126 衆 予算委員会 16 1993/03/01
○辻(第)委員 八十歳で自分の歯が二十本ということであります。大変結構な話でありますが、しかし、今の厚生省の歯科行政の実態というのはどうなんでしょうか。昨年のNHKスペシャル以後、衆参両院で各党の議員が歯科問題を取り上げておられます。我が党も昨年四月七日、参議院の厚生委員会で沓脱タケ子議員は義歯製作料を二倍に引き上げるべきだ、このように求めました。また五月二十日の衆議院厚生委員会で児玉健次議員が歯科補綴関係の点数の二倍引き上げを求めたところであります。これらに対しまして厚生省の黒木政府委員は、「私どもとしては、歯科補綴について非常に困難な技術を伴う、手間暇のかかる技術だというのは十分承知をいたしておりますので、その辺は今後検討すべき問題だというのは承知をいたしております。」このように答弁をされた。また当時の山下厚生大臣は、「十分真剣に検討すべき問題ではあります。」このように答弁をされておるわけであります。
私は奈良市内のある歯科医院でいろいろお話を聞いてきたわけでありますが、実際の診療の中から総入れ歯の診療報酬を見てまいりますと、一例は五千八百二十七点、一例は五千四百三十二点でございました。この診療所の一時間の採算ベースは一万四千五百円であるわけであります。日本歯科医師会の資料などによりますと、きちっといい入れ歯をつくるというためには五時間ほど歯科医の先生がかかる、こういうふうにも言われているわけであります。もし五時間ということにいたしますと、タイムコストにいたしますと先ほどの例では一万一千七百円から一万八百円ということになるわけです。こうなりますと、採算ベースの一万四千五百円よりは大幅に少ないということですね。このままでいきますと大変な赤字になるわけであります。そういうことでありますので、こういうことではもう経営が成り立たぬわけでありますから、そこで時間を短くする、あるいは手間暇を省く、こういうこともやられるのですね。それから自費の診療で補う、あるいは人を減らす、そういうことで補う。いろいろなことで経営努力がやられているということであります。
それで、そういう状況でありますが、昨年四月、歯科の診療報酬が二・七%引き上げられたのですが、一九九一年六月の中医協の医療経済実態調査の収支差額が、八九年六月に比べまして三万四千円下がっている、前回比八〇・五%、このように二〇%近くも落ち込んでいるという状況の中で、歯科の経営困難というのは大変な状態ではないかと思うわけでございます。この十年間で保険診療収入は約三%しかふえていない、医業費用は三五%ふえている、こういう状況にあるわけであります。
それで、先ほど申しましたような状況、またもう一例申しますと、入れ歯の装着をしてから後、調整、これが非常に大事な仕事だと思うのですね。私も入れ歯があるわけでありますけれども、何度か調整をしていただかないとぴったりこないということなんですね。殊に総入れ歯なんというのは非常に難しいことで、調整が必要だと思うのですが、十回調整をしてようやく使いよい入れ歯になったという方もあるわけでありまして、どうも平均しますと五回から七回やらないといい状況にならないというふうに聞いておるわけでございます。
ところが、今の診療報酬では、政府は何回調整しても最初の月の百五十点の有床義歯指導料、簡単なのは六十点だそうでありますが、そういうことになっております。それで、この調整ですね、一回に大体十五分から三十分というふうに聞いております。例えば五回調整をして、最初は、一回はその百五十点に含まれる。あとの四回というのは、結局、再診料の二百七十円、二十七点しかつ
かぬのですね。四回しても千八十円ですか、たしかそういうことですね。ですから、千五百円と千八十円、五回調整してもそれぐらいしかならぬのですね。四回調整しても、一回が十五分といたしますと、それで一時間かかるのですね。先ほど申しましたように、その診療所の一時間当たりの採算点というのは一万四千五百円ということになるわけでありますから、そうなりますと、一時間やっても二千円少ししかならない、二千六百円近くしかならないということですね。これは余りにも技術料の評価がされていないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。大臣、この点についてどのようにお考えになりますか。
