○山下義信君 わかりました。
次にお尋ねしたいと思うのですが、この免許の、従って試験も都道府県知事の施行にしたというのはどういう理由ですか。
それから私は関連して次回までに資料をお願いしておきたいと思いますが、その医療並びに衛生関係で、知事限りにおいて試験を執行しあるいは免許を与える種類の厚生省所管の業務、厚生大臣の免許、認許可による業務、二種類のものを資料として出していただきたい。これは資料として要求します。
それからこの歯科技工士の都道府県知事の免許にした理由。
○政府委員(高田浩運君) 端的に申し上げますと、医師とか歯科医師とか、そういうものにつきましては、これは厚生大臣、それからその補助者につきましては、一般的には大体都道府県知事の試験、免許というような考え方で、実は大よその見当としては進んでおるのでございます。ただ御承知のように、たとえば看護婦につきましては、看護婦は厚生大臣、准看護婦は都道府県知事、そういうふうに多少教育程度を加味して振り分けておるのでございますが、たとえばレントゲン技師等については厚生大臣というふうで、初めに申し上げました筋は必ずしも通ってはおりませんけれども、気持としては、そういうふうな振り分け方で、ただ、まあ現実の問題として補助者のうちでも教育程度の高いものは厚生大臣、そういうふうになっている次第でございます。この歯科技工士につきましては、広い意味の歯科診療の補助的な役割を果すわけでございますし、その他の今までの例とも勘案いたしまして、都道府県知事ということに考えた次第でございます。
○山下義信君 その知事の権限にするか、厚生大臣の権限にしておくか、従って試験も地方の試験にするか国家試験にしておくかということも、そのもののある程度格、つけになるのですね。今の御答弁は、例をあげてその区分をお示しになったのですが、ある意味においてはそのものの資格というか、軽重さというか、格づけになるような気がするのです。それですから、これはどういう基準で振り分けをするかということは非常に考えてやらなければならない。しかもこういう新しい制度ですね、全国的な制度、これを知事限りでいいかどうかということも、私はもっと理由をこの機会に聞かしてもらわなければならぬ。それですから歯科技工士、これをほんの入歯屋という、ちょっとした程度のところで知事が監督をしていればそれでいいのだというふうな程度にこれを扱うか、治療の補助をやらせるのではなくて、少くとも歯科治療の、診療の中では歯科技工というものは重要な部分を占めるのであって、その方面における非常な発展的な向上も期待するのだと、ただ単にその技工士とか技師とか、そういったようないわゆる入れ歯の職人であったというようなものをぐっと引き上げて、ぐっとわが国の歯科診療の上に積極的に筋を立てて積極的に発展させるのだという、重要視するのだということになれば、厚生大臣の権限も監督もよほど考えなければならない。それで一応知事の認可、知事の試験の程度においてこれをしたというのでありますが、これは必ずしも軽く見たというのではありますまい。先ほどこの法律の目的、期待を相当に当局は高く期待されておるのでありますから、軽く見たというのではないと思いますが、これは次回にまたあらためて伺う、それで法律の中を通して知事の認可にしてある、知事の試験にしてある、知事の監督にしてある、それをどの程度厚生大臣が監督することになっておりますか。この法律ではこれをちょっと見るともう知事限りで何でもかでも片づけさせるようにできておる。厚生大臣の監督というものが私が見ると少し薄いように思うのですが、さほど中央において厚生大臣が相当二重に監督していくという必要はない、大体知事にまかしておけばよろしいというお見込みであったのでしょうか、どうでしょうか。どの程度まで厚生大臣が監督しておることにこの法律はなっておるか、大づかみに御説明を願います。
○政府委員(高田浩運君) 具体的な厚生大臣の権限として規定しておりますのは、十四条におきます養成所の指定、養成所の指定というのは結局いい技工士が作られるかあるいはそうでないかという最もキー・ポイントになるわけでありますので、これは大臣の権限といたしております。それから次に試験につきまして、それらを出た人たちの試験につきましては十二条の三項におきまして、歯科医師試験審議会の委員の方々に指導をさせることができるということの権限を規定いたしておるのでございますが、従って試験のやり方等につきまして、実質上必要があれば関与するという建前になっております。従ってこれらの人たちの養成ないし教育及び試験、そういった最もキー・ポイントと見られるものにつきましては、厚生大臣の権限を規定しておりまして、その他の事柄につきましては、これはほかのこういったたぐいの法律につきましても同じでございますが、原則として、都道府県知事の権限といたしまして、都道府県知事に対しましては、厚生大臣の一般的な指導、監督の権限に基きまして、事実上の指導をやっていく、そういうような建前にいたしております。
