『日本歯技』2013年5月号「論説」
歯科技工士法令改正と本会政策活動の現段階
1.はじめに
日本歯科技工士会は、大正年間からの歯科技工士資格の法的・社会的確立運動をその源流に持つ。1955年(昭和30年)の歯科技工(士)法制定と本会設立後は、日本社会の発展に相応しい歯科技工士・歯科技工業の法的経済的基盤整備を通して、人々の健康への更なる貢献を果たすべく、取り組みを脈々と継続してきた。この過程は、本会が試行錯誤を経て政策活動を準備するものとなった。
日本社会の発展、歯科医学の進歩と産業技術の発展、特に高校進学率の向上は、歯科技工士養成所の教育内容と入学資格に当然にも反映させる必要があるとして、本会は組織を挙げ歯科技工士教育の学制改革に取り組み、1966年(昭和41年)その入学資格を高等学校卒業としたことは、本会の政策活動の象徴の一つであり、その後の歯科技工士養成教育の短期大学化、4年制大学化と続く礎となった。
2.1990年代の動向
歯科技工士法令は、法第24条に規定される「構造設備」の内容が省令等で定められておらず、「構造設備の不完全」の要件も恣意的に運用されかねない危険性を持つ。省令等が定められていないまま都道府県知事により、法第24条の「改善命令」、及び法第25条の「使用の禁止」が発する事が可能な規定は、地方行政の裁量権の逸脱や濫用を誘発しかねないものであり、また委縮行政に陥る危険性を生みかねない。適正な省令等の制定は歯科技工所の権利を守り、地方行政職員に法律を施行するためのより詳しい事務内容等を伝え、また時代に即した社会の歯科技工に対する期待に応える水準を保つためにも、長年の課題であった。
1992年(平成4年)~1993年(平成5年)には、厚生省(当時)が設置した「歯科技工所運営に関する検討会」において、歯科技工所の構造設備整備と感染防止対策について、計8回の検討が行われた。1994年(平成6年)~1996年(平成8年)には、厚生省(当時)医政局内に設置された「歯科技工所の運営マニュアル作成検討会」において、歯科技工所の構造設備と歯科補てつ物等の品質管理に関するマニュアル化が図られた。
1994年(平成6年)9月9日には、本会よりの疑義解釈照会(社日技第164号)に対し、厚生省健康政策局歯科衛生課長回答(歯24号)を得、歯科技工士の資格と業務を明確化し、いわゆる無資格者問題の発生を抑止するものとした。
-----
平素より特段のご指導を賜わり厚く御礼申し上げます。左記の事項につき、貴省の見解を伺いたく照会いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
[照会事項]
歯科技工物の作成に係る一連の工程の一部分における製作物を作成し、修理し、又は加工することは、当該製作物を「半製品」又は「中間製作物」等と称したとしても、歯科技工士法第二条第一項にいう「歯科技工」に該当するものであり、歯科医師又は歯科技工士のみが適法に行うことができると解されるが、如何か。
平成6年9月2日付社日技第164号により照会のあった標記について、左記のとおり回答する。
貴見のとおりである。
----
1998年(平成10年)~2000年(平成12年)には、厚生省(当時)予算による「歯科技工所管理者等研修会」を、本会の事業として全国49ヵ所(東京都、北海道各2ヵ所)で実施し、上記「歯科技工所の運営マニュアル作成検討会」の成果の普及に努め、歯科技工に関わる感染防止対策や歯科技工所の構造設備等の作業環境上の留意事項に関する研修を行った。
3.2000年代の動向
2002年(平成14年)~2003年(平成15年)には、厚生労働科学研究による「歯科技工所における歯科補綴物等管理制度の構築に関する研究」(主任研究者 財団法人口腔保健協会理事 宮武光吉)に当会役員が参画し、歯科技工所の具体的な構造設備の内容と,歯科補てつ物等の製作過程における品質管理の重要性がまとめられ、次代のあるべき歯科技工所の像の明確化に努めた。この検討会の設置や運営等に、本会と本会から派遣された役員は、日本歯科技工学会とその会員等の研究成果や有識者の助力等を得ながら求められる役割を果たし、政策立案の方向性の提言とその根拠となるべきデータ等の収集と解析に努め、またその成果の普及に寄与した。