○古川政府委員 歯科の診療報酬につきましては、従来から技術料重視の考え方に立ちまして、診療報酬の改定の都度、義歯に関連する点数を含めまして、技術料の引き上げ等が行われてきたところでございます。ちなみに申し上げますと、義歯の点数で申しますと、昭和六十一年から平成四年までには二七%の引き上げを行っている、こういうふうな実情で、私ども、診療報酬改定の都度、そういったことで努力をしてきたところでございます。
お尋ねの義歯の調整の問題でございますけれども、有床義歯を新たに製作した後に、一カ月以内に義歯の調整を行った場合には、その月におきまして有床義歯指導料、これは先ほど先生お話しの百五十点として評価される取り扱いとなっているわけでございますが、これは、新しく製作されました義歯については、通常、一カ月以内でおおむね二、三回で調整されるものであるといういわば歯科医学の常識といいましょうか、そういう趣旨で設定をされている、こういうようなことでございます。一カ月以上連続して調整を行った場合には、この点に着目した特別の点数設定は行っておらないわけでございますが、御指摘のように、再診時基本診療料に包括して評価される、こういう取り扱いでございます。
なお、一カ月を経過した後におきまして、一たん治療が完了した後に再び患者が義歯に起因する症状を訴えて来院され、必要な指導等が行われた場合には、その指導等から一カ月以内に限りまして有床義歯指導料六十点が一回算定できる、こういう趣旨でございます。
以上のように、私どもとしては、そういった実態を踏まえまして、保険医療において良質な義歯が製作できるような適切な評価が行われているものと考えておりまして、今後とも適切に対応してまいりたい、かように考えております。
○辻(第)委員 大臣にお尋ねいたします。
先ほど申しましたように、歯科の技術料というのは非常に低いのですね。入れ歯、殊に総入れ歯なんかをやりますと、それはいわゆる赤字といいましょうか、採算割れになるわけであります。そういう状況の中で、保険ではよい入れ歯ができないという状況もあると思うわけであります。いかにタイムコストが保障されるのか、また安心していわゆる手間暇かけるといいましょうか、本当にいいものをどうつくっていくのかということが極めて大事だと思うのですが、これを阻んでいるのが低い技術料であると思います。当面、義歯作製料など補綴関係の診療報酬を二倍に引き上げていただきたい、こう望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
○丹羽国務大臣 先ほどから辻委員御指摘の総入れ歯の点数でございますが、五千百七十点ということであります。これがいかにも低過ぎるというような御指摘があることも十分に私は認識をいたしております。その一方で、いわゆる点数そのものを引き上げるよりは保険の保険外負担を拡大してほしい、こういうような意見も、いわゆる主張もございまして、その辺のところも十分にこれから勘案していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
いずれにいたしましても、良質な義歯が製作できるようないわゆる技術料重視、これからこういう考え方に立ってこういう問題の解決に取り組んでいきたい、このように考えているような次第でございます。
○辻(第)委員 本当に公的保険、保険でよい入れ歯ができるように技術料を引き上げていただきたい、重ねて望むものであります。
次に、歯科技工士の問題でお尋ねをしたいと思います。
歯科技工士さんは今全国で何人おられるのか、また、実際業務についておられるのは何人か、そのうち病院や医院に勤務している人が何人、歯科技工所の方が何人おられるのか、技工所の業態はどのようなのか、その点についてお尋ねをいたします。
○寺松政府委員 今の先生の御質問にお答えいたしますが、今まで歯科技工士の免許を発行しておるというのは六万七千ぐらいなんでございますけれども、実際就業しているのはどのようなことかというようなお話でございます。これは、歯科技工士の数は二年ごとにとっておりますので、一番新しい数字が平成二年の末でございます。それによりますと、全国で三万二千四百三十三人が就業しておるということになっておりまして、その約半数の一万四千八百六十二人が技工所に働いていらっしゃる、それからまた一万六千八十五人が病院及び診療所に勤務しておる、こういうことでございます。今歯科技工士の数はそのようなわけでございます。
○辻(第)委員 厚生大臣にお尋ねをいたしますが、技工士さんというのは、昭和五十七年からですか、いわゆる大臣免許になりましたね、歯科技工士さん。そして今、歯科医療というのは、歯科医の先生と歯科技工士さんや歯科衛生士さんなどとのチーム医療ということだと思いますね。そういう中で、私は、歯科技工士さんというのは極めて重要な役割を担っていただいていると思うのですが、この歯科技工士さんの役割、位置づけ、それからその労働条件や収入はどのような状況になっているのか、大臣の認識を伺いたいと思います。