○山下義信君 私が見ますと、今御指摘のようなところには関係があるようですが、全体を通じて厚生大臣が監督しているという非常に強い指導をしておるという面がないようで、これは何かお考えがあったのだろうと思うのですが、たとえばヒヤリングですね。ヒヤリングをやるようなことは、まあ最近新しい立法でこうして民主的な規定が出ておる。これは何をヒヤリングをするのかと思うて見ると、いろいろ処分をするときにやるのですね。これは大事なことですね。業務を停止させたり認可を取り消したりいろいろやる。このヒヤリングは知事限りということであります。言いかえると一審限りですね。この制度はこれで知事限りがやる処分の場合でも、二審制度で知事の決定に不服のある場合には厚生大臣に行く場合がある、そういう事例は他にあるのですね、御承知の通り。これは知事限りにしておる。こういうような重大なような場合に、訴えを一方的に知事だけで最後のなにをさせて、厚生大臣がもし全体の監督者なら厚生大臣まで異議の申し立てをさせることが――この歯科技工士に関する限りは、この法律は最終の監督者というのは厚生大臣だぞということがはっきりするのですが、このヒヤリング、大事な営業開始だとか、免許の取り消しだとかいうようなことが、知事限りで最終審判にさせてしまうということは、何か特別の理由でもあったんでしょうか。どういう意味で――こういう大事なことにでも厚生大臣が姿を現わしてないですね。ですからそういう意味で、私は大へんそういう点の、まあ厚生大臣といえば厚生省ですが、つまり本省のこれが力をこめて指導監督する形が法律の中に出ていないということを申し上げるのですが、何か知事の一審限りにした特別の理由がありますか。
○政府委員(高田浩運君) このいわゆる聴聞に関しまする規定は、御承知のように、ほかのこの種の法律に規定をしてございますが、大体それと同じような形になっておるのでございます。これは御承知のように、処分を受けた者のいわゆる権利の保護、被処分者の保護の規定でございますので、この規定によって手続を経て処分を受けて、なお不服がある場合におきましては、訴願による道もございますし、さらにそれによって不満足な場合には行政訴訟という道もございますので、まあ、これは、いわゆるお話のお言葉を借りれば、一審ということにしたわけでございます。
○山下義信君 先ほどお話が出ましたが、この歯科医師試験審議会の委員がですね、「試験の基準に関して、歯科技工士試験審議会を指導させることができる。」とあるのですね。これは、こういう立法例が他にありますか。つまりこれは、言葉をかえることですね、厚生大臣がさせるのでありますから、させるでしょうが、法律の上から見ると、歯科医師試験の試験委員は、結局このことに関する限りは、知事を指導することができるのですね。歯科技工士試験審議会というのは、知事の監督下に属しておるのでありますから、知事を指導することができる、これは、こういう立法例が他にあることになっておりますか。
○政府委員(高田浩運君) これは、保健婦助産婦看護婦法におきまする准看護婦の試験に関連をして、これと同じような規定がございます。
○山下義信君 先ほどお話のありました指示書ですね、これは加藤委員の御質問のときには、この指示書というのは、歯科医師に発行義務があるような質疑応答がされておりましたが、法律の上ではそういう義務が見当らぬようでありますね、これは発行義務がありますか。法律の上ではこれは義務づけられていないんでしょうか。これはどうなんですか。
○政府委員(高田浩運君) 発行の義務は、お話のようにございません。ただこれがなければ、いわゆる技工の施行ができないわけでございますから、その意味から、実質上技工を頼もうとすれば、義務づけられておると見て差しつかえないと思います。
