患者が気付かなければ、医療は立ち直れない, 2010/2/6
By 歯職人
バランスの取れた「医療崩壊」関連現場報告本である。
前半の第1章から第6章で、現場の研修医と看護職の勤務実態を彼らの日誌を用いて描き出し、他の先進国との比較から医療を経済の側面、国の医療への富の投入の過少が生み出した歪な日本の医療提供体制を分かりやすく解説する。
特に「第7章 国民の権利意識の向上-医療訴訟とクレーム」以降の後半が良い。第7章では民事訴訟で医療鑑定人を務めた経験を元に、患者側の医療に求めるものと、医療・医学の現実の乖離を解説する。
「第8章 国民が求めるほんとうの医療-心身医学と時間と経済」では、従来の臓器別の医学・医学教育では把握できない、患者の苦痛・患者の訴えに寄り添う心身医学の可能性と必要性を訴える。また、地域の保健所・保健センターの新たな役割を探る。
「第9章 住民の健康を重視する自治体、しない自治体-医療自治の実現わ遠野方式に学ぶ」では、岩手県藤沢町の藤沢町町民病院の佐藤元美院長を中心とする医療・介護・福祉・保健を地域の工夫と知恵でミックスした新たな動きを伝える。
「第10章 一流の条件と三流になった日本の医療-いったいどうする?」では、「一流の条件」として次の8条件を挙げる。
(1)個人本位の医療を実現し、国民の健康増進、生活の質の向上に寄与すること
(2)受けた医療の質が高いこと
(3)提供す医療が国際的に見ても質が保たれていること
(4)医療が福祉政策と密接な連携がとれていること
(5)医療現場の情報が開かれていること
(6)個人情報が保たれていること
(7)誰もが容易に医療にアクセスでき、年齢や地域などで医療サービスの差別化が生じないこと
(8)医療や福祉サービスが合理的に評価され、妥当な代価が支払われていること
とまとめている。
健康な時、医療福祉に関心を向ける人は少ない。しかし、人は必ず向き合うときが来る。健康な時にこそ向き合いたい一冊です。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4569776795/ref=cm_cr_mts_prod_img
サンリュウニナッタニホンノイリョウ
三流になった日本の医療
若倉 雅登【著】
PHP研究所 (2010/01/11 出版)
253p / 19cm / B6判
ISBN: 9784569776798
NDC分類: 498.021
価格: ¥1,680 (税込)
詳細
医師不足、看護師たちのバーンアウト、クレームの山。
荒廃した医療現場が上げる叫び声が聞こえないのか―。
第1章 日本の医療費は安すぎる
第2章 医療費三四兆円は国際的に高すぎるのか
第3章 医者と看護師の涙ぐましい献身
第4章 若者が産婦人科医、小児科医になりたがらない理由
第5章 医師不足は産婦人科、小児科ばかりではない
第6章 現場で見る日本の医療の現状
第7章 国民の権利意識の向上
第8章 国民が求めるほんとうの医療
第9章 住民の健康を重視する自治体、しない自治体
第10章 一流の条件と三流になった日本の医療
このままだと日本の医療現場は確実に崩壊する。
医師不足、看護師のバーンアウト、クレームの山……。荒廃した医療現場が上げる叫び声が聞こえないのか!?
海外の病院で盲腸炎を手術したらいくらかかるか? アメリカなら2泊3日で約200万円、ヨーロッパなら同じく約100万円。日本だと1週間の入院で約30万円、自己負担3割なら10万円弱だ。これは日本の医療費が「公定価格」で、国の医療予算を節約するために世界の常識から外れた不当に安い値段で現場に高度医療を強要しているせいだ。
▼その結果、何が起こったか。日本の大病院のスタッフはアメリカの10分の1、相次ぐ病院の倒産・閉鎖、医療事故の多発、医師の自殺、看護師の「燃え尽き」症候群、産婦人科医・小児科医の激減、妊婦のたらい回し、等々。日本はすでに国際的に見て「医療三流国」なのだ。
▼本書は、先進国として恥かしい、たった9兆円の予算しか負担しない政府の不勉強・不見識を、医療現場の怒りを代表して告発した問題作。著者は創立125年の伝統を誇る日本初の眼科専門病院の院長であり、日本屈指の「神の手」をもつ眼科専門医。
●第一章 日本の医療費は安すぎる
●第二章 医療費三四兆円は国際的に高すぎるのか
●第三章 医者と看護師の涙ぐましい献身
●第四章 若者が産婦人科医、小児科医になりたがらない理由
●第五章 医師不足は産婦人科、小児科ばかりではない
●第六章 現場で見る日本の医療の現状
●第七章 国民の権利意識の向上
●第八章 国民が求めるほんとうの医療
●第九章 住民の健康を重視する自治体、しない自治体
●第十章 一流の条件と三流になった日本の医療
●あとがき
著者紹介
若倉雅登[ワカクラマサト]
医療法人社団済安堂井上眼科病院院長。昭和24年(1949)東京都生まれ。55年(1980)北里大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学医学部助教授(眼科学担当)を経て、平成14年(2002)より現職。東京大学、北里大学非常勤講師。日本神経眼科学会理事長、アジア神経眼科学会会長、日本眼科学会評議員、メンタルケア協会評議員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