○丹羽国務大臣 先日、実は歯科技工士につきまして有識者懇談会から私の方に御提言をちょうだいいたしました。その中で、やはり今先生が御指摘のような、経済的な基盤の確立のために幾つか御提言がなされております。例えば委託技工料の問題、これはまさに歯科医師との問題でございますけれども、この委託技工料の明確化であるとか、それから養成所の定員の削減の問題、こういった問題について提言があったわけでございます。
いずれにいたしましても、歯科技工士というのは一人の小規模な方が多いわけでございますし、しかしそういう中において大変歯科技工士の果たす役割は重要でございますので、十分にこれからこういった問題について前向きに対処していきたい、このように考えております。
○辻(第)委員 歯科技工士さんの置かれている現状、大変深刻なものがあると思います。
私どもの奈良県の技工士さん、三十五歳の方が奥さんと二人の子供さんを残して自殺をされるというそんな痛ましい出来事もありました。この方はその前日に、とてもやっていけないと友人に電話をされたようであります。補綴の技術料の低さからくる技工料の低さですね。長時間労働、それから低い収入、先行きの不安。そういうことで、技工士としての生きる希望を奪い去った結果だと思うのですが、東京のある技工士さんの試算によりますと、総入れ歯一床の技工料金は、総入れ歯の製作料は一万四千円、その七〇%が支払われているとしても九千八百円、経費は三千五百円かかるわけです。そうなりますと六千三百円ということになります。これで大体三時間から四時間かかるというのですね。そうなりますと、時給に直しますと、大体二千円から千五百円ということになりますね。そういう中で非常に長時間の労働、しかも低い収入ということです。時間で申しますと、一般の労働者が一年間二千五十二時間という数字が出ておるのですが、それに対して平均二千六百三十時間、中には三千時間とかもう甚だしい人には四千時間というようなお話も聞くわけで
す。平均いたしますと、平均労働時間は一日十・三時間ですね。収入は大体平均の人の七割ぐらいですね。こういう中で八割の方が転職をしたい、このような思いを持っておられるということであります。
読売新聞で兵庫県の方が投書をされた中で、「息子は技工所につとめているが、朝八時半に出勤し帰宅は午前一時半か二時、そのうえ休日出勤もしている。薄給で労働条件が厳しいことから仲間が転職し残業がますますふえており過労死が心配」、このような投書もございました。
私も地元の技工士さんの方何人かとお会いをしてお話を聞いたわけでありますけれども、本当に長時間の労働ですね。もう徹夜というようなこともそれはいろいろな状況の中であるわけでございます。また、ある大阪へお勤めになっていらっしゃる方は、もう毎晩、大阪へ勤めて奈良へ帰ってこられるのですが、終電車になるぐらい仕事をされて、これも三十五歳ぐらいの方ですが、本給が二十五万で残業が七万ぐらい、一カ月三十二万。これは歯科医へ勤められている方ですが、ボーナスが五十万ぐらいということですね。合わせますと四百万ちょっと超えるぐらいですね。本当にもう現在の状況、時短が言われている状況の中でこんなに長時間の仕事をされて、しかも低い収入という状況であります。
そういう中で、技工士学校の入学定員が充足をしないとか卒業しても一年後には半数が転職をされる。十年かからないと本当の一人前の技工士さんにはなれないというふうに聞いているわけでありますが、どんどんと何年かたった若い方で宝石の技工士の方へ転職をされる、こういうお話がたくさんあるんですってね。技工士さん、真剣に、我々の労働条件やあるいは収入の問題も大変だけれども、今の状況で本当に国民の皆さん方に納得していただけるようないい入れ歯ができるのか、もうこれが心配でならないということですね。このような状況になれば、将来もう技工士さんが大きく減って、日本の歯科医療が成り立たないのではないか、こういう御心配もされておりました。
そういう状況を迎えているわけでありますが、そこで、歯科技工士さんの医療専門職としての評価を確立をしていただきたい。また、待遇改善を図る点からも労働、生活条件の改善が図られる点数の改定を行っていただきたい。義歯作製料を二倍に引き上げていただきたいと強く望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
