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歯科技工士・岩澤 毅

ブラック・ジャックは値引きしない―「専門医幻想」を捨てきれない歯科医たちに送る痛烈な警告

2009年05月25日 | amazon.co.jp・リストマニア
歯科開業医の専門医志向・自費治療傾斜は「自滅」路線, 2009/5/25

By 歯職人
 
 街に溢れる歯科医院、インターネット、電話帳等々、医療機関の広告とも思えない歯科医院の広告の氾濫。今まさに決壊するダムを、その前兆からスローモーションで映し出している様相の歯科医師の世界を、歯科医師の生態と思考・嗜好・指向を知る歯科医師自身の手によって解剖した一冊である。
 著者の金子久章氏は、現在も歯科業界専門新聞(『日本歯科新聞』週刊)で健筆を振るう、歯科医師界の論客と言ってよいであろう。
 金子氏は、歯科開業医の誤解・経営判断の誤りを「歯科業界の7不思議」として7つの論点に纏め上げている。それは、1.減りゆく患者層にターゲットを絞る不思議、2.「インプラント治療」というハイリスクに力を入れる不思議、3.歯科医の身勝手な理由で「患者のデンタルIQが低い」と嘆く不思議、4.高齢者に不便なビルの二階で開業する不思議、5.「地域密着型の歯科医療」に目を向けようとしない不思議、6.社会保障制度のない国・アメリカと比較する不思議、7.自由診療をメインにしながら保険医資格を取る不思議。
 金子氏以外の歯科開業医が、この「歯科業界の7不思議」全条件を具備しているわけではないが、強弱はありながらも思い当たる要素はあるものと思われる。開業前の勤務医であれば、頭の中で描く自分の開業像は尚更「歯科業界の7不思議」に彩られ根拠のない成功物語を夢見ているものと思われる。
 金子氏の主張の優れている点は、人口動態の推移と将来予測を踏まえ、患者と潜在患者の経済状況と口腔・全身状況・疾病構造の変化から歯科と歯科医需要の在処を歯科医師教育がもたらした「手を動かしたがる歯科医師」「処置したがる歯科医療」の既成概念から離脱し、無理なく導き出したことにある。
 社会保障として歯科医療を指向する歯科関係者にとって、金子氏の「包括払い」制に対する見解は、評価は別れるものと思われるが他の論点に関しては、概ね賛同が得られるのではないだろうか。
 『ブラック・ジャックは値引きしない』との表題は、「君はブラック・ジャックに成れるのか」「君はブラック・ジャックになる必要があるのか」「君が必要とする、君を必要としてくれる地域には、ブラック・ジャックは必要ないのだよ」とのメッセージの様に読み取れる。
 将来に不安を抱く歯科開業医、歯科勤務医、歯科学生等にとっては、新書サイズで税別950円の本書は、必読と言って良いであろう。

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ブラックジャックハネビキシナイ センモンイゲンソウヲステキレナイシカイタチニオクルツウレツナケイコク
ブラック・ジャックは値引きしない―「専門医幻想」を捨てきれない歯科医たちに送る痛烈な警告

金子 久章【著】
現代書林 (2006/04/18 出版)

173p / 18cm
ISBN: 9784774507484
NDC分類: 497


価格: ¥997 (税込)

詳細
保健医療で充分な患者に高価な専門技術は必要?「歯科業界の七不思議」から人口減少国ニッポンの医療を問う。

プロローグ ブラック・ジャックは値引きしない
1 減りゆく患者層にターゲットを絞る不思議
2 「インプラント治療」というハイリスクに力を入れる不思議
3 歯科医の身勝手な理由で「患者のデンタルIQが低い」と嘆く不思議
4 高齢者に不便なビルの二階で開業する不思議
5 「地域密着型の歯科医療」に目を向けようとしない不思議
6 社会保障制度のない国・アメリカと比較する不思議
7 自由診療をメインにしながら保険医資格を取る不思議
エピローグ ブラック・ジャックへの伝言


著者紹介
金子久章[カネコヒサアキ]
昭和40年、埼玉県出身。平成2年、東京歯科大学卒業、歯科医師となる。平成6年、金子歯科診療所にて往診を開始。平成13年、NPO法人在宅ケア支援センター(現ハーモニカ)設立、同理事長。同じく社団法人与野歯科医師会理事。平成15年、埼玉県保険医協会常任理事。その他、埼玉県立大学非常勤講師、歯科医師臨床研修指導医、介護支援専門員等を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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