歯科技工管理学研究

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歯科技工士・岩澤 毅

総合/歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究

2009年03月31日 | 基本・参考
文献番号 200937027B
研究課題 歯科補綴物の多国間流通に関する調査研究
研究年度 平成21(2009)年度
報告書区分 総合
主任研究者(所属機関) 宮崎 秀夫(国立大学法人新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
分担研究者(所属機関) 佐藤 博信(福岡歯科大学 歯学部)、末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)、吉成 正雄(東京歯科大学 口腔科学研究センター)、阿部 智(神奈川歯科大学 歯学部)
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
開始年度 平成20(2008)年度
終了予定年度 平成21(2009)年度
研究費
概要版 研究目的:
日本では受注側と供給側の視点から歯科補綴物の海外への発注の実態を明らかにすること,世界に流通する歯科補綴物の安全性および諸外国の歯科補綴物の安全性に対する対応を検証すること。
研究方法:
日本歯科医師会会員 61,460名の5 %(3,073名)を無作為抽出し,アンケート形式による往復郵送調査法を行った。また,世界の4地域から陶材焼付鋳造冠を計64個収集し,米国歯科医師会(ADA)の調査で実施されなかった陶材焼付鋳造冠の金属部分を対象として電子線マイクロアナライザー(EPMA)および誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)により成分分析を行った。さらに,歯科補綴物の安全性に関する米国の関係諸機関の動向について一次資料を用いて検証した。
結果と考察:
海外に補綴物製作を発注した経験のある日本の歯科医師の割合は7.4 %と低く,毎月の発注件数10件未満が96.0%であり,91.3%が外注全体に占める割合5%未満であった。さらに,83.8%が今後発注する予定がないと回答した。発注先は中国が最も多く,次いで,アメリカ,EU諸国であり,歯科補綴物の種類ではノンクラスプ義歯が多かった。EPMA 分析の結果,カドミウム(Cd),鉛(Pb)の含有量は全ての試料でEPMAの検出限界0.1質量%未満であった。また,ICP 分析では,Be,CdおよびPbの含有量はすべての試料でICPの検出限界の100 ppb未満であった。米国での歯科補綴物の安全性に関する見解では,米国歯科医師会(ADA)が行った陶材焼付鋳造冠の陶材中の鉛濃度測定結果は平均46 ppmと極めて低い値であった。また,溶出量測定の方が重要であるという視点から,口腔内よりも厳しい環境下(4 % 氷酢酸,80 ℃,16時間)で溶出試験を行った結果,鉛溶出の確認はできなかった。さらに,試験用に高濃度(500 ppm)の鉛を加えたサンプルでも鉛は全く検出されなかった。これらに基づきADAは,患者への健康被害はないと2009年3月に米国疾病予防管理センター(CDC)および米国食品医薬品局(FDA)へ回答した。
結論:
海外に補綴物製作を発注した経験のある日本の歯科医師の割合は7.4 %であり,ノンクラスプ義歯が多かった。世界4地域から採取した陶材焼付鋳造冠の金属部分にBe,Cd およびPbは含有しないと判断された。2008年にADAが測定した陶材焼付鋳造冠の陶材部分の鉛の濃度は極めて低く,口腔内よりも厳しい環境下での溶出試験では鉛の溶出は確認されず,高濃度の鉛を加えたサンプルでも鉛は全く検出されなかった。ADAはこれらの結果を2009年3月にCDCとFDAに報告した。
公開日 2010年05月30日
更新日 -
研究報告書
ファイルリスト
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