○丹羽国務大臣 歯科技工士につきましては、先ほどから先生も御指摘なさっておりますように、歯科医との関係、長い経緯がございまして、やはり歯科技工士と歯科医師双方を十分に連絡をとって調整をしながら待遇の改善を図っていかなければならない、こういうふうに考えております。
先生が御指摘になりましたような、歯科技工士の方々の待遇が必ずしも十分じゃない、このことは十分に私ども踏まえて今後対処していきたいと思っておりますが、お言葉を返すようでございますが、率直のところ、二倍に一気に引き上げるということは現実的にはちょっと困難かな、こう考えております。
○辻(第)委員 本当に保険でいい入れ歯ができるように、殊にその中心的なポイントというのは本当に手間暇かけていいものをつくる、そういうことが保証できる技術料ということであります。大幅に引き上げていただきたいと強く要請をいたします。
それから、去る二月五日に厚生大臣が明らかにされました本年四月一日からの診療報酬の改定は、今切実に求められている深刻な医療経営を健全化し、国民の医療、良質な保険医療を保障するための診療報酬の改定ではなしに、医療法改正でつくった特定機能病院や療養型病院に関する診療報酬の改定にとどまる、その上、特定療養費制度をフルに活用して、紹介なしの患者の差額徴収や、療養型病床群では四人室でも二割まで差額徴収が可能にされるなど、患者負担を拡大するものであります。金のある者が高度先進医療が受けられやすくなる、こういうものであります。
このような政府、厚生省の姿勢は、公的保険医療で国民医療を保障することの責任を放棄するものであると言わざるを得ないと思います。今直ちにやるべきことは、公的医療保険でよい医療を望む多くの国民の声にこたえて、医療担当者が積極的に役割を発揮できるよう、診療報酬の緊急な改善を行うことだと考えるわけでありますが、再度厚生大臣の答弁を求めます。
○丹羽国務大臣 医療法改正に伴います、この四月から実施いたします診療報酬でございますけれども、高齢化社会を迎えまして、これからの病院の類型化のあり方として行ったものでございまして、いずれにいたしましても、国民の皆さん方が安心してこれからも治療、医療を受けられるような環境づくりのために全力を尽くしたいと思っております。
○辻(第)委員 八十歳で自分の歯が二十本ということであります。大変結構な話でありますが、しかし、今の厚生省の歯科行政の実態というのはどうなんでしょうか。昨年のNHKスペシャル以後、衆参両院で各党の議員が歯科問題を取り上げておられます。我が党も昨年四月七日、参議院の厚生委員会で沓脱タケ子議員は義歯製作料を二倍に引き上げるべきだ、このように求めました。また五月二十日の衆議院厚生委員会で児玉健次議員が歯科補綴関係の点数の二倍引き上げを求めたところであります。これらに対しまして厚生省の黒木政府委員は、「私どもとしては、歯科補綴について非常に困難な技術を伴う、手間暇のかかる技術だというのは十分承知をいたしておりますので、その辺は今後検討すべき問題だというのは承知をいたしております。」このように答弁をされた。また当時の山下厚生大臣は、「十分真剣に検討すべき問題ではあります。」このように答弁をされておるわけであります。
私は奈良市内のある歯科医院でいろいろお話を聞いてきたわけでありますが、実際の診療の中から総入れ歯の診療報酬を見てまいりますと、一例は五千八百二十七点、一例は五千四百三十二点でございました。この診療所の一時間の採算ベースは一万四千五百円であるわけであります。日本歯科医師会の資料などによりますと、きちっといい入れ歯をつくるというためには五時間ほど歯科医の先生がかかる、こういうふうにも言われているわけであります。もし五時間ということにいたしますと、タイムコストにいたしますと先ほどの例では一万一千七百円から一万八百円ということになるわけです。こうなりますと、採算ベースの一万四千五百円よりは大幅に少ないということですね。このままでいきますと大変な赤字になるわけであります。そういうことでありますので、こういうことではもう経営が成り立たぬわけでありますから、そこで時間を短くする、あるいは手間暇を省く、こういうこともやられるのですね。それから自費の診療で補う、あるいは人を減らす、そういうことで補う。いろいろなことで経営努力がやられているということであります。