近年、国民の医療への期待と国民生活全般への安全・安心を求めるニーズは高まり、医療安全への取り組みをより一層高い段階へと導いた。2007年(平成19年)4月1日には、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」が施行され、医療法第5次改正として、「医療安全の確保」への取り組みが明確化された。
この医療法第5次改正の準備状況にも対応し、2005年(平成17年)3月18日には、医政発0318003号厚生労働省医政局通知「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」(以下、17年通知という)が発出された。これは、「医療安全の確保」等の時代の要請に対応するため、歯科技工所が具備すべき構造設備に関する具体的な内容と、歯科補てつ物等の作成の際における品質管理指針に関して方向性を示したものであった。
特にここ数年、歯科技工に関連する分野において、本会、行政、関連団体、関係学会等は、真摯で継続的な協議等を通し合意を形成し、厚生労働省からの複数の通知が発出される段階に達した。これらは、歯科技工士が果たすべき役割を法秩序の中で明確化するためのものであり、地方行政に対する地域組織(都道府県技)の働きかけと合いまって、歯科技工所の果たしている役割に相応しい行政施策実行を促すものとして評価される。
一方、国外への歯科補てつ物等の製作を委託する事例が散見されることから、2005年(平成17年)9月8日には、医政歯発第0908001号、厚生労働省医政局歯科保健課長通知「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(以下、17年国外委託通知という)が発出され、国外で作成された歯科補てつ物等を歯科医師が輸入する場合は、歯科医師が患者に対し使用材料の安全性や作成方法など十分な情報提供を行い、患者の理解、同意を得ることが求められた。2010年(平成22年)3月31日には、医政歯発0331第1号、医政局歯科保健課長通知「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」が発出され、17年国外委託通知を踏まえ、歯科補てつ物等の更なる安全性確保等のため、歯科医師が国外へ歯科補てつ物等の作成を委託する場合は、安全性に十分配慮した上で、作成の場所や歯科材料の組成・性状や安全性に関する情報の事前把握等を遵守することが求められた。
4.20010年代の動向
本会は、2011年度(平成23年度)厚生労働科学研究「国外の歯科補綴物の実態に関する研究」(主任研究者 新潟大学宮崎秀大教授)に協力し、政策立案に必要な国外委託問題に関する資料の作成に努めた。2011年(平成23年)6月28日には、医政発0628第4号、厚生労働省医政局通知「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について」の発出をみた。これは、前記厚生労働科学研究の成果を基礎に、国外で作成する歯科医療の用に供する歯科補てつ物等に対する国の態度を明確化するものである。
2011年(平成23年)9月26日には、医政発0926第1号、厚生労働省医政局通知「歯科医療の用に供する補てつ物等の安全性の確保について」が発出された。これは、法第18条及び施行規則第12条により、治療にあたる歯科医師の了知しない(与り知らない)再委託を認めないことを明確化するものである。
2012年(平成24年)10月2日には、医政発1002第1号、厚生労働省医政局通知「歯科技工士法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」が発出された。これは、いわゆる施行通知と言われるものである。この改正省令(平成24年厚生労働省令第145号)において施行規則第12条の指示書の記載事項に、患者氏名、担当歯科医師の勤務先医療機関の所在地、委託先歯科技工所の所在地を追加することにより各々の事項の識別を明確化し、17年通知の「歯科技工所の構造設備基準」部分を、施行規則第13条の二として規定し構造設備基準が明示された。