○山下義信君 もう一つ伺っておきますのは、経過規定における特例技工士ですね、経過規定における特例技工士と本文における歯科技工士とのこの二者の扱いの上に非常に大きな何か差があるところがあったら教えておいて下さい。これは法律を読んでもわからぬ、全部同じですか。経過規定で、名称を特例技工士というだけで、何もほかに変りはないのか、多少歯科技工士、特例技工士について扱いに差があるのか、教えていただきたい。
○政府委員(高田浩運君) 実質上は特別の差はございません。ただ法律上の、まあ、立法技術として、大へんごらんになりにくいような、非常にめんどくさい規定になりましたけれども、さよう御了承願います。
○谷口弥三郎君 私も一言お伺いしたいと思いますが、ただいま特例技工士という話が出ましたが、特例技工所というのは、今現在、先刻来のお話によりますと六千ばかり技工士がおる。その方々を、この法が適用されたらさっそく特例技工士という名前で三十五年まで、いわゆる技工の仕事ができるというようなふうにやられる気持ですか。
○高野一夫君 関連して。この付則の中に、今の谷口委員のお話のあったこの特例技工士なんかは、従来の既得権を認めて歯科技工士としての仕事を与えよう、させよう、こういうことだろうと思います。ところが、これはいつの日にかなくなるべき性質のものだと思うのでありますが、こういう場合にわざわざ特例技工士なるそういう名称を置かなければならぬ理由がどこにあるのですか。ただ従来こういうものは既得権として認めて、歯科技工士として認めるというのなら、従来にもいろいろな法律で付則に経過規定として置いてあるように思うが、わざわざここに特例技工士なる特殊の名称を置かなければならないということはどういうことでございますか。それとあわせて御答弁をいただきたい。
○政府委員(高田浩運君) 谷口先生の御質問の点につきまして、お説の通りでございます。それから高野先生のお話のように特例技工士という特別の名前をつける必要は、これは好ましくないわけでございますけれども、ただ法律を書く上からいたしまして、こういうことを使いませんというと、非常にさらに繁雑になりますので、便宜法文をある程度簡便に書くための言葉としてこういう言葉を使ったわけでございます。
○谷口弥三郎君 ただいまの、現在技工士としてやっておられる方を特例技工士というという、私はよくわかりますが、すでに何年か技工士としてやっておったものは既得権としてこの際技工士にするというお気持は全然ないのでございますか。
○政府委員(高田浩運君) これは、谷口先生が関係をいたされましたエキス線の関係においても同じでございますけれども、従来から事実上やっておったというだけで、そのまま認めるということは、この法律制定の趣旨からいたしましてもいかがかと考えますので、やはり試験という過程を経てそこで分けるということが必要だろうと思います。
○谷口弥三郎君 まあ、診療エキス線技師あたりの万の試験を受けますときと同様に、一応試験をするというお話でございますが、この試験は、これによりますと年に一回以上おやりになるというお話でございますが、これは各府県に同様にずっと一回ずつおやりになるのですか。それともあるところは二回とか三回とかおやりになりますような場合もあるのでございましょうか。
○政府委員(高田浩運君) 大体まあこの種の試験の通例といたしまして、法律上の条文に一年に一回以上という規定になっておりますが、実際上の取り計らいとしては、春、秋二回というふうに常識的に考えております。
○高野一夫君 この特例技工士は試験はないのでしょう。
○政府委員(高田浩運君) 試験を受けて、それで通らなければ五年後には仕事ができない、そういう意味での試験はございます。しかし五年間の範囲内であればこれは試験をなしに、試験に通らなくてもやれるのでございます。
○高野一夫君 それならますます特例技工士なんという特殊な名称を置く必要を認めない。五年間の間は既得権として認める、そうしてできる仕事というものは、特例技工士であろうと歯科技工士であろうと、内容においてはごうも変りない。しかも五年の間に試験を受ければこれは歯科技工士になる。これは一体何の区別がありますか。わざわざこういう名称を置くこと自身がかえって非常に複雑化する、こういうふうに私は思いますが。
○政府委員(高田浩運君) お話のように、こういういかにも特別といいますか、別のもののようなまあ誤解を起させるおそれもなきにしもあらずと思われます名称を用いることは、私どもも実はいかがかと思っておりますが、ただ法律を書きます便宜と申しますか、これを、こういう特別の簡単な五字の言葉を使いませんと非常にたくさんの言葉を使わなくちゃなりませんし、その結果、全体として非常にわかりにくい法文になるのでございますので、条文整理上こういった格好にしただけでございます。