それで、そういう状況でありますが、昨年四月、歯科の診療報酬が二・七%引き上げられたのですが、一九九一年六月の中医協の医療経済実態調査の収支差額が、八九年六月に比べまして三万四千円下がっている、前回比八〇・五%、このように二〇%近くも落ち込んでいるという状況の中で、歯科の経営困難というのは大変な状態ではないかと思うわけでございます。この十年間で保険診療収入は約三%しかふえていない、医業費用は三五%ふえている、こういう状況にあるわけであります。
それで、先ほど申しましたような状況、またもう一例申しますと、入れ歯の装着をしてから後、調整、これが非常に大事な仕事だと思うのですね。私も入れ歯があるわけでありますけれども、何度か調整をしていただかないとぴったりこないということなんですね。殊に総入れ歯なんというのは非常に難しいことで、調整が必要だと思うのですが、十回調整をしてようやく使いよい入れ歯になったという方もあるわけでありまして、どうも平均しますと五回から七回やらないといい状況にならないというふうに聞いておるわけでございます。
ところが、今の診療報酬では、政府は何回調整しても最初の月の百五十点の有床義歯指導料、簡単なのは六十点だそうでありますが、そういうことになっております。それで、この調整ですね、一回に大体十五分から三十分というふうに聞いております。例えば五回調整をして、最初は、一回はその百五十点に含まれる。あとの四回というのは、結局、再診料の二百七十円、二十七点しかつ
かぬのですね。四回しても千八十円ですか、たしかそういうことですね。ですから、千五百円と千八十円、五回調整してもそれぐらいしかならぬのですね。四回調整しても、一回が十五分といたしますと、それで一時間かかるのですね。先ほど申しましたように、その診療所の一時間当たりの採算点というのは一万四千五百円ということになるわけでありますから、そうなりますと、一時間やっても二千円少ししかならない、二千六百円近くしかならないということですね。これは余りにも技術料の評価がされていないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。大臣、この点についてどのようにお考えになりますか。
○古川政府委員 歯科の診療報酬につきましては、従来から技術料重視の考え方に立ちまして、診療報酬の改定の都度、義歯に関連する点数を含めまして、技術料の引き上げ等が行われてきたところでございます。ちなみに申し上げますと、義歯の点数で申しますと、昭和六十一年から平成四年までには二七%の引き上げを行っている、こういうふうな実情で、私ども、診療報酬改定の都度、そういったことで努力をしてきたところでございます。
お尋ねの義歯の調整の問題でございますけれども、有床義歯を新たに製作した後に、一カ月以内に義歯の調整を行った場合には、その月におきまして有床義歯指導料、これは先ほど先生お話しの百五十点として評価される取り扱いとなっているわけでございますが、これは、新しく製作されました義歯については、通常、一カ月以内でおおむね二、三回で調整されるものであるといういわば歯科医学の常識といいましょうか、そういう趣旨で設定をされている、こういうようなことでございます。一カ月以上連続して調整を行った場合には、この点に着目した特別の点数設定は行っておらないわけでございますが、御指摘のように、再診時基本診療料に包括して評価される、こういう取り扱いでございます。
なお、一カ月を経過した後におきまして、一たん治療が完了した後に再び患者が義歯に起因する症状を訴えて来院され、必要な指導等が行われた場合には、その指導等から一カ月以内に限りまして有床義歯指導料六十点が一回算定できる、こういう趣旨でございます。
以上のように、私どもとしては、そういった実態を踏まえまして、保険医療において良質な義歯が製作できるような適切な評価が行われているものと考えておりまして、今後とも適切に対応してまいりたい、かように考えております。
○辻(第)委員 大臣にお尋ねいたします。
先ほど申しましたように、歯科の技術料というのは非常に低いのですね。入れ歯、殊に総入れ歯なんかをやりますと、それはいわゆる赤字といいましょうか、採算割れになるわけであります。そういう状況の中で、保険ではよい入れ歯ができないという状況もあると思うわけであります。いかにタイムコストが保障されるのか、また安心していわゆる手間暇かけるといいましょうか、本当にいいものをどうつくっていくのかということが極めて大事だと思うのですが、これを阻んでいるのが低い技術料であると思います。当面、義歯作製料など補綴関係の診療報酬を二倍に引き上げていただきたい、こう望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
