウネンゴアナタハビョウキニナルトイエヲウシナウ コクミンカイホケンホウカイノシンジツ
10年後、あなたは病気になると家を失う―国民皆保険崩壊の真実
津田 光夫 馬場 淳 三浦 清春 寺尾 正之【著】
日本経済新聞出版社 (2009/04/01 出版)
206p / 19cm / B6判
ISBN: 9784532490492
NDC分類: 498.13
価格: ¥1,785 (税込)
詳細
医療費の抑制、医師不足、療養病床の大幅削減―国の政策ミスが、罪なき国民の命をおびやかす。
無保険者の増加や医師・看護師の過労、救急搬送の遅れなどいま医療分野で起きている問題を幅広くわかりやすく解説。
どうすればこの危機を食い止められるのか。
第1章 病める国民健康保険
第2章 後期高齢者医療制度の問題点
第3章 産業競争力をも蝕むアメリカの医療モデル
第4章 絶対数が足りない医師不足の現状
第5章 病院を取り巻く問題
第6章 日本の医療費は高くない
これは今後日本を悩まし続ける大きな経済・社会問題になる。国の医療制度に関する失政が、罪なき国民の命をおびやかす。医師不足による医療崩壊に加え、日本が世界に誇ってきた国民皆保険制度が崩壊しつつある。
著者紹介
津田光夫[ツダミツオ]
1947年生まれ。74年3月信州大学医学部卒業。京都府内の医療機関で内科医として地域医療の研修・診療に従事。83年より綾部協立病院院長。98年より乙訓医療生協・医誠会診療所所長。98年より全国保険医団体連合会理事、06年より副会長
馬場淳[ババジュン]
1951年生まれ。79年大阪歯科大学卒業。大阪府内の医療機関に勤務。86年より95年まで滋賀医科大学非常勤講師。87年奈良市内で歯科医院開業。92年より奈良県保険医協会副理事長。2000年より全国保険医団体連合会理事、06年より副会長
三浦清春[ミウラキヨハル]
1975年鹿児島大学医学部卒業。紫原生協クリニック院長。鹿児島県保険医協会副会長。全国保険医団体連合会理事。鹿児島大学医学部非常勤講師
寺尾正之[テラオマサユキ]
1953年東京都生まれ。東京保険医協会事務局を経て、全国保険医団体連合会事務局次長。国民医療研究所医療動向研究部会員
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)