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歯科技工士・岩澤 毅

飯島勝矢 より早期からの包括的虚弱予防・サルコペニア予防戦略:高齢者の『食』の重要性

2015年04月05日 | 歯学系学会・日本歯科医療管理学会雑誌
第17回日本在宅医学会大会
日本老年医学会合同シンポジウム
「フレイル(虚弱)およびサルコペニアの概念とその予防のために」

飯島勝矢 東京大学高齢社会総合研究機構准教授

より早期からの包括的虚弱予防・サルコペニア予防戦略:高齢者の『食』の重要性

講演概要

今後の超高齢化を考える上で虚弱期における質の高いケアも必要ではあるが、同時にいかに自立したままで維持し歳を重ねることが出来るかという予防の視点も重要である。そこには低栄養を背景とし、「虚弱(フレイル:Frailty)」及びその根底をなす「加齢性筋肉減弱症(サルコペニア)」という大きな問題があり、なかでも高齢者における食の安定性を改めて再考する必要がある。
我々は高齢者における『食力(しょくりき)』というものに改めて焦点を合わせ、食環境の悪化から始まる筋肉減少を経て最終的に生活機能障害に至る構造を新たな切り口で概念の再構築をしている。千葉県柏市における大規模健康調査(柏スタディー:縦断追跡コホート研究)の結果から、特に早期の所見として「口腔の虚弱(オーラル・フレイル)」とも言うべき歯科口腔機能の軽微な機能低下や食の偏りも認められ、高齢者の食力を維持~向上させるためには、歯科口腔分野の「総合的な機能」に対して今まで以上にこだわった形で医科・歯科・栄養の十分なコラボレーションが強く求められる。さらに、もっと早期には社会性の虚弱(social frailty)および精神心理の虚弱(mental frailty)の要素も大きく影響していた。よって、包括的な幅広い評価指標の中から代表的な簡易指標(市民目線での早期介入ポイント)を見出し、また高齢期において従来のメタボ概念(カロリー制限)から上手く切り替えさせ、「社会性・栄養面(食と歯科口腔)・運動」という3つの側面を状態が顕在化する前の早期の段階から介入すべきである。そこには、我々専門職だけの臨床診療で乗り越えらえるものではなく、コミュニティー(まさに生活の場に近いところ)で健康づくり地域リーダーによる早期からの虚弱予防活動も必要不可欠である。誰しもが避けられない虚弱フローをイメージする中で、国民自身が「しっかり噛んで、しっかり食べ、しっかり動く、そして社会参加を!」という基本的な概念をより早期から再認識し、結果的に意識変容~行動変容につなげられるのかが鍵となる。そこには専門職および市民との協働による大きなムーブメントが必要であり、新旧のエビデンスを十分踏まえた上での包括的アプローチをいかに有効的に持続可能な形で達成するのかが重要な課題である。また、それを達成することが最終的には我々の追い求める「Aging in Place」につながると確信している。

http://www.mhcclinic.jp/zt/20150425genko/syoroku-20150425B1-5.pdf

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