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弛まず医療経済・政策学で現実と切り結ぶ二木立先生のコロナ禍・コロナ危機に揺さぶられた時代を解剖した記録
歯職人
2022年4月2日
人は想定外に事態の渦中にあると方向を見失いがちなるが、コロナ禍・コロナ危機に揺さぶられた時代に、自己の立ち位置に軸を持ち、歴史を俯瞰する視点を持つことにより、ここまで論考できるとだと考えさせられた二木立先生の最新の論考集です。
二木立先生による、2020・21年の医療経済・政策のマクロの動きを事実を追い、多角的に分析しさらにはその後の見通しの予測に言及する一冊です。
特に注目していただきたいのは、2021年1月に突発した(民間)病院バッシング【病床はああるのにコロナ患者を受け入れる病院が十分ではない】に対して、【統計で嘘をつく法】の典型であると指摘し、【日本の総病床数の4割は精神病床・療養病床】、【欧米では施設(ナーシングホーム)とされ病院病床に含まれない】と的確に指摘し、東京都医師会幹部の「ベットが患者を治療するのではありません、医師や看護師等が治療当たるのです」の言葉を紹介している。
一点不満は、MMT(現代貨幣理論)に関し、22ページ17行目から「財源の問題で、一言触れておきたいのですが、財源を国債発行のみに依存することは長期的には不可能です。もちろん、短期的には別で、日本を含めたすべての国で国債発行で財源を確保しています。これは緊急避難でしかないと思いますが、MMT(現代金融理論)がいうように主権国家は自由に国債を発行できる、という主張は幻想です。」と指摘しているが、日本経済新聞のコラムか財務省の事務次官の発言の様な記載になっている。
MMTの何人かの代表的な論者や著作に対して、論点の根底からの批判を一定のボリュウムの使い、二木立先生の分析が欲しかった。
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2020年代初頭の医療・社会保障: コロナ禍・全世代型社会保障・高額新薬 単行本 – 2022/3/18
二木 立 (著)
¥2,750
2020年から21年の医療・社会保障関連の主な閣議決定と政府・厚労省文書を読み解き、2020年代の医療と医療政策の今後を展望。
医療提供体制にコロナ危機がもたらした影響とは? 「『自助・共助・公助』そして『絆』」を謳う全世代型社会保障の危険性とは? 高額新薬で医療費は高騰する? 『コロナ危機後の医療・社会保障改革』(2020年9月)以降の1年半の医療・福祉・社会保障制度改革の動向を最新の資料を用いて包括的・複眼的に分析、今後を展望する。
【目次】
はしがき
第1章 コロナ危機後の医療提供体制
第1節 コロナ危機後の医療提供体制──予測と選択
第2節 2021年1月前半に突発した(民間)病院バッシング報道をどう読み,どう対応するか?
第2章 安倍・菅・岸田内閣の医療・社会保障改革
第1節 第二次安倍内閣の医療・社会保障改革の総括
第2節 菅義偉首相の社会保障・医療改革方針を複眼的に予測・評価する
第3節 菅内閣の「骨太方針2021」の社会保障・医療改革方針を複眼的に読む
第4節 岸田文雄内閣の医療・社会保障政策をどう見通すか?
第3章 全世代型社会保障改革の批判的検討
第1節 「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案」に対する意見
第2節 全世代型社会保障検討会議「最終報告」と財政審「建議」を複眼的に読む
第3節 医療保険の一部負担は究極的には全年齢で廃止すべきと私が考える理由
第4章 財務省の20年間の医療・社会保障改革スタンスの変化の検討
第5章 社会保障・社会福祉の理念と社会的処方
第1節 「自助・共助・公助」という分け方は適切なのか?
第2節 「自助・共助・公助」と「自助・互助・共助・公助」の法令・行政での使われ方
第3節 改正社会福祉法への参議院附帯決議の意義とソーシャルワーカー(専門職・団体)に求められる役割
第4節 健康の社会的要因の重視には大賛成.しかし,日本での「社会的処方」制度化は困難で「多職種連携」の推進が現実的だ
第6章 医療経済・政策学の論点
第1節 高額新薬で医療費は高騰するとの言説の再検討
第2節 厚生労働省が用いる「長瀬式」「長瀬効果」の出自を調べ信頼性を評価する
第3節 論文:「医療の鉄の三角形」説の文献学的検討
第4節 医療経済学の最重要古典「不確実性と医療の厚生経済学」への3つの疑問
補章 『厚生労働白書』と日医総研報告書を複眼的に読む
第1節 『令和2年版厚生労働白書』をどう読むか?
第2節 日医総研『第7回日本の医療に関する意識調査』から何が読みとれるか?
第3節 『令和3年版厚生労働白書』を複眼的に読む
あとがき
初出一覧
事項索引
人名索引