○丹羽国務大臣 先ほどから辻委員御指摘の総入れ歯の点数でございますが、五千百七十点ということであります。これがいかにも低過ぎるというような御指摘があることも十分に私は認識をいたしております。その一方で、いわゆる点数そのものを引き上げるよりは保険の保険外負担を拡大してほしい、こういうような意見も、いわゆる主張もございまして、その辺のところも十分にこれから勘案していかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
いずれにいたしましても、良質な義歯が製作できるようないわゆる技術料重視、これからこういう考え方に立ってこういう問題の解決に取り組んでいきたい、このように考えているような次第でございます。
○辻(第)委員 本当に公的保険、保険でよい入れ歯ができるように技術料を引き上げていただきたい、重ねて望むものであります。
次に、歯科技工士の問題でお尋ねをしたいと思います。
歯科技工士さんは今全国で何人おられるのか、また、実際業務についておられるのは何人か、そのうち病院や医院に勤務している人が何人、歯科技工所の方が何人おられるのか、技工所の業態はどのようなのか、その点についてお尋ねをいたします。
○寺松政府委員 今の先生の御質問にお答えいたしますが、今まで歯科技工士の免許を発行しておるというのは六万七千ぐらいなんでございますけれども、実際就業しているのはどのようなことかというようなお話でございます。これは、歯科技工士の数は二年ごとにとっておりますので、一番新しい数字が平成二年の末でございます。それによりますと、全国で三万二千四百三十三人が就業しておるということになっておりまして、その約半数の一万四千八百六十二人が技工所に働いていらっしゃる、それからまた一万六千八十五人が病院及び診療所に勤務しておる、こういうことでございます。今歯科技工士の数はそのようなわけでございます。
○辻(第)委員 厚生大臣にお尋ねをいたしますが、技工士さんというのは、昭和五十七年からですか、いわゆる大臣免許になりましたね、歯科技工士さん。そして今、歯科医療というのは、歯科医の先生と歯科技工士さんや歯科衛生士さんなどとのチーム医療ということだと思いますね。そういう中で、私は、歯科技工士さんというのは極めて重要な役割を担っていただいていると思うのですが、この歯科技工士さんの役割、位置づけ、それからその労働条件や収入はどのような状況になっているのか、大臣の認識を伺いたいと思います。
○丹羽国務大臣 先日、実は歯科技工士につきまして有識者懇談会から私の方に御提言をちょうだいいたしました。その中で、やはり今先生が御指摘のような、経済的な基盤の確立のために幾つか御提言がなされております。例えば委託技工料の問題、これはまさに歯科医師との問題でございますけれども、この委託技工料の明確化であるとか、それから養成所の定員の削減の問題、こういった問題について提言があったわけでございます。
いずれにいたしましても、歯科技工士というのは一人の小規模な方が多いわけでございますし、しかしそういう中において大変歯科技工士の果たす役割は重要でございますので、十分にこれからこういった問題について前向きに対処していきたい、このように考えております。
○辻(第)委員 歯科技工士さんの置かれている現状、大変深刻なものがあると思います。
私どもの奈良県の技工士さん、三十五歳の方が奥さんと二人の子供さんを残して自殺をされるというそんな痛ましい出来事もありました。この方はその前日に、とてもやっていけないと友人に電話をされたようであります。補綴の技術料の低さからくる技工料の低さですね。長時間労働、それから低い収入、先行きの不安。そういうことで、技工士としての生きる希望を奪い去った結果だと思うのですが、東京のある技工士さんの試算によりますと、総入れ歯一床の技工料金は、総入れ歯の製作料は一万四千円、その七〇%が支払われているとしても九千八百円、経費は三千五百円かかるわけです。そうなりますと六千三百円ということになります。これで大体三時間から四時間かかるというのですね。そうなりますと、時給に直しますと、大体二千円から千五百円ということになりますね。そういう中で非常に長時間の労働、しかも低い収入ということです。時間で申しますと、一般の労働者が一年間二千五十二時間という数字が出ておるのですが、それに対して平均二千六百三十時間、中には三千時間とかもう甚だしい人には四千時間というようなお話も聞くわけで