○高野一夫君 もう一つ伺いますが、それじゃ別個の法律で、少くとも厚生省所管の法律でこういうような書き方をした法律がありますか。
○政府委員(高田浩運君) その人についてこういった名称を使ったのはちょっと記憶にありませんが、もしありましたらまた後日お答え申し上げます。
○高野一夫君 私の承知している限りにおいては、かつてこういう例はないと思う。従ってたとえば五年なら五年間は既得権として認める、五年以内において試験を受けたらば正式のものになると、こういうだけであって、私は簡単に条文に表わせるのじゃないかと思う。こういう暫定的なものを特例事項としてわざわざ名称を置くということが、後日解釈を複雑化する。そうして、お客さんからいえば、特例技工士は何であって歯科技工士は何であるかわかりませんよ、一々法律を見るわけじゃありませんから。それは歯科医師から見ればわかると思いますが……。この点十分一つ私は検討を加える必要がありはしないかと思うのです。
○長谷部廣子君 私も、今高野先生がおっしゃいましたように、特例技工士なんという特別な名称をつけるということはどうもおかしいと思うのですよ。そうして今、五年間のうちに試験が受からなかったらその資格は全然もうなくなるのだとおっしゃいましたね。私おかしいと思うのです。というのは、これは一つの例でございますけれども、私がこの間友人に久しぶりで会ったのです。そしたらその友人が急に美人になっていたわけなんです。それで目も変ってないし鼻も同じだし、どこが変っているのだろうかと思ってその顔をしみじみ見ましたら、入れ歯が変っていたわけなんです。で、私は技工士というものをこれは一つの芸術家だと思うのです。それで新しくこの過程を経てきた人が熟練してそこまで達成できたならば、これはほんとうに理想だと思いますけれども、現在までそういうことに専念している、そういう特殊の技術を持っている人が、まあ学科試験というのですか、それをとにかく五年間のうちに受けて通らなかって、そういう仕事ができなくなるということは、私は大きな矛盾だと考えるのですが、それをどういうふうにお思いになりますか。
○政府委員(高田浩運君) まあ本来この法律を作ります趣旨が、歯科技工の今お話しになりましたような重要性を十分考慮いたしまして、そういう重要な仕事をやり得る人間というものをやはりある程度以上の水準に置こうということが一つのねらいでございます。もしそれが必要がないということであるならば、これは何もこの法律を作る必要はなくして、現在通りにおのがじしやっておればそれでけっこうなわけでございます。この法律を作ります趣旨は、今申し上げたようなことでございます。従いまして、この法律を作ります――まあ卒然としてと申しますか、その人の一生の上から見れば、卒然としてこの法律が出てきたわけでございますが、そこで現在やっておった人たちとそれからこの法律を実施する関係を、つなぎをどうするかということで、まあ今の特例技工士の問題が出てきているわけでございますが、それで今やっておる人、すなわち何らかの形においてこの仕事に今携わっておる人たちを全部しからばそのまま認めるということになりますと、極端なものの言い方をしますると、それじゃ特別のこういう法律を作る必要はないじゃないかという言い方も、反論として出てくるだろうと思うのです。なるほど、現在この仕事に携わっておられる方の中には、今お話のようにりっぱなお仕事をなされる方もあろうし、そうでない方もおられるであろうと思いますし、これを今日ただいまこれを振り分けて、これから以上はよろしい、これから以下はだめだということになりますれば、その人の立場から見れば、あまりにも急な働きをするわけでございますから、その後の猶予期間というものは五年間置いて、それでその間に現在やっておる人たちで、適当な人から一つほんとうの免状を受けていただく、そういうふうな意味で、五年間というふうにいたしたいと思うのであります。
○委員長(小林英三君) 本案に対しまする本日の質疑はこの程度にいたしまして、次回風後に移したいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小林英三君) 御異議がないものと認めます。