調査により一部に若干実施率が低い項目があることが判明した17年通知の「歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針」部分に関しては、同じく2012年(平成24年)10月2日に、医政発1002第4号、厚生労働省医政局通知「歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について(通知)」が発出された。これは、17年通知の部分的な再通知であり、更なる周知の後に省令化を期すこととなった。
5.本会政策活動の現段階
これらの歯科技工士法令に関する動向と本会政策活動を俯瞰してみれば、制定後60年に迫る歯科技工士法と社会の今日的なニーズの高度化との整合性を図り、足らざるところを補うものとなっている。
2012年(平成24年)、厚生労働省に設置された「歯科専門職の資質向上検討会」(座長 大塚吉兵衛日本大学総長)に本会の古橋博美会長が委員として参画し、この検討会のもとに設置された「歯科技工士ワーキンググループ」には、本会の杉岡範明、時見高志両副会長が委員として加わった。この検討会は、歯科技工士国家試験の学説試験全国統一化に向けた対応と、それに相応しい歯科技工士教育のあり方にも言及した検討に取り組んでいる。
社会は常に変化し進歩し続けている。歯科医療と歯科技工も、また同様である。この進歩の中で、歯科技工に関わる諸制度の整備が立ち止まることは、社会の期待する水準から後退することにもつながり、歯科と歯科技工士の社会的評価にも影響する。歯科技工士が、法令とその動向に関する正しい知識と規範意識を持ち、歯科医療と歯科技工の未来構築のため、社会に誇れる対応をすることが大切である。
わが国の政策は、法令と予算等により表現される。本会の政策活動は、政策研究と真摯な渉外活動等を軸に、日本社会の発展段階に相応しい歯科医療と歯科技工等に関わる法令整備等を通して、人々の健康への更なる貢献を果たすことを目的としている。
本会は今後も、安全で良質な歯科医療の確保と健全な口腔保健の維持のため、会内外の方々のより一層のご理解とご協力を得ながら、歯科技工の未来を見据えた政策活動を継続していく。
歯科技工士法令改正と本会政策活動の現段階
1.はじめに
日本歯科技工士会は、大正年間からの歯科技工士資格の法的・社会的確立運動をその源流に持つ。1955年(昭和30年)の歯科技工(士)法制定と本会設立後は、日本社会の発展に相応しい歯科技工士・歯科技工業の法的経済的基盤整備を通して、人々の健康への更なる貢献を果たすべく、取り組みを脈々と継続してきた。この過程は、本会が試行錯誤を経て政策活動を準備するものとなった。
日本社会の発展、歯科医学の進歩と産業技術の発展、特に高校進学率の向上は、歯科技工士養成所の教育内容と入学資格に当然にも反映させる必要があるとして、本会は組織を挙げ歯科技工士教育の学制改革に取り組み、1966年(昭和41年)その入学資格を高等学校卒業としたことは、本会の政策活動の象徴の一つであり、その後の歯科技工士養成教育の短期大学化、4年制大学化と続く礎となった。
2.1990年代の動向
歯科技工士法令は、法第24条に規定される「構造設備」の内容が省令等で定められておらず、「構造設備の不完全」の要件も恣意的に運用されかねない危険性を持つ。省令等が定められていないまま都道府県知事により、法第24条の「改善命令」、及び法第25条の「使用の禁止」が発する事が可能な規定は、地方行政の裁量権の逸脱や濫用を誘発しかねないものであり、また委縮行政に陥る危険性を生みかねない。適正な省令等の制定は歯科技工所の権利を守り、地方行政職員に法律を施行するためのより詳しい事務内容等を伝え、また時代に即した社会の歯科技工に対する期待に応える水準を保つためにも、長年の課題であった。
1992年(平成4年)~1993年(平成5年)には、厚生省(当時)が設置した「歯科技工所運営に関する検討会」において、歯科技工所の構造設備整備と感染防止対策について、計8回の検討が行われた。1994年(平成6年)~1996年(平成8年)には、厚生省(当時)医政局内に設置された「歯科技工所の運営マニュアル作成検討会」において、歯科技工所の構造設備と歯科補てつ物等の品質管理に関するマニュアル化が図られた。
1994年(平成6年)9月9日には、本会よりの疑義解釈照会(社日技第164号)に対し、厚生省健康政策局歯科衛生課長回答(歯24号)を得、歯科技工士の資格と業務を明確化し、いわゆる無資格者問題の発生を抑止するものとした。
-----