す。平均いたしますと、平均労働時間は一日十・三時間ですね。収入は大体平均の人の七割ぐらいですね。こういう中で八割の方が転職をしたい、このような思いを持っておられるということであります。
読売新聞で兵庫県の方が投書をされた中で、「息子は技工所につとめているが、朝八時半に出勤し帰宅は午前一時半か二時、そのうえ休日出勤もしている。薄給で労働条件が厳しいことから仲間が転職し残業がますますふえており過労死が心配」、このような投書もございました。
私も地元の技工士さんの方何人かとお会いをしてお話を聞いたわけでありますけれども、本当に長時間の労働ですね。もう徹夜というようなこともそれはいろいろな状況の中であるわけでございます。また、ある大阪へお勤めになっていらっしゃる方は、もう毎晩、大阪へ勤めて奈良へ帰ってこられるのですが、終電車になるぐらい仕事をされて、これも三十五歳ぐらいの方ですが、本給が二十五万で残業が七万ぐらい、一カ月三十二万。これは歯科医へ勤められている方ですが、ボーナスが五十万ぐらいということですね。合わせますと四百万ちょっと超えるぐらいですね。本当にもう現在の状況、時短が言われている状況の中でこんなに長時間の仕事をされて、しかも低い収入という状況であります。
そういう中で、技工士学校の入学定員が充足をしないとか卒業しても一年後には半数が転職をされる。十年かからないと本当の一人前の技工士さんにはなれないというふうに聞いているわけでありますが、どんどんと何年かたった若い方で宝石の技工士の方へ転職をされる、こういうお話がたくさんあるんですってね。技工士さん、真剣に、我々の労働条件やあるいは収入の問題も大変だけれども、今の状況で本当に国民の皆さん方に納得していただけるようないい入れ歯ができるのか、もうこれが心配でならないということですね。このような状況になれば、将来もう技工士さんが大きく減って、日本の歯科医療が成り立たないのではないか、こういう御心配もされておりました。
そういう状況を迎えているわけでありますが、そこで、歯科技工士さんの医療専門職としての評価を確立をしていただきたい。また、待遇改善を図る点からも労働、生活条件の改善が図られる点数の改定を行っていただきたい。義歯作製料を二倍に引き上げていただきたいと強く望むものでありますが、大臣の答弁を求めます。
○丹羽国務大臣 歯科技工士につきましては、先ほどから先生も御指摘なさっておりますように、歯科医との関係、長い経緯がございまして、やはり歯科技工士と歯科医師双方を十分に連絡をとって調整をしながら待遇の改善を図っていかなければならない、こういうふうに考えております。
先生が御指摘になりましたような、歯科技工士の方々の待遇が必ずしも十分じゃない、このことは十分に私ども踏まえて今後対処していきたいと思っておりますが、お言葉を返すようでございますが、率直のところ、二倍に一気に引き上げるということは現実的にはちょっと困難かな、こう考えております。
○辻(第)委員 本当に保険でいい入れ歯ができるように、殊にその中心的なポイントというのは本当に手間暇かけていいものをつくる、そういうことが保証できる技術料ということであります。大幅に引き上げていただきたいと強く要請をいたします。
それから、去る二月五日に厚生大臣が明らかにされました本年四月一日からの診療報酬の改定は、今切実に求められている深刻な医療経営を健全化し、国民の医療、良質な保険医療を保障するための診療報酬の改定ではなしに、医療法改正でつくった特定機能病院や療養型病院に関する診療報酬の改定にとどまる、その上、特定療養費制度をフルに活用して、紹介なしの患者の差額徴収や、療養型病床群では四人室でも二割まで差額徴収が可能にされるなど、患者負担を拡大するものであります。金のある者が高度先進医療が受けられやすくなる、こういうものであります。
このような政府、厚生省の姿勢は、公的保険医療で国民医療を保障することの責任を放棄するものであると言わざるを得ないと思います。今直ちにやるべきことは、公的医療保険でよい医療を望む多くの国民の声にこたえて、医療担当者が積極的に役割を発揮できるよう、診療報酬の緊急な改善を行うことだと考えるわけでありますが、再度厚生大臣の答弁を求めます。
○丹羽国務大臣 医療法改正に伴います、この四月から実施いたします診療報酬でございますけれども、高齢化社会を迎えまして、これからの病院の類型化のあり方として行ったものでございまして、いずれにいたしましても、国民の皆さん方が安心してこれからも治療、医療を受けられるような環境づくりのために全力を尽くしたいと思っております。