次にお尋ねしたいと思うのですが、この免許の、従って試験も都道府県知事の施行にしたというのはどういう理由ですか。
それから私は関連して次回までに資料をお願いしておきたいと思いますが、その医療並びに衛生関係で、知事限りにおいて試験を執行しあるいは免許を与える種類の厚生省所管の業務、厚生大臣の免許、認許可による業務、二種類のものを資料として出していただきたい。これは資料として要求します。
それからこの歯科技工士の都道府県知事の免許にした理由。
○政府委員(高田浩運君) 端的に申し上げますと、医師とか歯科医師とか、そういうものにつきましては、これは厚生大臣、それからその補助者につきましては、一般的には大体都道府県知事の試験、免許というような考え方で、実は大よその見当としては進んでおるのでございます。ただ御承知のように、たとえば看護婦につきましては、看護婦は厚生大臣、准看護婦は都道府県知事、そういうふうに多少教育程度を加味して振り分けておるのでございますが、たとえばレントゲン技師等については厚生大臣というふうで、初めに申し上げました筋は必ずしも通ってはおりませんけれども、気持としては、そういうふうな振り分け方で、ただ、まあ現実の問題として補助者のうちでも教育程度の高いものは厚生大臣、そういうふうになっている次第でございます。この歯科技工士につきましては、広い意味の歯科診療の補助的な役割を果すわけでございますし、その他の今までの例とも勘案いたしまして、都道府県知事ということに考えた次第でございます。
○山下義信君 その知事の権限にするか、厚生大臣の権限にしておくか、従って試験も地方の試験にするか国家試験にしておくかということも、そのもののある程度格、つけになるのですね。今の御答弁は、例をあげてその区分をお示しになったのですが、ある意味においてはそのものの資格というか、軽重さというか、格づけになるような気がするのです。それですから、これはどういう基準で振り分けをするかということは非常に考えてやらなければならない。しかもこういう新しい制度ですね、全国的な制度、これを知事限りでいいかどうかということも、私はもっと理由をこの機会に聞かしてもらわなければならぬ。それですから歯科技工士、これをほんの入歯屋という、ちょっとした程度のところで知事が監督をしていればそれでいいのだというふうな程度にこれを扱うか、治療の補助をやらせるのではなくて、少くとも歯科治療の、診療の中では歯科技工というものは重要な部分を占めるのであって、その方面における非常な発展的な向上も期待するのだと、ただ単にその技工士とか技師とか、そういったようないわゆる入れ歯の職人であったというようなものをぐっと引き上げて、ぐっとわが国の歯科診療の上に積極的に筋を立てて積極的に発展させるのだという、重要視するのだということになれば、厚生大臣の権限も監督もよほど考えなければならない。それで一応知事の認可、知事の試験の程度においてこれをしたというのでありますが、これは必ずしも軽く見たというのではありますまい。先ほどこの法律の目的、期待を相当に当局は高く期待されておるのでありますから、軽く見たというのではないと思いますが、これは次回にまたあらためて伺う、それで法律の中を通して知事の認可にしてある、知事の試験にしてある、知事の監督にしてある、それをどの程度厚生大臣が監督することになっておりますか。この法律ではこれをちょっと見るともう知事限りで何でもかでも片づけさせるようにできておる。厚生大臣の監督というものが私が見ると少し薄いように思うのですが、さほど中央において厚生大臣が相当二重に監督していくという必要はない、大体知事にまかしておけばよろしいというお見込みであったのでしょうか、どうでしょうか。どの程度まで厚生大臣が監督しておることにこの法律はなっておるか、大づかみに御説明を願います。
○政府委員(高田浩運君) 具体的な厚生大臣の権限として規定しておりますのは、十四条におきます養成所の指定、養成所の指定というのは結局いい技工士が作られるかあるいはそうでないかという最もキー・ポイントになるわけでありますので、これは大臣の権限といたしております。それから次に試験につきまして、それらを出た人たちの試験につきましては十二条の三項におきまして、歯科医師試験審議会の委員の方々に指導をさせることができるということの権限を規定いたしておるのでございますが、従って試験のやり方等につきまして、実質上必要があれば関与するという建前になっております。従ってこれらの人たちの養成ないし教育及び試験、そういった最もキー・ポイントと見られるものにつきましては、厚生大臣の権限を規定しておりまして、その他の事柄につきましては、これはほかのこういったたぐいの法律につきましても同じでございますが、原則として、都道府県知事の権限といたしまして、都道府県知事に対しましては、厚生大臣の一般的な指導、監督の権限に基きまして、事実上の指導をやっていく、そういうような建前にいたしております。