平成6年9月2日 社日技第164号
厚生省健康政策局歯科衛生課長あて社団法人日本歯科技工士会会長照会
厚生省健康政策局歯科衛生課長あて社団法人日本歯科技工士会会長照会
平素より特段のご指導を賜わり厚く御礼申し上げます。左記の事項につき、貴省の見解を伺いたく照会いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
記
[照会事項]
歯科技工物の作成に係る一連の工程の一部分における製作物を作成し、修理し、又は加工することは、当該製作物を「半製品」又は「中間製作物」等と称したとしても、歯科技工士法第二条第一項にいう「歯科技工」に該当するものであり、歯科医師又は歯科技工士のみが適法に行うことができると解されるが、如何か。
平成6年9月9日 歯第24号
社団法人日本歯科技工士会会長あて厚生省健康政策局歯科衛生課長回答
社団法人日本歯科技工士会会長あて厚生省健康政策局歯科衛生課長回答
平成6年9月2日付社日技第164号により照会のあった標記について、左記のとおり回答する。
記
貴見のとおりである。
----
1998年(平成10年)~2000年(平成12年)には、厚生省(当時)予算による「歯科技工所管理者等研修会」を、本会の事業として全国49ヵ所(東京都、北海道各2ヵ所)で実施し、上記「歯科技工所の運営マニュアル作成検討会」の成果の普及に努め、歯科技工に関わる感染防止対策や歯科技工所の構造設備等の作業環境上の留意事項に関する研修を行った。
3.2000年代の動向
2002年(平成14年)~2003年(平成15年)には、厚生労働科学研究による「歯科技工所における歯科補綴物等管理制度の構築に関する研究」(主任研究者 財団法人口腔保健協会理事 宮武光吉)に当会役員が参画し、歯科技工所の具体的な構造設備の内容と,歯科補てつ物等の製作過程における品質管理の重要性がまとめられ、次代のあるべき歯科技工所の像の明確化に努めた。この検討会の設置や運営等に、本会と本会から派遣された役員は、日本歯科技工学会とその会員等の研究成果や有識者の助力等を得ながら求められる役割を果たし、政策立案の方向性の提言とその根拠となるべきデータ等の収集と解析に努め、またその成果の普及に寄与した。
近年、国民の医療への期待と国民生活全般への安全・安心を求めるニーズは高まり、医療安全への取り組みをより一層高い段階へと導いた。2007年(平成19年)4月1日には、「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」が施行され、医療法第5次改正として、「医療安全の確保」への取り組みが明確化された。
この医療法第5次改正の準備状況にも対応し、2005年(平成17年)3月18日には、医政発0318003号厚生労働省医政局通知「歯科技工所の構造設備基準及び歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について」(以下、17年通知という)が発出された。これは、「医療安全の確保」等の時代の要請に対応するため、歯科技工所が具備すべき構造設備に関する具体的な内容と、歯科補てつ物等の作成の際における品質管理指針に関して方向性を示したものであった。
特にここ数年、歯科技工に関連する分野において、本会、行政、関連団体、関係学会等は、真摯で継続的な協議等を通し合意を形成し、厚生労働省からの複数の通知が発出される段階に達した。これらは、歯科技工士が果たすべき役割を法秩序の中で明確化するためのものであり、地方行政に対する地域組織(都道府県技)の働きかけと合いまって、歯科技工所の果たしている役割に相応しい行政施策実行を促すものとして評価される。
一方、国外への歯科補てつ物等の製作を委託する事例が散見されることから、2005年(平成17年)9月8日には、医政歯発第0908001号、厚生労働省医政局歯科保健課長通知「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」(以下、17年国外委託通知という)が発出され、国外で作成された歯科補てつ物等を歯科医師が輸入する場合は、歯科医師が患者に対し使用材料の安全性や作成方法など十分な情報提供を行い、患者の理解、同意を得ることが求められた。2010年(平成22年)3月31日には、医政歯発0331第1号、医政局歯科保健課長通知「補てつ物等の作成を国外に委託する場合の使用材料の指示等について」が発出され、17年国外委託通知を踏まえ、歯科補てつ物等の更なる安全性確保等のため、歯科医師が国外へ歯科補てつ物等の作成を委託する場合は、安全性に十分配慮した上で、作成の場所や歯科材料の組成・性状や安全性に関する情報の事前把握等を遵守することが求められた。