By 歯職人
バランスの取れた「医療崩壊」関連現場報告本である。
前半の第1章から第6章で、現場の研修医と看護職の勤務実態を彼らの日誌を用いて描き出し、他の先進国との比較から医療を経済の側面、国の医療への富の投入の過少が生み出した歪な日本の医療提供体制を分かりやすく解説する。
特に「第7章 国民の権利意識の向上-医療訴訟とクレーム」以降の後半が良い。第7章では民事訴訟で医療鑑定人を務めた経験を元に、患者側の医療に求めるものと、医療・医学の現実の乖離を解説する。
「第8章 国民が求めるほんとうの医療-心身医学と時間と経済」では、従来の臓器別の医学・医学教育では把握できない、患者の苦痛・患者の訴えに寄り添う心身医学の可能性と必要性を訴える。また、地域の保健所・保健センターの新たな役割を探る。
「第9章 住民の健康を重視する自治体、しない自治体-医療自治の実現わ遠野方式に学ぶ」では、岩手県藤沢町の藤沢町町民病院の佐藤元美院長を中心とする医療・介護・福祉・保健を地域の工夫と知恵でミックスした新たな動きを伝える。
「第10章 一流の条件と三流になった日本の医療-いったいどうする?」では、「一流の条件」として次の8条件を挙げる。
(1)個人本位の医療を実現し、国民の健康増進、生活の質の向上に寄与すること
(2)受けた医療の質が高いこと
(3)提供す医療が国際的に見ても質が保たれていること
(4)医療が福祉政策と密接な連携がとれていること
(5)医療現場の情報が開かれていること
(6)個人情報が保たれていること
(7)誰もが容易に医療にアクセスでき、年齢や地域などで医療サービスの差別化が生じないこと
(8)医療や福祉サービスが合理的に評価され、妥当な代価が支払われていること
とまとめている。
健康な時、医療福祉に関心を向ける人は少ない。しかし、人は必ず向き合うときが来る。健康な時にこそ向き合いたい一冊です。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4569776795/ref=cm_cr_mts_prod_img
サンリュウニナッタニホンノイリョウ
三流になった日本の医療
若倉 雅登【著】
PHP研究所 (2010/01/11 出版)
253p / 19cm / B6判
ISBN: 9784569776798
NDC分類: 498.021
価格: ¥1,680 (税込)
詳細
医師不足、看護師たちのバーンアウト、クレームの山。
荒廃した医療現場が上げる叫び声が聞こえないのか―。
第1章 日本の医療費は安すぎる
第2章 医療費三四兆円は国際的に高すぎるのか
第3章 医者と看護師の涙ぐましい献身
第4章 若者が産婦人科医、小児科医になりたがらない理由
第5章 医師不足は産婦人科、小児科ばかりではない
第6章 現場で見る日本の医療の現状
第7章 国民の権利意識の向上
第8章 国民が求めるほんとうの医療
第9章 住民の健康を重視する自治体、しない自治体
第10章 一流の条件と三流になった日本の医療
このままだと日本の医療現場は確実に崩壊する。
医師不足、看護師のバーンアウト、クレームの山……。荒廃した医療現場が上げる叫び声が聞こえないのか!?
海外の病院で盲腸炎を手術したらいくらかかるか? アメリカなら2泊3日で約200万円、ヨーロッパなら同じく約100万円。日本だと1週間の入院で約30万円、自己負担3割なら10万円弱だ。これは日本の医療費が「公定価格」で、国の医療予算を節約するために世界の常識から外れた不当に安い値段で現場に高度医療を強要しているせいだ。
▼その結果、何が起こったか。日本の大病院のスタッフはアメリカの10分の1、相次ぐ病院の倒産・閉鎖、医療事故の多発、医師の自殺、看護師の「燃え尽き」症候群、産婦人科医・小児科医の激減、妊婦のたらい回し、等々。日本はすでに国際的に見て「医療三流国」なのだ。
▼本書は、先進国として恥かしい、たった9兆円の予算しか負担しない政府の不勉強・不見識を、医療現場の怒りを代表して告発した問題作。著者は創立125年の伝統を誇る日本初の眼科専門病院の院長であり、日本屈指の「神の手」をもつ眼科専門医。
●第一章 日本の医療費は安すぎる
●第二章 医療費三四兆円は国際的に高すぎるのか
●第三章 医者と看護師の涙ぐましい献身
●第四章 若者が産婦人科医、小児科医になりたがらない理由
●第五章 医師不足は産婦人科、小児科ばかりではない
●第六章 現場で見る日本の医療の現状
●第七章 国民の権利意識の向上
●第八章 国民が求めるほんとうの医療
●第九章 住民の健康を重視する自治体、しない自治体
●第十章 一流の条件と三流になった日本の医療
●あとがき
著者紹介
若倉雅登[ワカクラマサト]
医療法人社団済安堂井上眼科病院院長。昭和24年(1949)東京都生まれ。55年(1980)北里大学大学院医学研究科博士課程修了、医学博士。グラスゴー大学シニア研究員、北里大学医学部助教授(眼科学担当)を経て、平成14年(2002)より現職。東京大学、北里大学非常勤講師。日本神経眼科学会理事長、アジア神経眼科学会会長、日本眼科学会評議員、メンタルケア協会評議員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)