○山下義信君 私が見ますと、今御指摘のようなところには関係があるようですが、全体を通じて厚生大臣が監督しているという非常に強い指導をしておるという面がないようで、これは何かお考えがあったのだろうと思うのですが、たとえばヒヤリングですね。ヒヤリングをやるようなことは、まあ最近新しい立法でこうして民主的な規定が出ておる。これは何をヒヤリングをするのかと思うて見ると、いろいろ処分をするときにやるのですね。これは大事なことですね。業務を停止させたり認可を取り消したりいろいろやる。このヒヤリングは知事限りということであります。言いかえると一審限りですね。この制度はこれで知事限りがやる処分の場合でも、二審制度で知事の決定に不服のある場合には厚生大臣に行く場合がある、そういう事例は他にあるのですね、御承知の通り。これは知事限りにしておる。こういうような重大なような場合に、訴えを一方的に知事だけで最後のなにをさせて、厚生大臣がもし全体の監督者なら厚生大臣まで異議の申し立てをさせることが――この歯科技工士に関する限りは、この法律は最終の監督者というのは厚生大臣だぞということがはっきりするのですが、このヒヤリング、大事な営業開始だとか、免許の取り消しだとかいうようなことが、知事限りで最終審判にさせてしまうということは、何か特別の理由でもあったんでしょうか。どういう意味で――こういう大事なことにでも厚生大臣が姿を現わしてないですね。ですからそういう意味で、私は大へんそういう点の、まあ厚生大臣といえば厚生省ですが、つまり本省のこれが力をこめて指導監督する形が法律の中に出ていないということを申し上げるのですが、何か知事の一審限りにした特別の理由がありますか。
○政府委員(高田浩運君) このいわゆる聴聞に関しまする規定は、御承知のように、ほかのこの種の法律に規定をしてございますが、大体それと同じような形になっておるのでございます。これは御承知のように、処分を受けた者のいわゆる権利の保護、被処分者の保護の規定でございますので、この規定によって手続を経て処分を受けて、なお不服がある場合におきましては、訴願による道もございますし、さらにそれによって不満足な場合には行政訴訟という道もございますので、まあ、これは、いわゆるお話のお言葉を借りれば、一審ということにしたわけでございます。
○山下義信君 先ほどお話が出ましたが、この歯科医師試験審議会の委員がですね、「試験の基準に関して、歯科技工士試験審議会を指導させることができる。」とあるのですね。これは、こういう立法例が他にありますか。つまりこれは、言葉をかえることですね、厚生大臣がさせるのでありますから、させるでしょうが、法律の上から見ると、歯科医師試験の試験委員は、結局このことに関する限りは、知事を指導することができるのですね。歯科技工士試験審議会というのは、知事の監督下に属しておるのでありますから、知事を指導することができる、これは、こういう立法例が他にあることになっておりますか。
○政府委員(高田浩運君) これは、保健婦助産婦看護婦法におきまする准看護婦の試験に関連をして、これと同じような規定がございます。
○山下義信君 先ほどお話のありました指示書ですね、これは加藤委員の御質問のときには、この指示書というのは、歯科医師に発行義務があるような質疑応答がされておりましたが、法律の上ではそういう義務が見当らぬようでありますね、これは発行義務がありますか。法律の上ではこれは義務づけられていないんでしょうか。これはどうなんですか。
○政府委員(高田浩運君) 発行の義務は、お話のようにございません。ただこれがなければ、いわゆる技工の施行ができないわけでございますから、その意味から、実質上技工を頼もうとすれば、義務づけられておると見て差しつかえないと思います。