4.20010年代の動向
本会は、2011年度(平成23年度)厚生労働科学研究「国外の歯科補綴物の実態に関する研究」(主任研究者 新潟大学宮崎秀大教授)に協力し、政策立案に必要な国外委託問題に関する資料の作成に努めた。2011年(平成23年)6月28日には、医政発0628第4号、厚生労働省医政局通知「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について」の発出をみた。これは、前記厚生労働科学研究の成果を基礎に、国外で作成する歯科医療の用に供する歯科補てつ物等に対する国の態度を明確化するものである。
2011年(平成23年)9月26日には、医政発0926第1号、厚生労働省医政局通知「歯科医療の用に供する補てつ物等の安全性の確保について」が発出された。これは、法第18条及び施行規則第12条により、治療にあたる歯科医師の了知しない(与り知らない)再委託を認めないことを明確化するものである。
2012年(平成24年)10月2日には、医政発1002第1号、厚生労働省医政局通知「歯科技工士法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」が発出された。これは、いわゆる施行通知と言われるものである。この改正省令(平成24年厚生労働省令第145号)において施行規則第12条の指示書の記載事項に、患者氏名、担当歯科医師の勤務先医療機関の所在地、委託先歯科技工所の所在地を追加することにより各々の事項の識別を明確化し、17年通知の「歯科技工所の構造設備基準」部分を、施行規則第13条の二として規定し構造設備基準が明示された。
調査により一部に若干実施率が低い項目があることが判明した17年通知の「歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針」部分に関しては、同じく2012年(平成24年)10月2日に、医政発1002第4号、厚生労働省医政局通知「歯科技工所における歯科補てつ物等の作成等及び品質管理指針について(通知)」が発出された。これは、17年通知の部分的な再通知であり、更なる周知の後に省令化を期すこととなった。
5.本会政策活動の現段階
これらの歯科技工士法令に関する動向と本会政策活動を俯瞰してみれば、制定後60年に迫る歯科技工士法と社会の今日的なニーズの高度化との整合性を図り、足らざるところを補うものとなっている。
2012年(平成24年)、厚生労働省に設置された「歯科専門職の資質向上検討会」(座長 大塚吉兵衛日本大学総長)に本会の古橋博美会長が委員として参画し、この検討会のもとに設置された「歯科技工士ワーキンググループ」には、本会の杉岡範明、時見高志両副会長が委員として加わった。この検討会は、歯科技工士国家試験の学説試験全国統一化に向けた対応と、それに相応しい歯科技工士教育のあり方にも言及した検討に取り組んでいる。
社会は常に変化し進歩し続けている。歯科医療と歯科技工も、また同様である。この進歩の中で、歯科技工に関わる諸制度の整備が立ち止まることは、社会の期待する水準から後退することにもつながり、歯科と歯科技工士の社会的評価にも影響する。歯科技工士が、法令とその動向に関する正しい知識と規範意識を持ち、歯科医療と歯科技工の未来構築のため、社会に誇れる対応をすることが大切である。
わが国の政策は、法令と予算等により表現される。本会の政策活動は、政策研究と真摯な渉外活動等を軸に、日本社会の発展段階に相応しい歯科医療と歯科技工等に関わる法令整備等を通して、人々の健康への更なる貢献を果たすことを目的としている。
本会は今後も、安全で良質な歯科医療の確保と健全な口腔保健の維持のため、会内外の方々のより一層のご理解とご協力を得ながら、歯科技工の未来を見据えた政策活動を継続していく。
2013年5月1日
公益社団法人 日本歯科技工士会
公益社団法人 日本歯科技工士会