水道水へのフッ素添加について考えた機会に
岩澤 毅(秋田市・歯科技工士)
むし歯の予防方法をめぐって、様々な提案がなされてきましたが、水道水へのフッ素添加によるむし歯予防政策について、岡田弥生著『むし歯ってみがけばとまるんだヨ-削って詰めるなんてもったいない!』の読後、水道水へのフッ素添加には反対する立場をとるべきとの思いを強くしました。
以下に理由を記します。
1.水道水は、無歯顎者も利用します。虫歯予防目的の水道水へのフッ素添加の論理には、この点への考慮が不明です。無歯顎者の水道水の利用者としての権利は、何処に行ってしまうのでしょうか? 無歯顎者にとってフッ素添加は、何らの便益も無いはずです。
2. 水道水へのフッ素添加は、自覚的に自分の体の一部として歯を捉え、歯を考える習慣を身につけることに役に立たちません。意識せずに本当に虫歯が予防されるとしたら、自覚的に自分の体の一部として歯を捉え、歯を考えることと逆方向になってしまいます。
3.多くの人はその生涯の様々な場面で住まいを移し、暮らしの本拠の引越をします。水道水にフッ素添加された地区で育った子供が、フッ素添加されていない他地区・他国に移り住んだ時、自覚的に自分の体の一部として歯を見て歯を考える習慣を身に付けていない事により、時期を遅らせてむし歯の悲劇が訪れるのではないかと思うのです。
4.そもそも、現在水道水を主に飲用としている人はどの程度いるのでしょうか、近年のミネラルウォーター類の普及を考えると、水道水へのフッ素添加賛成・反対両者のデータと論理構成は、大幅な訂正が必要ではないのかと思います。
既に水道水へのフッ素添加賛成・反対の両者が、現実の推移から置いていかれているのではないでしょうか?時代に取り残された者同士の際限のない繰り返しの議論が演じられているだけなのではないかと思うのです。
5.取り組むべきことは、前掲書で記述される杉並区で岡田先生が実践されている予防活動ではないかと思うのです。
水道水へのフッ素添加には、戦後の世情としてニュース・フィルムに記録される老若男女を問わず住民を集めDDTを頭から浴びせ掛ける時代の公衆衛生観と底流では同一のものを感じます。
本問題からは見えてくるものは、時代精神と調和した公衆衛生観とむし歯予防のあり方が必要とのテーマ設定ではないかと思われます。
むし歯予防を歯科技工士としての立場に引き寄せて考えると、岡田先生の著書からは「歯の価値を高める」社会、自身の体・歯に価値を置き慈しむ社会が見えて来ます。
この目指す社会では、努力によって守る天然歯が大切にされ価値を持つのですから、何らかの事情・事故で歯を失った部分の代替をする人工物としての補てつ物は、現在以上に価値を持つと思うのです。このような社会の歯科技工士は、価値を生み出す者として十分に幸せであろうと考えるのです。
歯科技工士の皆様にもこの岡田氏の著作に触れ、努力により守り育てる歯の価値とそれを支える社会像を考える機会を持って頂ければと思っています。
2008年9月2日記
むし歯ってみがけばとまるんだヨ―削って詰めるなんてもったいない!
ISBN:9784816608025 (4816608028)
186p 19cm(B6)
梨の木舎 (2008-03-03出版)
・岡田 弥生【著】・たかく あけみ【絵】
[B6 判] NDC分類:497.2 販売価:1,575(税込) (本体価:1,500)
※本稿は、草の根歯科研究会(http://www.tonet.com/odh/index.htm)MLへの2008年8月28日付けの投稿文に加筆したものです。
岩澤 毅(秋田市・歯科技工士)
むし歯の予防方法をめぐって、様々な提案がなされてきましたが、水道水へのフッ素添加によるむし歯予防政策について、岡田弥生著『むし歯ってみがけばとまるんだヨ-削って詰めるなんてもったいない!』の読後、水道水へのフッ素添加には反対する立場をとるべきとの思いを強くしました。
以下に理由を記します。
1.水道水は、無歯顎者も利用します。虫歯予防目的の水道水へのフッ素添加の論理には、この点への考慮が不明です。無歯顎者の水道水の利用者としての権利は、何処に行ってしまうのでしょうか? 無歯顎者にとってフッ素添加は、何らの便益も無いはずです。
2. 水道水へのフッ素添加は、自覚的に自分の体の一部として歯を捉え、歯を考える習慣を身につけることに役に立たちません。意識せずに本当に虫歯が予防されるとしたら、自覚的に自分の体の一部として歯を捉え、歯を考えることと逆方向になってしまいます。
3.多くの人はその生涯の様々な場面で住まいを移し、暮らしの本拠の引越をします。水道水にフッ素添加された地区で育った子供が、フッ素添加されていない他地区・他国に移り住んだ時、自覚的に自分の体の一部として歯を見て歯を考える習慣を身に付けていない事により、時期を遅らせてむし歯の悲劇が訪れるのではないかと思うのです。
4.そもそも、現在水道水を主に飲用としている人はどの程度いるのでしょうか、近年のミネラルウォーター類の普及を考えると、水道水へのフッ素添加賛成・反対両者のデータと論理構成は、大幅な訂正が必要ではないのかと思います。
既に水道水へのフッ素添加賛成・反対の両者が、現実の推移から置いていかれているのではないでしょうか?時代に取り残された者同士の際限のない繰り返しの議論が演じられているだけなのではないかと思うのです。
5.取り組むべきことは、前掲書で記述される杉並区で岡田先生が実践されている予防活動ではないかと思うのです。
水道水へのフッ素添加には、戦後の世情としてニュース・フィルムに記録される老若男女を問わず住民を集めDDTを頭から浴びせ掛ける時代の公衆衛生観と底流では同一のものを感じます。
本問題からは見えてくるものは、時代精神と調和した公衆衛生観とむし歯予防のあり方が必要とのテーマ設定ではないかと思われます。
むし歯予防を歯科技工士としての立場に引き寄せて考えると、岡田先生の著書からは「歯の価値を高める」社会、自身の体・歯に価値を置き慈しむ社会が見えて来ます。
この目指す社会では、努力によって守る天然歯が大切にされ価値を持つのですから、何らかの事情・事故で歯を失った部分の代替をする人工物としての補てつ物は、現在以上に価値を持つと思うのです。このような社会の歯科技工士は、価値を生み出す者として十分に幸せであろうと考えるのです。
歯科技工士の皆様にもこの岡田氏の著作に触れ、努力により守り育てる歯の価値とそれを支える社会像を考える機会を持って頂ければと思っています。
2008年9月2日記
むし歯ってみがけばとまるんだヨ―削って詰めるなんてもったいない!
ISBN:9784816608025 (4816608028)
186p 19cm(B6)
梨の木舎 (2008-03-03出版)
・岡田 弥生【著】・たかく あけみ【絵】
[B6 判] NDC分類:497.2 販売価:1,575(税込) (本体価:1,500)
※本稿は、草の根歯科研究会(http://www.tonet.com/odh/index.htm)MLへの2008年8月28日付けの投稿文に加筆したものです。