○山下義信君 もう一つ伺っておきますのは、経過規定における特例技工士ですね、経過規定における特例技工士と本文における歯科技工士とのこの二者の扱いの上に非常に大きな何か差があるところがあったら教えておいて下さい。これは法律を読んでもわからぬ、全部同じですか。経過規定で、名称を特例技工士というだけで、何もほかに変りはないのか、多少歯科技工士、特例技工士について扱いに差があるのか、教えていただきたい。
○政府委員(高田浩運君) 実質上は特別の差はございません。ただ法律上の、まあ、立法技術として、大へんごらんになりにくいような、非常にめんどくさい規定になりましたけれども、さよう御了承願います。
○谷口弥三郎君 私も一言お伺いしたいと思いますが、ただいま特例技工士という話が出ましたが、特例技工所というのは、今現在、先刻来のお話によりますと六千ばかり技工士がおる。その方々を、この法が適用されたらさっそく特例技工士という名前で三十五年まで、いわゆる技工の仕事ができるというようなふうにやられる気持ですか。
○高野一夫君 関連して。この付則の中に、今の谷口委員のお話のあったこの特例技工士なんかは、従来の既得権を認めて歯科技工士としての仕事を与えよう、させよう、こういうことだろうと思います。ところが、これはいつの日にかなくなるべき性質のものだと思うのでありますが、こういう場合にわざわざ特例技工士なるそういう名称を置かなければならぬ理由がどこにあるのですか。ただ従来こういうものは既得権として認めて、歯科技工士として認めるというのなら、従来にもいろいろな法律で付則に経過規定として置いてあるように思うが、わざわざここに特例技工士なる特殊の名称を置かなければならないということはどういうことでございますか。それとあわせて御答弁をいただきたい。
○政府委員(高田浩運君) 谷口先生の御質問の点につきまして、お説の通りでございます。それから高野先生のお話のように特例技工士という特別の名前をつける必要は、これは好ましくないわけでございますけれども、ただ法律を書く上からいたしまして、こういうことを使いませんというと、非常にさらに繁雑になりますので、便宜法文をある程度簡便に書くための言葉としてこういう言葉を使ったわけでございます。
○谷口弥三郎君 ただいまの、現在技工士としてやっておられる方を特例技工士というという、私はよくわかりますが、すでに何年か技工士としてやっておったものは既得権としてこの際技工士にするというお気持は全然ないのでございますか。
○政府委員(高田浩運君) これは、谷口先生が関係をいたされましたエキス線の関係においても同じでございますけれども、従来から事実上やっておったというだけで、そのまま認めるということは、この法律制定の趣旨からいたしましてもいかがかと考えますので、やはり試験という過程を経てそこで分けるということが必要だろうと思います。
○谷口弥三郎君 まあ、診療エキス線技師あたりの万の試験を受けますときと同様に、一応試験をするというお話でございますが、この試験は、これによりますと年に一回以上おやりになるというお話でございますが、これは各府県に同様にずっと一回ずつおやりになるのですか。それともあるところは二回とか三回とかおやりになりますような場合もあるのでございましょうか。
○政府委員(高田浩運君) 大体まあこの種の試験の通例といたしまして、法律上の条文に一年に一回以上という規定になっておりますが、実際上の取り計らいとしては、春、秋二回というふうに常識的に考えております。
○高野一夫君 この特例技工士は試験はないのでしょう。
○政府委員(高田浩運君) 試験を受けて、それで通らなければ五年後には仕事ができない、そういう意味での試験はございます。しかし五年間の範囲内であればこれは試験をなしに、試験に通らなくてもやれるのでございます。
○高野一夫君 それならますます特例技工士なんという特殊な名称を置く必要を認めない。五年間の間は既得権として認める、そうしてできる仕事というものは、特例技工士であろうと歯科技工士であろうと、内容においてはごうも変りない。しかも五年の間に試験を受ければこれは歯科技工士になる。これは一体何の区別がありますか。わざわざこういう名称を置くこと自身がかえって非常に複雑化する、こういうふうに私は思いますが。
○政府委員(高田浩運君) お話のように、こういういかにも特別といいますか、別のもののようなまあ誤解を起させるおそれもなきにしもあらずと思われます名称を用いることは、私どもも実はいかがかと思っておりますが、ただ法律を書きます便宜と申しますか、これを、こういう特別の簡単な五字の言葉を使いませんと非常にたくさんの言葉を使わなくちゃなりませんし、その結果、全体として非常にわかりにくい法文になるのでございますので、条文整理上こういった格好にしただけでございます。
○高野一夫君 もう一つ伺いますが、それじゃ別個の法律で、少くとも厚生省所管の法律でこういうような書き方をした法律がありますか。
○政府委員(高田浩運君) その人についてこういった名称を使ったのはちょっと記憶にありませんが、もしありましたらまた後日お答え申し上げます。
○高野一夫君 私の承知している限りにおいては、かつてこういう例はないと思う。従ってたとえば五年なら五年間は既得権として認める、五年以内において試験を受けたらば正式のものになると、こういうだけであって、私は簡単に条文に表わせるのじゃないかと思う。こういう暫定的なものを特例事項としてわざわざ名称を置くということが、後日解釈を複雑化する。そうして、お客さんからいえば、特例技工士は何であって歯科技工士は何であるかわかりませんよ、一々法律を見るわけじゃありませんから。それは歯科医師から見ればわかると思いますが……。この点十分一つ私は検討を加える必要がありはしないかと思うのです。
○長谷部廣子君 私も、今高野先生がおっしゃいましたように、特例技工士なんという特別な名称をつけるということはどうもおかしいと思うのですよ。そうして今、五年間のうちに試験が受からなかったらその資格は全然もうなくなるのだとおっしゃいましたね。私おかしいと思うのです。というのは、これは一つの例でございますけれども、私がこの間友人に久しぶりで会ったのです。そしたらその友人が急に美人になっていたわけなんです。それで目も変ってないし鼻も同じだし、どこが変っているのだろうかと思ってその顔をしみじみ見ましたら、入れ歯が変っていたわけなんです。で、私は技工士というものをこれは一つの芸術家だと思うのです。それで新しくこの過程を経てきた人が熟練してそこまで達成できたならば、これはほんとうに理想だと思いますけれども、現在までそういうことに専念している、そういう特殊の技術を持っている人が、まあ学科試験というのですか、それをとにかく五年間のうちに受けて通らなかって、そういう仕事ができなくなるということは、私は大きな矛盾だと考えるのですが、それをどういうふうにお思いになりますか。
○政府委員(高田浩運君) まあ本来この法律を作ります趣旨が、歯科技工の今お話しになりましたような重要性を十分考慮いたしまして、そういう重要な仕事をやり得る人間というものをやはりある程度以上の水準に置こうということが一つのねらいでございます。もしそれが必要がないということであるならば、これは何もこの法律を作る必要はなくして、現在通りにおのがじしやっておればそれでけっこうなわけでございます。この法律を作ります趣旨は、今申し上げたようなことでございます。従いまして、この法律を作ります――まあ卒然としてと申しますか、その人の一生の上から見れば、卒然としてこの法律が出てきたわけでございますが、そこで現在やっておった人たちとそれからこの法律を実施する関係を、つなぎをどうするかということで、まあ今の特例技工士の問題が出てきているわけでございますが、それで今やっておる人、すなわち何らかの形においてこの仕事に今携わっておる人たちを全部しからばそのまま認めるということになりますと、極端なものの言い方をしますると、それじゃ特別のこういう法律を作る必要はないじゃないかという言い方も、反論として出てくるだろうと思うのです。なるほど、現在この仕事に携わっておられる方の中には、今お話のようにりっぱなお仕事をなされる方もあろうし、そうでない方もおられるであろうと思いますし、これを今日ただいまこれを振り分けて、これから以上はよろしい、これから以下はだめだということになりますれば、その人の立場から見れば、あまりにも急な働きをするわけでございますから、その後の猶予期間というものは五年間置いて、それでその間に現在やっておる人たちで、適当な人から一つほんとうの免状を受けていただく、そういうふうな意味で、五年間というふうにいたしたいと思うのであります。
○委員長(小林英三君) 本案に対しまする本日の質疑はこの程度にいたしまして、次回風後に移したいと思いますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(小林英三君) 御異議がないものと認めます。